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◆作ると決めました

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「なにか問題ですか?」
「ああ」
デューク様は俺が回答した一月という期間に問題があるという。早く出来れば嬉しいのになにが困るんだろうか。

「ケイン、ここはドワーフタウンと違うということだろ。察しろ」
「あ~人目があるってこと。でもさ、それこそ今更じゃない?」
「お前、分かっているのなら、もう少し抑えてくれてもいいんじゃないか?」
「ええ~でも、今度は王家の人が面倒見てくれるんじゃないですか。なら、思いっきりやってもいいと思ったのに。ダメですか?」
俺の発言にデューク様がまた渋面になる。

「でも、俺が作らないと数年単位の事業になりますよ? そうなると、その間のドワーフタウンの港も使い途が資材の運搬だけになるんですけどね」
「それもおもしろくはないな」
「失礼ですが、旦那様。ドワーフタウンのことも色々と推測されていますし、ここは旦那様のお抱えで、そういう実行部隊がいると思わせた方がいいと思います」
「ほう。その理由は?」
「はい。ケイン様のとんでもないやらかしは、ドワーフタウンの者なら、知らない人はいないでしょう。そして、その者達が広めることはないでしょうが、他の者は違うでしょう」
「そうか。いずれ知られるのなら、もったい付けずに見せてしまえってことか」
「そうです。王都での建設ラッシュは今の内だけでしょ。なら、パッと作ってパッと終わらせれば、話題に上がってもそれほど長引かないでしょう。それにケイン様のことは、他の貴族達にも多少は知られているでしょうから」
「まあな。分かった。なら、ケインよ。一月と言わず、なるべく短期間で済ませてくれ」
「おう~いきなりですね。でも、そうですね。入れ物の箱だけなら一週間でやってみますか。箱さえ作ってしまえば、あとは内装なんで、外からやっていることは見えないですし」
「ふむ。そうか、分かった。それで頼む」
「はい。じゃあ、早速準備しますね」

転移ゲートをドワーフタウンの工房に繋ぐとガンツさん達と一緒に潜る。

「で、ケインよ。ある程度の計画はあるんだろ?」
「うん。まずはここの港を造船所とプールの間に作るでしょ。それから、王都の港を造成するでしょ。そしたら、あとは足場を組んで外壁を作るまでは一度に済ませたいよね」
「まあ、最初はお前一人で出来るというか、お前しか出来ない作業だからな。頑張れとしか言えんがな。まあ、ワシはワシで早く自分の担当作業を終わらせて、お前の監視に戻らんとな」
「監視って……」
「まあ、一応の形式としてはお前の監視役だからな」
「俺以上に楽しんでいるけどね」
「それは監視役としての役得だな」
「もう、いいよ」

ガンツさんには、足場や養生シートの確保と、夜にボートを出してくれと頼む。
「なんじゃ、ボートくらい自分で……ああ、そういやライセンス制にされたんだったな。分かった。何時くらいだ?」
「出来れば、暗くなってからが都合がいいから、八時でどうかな」
「八時だな。分かった。じゃ、そのくらいに連絡してくれ」
「うん、お願いね。じゃ、港の整備に行きますか」
「ああ、頼む」
造船所に転移ゲートを繋ぎガンツさん達と一緒に潜る。

「また、最初の予定地とは随分、離れた位置になったな」
転移ゲートを潜ったガンツさんが一言漏らす。

「まあ、最初は河口側だったもんね。それが、漁港になって、造船所を作って、ここだもんね。それも、やっとだし」
「やっとというが、ドワーフタウンが出来てから一年も経ってないがな」
「そりゃそうだけど、俺からしたらやっとだよ。王都の港も計画立ててからは中々進まなかったしね」
「まあな。じゃ、ワシはフェリーの作成に取り掛かるからな。なにも手伝うことは出来んが、無茶はするなよ」
「分かってるって!」
「それが、一番怖いんだがな」
それだけ言うとガンツさんは手を上げ、じゃあと造船所の方へと向かう。

「さて、どうするかな。まずは波止場だよな」
切り立った岸壁から海の方へと陸地を伸ばす。百メートルにしようかと思ったけど五十メートルほど伸ばした所で止める。
「まだ、そんな大きな舟は作る予定はないし、こんなもんでしょ」
出来た波止場に間隔を適当に空けて、ビットを用意する。
「波止場の方はこんなもんかな。後は、お客さんの為の施設に、車での乗り入れる為のロータリーに魔導列車の駅を作れば、施設としては十分かな」
それぞれの施設を作り終えると、倉庫はガンツさん達に任せることにして、出来た施設を見て回る。

『なあ、これってなに?』
「なにって、船に乗るための場所だよ。発券とか船に乗るまで待って貰ったりとかね」
『面倒なんだな』
「まあね。慣れればそうでもないと思うけどね」
『ふ~ん』

施設を見て回り、どこも問題ないと思うが、少し時間が空いてしまう。ちょっと、家に帰るにも中途半端だし、工房に戻っても仕掛かり中のはないし、ガンツさんを邪魔するのもアレだしと考えていると、ふと思い出す。
「そういや、まだ水上バイクって作って無くない? そうだよ、作ってないよね。もうすぐ季節も変わるし作るなら今だよね。多分、水上の警備が必要とかなったら必需品だし、絶対いるよね。なら、作るしかないよね」
『ケイン、なんか独り言がデカいよ。それに無理矢理自分自身を納得させるように言ってるけど、絶対によくないことだよな?』
「そ、そうかな?」
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