259 / 468
連載
◆忘れていました
しおりを挟む
ガンツさんに後を任せて、母さんを迎えにアーロンさんの家の前に出る。
「まだいるのかな?」
そう思いながら、アーロンさんの家の呼び鈴を押すと『ピンポ~ン』と音が鳴り、家の中から『は~い』と返事がある。
玄関扉が開き、中からレティさんが出てくる。
「あら、ケイン君。忘れ物?」
「いえ、そうじゃなくて母さんを迎えに来たんですけど」
「あら、そうだったの。マギーさんなら、まだいるわよ」
「本当に? もう赤ちゃんの世話も忘れて……すみません、失礼します」
「いいわよ。さあ、どうぞ」
レティさんに中に入れてもらいリビングへと向かうと母さんが寝ていた。
「母さん……」
「ふふふ、久々のおしゃべりだったみたいではしゃぎ過ぎたみたいね。ごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ。長い間お世話になってしまったみたいで。ありがとうございました」
そうレティさんにお礼を言って、母さんを起こす。
「ほら、母さん。起きて! 帰るよ、ほら」
「ん……う~ん、あら、ケイン。どうしたの?」
「もう、どうしたのじゃないでしょ。ほら、帰るから」
「あら、そうなの? 来たばかりじゃないの?」
「もう、夕暮れだよ。双子もお腹を減らしていると思うよ」
「あら、それは大変ね。急いで帰りましょう」
母さんはそう言うと、レティさんに挨拶とお礼を済ませると俺に言う。
「ほら、ケイン! なにをぼうっとしているの! ほら、早く繋ぎなさいよ!」
「え~俺のせいなの? もう、いいけどさ」
ゲートを家のリビングに繋ぐと母さんを潜らせる。そしてセニアカーを収納すると、もう一度レティさんにお礼を言ってゲートを潜る。
アーロンさんはまだ、宙を見つめたままだったのが気になるけど、今はいいか。
家のリビングに母さんを案内し、俺もソファに座りゆっくりする。
「何か忘れているような気がする……まあ、後で思い出すかな」
「あら? ケイン、ヘレンさんは連れて帰らなかったの?」
「ヘレンさん?」
「なに忘れてきたの?」
「え?」
「もう、ケインがレティさんのところに連れて来たんでしょ。どうしたの?」
「ああ、それだ! ありがとう母さん。なにか忘れていると思ったら、ヘレンさんだったか。じゃ、迎えに行ってくるね」
「なら、ついでにリーサさん達もお願いね」
「分かったよ」
なら先にリーサさんの方に行こうかなと保育所にゲートを繋ぎ出ていく。
保育所にはまだ、子供達がいたのでリーサさんを探すと、子供達の集団の中にいるのを見つけた。
「リーサさん!」
「あら、ケイン。迎えに来てくれたのか」
「そう、まだかかるのかな?」
「そうだな、もう少しだな」
「じゃあ、先にメアリーを迎えに行くね」
「分かった。助かる」
リーサさんにそう伝えると学校の校長室へと繋いで潜る。
ゲートを潜るとまだ、話し合いの途中らしくガンボさんやカーティスさん達の視線が集中する。
「ケイン、来るなとは言わんがな。急にゲートを繋ぐのはやめてもらえるとありがたいのだがな」
「あ、ごめんね。今度から気付いたらそうするね」
「気付いたらか。まあええ、それで用事は?」
「うん、メアリーのお迎えに。まだ仕事中?」
「まあ、そろそろいい時間か。メアリーからの話はいいか?」
「はい。私からはありません」
「分かった。なら、また明日お願いしよう」
「はい」
「じゃ連れて行きますね。行こうか」
ゲートをアーロンさんの家の前に繋ぐとメアリーと一緒に潜る。
またアーロンさんの家のチャイムを鳴らすと、返事の前にヘレンさんが飛び出して来る。
「やっと来よったか!」
「ヘレンさん、どこにいたの?」
「あ、ああ、ワシも一緒にツイな……居眠りしとったんじゃよ」
「もう、それなら俺のせいじゃないじゃない」
「じゃ、じゃがワシを忘れたのは事実じゃろ!」
