291 / 468
連載
◆視察ツアーを始めました
しおりを挟む
ヨサック夫婦が呆けていると空間に穴が開き、ケインが出てくる。
「人が集まるのなら、これも必要でしょ。俺からの差し入れ。あ、それとバターで野菜とか炒めるだけでも美味しいよ。試してみてね。じゃあね」
ケインはそれだけ言うと、穴の中に戻っていく。
そのケインが置いていったのは数本の酒瓶。もちろん中身入り。
「なんだったんだ? しかもこんなに……」
「ふふふ、まあいいじゃない。ほら、呼んでくるんでしょ。いってらっしゃい。私はケイン君の言うように試作してみるわ」
「おう。じゃあ、ちょっと行ってくるな」
ヨサックがケインとの話に賛同してくれそうな友人達を呼びに出かけたので、ハンナはケインの言うようにバターを使って、野菜や肉を炒めてみることにする。
「まずは、簡単に野菜からにしようかな。お肉は来てからでいいよね、時間おくと固くなっちゃうし。よし、始めよう!」
しばらくして、ヨサックが五人の同年代の男を連れて帰ってくる。
「ハンナ、戻ったぞ。ん? なんかいい匂いがするな」
「お! 本当だ。いい匂いだな」
「ふんふん、嗅いだことがあるようなないような……」
「いいから、早く入ってくれ。後が支えてるだろ」
「ああ、すまんな」
テーブルに皆が着くと一人の男が尋ねる。
「ところで、俺達を呼んだのはどういう訳だ?」
「そうだよ、なにか話があるとしか聞いてないぞ」
「ああ、そうだ。実はな……」
「ヨサック、話をする前にこれを食べてもらって。ケインの言うようにバターを使って見たのよ。さあ、召し上がれ」
「おう、これか。さっきからいい匂いがして気にはなっていたんだ」
「ほう、うん。いい匂いだな」
「普通に野菜を炒めただけのようだが、なにを使ったんだ?」
「これはね「バターだよ」もう、ヨサック!」
「「「「「バター?」」」」」
「そう、バターだ」
「まあ、なにか分からんがうまそうだし食べれば分かるだろ。どら」
皿の上の野菜炒めを口に入れ黙り込む。
「どうした? なにか言えよ!」
「そうだぞ」
「もしかして、お口に合わなかったのかしら?」
「ハンナの料理が口に合わないとかないだろ。ほら、なんか言えよ」
「う……」
「「「「「「う?」」」」」」
「うまい!」
「「「「「うまいのかよ!」」」」」
「もう。ほら、皆も食べてみて」
「ああ、ご馳走になろう」
「そうだな」
『パクッ』
その場にいる皆がほぼ同時に口に入れる。
「「「「「……」」」」」
皆が皆の顔を見渡す。
「「「「「うまい!」」」」」
「なんでだ? これはここで採れた野菜だろ?」
「そうよ。いつも通りのお野菜よ」
「なら、なんでこんなに味が……」
「それはね「バターだ!」もう、ヨサック!」
「そういや、さっきもそんなことを言ってたな」
「それで、なんなんだ? そのバターってのは?」
ヨサックが不敵に笑うと冷蔵庫からバターを少しだけ取り出して、テーブルに乗せる。
「これがバターだ!」
「なあ、これはヨサックが作ったのか?」
「そ、それは……」
「違うのよ。それを早く話せばいいのにヨサックてば」
「まあ、とりあえず少しずつだが、味見をしてくれ」
「「「「「分かった」」」」」
順番に言われた通りに少しずつ味見する。
「なあ、これって元は牛乳じゃないのか?」
「お! 分かるか?」
「ああ、どことなくチーズに近い気がしたんでな」
「だけど、チーズはこんなに溶けないぞ?」
「だよな」
「なあ、ヨサック。今日の話はこれのことじゃないのか?」
「ふふふ」
