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◆納得の試作でした

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『足らね~』
「そうだな。なんで、こんな少しだけ作るんだ? いつもならば~っと大量に作りそうだがな」
「もう、試しに作っただけなんだから少ないのは当然でしょ!」
「でもよ~」
ガンツさん達が文句を言うので、今度は少し大きめのバターとアイスクリーム、そして生クリームの製造機を魔道具として作る。

「ガンツさんも手伝ってよ」
「おう、任せろ」
『俺は?』
「ジャマしないでね」
『は~い……』

まずは生クリーム製造機を試作品よりも大きく、それでもだいたい二倍くらいかな。
ガンツさんにも横で同じ物を作ってもらう。
マサオは暇そうだったので、脱脂乳を飲ませておく。

次にバター製造機を作る。
ステンレス製のタンクに生クリームの投入口を設け、激しく攪拌させるようにする。
こうして見るとドラム式洗濯機のように見えなくもない。
攪拌して出来た固形物を練り合わせる機械を追加して、後は冷却すればバターとしては完成かな。
製品として出すなら、成型まで工程になるんだろうけど今は少し多めに作るだけだからこれでよしでしょ。

アイスの製造機は冷やしながら混ぜ合わせればいいから、底を半球にしたステンレス製の器に対し、攪拌する羽根を付けたシャフトを上部に取り付ければ完成だ。

ガンツさんも作り終わったようだ。

「ケイン、これはさっきのとは違って見えるけどいいのか?」
「さっきのはお試しで、これは……試作品?」
「どう違うんじゃ?」
「え~と、さっきのはちゃんと出来るかどうかを試しただけで、今度のは魔道具として出来るかどうかかな」
「ふ~ん、まあええ。ほれ、動作確認するんじゃろ?」
「そうだね、じゃあまずは生クリームから、ポチッとな」

生クリーム製造機が勢いよく動き出すと、さっきと同じように生クリームと脱脂乳が据え付けられたそれぞれのタンクに溜まっていく。

その生クリームをバター製造機の中に入れ、スイッチを入れる。
「ポチッとな。マサオ、固まってきたら教えてね」
『え~黙って見てるだけ?』
「お願いね」
「もう少し優しくしてやれ」
「うん、後でね」

アイス製造機の中に牛乳を入れようと思ったが、このままではあまり美味しくはないかなとインベントリからオレンジの果汁と蜂蜜と砂糖を取り出すと、ステンレスの器に入れ、牛乳を投入する。
「これで固まるまで撹拌すればOK! ポチッとな」
アイス製造機のステンレス製の器が外側からゆっくり冷やされながら、中心を羽根をつけたシャフトがゆっくりと回転し攪拌する。

「本当に美味いんじゃろうな?」
「さあ?」
「さあって……」
「まあ、失敗したら失敗したで、うまく出来る人に任せればいいしね」
「軽いのぉ」

それぞれの魔道具には投入口に「除菌」の魔道具をつけてあるから雑菌は心配ないと思うけど、まあ、このメンバーなら大丈夫か。

しばらくして、バターの方が固形物になったとマサオが教えてくれたので、今度は別の魔道具に固形物を入れて練り合わせる。
これで、バターが滑らかになったら、出来上がりだ。

次にアイスの方がだんだんと固まって来たので、撹拌を止めてスプーンで掬ってみる。
「うん、うまい!」
「どれ?」
『俺も!』
「あ! 待って! ちゃんと出すから、そのまま手を入れない! 雑菌がうつるでしょ!」
「……」
『……』

まずは専用に作った保管用のステンレス製の器に移した後にガンツさん達に作っておいたアイスクリームディッシャーで皿に盛って渡す。

「なんじゃ、ちっこいの」
『一口分もない……』
「もう、分かったよ」
追加でそれぞれの皿に二回分掬って渡す。

「……」
『……』
それでも不満な顔をするので、食べすぎるとお腹を下すから、今日はそれだけと言い聞かせる。
ガンツさん達が食べている間にバターもステンレス製の保管用の器に移しインベントリに収納する。生クリームと脱脂乳もインベントリに収納する。
これで食べられる心配はなくなった。

「じゃあ、片付けるか」
そう思い振り返るといつまでもお皿を舐めているガンツさんとマサオの姿がそこにあった。
「ちょっと、意地汚いよ」
「でもよ~」
『もう少しだめ?』
「もうすぐ夕飯だって分かってる?」
「そう言わずに……これは溶けるから、腹には溜まらんだろ? だから、夕飯も食えるはずじゃ!」
『そうだよ! ガンツのいう通り! ほら!』
なんだ、このどっかで聞いたことがあるような『0カロリー理論』は。
「いいから、もう片付けるんだから、お皿を渡して!」
「……」
『……』
「じゃ、いいよ。その代わり次にアイスやお菓子はその洗ってないお皿を使うからね」
そう言うと、サッと二人ともお皿を差し出してくる。

「最初っからそうすればいいのに……」
使った魔道具とお皿にまとめて『クリーン』をかけるとインベントリにしまう。

「じゃあ、ガンツさんにはお裾分けね」
ガンツさんに買ったチーズを一つ渡す。
「なんじゃ、一つか……」
「なに? 文句言うのなら返して!」
「いや、いい。これでいい。ありがとうな」
そう言って、ガンツさんが帰っていく。
「じゃ、俺たちも帰るか」
『……』
「そんなに気に入ったのなら、今日のデザートに出そうか?」
『本当か?』
「でも、皆に食べられてしまうかもよ?」
『……アイス以外でお願いします』
「ふふふ、分かったよ」
マサオと一緒にゲートを潜り自宅へと戻る。
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