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◆ヤマでした
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「デュークよ、そこまで言うのか?」
「ええ、言わせてもらいますよ。私が罰せられるのを覚悟して、提言したにも関わらずに、いい機会だと捉えたのはハロルド王ですよね」
「ああ、だが余がそれを認めるとでも?」
「今度はそうきましたか。しょうがないですね、出来れば出したくなかったのですが……」
「な、なにを出すというのだ。まさか……武具の類は持ち込めないはずだ」
「そんな物ではないです。セバス」
「はい。旦那様、これを」
「ありがとう。ハロルド王、これをご覧になっていただけますか?」
デュークがタブレットを起動すると、ある動画が流される。
そこにはハロルド王とデュークが映っており、昨日の会談のようだ。
~タブレット上で~
「まあええ、今夜の襲撃の件は分かった。バカどものことは任せてもらおう。それと其方には責任が及ばないようには配慮しよう」
「ありがとうございます」
~再びハロルド王~
「どうです? 確かに言ってますよね」
「あ、ああ、だが、これが余であると誰が保証する? 当然だが、余は否定するぞ」
「どこからどう見てもハロルド王なのですがね~そこまで、貫くのであればこちらも引くに引けなくなりますが」
「ま、待て! それはどういう意味だ。なにをする気でいる」
「ハロルド王が約定を違えるのであれば、私もそれに従う道理はないと思いますがね」
「なにを言うか。余は王で、其方は王国に仕える貴族であろう。なら、余の言うことに従うべきではないのか」
「そう、仰いますが、なにも一から十まで従う必要はないと思うのですよ。そんなに『はい』しか言わない部下がいいならば、木偶でも並べておけばいいでしょう。それに王国に仕えるのであって、王に仕えるのではないと思いますが」
「だが、余は王国の代表であろう。ならば、それに従うのが道理だ」
「では、頭が違うことを言い出したても手足は黙って従えと言うのですか?」
「ああ、そうだ。その通りだ。だから、余の言うことに従うのだ。いいな、これは命令だ」
「そうですか、では命令だと言うのであれば、口ではなくちゃんとした書面でいただきたいのですが」
「ふん、それくらいならば、すぐに準備させよう。おい!」
「はい、ここに」
側に控えていた執事が、一枚の書面をハロルド王の前に出す。
ハロルド王が書面に書かれている内容を確認すると、そこには『港の権利をシャルディーア伯に全て一任する』と書かれていた。
「なんだ、これは内容が違うぞ。すぐに作り直せ!」
「いえ、これで合っております。書面にサインをお願いします」
「なにを言うか。おい、こいつをつまみ出せ!」
すると部屋の扉が開かれ、男がツカツカと中へ入ってくる。
「父上、いやハロルド王よ。あなたは少し疲れているようですね。しばらくの間、静養してはどうでしょうか? そうですね、今なら避暑も兼ねて涼しい山など如何でしょうか」
「な、なにを言うか! ハリソン、お前はまだ、王太子の身であろう」
「そうですね、今は王太子として、国に仕えております。ですが、今のハロルド王の発言内容を聞く限りでは、このままでは王国の危機と感じましたので、是非とも療養していただきたいと思いまして」
「お、お前まで余に逆らうのか!」
「逆らうとはまた、穏やかではありませんね。私は、そこのシャルディーア伯が仰られるようにハロルド王ではなく、国に仕える身なので国のことを考えて、ハロルド王に静養を勧めております」
「な、なぜだ! 余の気がふれたとでも言いたいのか!」
「ええ、そうですね。そう捉えたのは方がスッキリしますね。どう考えてもハロルド王の言うことが間違っているとしか思えません」
王太子であるハリソン王子が父であり、国王でもあるハロルド王にデュークの目の前で事実上の引退である蟄居を申し渡しているのである。
『どうしてこうなった』
デュークは目の前の出来事を見ながら、そう思わずにはいられなかった。
ハロルド王がハリソン王子の目の前で、屈辱に身を震わせながら書面になんとかサインをすると、デュークに渡す。