言われたヨサックがまた、冷蔵庫に近づくと生クリームを取り出し、冷凍庫からアイスを取り出す。
「今度は二つか」
「一つは柔らかそうだが、もう一つは固そうだな」
「それより味見だろ。早く食わせてくれ!」
「ふふふ、驚けよ?」
それぞれの皿に生クリームとアイスを乗せる。
「ほら、食ってみろ」
「もう、ヨサックは……ケイン君に言いつけちゃおうかな?」
ヨサックが一瞬ビクリとするのを男達は見逃さなかった。
「やっぱりな。ヨサックだけじゃこれだけの物は作れないはずだ」
「ああ、もういいから食って感想を聞かせてくれ!」
「分かったよ」
男達がそれぞれの皿の上に乗せられた生クリームとアイスを口の中に入れる。
「うん、うまいな。まさか、これも牛乳からなのか?」
「ああ、その通りだ」
「そうか。で、ヨサックはなにをしたい? なんで俺たちは呼ばれた?」
「実はな、これを作ったやつがな昨日、チーズの買い付けに来たんだ」
「まあ、チーズの買い付けはそんなに珍しくはないだろ」
「そうだが、そいつは牛乳も大量に買ってくれたんだ」
「へ~そりゃいいな。ぜひ、ウチからも買っていって欲しいもんだ」
「本当か? そりゃ、ケインも喜ぶ!」
「お、おお、それはいいが。で、ケインってのがその教えてくれたやつの名前なのか?」
「ああ、そうだ。でな、そのケインが言うにはだ。もし許されるならば売ってくれるだけの牛乳とチーズを買いたいと言われている」
「いい話じゃないか。そんなの俺達に話さなくてもヨサックだけでやればいい話じゃないか。なんで俺達に話すんだ?」
「ふぅ~」
ヨサックは一旦嘆息し皆を見渡す。
「なあ、そのアイスは冷たかっただろう?」
「ああ、そう言われればそうだな。それが?」
「お前達は不思議に思わないのか?」
「いや、だってお前は氷魔法を少しだけど使えるだろう。なにも不思議なことじゃないぞ」
「ああ、そうだった……」
「で、ヨサックはなにが言いたいんだ?」
ヨサックがなんとか気を取り直して話を続ける。
「今は俺の他に氷魔法を使えるやつは少ないよな。いても王都まで保たないし」
「ああ、そうだな。だから、行商はヨサックに頼んでいるんだろ」
「そうだな。だがな、誰でも行けると言ったらどうする? 行きたいか?」
「いや、ヨサックが行ってくれるのなら、俺はいいかな」
「あ、俺も!」
「俺もだ」
「なんだよ! 俺に押し付けるのかよ!」
「いや、だってお前ほど氷魔法は使えないからな。行商自体が無理だから。な?」
「「「「ああ」」」」
「だから、それが出来るようになるんだって」
「いや、無理だって」
「出来る!」
「無理!」
しばらくヨサックと男達で言い合いが続いていたが、ヨサックが嘆息すると椅子から立ち上がり、男達を呼ぶ。
「なんだよ。話は終わりじゃないのか?」
「いいから、そこの冷蔵庫の扉を開けてみろ」
「冷蔵庫? この箱のことか?」
「ああ、その扉を開けてくれ」
「開ければいいんだな。ったく……」
男が冷蔵庫の扉を開けるが、そのまま動かなくなる。
「おい、どうした? なにがあった? これは? 冷たい……」
「そうだよ、冷たいんだよ! おい! ヨサックどういうことだよ!」
「ヨサック、お前魔法を付与出来たのか?」
「ばか! 俺がそんなこと出来る訳ないだろ」
「じゃあ、これはなんなんだ?」
「だから、これが俺以外でも行商が出来る様になる道具だ」
しばらく男達が冷蔵庫の扉を開けたままぼーっとしていると、ハンナが冷蔵庫の扉を閉める。
「中の物が悪くなるからね」
そう言って、ゆっくりと冷蔵庫の扉を閉めると男達をテーブルに戻す。