「はいはい、ごめんなさい」
「なんじゃ、その気のなさは」
「もういい、レティさんにちゃんとお礼は言ったの?」
「あら、構いませんよ」
玄関からレティさんが姿を表すとそう言ってくれた。
「ほら、ヘレンさんも」
「済まなかった」
「いえ、構いませんよ。それと正式に私とこの子の診察をお願いしていいかしら」
「それは構いません」
「なぜ、ケインが了解するのじゃ」
「え? 断るの?」
「いや、断りはせんが……」
「なら、決まりね。レティさん、ちゃんとこちらに伺わせるから、安心してね」
「ええ、頼みますねケイン君」
「色々お騒がせしました。これで失礼しますね」
もうこれで忘れ物はないよな。ふと足元を見るとマサオもちゃんといる。うん、忘れ物はない。
アーロンさんの家から保育所まで歩いて向かう。
「なんじゃ、ケインのアレでビュ~ッと行かんのか?」
「近いんだしいいじゃない」
「そうよ、ヘレンさん。たまには歩かないと」
「若者が年寄りをいじめるのか……」
「いじめるって、そんな……」
「メアリー、いいから気にしないで」
「なんじゃ、ケイン。ワシを労らないのか?」
「さっきまで寝てたくせに!」
「な、なんじゃ。それは今は関係ないじゃろ」
「まあ、いいから。ほら行くよ」
ぶつくさ言うヘレンさんを宥めすかして保育所まで連れて行くとリーサさんもちょうど終わったらしくデイヴと一緒に待っていた。
「まだいるのかな?」
そう思いながら、アーロンさんの家の呼び鈴を押すと『ピンポ~ン』と音が鳴り、家の中から『は~い』と返事がある。
玄関扉が開き、中からレティさんが出てくる。
「あら、ケイン君。忘れ物?」
「いえ、そうじゃなくて母さんを迎えに来たんですけど」
「あら、そうだったの。マギーさんなら、まだいるわよ」
「本当に? もう赤ちゃんの世話も忘れて……すみません、失礼します」
「いいわよ。さあ、どうぞ」
レティさんに中に入れてもらいリビングへと向かうと母さんが寝ていた。
「母さん……」
「ふふふ、久々のおしゃべりだったみたいではしゃぎ過ぎたみたいね。ごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ。長い間お世話になってしまったみたいで。ありがとうございました」
そうレティさんにお礼を言って、母さんを起こす。
「ほら、母さん。起きて! 帰るよ、ほら」
「ん……う~ん、あら、ケイン。どうしたの?」
「もう、どうしたのじゃないでしょ。ほら、帰るから」
「あら、そうなの? 来たばかりじゃないの?」
「もう、夕暮れだよ。双子もお腹を減らしていると思うよ」
「あら、それは大変ね。急いで帰りましょう」
母さんはそう言うと、レティさんに挨拶とお礼を済ませると俺に言う。
「ほら、ケイン! なにをぼうっとしているの! ほら、早く繋ぎなさいよ!」
「え~俺のせいなの? もう、いいけどさ」
ゲートを家のリビングに繋ぐと母さんを潜らせる。そしてセニアカーを収納すると、もう一度レティさんにお礼を言ってゲートを潜る。
アーロンさんはまだ、宙を見つめたままだったのが気になるけど、今はいいか。
家のリビングに母さんを案内し、俺もソファに座りゆっくりする。
「何か忘れているような気がする……まあ、後で思い出すかな」
「あら? ケイン、ヘレンさんは連れて帰らなかったの?」
「ヘレンさん?」
「なに忘れてきたの?」
「え?」
「もう、ケインがレティさんのところに連れて来たんでしょ。どうしたの?」
「ああ、それだ! ありがとう母さん。なにか忘れていると思ったら、ヘレンさんだったか。じゃ、迎えに行ってくるね」
「なら、ついでにリーサさん達もお願いね」
「分かったよ」
なら先にリーサさんの方に行こうかなと保育所にゲートを繋ぎ出ていく。
保育所にはまだ、子供達がいたのでリーサさんを探すと、子供達の集団の中にいるのを見つけた。
「リーサさん!」