その時になぜか睨まれ、口元が小さく動き呟くので、よく聞いてみると。
「覚えていろ!」
そう、ハロルド王が言っていた。
「なぜ、俺が恨まれることになるんだ。これもあいつが……」
「シャルディーア伯、それ以上強く思わない方がいいと思いますよ。彼はあなたに対してはなにも害を与えていないはずです。それどころか、領自体の発展に尽力しているのではないですか? あなたまで父と同じ道を歩むのですか」
「ハリソン王子……そうですね、分かりました。では、書面もいただきましたので私共はこれで失礼します」
「そうですか。シャルディーア伯、余計なことかもしれませんが、この部屋の中で起こったことは、くれぐれも……」
「分かっております。私もまだ、領の発展を見届けたいので……」
「ええ、そうでしょうね。私もあなた方とは、これからも仲良くしていきたいと思います。では、お気を付けて。あ、エアコンの発注はシャルディーア伯宛でよろしいですね」
「あ、はい。それでお願いします」
「では、後ほど」
「はい、失礼します」
そう言って、ソファから立ち上がると、少し急いで部屋からの退出を試みる。
『一刻も早くこんな所から出たい!』
そう思うデュークを後ろから見ながらセバスも同じ思いで、少し早足で王城からの脱出を試みる。
王城から出ると用意されていた馬車へと飛び乗り、出来るだけ急いで屋敷に戻るように御者へと指示を出す。
「分かりました」
そう言って、御者が馬車を走らせたところで、デュークが嘆息する。
「ハァ~なんとか出ることが出来たな」
「ええ、まだ安心は出来ませんが、王城から出られたので」
「しかし、なにも俺がいる目の前ですることじゃないだろうに」
「まあ、大凡ですが、計画自体は進行していたのでしょうね。そう考えれば、これまでの素早い行動も納得出来るというものです」
「そうだが、今の王にそんなに不満があったのか?」
「それは私共は王都から離れているので、そこまでの情報は得られていなかったですね」
「そうか。で、お前はどう思う?」
「それは、これからのことですか?」
「ああ、あの王太子が、どこまで泳がせてくれるかだがな」
「ええ、言わせてもらいますよ。私が罰せられるのを覚悟して、提言したにも関わらずに、いい機会だと捉えたのはハロルド王ですよね」
「ああ、だが余がそれを認めるとでも?」
「今度はそうきましたか。しょうがないですね、出来れば出したくなかったのですが……」
「な、なにを出すというのだ。まさか……武具の類は持ち込めないはずだ」
「そんな物ではないです。セバス」
「はい。旦那様、これを」
「ありがとう。ハロルド王、これをご覧になっていただけますか?」
デュークがタブレットを起動すると、ある動画が流される。
そこにはハロルド王とデュークが映っており、昨日の会談のようだ。
~タブレット上で~
「まあええ、今夜の襲撃の件は分かった。バカどものことは任せてもらおう。それと其方には責任が及ばないようには配慮しよう」
「ありがとうございます」
~再びハロルド王~
「どうです? 確かに言ってますよね」
「あ、ああ、だが、これが余であると誰が保証する? 当然だが、余は否定するぞ」
「どこからどう見てもハロルド王なのですがね~そこまで、貫くのであればこちらも引くに引けなくなりますが」
「ま、待て! それはどういう意味だ。なにをする気でいる」
「ハロルド王が約定を違えるのであれば、私もそれに従う道理はないと思いますがね」
「なにを言うか。余は王で、其方は王国に仕える貴族であろう。なら、余の言うことに従うべきではないのか」
「そう、仰いますが、なにも一から十まで従う必要はないと思うのですよ。そんなに『はい』しか言わない部下がいいならば、木偶でも並べておけばいいでしょう。それに王国に仕えるのであって、王に仕えるのではないと思いますが」
「だが、余は王国の代表であろう。ならば、それに従うのが道理だ」
「では、頭が違うことを言い出したても手足は黙って従えと言うのですか?」
「ああ、そうだ。その通りだ。だから、余の言うことに従うのだ。いいな、これは命令だ」
「そうですか、では命令だと言うのであれば、口ではなくちゃんとした書面でいただきたいのですが」
