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◆新居をお披露目しました

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蒸留所で、アルガンさん達の作った樽をインベントリから取りだし、蒸留所の作業員達に渡す。
「これでやっと生酒じゃなく樽で熟成した酒が飲めるな」
「やっとだね。でも、最低でも三年は待たないとね」
「問題はそこだよな~なあ、ケインの魔法でパパッと三年熟成とか出来ないか?」
「ん~熟成ね~インベントリの中は時間停止だし……」
「まあ、出来たらでいいから、なにか考えといてくれ。頼むな」
「いいけど、あまり期待しないでよ」
「おう。あ、それと言い忘れてたけど、旦那にもそろそろ足場を組めそうだと言っといてくれ」
「そろそろって、どの位?」
「まあ、そうだな。二、三日ってところだな」
「分かった。言っとく」
「おう、頼んだ」
「じゃ、明日ね」

ガンツさんと別れ、家へと転移ゲートを繋ぎ潜っていく。なにか忘れている気がする……
「ただいま」
「おかえり~あら? マサオはどうしたの?」
「マサオ? あ~なにか忘れていると思ったら……ちょっと、迎えに行ってくる!」

転移ゲートをマサオのいる場所に繋ぎ、顔だけ出してマサオを呼ぶ。
「マサオ~帰るぞ~!」
『ケイ~ン』
「ほら、早く!」
マサオを急かし早く転移ゲートを潜るように言うが、転移ゲートの前で立ち止まり俺に言う。
『ケイン、俺のこと忘れてたよね?』
「……なに、言ってんの。ほら、早く!」
「ケイン、忘れたマサオは見つかったの? あら、マサオいたじゃない。ほら、早く帰って来なさい」
『は~い。ケイン、一つ貸しな』
「くっ……」

夕食を済ませ、父さんにガンツさんからの言伝を話す。
「そうか。とうとう引越か」
「それでさ、父さんに相談なんだけどね」
「なんだ? そんな改まって。まさか……ちょっと待て! 心を落ち着かせるな。ふぅふぅ、よし! いいぞ。さあ、来い!」
「なにをそんなに気を張っているのか分からないけど、多分違っているから」
「そうか? まあいい。で、相談ってのは?」
「うん。引越なんだけどさ、この家をそのまま移転させるって話してたじゃない」
「ああ、そうだな。もしかして、ダメか?」
「ううん。そうじゃなくてね。双子の妹の部屋とか考えてないでしょ?」
「あ~そうか。あの子達の部屋を用意しようと、そういうことか!」
「うん、そう。だから移転じゃなくって、新築にしようと思ってるんだけど、どう?」
「そうは言ってもな~」
「父さんなら、そういうと思って、こんな物を用意しました。はい!」
テーブルの上に新居の模型をインベントリから取りだして置く。

そして、五階建ての新居を階ごとに分割して説明する。

「まずは一階ね。一階は駐車場とトイレに台所と食堂とリビングね。後は転移部屋とエレベーター」
「まあ、そうなるだろうな」
母さん達も回り込んで父さんの後ろから模型を覗き込む。
「次に二階ね。二階は風呂にトイレに父さん達の部屋と物置ね」
「あら、私の部屋もあるのね」
「うん。母さんが裁縫とかミシンとか使う部屋ね。父さんにも書斎を用意してるから」
「ほう……」

「で、三階が俺と双子達の部屋ね。トイレと洗面所は各階に用意してるから。後、双子達の名前はもう決まったの?」
「ああ、決まったぞ」
「え? 聞いてない」
双子の名前を聞いたら、もう決まっていると父さんは言うけど、俺は聞いてない。

「まだ、誰にも言ってないからな。公表はもう少し待て」
「なにそれ。まあいいけど。で、次が四階でサム兄さんとクリス兄さんの部屋ね」
「おお、俺の部屋か。今より広いな」
「僕の部屋もだよ。これなら本がいっぱい置けそう」
「五階は客室ね。もし、じいちゃん達が来ても泊まれるようにね。で、最後が屋上。特になにって訳じゃないけど、洗濯物を干すとかかな」
「「「「……」」」」
最後まで説明したら、皆が黙り込む。
「どうしたの?」
「ケイン、間取りはこれで決定か?」
「まだ、決定じゃないよ。どうして?」
「いや、このままでも問題はないと思うけど、少し考えさせてくれないか」
「いいよ。でも、早めに決めてね」
「ああ、そんなには待たせないようにするから」
「なあ、ケイン。この間取りを変更するとしたら、どの程度まで変更は可能なんだ?」
「え~と、基本の部屋の位置や大きさの変更は出来れば止めて欲しいかな。だから、あとはクローゼットや窓の位置や大きさにバルコニーを着けるとか、ドアの位置を変えるとか、部屋の中に間仕切り壁を着けるとか、そんな所かな」
「じゃあ、作り付けの本棚は?」
「もちろん、可能だよ。でも、棚ごとの高さの指定とかは止めてね」
「え~」
「その代わり棚の幅とか配置は自由にしていいから」
「なら、いいね。分かった。ありがとう。じゃ、これを分けて」
「おう、そうだな。そうしてくれ」
クリス兄さんに自分達の部屋だけにしてくれと言われたので、クリス兄さんとサム兄さんの部屋の模型を切り分ける。
「「ありがとう!」」

母さんが俺をジッと見ているのに気付いたので、母さんに話しかける。
「なに? なにか言いたそうに俺を見てるけど?」
「ふふふ、言いたいのは私じゃなくて、ほら」
母さんが俺の後ろを指差す。

母さんが指を差した先にはリーサさんが立っていて、俺を見ていた。
「ケインは新居に自分の部屋を用意したから、拗ねているんじゃないの?」
「え? 違うよね、リーサさん」
「あ……その……なんでもない」
リーサさんの顔が見る見るうちに赤くなる。
「あれ?」
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