「あら、ケイン。迎えに来てくれたのか」
「そう、まだかかるのかな?」
「そうだな、もう少しだな」
「じゃあ、先にメアリーを迎えに行くね」
「分かった。助かる」
リーサさんにそう伝えると学校の校長室へと繋いで潜る。
ゲートを潜るとまだ、話し合いの途中らしくガンボさんやカーティスさん達の視線が集中する。
「ケイン、来るなとは言わんがな。急にゲートを繋ぐのはやめてもらえるとありがたいのだがな」
「あ、ごめんね。今度から気付いたらそうするね」
「気付いたらか。まあええ、それで用事は?」
「うん、メアリーのお迎えに。まだ仕事中?」
「まあ、そろそろいい時間か。メアリーからの話はいいか?」
「はい。私からはありません」
「分かった。なら、また明日お願いしよう」
「はい」
「じゃ連れて行きますね。行こうか」
ゲートをアーロンさんの家の前に繋ぐとメアリーと一緒に潜る。
またアーロンさんの家のチャイムを鳴らすと、返事の前にヘレンさんが飛び出して来る。
「やっと来よったか!」
「ヘレンさん、どこにいたの?」
「あ、ああ、ワシも一緒にツイな……居眠りしとったんじゃよ」
「もう、それなら俺のせいじゃないじゃない」
「じゃ、じゃがワシを忘れたのは事実じゃろ!」
「はいはい、ごめんなさい」
「なんじゃ、その気のなさは」
「もういい、レティさんにちゃんとお礼は言ったの?」
「あら、構いませんよ」
玄関からレティさんが姿を表すとそう言ってくれた。
「ほら、ヘレンさんも」
「済まなかった」
「いえ、構いませんよ。それと正式に私とこの子の診察をお願いしていいかしら」
「それは構いません」
「なぜ、ケインが了解するのじゃ」
「え? 断るの?」
「いや、断りはせんが……」
「なら、決まりね。レティさん、ちゃんとこちらに伺わせるから、安心してね」
「ええ、頼みますねケイン君」
「色々お騒がせしました。これで失礼しますね」
もうこれで忘れ物はないよな。ふと足元を見るとマサオもちゃんといる。うん、忘れ物はない。
アーロンさんの家から保育所まで歩いて向かう。
「なんじゃ、ケインのアレでビュ~ッと行かんのか?」
「近いんだしいいじゃない」
「そうよ、ヘレンさん。たまには歩かないと」
「若者が年寄りをいじめるのか……」
「いじめるって、そんな……」
「メアリー、いいから気にしないで」
「なんじゃ、ケイン。ワシを労らないのか?」
「さっきまで寝てたくせに!」
「な、なんじゃ。それは今は関係ないじゃろ」
「まあ、いいから。ほら行くよ」
ぶつくさ言うヘレンさんを宥めすかして保育所まで連れて行くとリーサさんもちょうど終わったらしくデイヴと一緒に待っていた。
0
お気に入りに追加
4,886
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
下級兵士は断罪された追放令嬢を護送する。
やすぴこ
ファンタジー
「ジョセフィーヌ!! 貴様を断罪する!!」
王立学園で行われたプロムナード開催式の場で、公爵令嬢ジョセフィーヌは婚約者から婚約破棄と共に数々の罪を断罪される。
愛していた者からの慈悲無き宣告、親しかった者からの嫌悪、信じていた者からの侮蔑。
弁解の機会も与えられず、その場で悪名高い国外れの修道院送りが決定した。
このお話はそんな事情で王都を追放された悪役令嬢の素性を知らぬまま、修道院まで護送する下級兵士の恋物語である。
この度なろう、アルファ、カクヨムで同時完結しました。
(なろう版だけ諸事情で18話と19話が一本となっておりますが、内容は同じです)
2/7 最終章 外伝『旅する母のラプソディ』を投稿する為、完結解除しました。
2/9 『旅する母のラプソディ』完結しました。アルファポリスオンリーの外伝を近日中にアップします。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。