上 下
306 / 468
連載

◆港の模型を作りました

しおりを挟む
いつものように転移ゲートを潜ってドワーフタウンの工房に出る。
「おう、ケイン……」
「おはよう、ガンツさん。どうしたの? 疲れているみたいだけどさ」
「付き合わされた……十二匹の名付けが終わるまでな……」
「それはまた、お疲れ様です」
「ワシは今日は働かんぞ……もう、眠い……」

ガンツさんが寝落ちすると同時に携帯電話が鳴り出す。
「あ、セバス様からだ。もしもし……はい、三時にお屋敷ですね。分かりました。では、失礼します」
携帯電話を切り、ガンツさんに報告しようとすると、ガンツさんはソファの上で横になりすやすやと寝息を立てている。

「まあ、しょうがないか。昼過ぎまで寝かせてあげとこう」

ガンツさんを工房に残して、クレイグさんの元へと転移ゲートを繋いで潜る。
「おはよう、クレイグさん」
「ケイン君……どうしたの?」
「多分ですけど、王都の港の工事が出来そうなんですよ。だから、その準備をお願いしに来ました」
「準備?」
「そう、準備」
「でも、準備ってなにを?」
「この前、海図を作ってもらったでしょ? まずはそれを下さい」
「いいけど、どうやって?」
「どうやって?」

クレイグさんが意味不明なことを言い出す。
「どうやってってのは?」
「いやね、海図はこのタブレットの中なんだけど、これをどうやって渡せばいいのかが分からないんだけど」
「ああ、そういうことですね」
「そう、そういうこと」
「じゃ、ちょっと借りますね」
クレイグさんのタブレットの海図をタップして、『送信』メニューを開くと、送信先として俺のタブレットが選択リストに上がっていたので、送信先として選択する。
これで『送信』をタップすれば……俺のタブレットに『受信を許可しますか?』のポップアップが表示されるので、『はい』を選択する。
「はい、これで海図を受信出来ました!」
「へ~意外と簡単なんだね。これって、写真とかも送れたりするの?」
「多分……出来ると思います」
「そうか。今度試してみよう」

工房に戻ると、ガンツさんは起きる様子はなく、まだ夢の中だ。そんなガンツさんに呆れつつ王都の港の模型を作り埋め立て予定地を確認する。
「今ある倉庫は全部撤去するでしょ。その後に港と街の間にフェンスを作るでしょ。そして、中は一両編成の路面電車を走らせるけど、そのままじゃ車や人の通行の邪魔になるか。なら、いっそ高架にしてしまえば事故も減らせるし信号もいらないから運行も楽になるね。それで外壁の上を走らせてもいいし。うん、そうしよう」

その後は、商業区、工業区、住宅区と区分けをし、それぞれの区域の周囲と中央を通る十字型に幹線道路を作り、その上に路面電車の高架を通す。

「交通機関としては、こんなものか。あとはミニバスの路線を決めれば終わりと」
「なんじゃ、面白そうなことをしているな」
「あ、ガンツさん。起きたの?」
「ああ、ふぁ~。まだ、少し眠いが……まあ、大丈夫じゃろ。で、お前がいじってるそれはなんだ?」
「あ、これ? 朝一でセバス様から電話があってね。三時に来て欲しいって」
「そうか。それで、この模型か」
「うん。セバス様に具体的な内容は来てから応えると言われたけど、港のことでと言われたから、やっと許可が下りたのかなと思ってね」
「そうか。それにしても、結構、広範囲を埋め立てるんだな。一体、どれくらいの広さなんだ?」
「さあ? 多分東京ドーム十個分くらい?」
「は? なんだ、そのトウキョウドウムってのは?」
「あ、なんでもない。忘れて。でも、ドワーフタウンほどの広さはないよ」
「そうか。まあいい。顔でも洗ってくるから、ワシにもそれを説明してくれ」
「分かった」
ガンツさんが部屋を出たのを確認し、模型を見直す。
「居住区は、もう少しバリエーションを増やすかな。単身者向けを多めに作って、家族用は2LDK、3LDKでしょ。工業区は……ガンツさんと相談するか。商業区は父さん達に丸投げしてもいいよね。ホテルを用意するかは誰かに要相談として、商業区と工業区は港側に作った方が便利だよな。もう少し、考えるか」

模型を前にああでもないこうでもないと考えていると、いつの間にか戻って来ていたガンツさんが模型を覗き込む。

「これは車での通行を基本に考えているのか?」
「うん。ここ、ドワーフタウンからフェリーで色々運ぶ予定だしね」
「なら、ここの港もやっと手を着けるのか」
「そうだよ。あと、造船所もね」
「造船所か。しかし、ワシはあのフェリーしか作れないぞ」
「十分だよ。運用するのに四隻でしょ。補修点検用に二隻あればいいかな」
「そんなにか!」
「やっぱりちょっと、少ないかな?」
「い、いや、十分だな。まあイーガン達に手伝わせれば、なんとかなるか」
「あと、操舵手も育てないとだし、大変だねガンツさん」
「は? なんでワシが?」
「だって、俺ライセンス取れないし。忘れたの?」
「あ~そうだった。よし、こうなったら、ジョシュアにも急いで取って貰わないと」
「あ、ジョシュアさんに教えるなら、船外機から教えてね」
「ん? なんでだ」
「え? いきなりフェリーの操船を教えるつもりなの。ダメでしょ! まずは水の上では急ハンドルや急制動が効かないことを理解してもらわないと!」
「それも、そうか……なんか、急にやることが多くなったな」
「そうだね。デューク様がやっと動いてくれたからかな」
「だな」
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし
ファンタジー
主人公、柏木 和(かしわぎ かず)は「武人」と呼ばれる武術を極めんとする者であり、ある日祖父から自分が世界で最強であることを知らされたのだった。 そして次の瞬間、自宅のコタツにいたはずの和は見知らぬ土地で寝転がっていた―― 「……いや草」

神々に天界に召喚され下界に追放された戦場カメラマンは神々に戦いを挑む。

黒ハット
ファンタジー
戦場カメラマンの北村大和は,異世界の神々の戦の戦力として神々の召喚魔法で特殊部隊の召喚に巻き込まれてしまい、天界に召喚されるが神力が弱い無能者の烙印を押され、役に立たないという理由で異世界の人間界に追放されて冒険者になる。剣と魔法の力をつけて人間を玩具のように扱う神々に戦いを挑むが果たして彼は神々に勝てるのだろうか

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。