「ヨサックの言っていることは分かった。あれと似たような魔道具があるんだろ? で、それを使えば誰でも今まで以上のチーズを王都に売りに行けるようになると、そう言いたいのか?」
「まあ、半分……いや、三分の一当たりってとこかな」
「残りはなんだ?」
「そのケインがな、王都でチーズの需要を高めたようでな、ここまで買い付けに来るのが増えるかもと言ってたな」
「それはいいことじゃないか。なにが問題なんだ?」
「だから、チーズが売れる物として、認識されたら買い占めとかあるだろ? だから、ちょっと質が良くない連中も来るかもしれないってのが一つ」
「それは嫌だな。他は?」
「村長が、販売量を増やすのを嫌がっている」
「ハァ~村長らしいな。それでもう終わりか?」
「ケインが牛乳を買い取りたいと言って来た」
「いい話じゃないか。それはうちでもいいのか?」
「ああ、増える分には問題ないだろうな」
「それで、他にもあるのか?」
「ああ、お前達これがなにか分かるか?」
ヨサックが携帯電話をテーブルの上に出し男達に尋ねる。
「なんだこれ?」
「まあ、そうだよな」
「なんだ、はっきりしないな。ヨサックはどうしたいんだ?」
「俺はこの村を出て移住しようかと考えている」
「「「「「はぁ?」」」」」
「もう、移住先も案内してもらった」
「「「「「はぁ?」」」」」
「土地も十分広い場所を無償で提供してくれるとも言ってくれた」
「「「「「はぁ?」」」」」
「移住が嫌なら通勤でもいいと言ってくれた」
「「「「「はぁ?」」」」」
「なんだよ、お前らさっきから『はぁ』しか言わないな」
「いや、そりゃ言うだろ! お前、騙されているんじゃないのか?」
「騙されているってなんだよ。お前らも食ったろ? もし移住したら乳搾り以外にもバターとか乳製品の仕事もして欲しいって言われてる」
「お前、牛の世話だってキツいのに、そんなに幾つも仕事は出来ないだろ?」
「いや、それがな移住先では車ってのが、いろんな作業で使われていてな、そんなにきつくはならないだろうって言われてるんだ」
「だめだ、お前は騙されているんだ! ヨサック! 目を覚ますんだ!」
「ああ、もう分かったよ。なら、お前らにも経験してもらうからな!」
「「「「「なにをだよ!」」」」」
「こういうことだよ。もしもしケインか? 今から、ちょっとこっちに来てくれないかな? そうか、分かった。ああ、待ってる。ああ、頼むな」
「ヨサック、なんで、そんなのを持っていきなり独り言なんて……お前、大丈夫か?」
するといきなりリビングの空間に穴が開いたと思ったら、少年と犬が出てきた。
「ヨサックさん、来たけどなに?」
「おう、ケイン。ちょっとこいつらにもお前の街を見せてやりたいんだが頼めるか?」
「ああ、前に話していた一緒に来てくれるかもって人?」
「そうだ。頼めるか?」
「いいよ。じゃあ、行こうか」
ドラゴニュータウンにケインがゲートを繋ぎ潜るように促すが、なんだか男達の様子がおかしい。
「ヨサックさん、もう面倒だからこっちに押し込んでもらえるかな?」
「ああ、いいぞ。そおれ!」
「人が集まるのなら、これも必要でしょ。俺からの差し入れ。あ、それとバターで野菜とか炒めるだけでも美味しいよ。試してみてね。じゃあね」
ケインはそれだけ言うと、穴の中に戻っていく。
そのケインが置いていったのは数本の酒瓶。もちろん中身入り。
「なんだったんだ? しかもこんなに……」
「ふふふ、まあいいじゃない。ほら、呼んでくるんでしょ。いってらっしゃい。私はケイン君の言うように試作してみるわ」
「おう。じゃあ、ちょっと行ってくるな」