「ふん、それくらいならば、すぐに準備させよう。おい!」
「はい、ここに」
側に控えていた執事が、一枚の書面をハロルド王の前に出す。
ハロルド王が書面に書かれている内容を確認すると、そこには『港の権利をシャルディーア伯に全て一任する』と書かれていた。
「なんだ、これは内容が違うぞ。すぐに作り直せ!」
「いえ、これで合っております。書面にサインをお願いします」
「なにを言うか。おい、こいつをつまみ出せ!」
すると部屋の扉が開かれ、男がツカツカと中へ入ってくる。
「父上、いやハロルド王よ。あなたは少し疲れているようですね。しばらくの間、静養してはどうでしょうか? そうですね、今なら避暑も兼ねて涼しい山など如何でしょうか」
「な、なにを言うか! ハリソン、お前はまだ、王太子の身であろう」
「そうですね、今は王太子として、国に仕えております。ですが、今のハロルド王の発言内容を聞く限りでは、このままでは王国の危機と感じましたので、是非とも療養していただきたいと思いまして」
「お、お前まで余に逆らうのか!」
「逆らうとはまた、穏やかではありませんね。私は、そこのシャルディーア伯が仰られるようにハロルド王ではなく、国に仕える身なので国のことを考えて、ハロルド王に静養を勧めております」
「な、なぜだ! 余の気がふれたとでも言いたいのか!」
「ええ、そうですね。そう捉えたのは方がスッキリしますね。どう考えてもハロルド王の言うことが間違っているとしか思えません」
王太子であるハリソン王子が父であり、国王でもあるハロルド王にデュークの目の前で事実上の引退である蟄居を申し渡しているのである。
『どうしてこうなった』
デュークは目の前の出来事を見ながら、そう思わずにはいられなかった。
ハロルド王がハリソン王子の目の前で、屈辱に身を震わせながら書面になんとかサインをすると、デュークに渡す。
その時になぜか睨まれ、口元が小さく動き呟くので、よく聞いてみると。
「覚えていろ!」
そう、ハロルド王が言っていた。
「なぜ、俺が恨まれることになるんだ。これもあいつが……」
「シャルディーア伯、それ以上強く思わない方がいいと思いますよ。彼はあなたに対してはなにも害を与えていないはずです。それどころか、領自体の発展に尽力しているのではないですか? あなたまで父と同じ道を歩むのですか」
「ハリソン王子……そうですね、分かりました。では、書面もいただきましたので私共はこれで失礼します」
「そうですか。シャルディーア伯、余計なことかもしれませんが、この部屋の中で起こったことは、くれぐれも……」
「分かっております。私もまだ、領の発展を見届けたいので……」
「ええ、そうでしょうね。私もあなた方とは、これからも仲良くしていきたいと思います。では、お気を付けて。あ、エアコンの発注はシャルディーア伯宛でよろしいですね」
「あ、はい。それでお願いします」
「では、後ほど」
「はい、失礼します」
そう言って、ソファから立ち上がると、少し急いで部屋からの退出を試みる。
『一刻も早くこんな所から出たい!』
そう思うデュークを後ろから見ながらセバスも同じ思いで、少し早足で王城からの脱出を試みる。
王城から出ると用意されていた馬車へと飛び乗り、出来るだけ急いで屋敷に戻るように御者へと指示を出す。
「分かりました」
そう言って、御者が馬車を走らせたところで、デュークが嘆息する。
「ハァ~なんとか出ることが出来たな」
「ええ、まだ安心は出来ませんが、王城から出られたので」
「しかし、なにも俺がいる目の前ですることじゃないだろうに」
「まあ、大凡ですが、計画自体は進行していたのでしょうね。そう考えれば、これまでの素早い行動も納得出来るというものです」
「そうだが、今の王にそんなに不満があったのか?」
「それは私共は王都から離れているので、そこまでの情報は得られていなかったですね」
「そうか。で、お前はどう思う?」
「それは、これからのことですか?」
「ああ、あの王太子が、どこまで泳がせてくれるかだがな」
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