上 下
309 / 468
連載

◆作ると決めました

しおりを挟む
「なにか問題ですか?」
「ああ」
デューク様は俺が回答した一月という期間に問題があるという。早く出来れば嬉しいのになにが困るんだろうか。

「ケイン、ここはドワーフタウンと違うということだろ。察しろ」
「あ~人目があるってこと。でもさ、それこそ今更じゃない?」
「お前、分かっているのなら、もう少し抑えてくれてもいいんじゃないか?」
「ええ~でも、今度は王家の人が面倒見てくれるんじゃないですか。なら、思いっきりやってもいいと思ったのに。ダメですか?」
俺の発言にデューク様がまた渋面になる。

「でも、俺が作らないと数年単位の事業になりますよ? そうなると、その間のドワーフタウンの港も使い途が資材の運搬だけになるんですけどね」
「それもおもしろくはないな」
「失礼ですが、旦那様。ドワーフタウンのことも色々と推測されていますし、ここは旦那様のお抱えで、そういう実行部隊がいると思わせた方がいいと思います」
「ほう。その理由は?」
「はい。ケイン様のとんでもないやらかしは、ドワーフタウンの者なら、知らない人はいないでしょう。そして、その者達が広めることはないでしょうが、他の者は違うでしょう」
「そうか。いずれ知られるのなら、もったい付けずに見せてしまえってことか」
「そうです。王都での建設ラッシュは今の内だけでしょ。なら、パッと作ってパッと終わらせれば、話題に上がってもそれほど長引かないでしょう。それにケイン様のことは、他の貴族達にも多少は知られているでしょうから」
「まあな。分かった。なら、ケインよ。一月と言わず、なるべく短期間で済ませてくれ」
「おう~いきなりですね。でも、そうですね。入れ物の箱だけなら一週間でやってみますか。箱さえ作ってしまえば、あとは内装なんで、外からやっていることは見えないですし」
「ふむ。そうか、分かった。それで頼む」
「はい。じゃあ、早速準備しますね」

転移ゲートをドワーフタウンの工房に繋ぐとガンツさん達と一緒に潜る。

「で、ケインよ。ある程度の計画はあるんだろ?」
「うん。まずはここの港を造船所とプールの間に作るでしょ。それから、王都の港を造成するでしょ。そしたら、あとは足場を組んで外壁を作るまでは一度に済ませたいよね」
「まあ、最初はお前一人で出来るというか、お前しか出来ない作業だからな。頑張れとしか言えんがな。まあ、ワシはワシで早く自分の担当作業を終わらせて、お前の監視に戻らんとな」
「監視って……」
「まあ、一応の形式としてはお前の監視役だからな」
「俺以上に楽しんでいるけどね」
「それは監視役としての役得だな」
「もう、いいよ」

ガンツさんには、足場や養生シートの確保と、夜にボートを出してくれと頼む。
「なんじゃ、ボートくらい自分で……ああ、そういやライセンス制にされたんだったな。分かった。何時くらいだ?」
「出来れば、暗くなってからが都合がいいから、八時でどうかな」
「八時だな。分かった。じゃ、そのくらいに連絡してくれ」
「うん、お願いね。じゃ、港の整備に行きますか」
「ああ、頼む」
造船所に転移ゲートを繋ぎガンツさん達と一緒に潜る。

「また、最初の予定地とは随分、離れた位置になったな」
転移ゲートを潜ったガンツさんが一言漏らす。

「まあ、最初は河口側だったもんね。それが、漁港になって、造船所を作って、ここだもんね。それも、やっとだし」
「やっとというが、ドワーフタウンが出来てから一年も経ってないがな」
「そりゃそうだけど、俺からしたらやっとだよ。王都の港も計画立ててからは中々進まなかったしね」
「まあな。じゃ、ワシはフェリーの作成に取り掛かるからな。なにも手伝うことは出来んが、無茶はするなよ」
「分かってるって!」
「それが、一番怖いんだがな」
それだけ言うとガンツさんは手を上げ、じゃあと造船所の方へと向かう。

「さて、どうするかな。まずは波止場だよな」
切り立った岸壁から海の方へと陸地を伸ばす。百メートルにしようかと思ったけど五十メートルほど伸ばした所で止める。
「まだ、そんな大きな舟は作る予定はないし、こんなもんでしょ」
出来た波止場に間隔を適当に空けて、ビットを用意する。
「波止場の方はこんなもんかな。後は、お客さんの為の施設に、車での乗り入れる為のロータリーに魔導列車の駅を作れば、施設としては十分かな」
それぞれの施設を作り終えると、倉庫はガンツさん達に任せることにして、出来た施設を見て回る。

『なあ、これってなに?』
「なにって、船に乗るための場所だよ。発券とか船に乗るまで待って貰ったりとかね」
『面倒なんだな』
「まあね。慣れればそうでもないと思うけどね」
『ふ~ん』

施設を見て回り、どこも問題ないと思うが、少し時間が空いてしまう。ちょっと、家に帰るにも中途半端だし、工房に戻っても仕掛かり中のはないし、ガンツさんを邪魔するのもアレだしと考えていると、ふと思い出す。
「そういや、まだ水上バイクって作って無くない? そうだよ、作ってないよね。もうすぐ季節も変わるし作るなら今だよね。多分、水上の警備が必要とかなったら必需品だし、絶対いるよね。なら、作るしかないよね」
『ケイン、なんか独り言がデカいよ。それに無理矢理自分自身を納得させるように言ってるけど、絶対によくないことだよな?』
「そ、そうかな?」
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。