ヨサックがケインとの話に賛同してくれそうな友人達を呼びに出かけたので、ハンナはケインの言うようにバターを使って、野菜や肉を炒めてみることにする。
「まずは、簡単に野菜からにしようかな。お肉は来てからでいいよね、時間おくと固くなっちゃうし。よし、始めよう!」
しばらくして、ヨサックが五人の同年代の男を連れて帰ってくる。
「ハンナ、戻ったぞ。ん? なんかいい匂いがするな」
「お! 本当だ。いい匂いだな」
「ふんふん、嗅いだことがあるようなないような……」
「いいから、早く入ってくれ。後が支えてるだろ」
「ああ、すまんな」
テーブルに皆が着くと一人の男が尋ねる。
「ところで、俺達を呼んだのはどういう訳だ?」
「そうだよ、なにか話があるとしか聞いてないぞ」
「ああ、そうだ。実はな……」
「ヨサック、話をする前にこれを食べてもらって。ケインの言うようにバターを使って見たのよ。さあ、召し上がれ」
「おう、これか。さっきからいい匂いがして気にはなっていたんだ」
「ほう、うん。いい匂いだな」
「普通に野菜を炒めただけのようだが、なにを使ったんだ?」
「これはね「バターだよ」もう、ヨサック!」
「「「「「バター?」」」」」
「そう、バターだ」
「まあ、なにか分からんがうまそうだし食べれば分かるだろ。どら」
皿の上の野菜炒めを口に入れ黙り込む。
「どうした? なにか言えよ!」
「そうだぞ」
「もしかして、お口に合わなかったのかしら?」
「ハンナの料理が口に合わないとかないだろ。ほら、なんか言えよ」
「う……」
「「「「「「う?」」」」」」
「うまい!」
「「「「「うまいのかよ!」」」」」
「もう。ほら、皆も食べてみて」
「ああ、ご馳走になろう」
「そうだな」
『パクッ』
その場にいる皆がほぼ同時に口に入れる。
「「「「「……」」」」」
皆が皆の顔を見渡す。
「「「「「うまい!」」」」」
「なんでだ? これはここで採れた野菜だろ?」
「そうよ。いつも通りのお野菜よ」
「なら、なんでこんなに味が……」
「それはね「バターだ!」もう、ヨサック!」
「そういや、さっきもそんなことを言ってたな」
「それで、なんなんだ? そのバターってのは?」
ヨサックが不敵に笑うと冷蔵庫からバターを少しだけ取り出して、テーブルに乗せる。
「これがバターだ!」
「なあ、これはヨサックが作ったのか?」
「そ、それは……」
「違うのよ。それを早く話せばいいのにヨサックてば」
「まあ、とりあえず少しずつだが、味見をしてくれ」
「「「「「分かった」」」」」
順番に言われた通りに少しずつ味見する。
「なあ、これって元は牛乳じゃないのか?」
「お! 分かるか?」
「ああ、どことなくチーズに近い気がしたんでな」
「だけど、チーズはこんなに溶けないぞ?」
「だよな」
「なあ、ヨサック。今日の話はこれのことじゃないのか?」
「ふふふ」
言われたヨサックがまた、冷蔵庫に近づくと生クリームを取り出し、冷凍庫からアイスを取り出す。
「今度は二つか」
「一つは柔らかそうだが、もう一つは固そうだな」
「それより味見だろ。早く食わせてくれ!」
「ふふふ、驚けよ?」
それぞれの皿に生クリームとアイスを乗せる。
「ほら、食ってみろ」
「もう、ヨサックは……ケイン君に言いつけちゃおうかな?」
ヨサックが一瞬ビクリとするのを男達は見逃さなかった。
「やっぱりな。ヨサックだけじゃこれだけの物は作れないはずだ」
「ああ、もういいから食って感想を聞かせてくれ!」
「分かったよ」
男達がそれぞれの皿の上に乗せられた生クリームとアイスを口の中に入れる。
「うん、うまいな。まさか、これも牛乳からなのか?」
「ああ、その通りだ」
「そうか。で、ヨサックはなにをしたい? なんで俺たちは呼ばれた?」
「実はな、これを作ったやつがな昨日、チーズの買い付けに来たんだ」
「まあ、チーズの買い付けはそんなに珍しくはないだろ」
「そうだが、そいつは牛乳も大量に買ってくれたんだ」
「へ~そりゃいいな。ぜひ、ウチからも買っていって欲しいもんだ」
「本当か? そりゃ、ケインも喜ぶ!」
「お、おお、それはいいが。で、ケインってのがその教えてくれたやつの名前なのか?」
「ああ、そうだ。でな、そのケインが言うにはだ。もし許されるならば売ってくれるだけの牛乳とチーズを買いたいと言われている」
「いい話じゃないか。そんなの俺達に話さなくてもヨサックだけでやればいい話じゃないか。なんで俺達に話すんだ?」
「ふぅ~」
ヨサックは一旦嘆息し皆を見渡す。
「なあ、そのアイスは冷たかっただろう?」
「ああ、そう言われればそうだな。それが?」
「お前達は不思議に思わないのか?」
「いや、だってお前は氷魔法を少しだけど使えるだろう。なにも不思議なことじゃないぞ」
「ああ、そうだった……」
「で、ヨサックはなにが言いたいんだ?」
ヨサックがなんとか気を取り直して話を続ける。
「今は俺の他に氷魔法を使えるやつは少ないよな。いても王都まで保たないし」
「ああ、そうだな。だから、行商はヨサックに頼んでいるんだろ」
「そうだな。だがな、誰でも行けると言ったらどうする? 行きたいか?」
「いや、ヨサックが行ってくれるのなら、俺はいいかな」
「あ、俺も!」
「俺もだ」
「なんだよ! 俺に押し付けるのかよ!」
「いや、だってお前ほど氷魔法は使えないからな。行商自体が無理だから。な?」
「「「「ああ」」」」
「だから、それが出来るようになるんだって」
「いや、無理だって」
「出来る!」
「無理!」
しばらくヨサックと男達で言い合いが続いていたが、ヨサックが嘆息すると椅子から立ち上がり、男達を呼ぶ。
「なんだよ。話は終わりじゃないのか?」
「いいから、そこの冷蔵庫の扉を開けてみろ」
「冷蔵庫? この箱のことか?」
「ああ、その扉を開けてくれ」
「開ければいいんだな。ったく……」
男が冷蔵庫の扉を開けるが、そのまま動かなくなる。
「おい、どうした? なにがあった? これは? 冷たい……」
「そうだよ、冷たいんだよ! おい! ヨサックどういうことだよ!」
「ヨサック、お前魔法を付与出来たのか?」
「ばか! 俺がそんなこと出来る訳ないだろ」
「じゃあ、これはなんなんだ?」
「だから、これが俺以外でも行商が出来る様になる道具だ」
しばらく男達が冷蔵庫の扉を開けたままぼーっとしていると、ハンナが冷蔵庫の扉を閉める。
「中の物が悪くなるからね」
そう言って、ゆっくりと冷蔵庫の扉を閉めると男達をテーブルに戻す。
「ヨサックの言っていることは分かった。あれと似たような魔道具があるんだろ? で、それを使えば誰でも今まで以上のチーズを王都に売りに行けるようになると、そう言いたいのか?」
「まあ、半分……いや、三分の一当たりってとこかな」
「残りはなんだ?」
「そのケインがな、王都でチーズの需要を高めたようでな、ここまで買い付けに来るのが増えるかもと言ってたな」
「それはいいことじゃないか。なにが問題なんだ?」
「だから、チーズが売れる物として、認識されたら買い占めとかあるだろ? だから、ちょっと質が良くない連中も来るかもしれないってのが一つ」
「それは嫌だな。他は?」
「村長が、販売量を増やすのを嫌がっている」
「ハァ~村長らしいな。それでもう終わりか?」
「ケインが牛乳を買い取りたいと言って来た」
「いい話じゃないか。それはうちでもいいのか?」
「ああ、増える分には問題ないだろうな」
「それで、他にもあるのか?」
「ああ、お前達これがなにか分かるか?」
ヨサックが携帯電話をテーブルの上に出し男達に尋ねる。
「なんだこれ?」
「まあ、そうだよな」
「なんだ、はっきりしないな。ヨサックはどうしたいんだ?」
「俺はこの村を出て移住しようかと考えている」
「「「「「はぁ?」」」」」
「もう、移住先も案内してもらった」
「「「「「はぁ?」」」」」
「土地も十分広い場所を無償で提供してくれるとも言ってくれた」
「「「「「はぁ?」」」」」
「移住が嫌なら通勤でもいいと言ってくれた」
「「「「「はぁ?」」」」」
「なんだよ、お前らさっきから『はぁ』しか言わないな」
「いや、そりゃ言うだろ! お前、騙されているんじゃないのか?」
「騙されているってなんだよ。お前らも食ったろ? もし移住したら乳搾り以外にもバターとか乳製品の仕事もして欲しいって言われてる」
「お前、牛の世話だってキツいのに、そんなに幾つも仕事は出来ないだろ?」
「いや、それがな移住先では車ってのが、いろんな作業で使われていてな、そんなにきつくはならないだろうって言われてるんだ」
「だめだ、お前は騙されているんだ! ヨサック! 目を覚ますんだ!」
「ああ、もう分かったよ。なら、お前らにも経験してもらうからな!」
「「「「「なにをだよ!」」」」」
「こういうことだよ。もしもしケインか? 今から、ちょっとこっちに来てくれないかな? そうか、分かった。ああ、待ってる。ああ、頼むな」
「ヨサック、なんで、そんなのを持っていきなり独り言なんて……お前、大丈夫か?」
するといきなりリビングの空間に穴が開いたと思ったら、少年と犬が出てきた。
「ヨサックさん、来たけどなに?」
「おう、ケイン。ちょっとこいつらにもお前の街を見せてやりたいんだが頼めるか?」
「ああ、前に話していた一緒に来てくれるかもって人?」
「そうだ。頼めるか?」
「いいよ。じゃあ、行こうか」
ドラゴニュータウンにケインがゲートを繋ぎ潜るように促すが、なんだか男達の様子がおかしい。
「ヨサックさん、もう面倒だからこっちに押し込んでもらえるかな?」
「ああ、いいぞ。そおれ!」
0
お気に入りに追加
4,886
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
下級兵士は断罪された追放令嬢を護送する。
やすぴこ
ファンタジー
「ジョセフィーヌ!! 貴様を断罪する!!」
王立学園で行われたプロムナード開催式の場で、公爵令嬢ジョセフィーヌは婚約者から婚約破棄と共に数々の罪を断罪される。
愛していた者からの慈悲無き宣告、親しかった者からの嫌悪、信じていた者からの侮蔑。
弁解の機会も与えられず、その場で悪名高い国外れの修道院送りが決定した。
このお話はそんな事情で王都を追放された悪役令嬢の素性を知らぬまま、修道院まで護送する下級兵士の恋物語である。
この度なろう、アルファ、カクヨムで同時完結しました。
(なろう版だけ諸事情で18話と19話が一本となっておりますが、内容は同じです)
2/7 最終章 外伝『旅する母のラプソディ』を投稿する為、完結解除しました。
2/9 『旅する母のラプソディ』完結しました。アルファポリスオンリーの外伝を近日中にアップします。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。