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◆そういや暑かった

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「待て! 話は分かったが、分からないような……セバス、分かるか?」
「旦那様、ケイン様は輸送はご自分の転送ゲートでなんとでもなるけれども、それに目を着けられるのは好まれないので、まずは正当な輸送手段をなんとかしたいと言うことなのでしょう。どうでしょうか、ケイン様」
セバス様に補足され、間違いないことを伝えるとセバス様に黙礼される。

「自分に疑いの目が向けられないようにするということか。輸送についてはなんとなく分かったが、それが俺にどう関係するんだ?」
デューク様がなぜ、港の話をされるのかが分からないようだ。ドワーフタウンの港は好きにしているし、王都の港は管轄外だと言わんばかりだ。

「ハァ~デューク様、ここのところの騒ぎで相当数の貴族家や役人が捕縛されたと聞きます」
「ああ、お前のせいでな」
「それは、こっちに置いといて」
「置いとくのかよ!」
「その中には港の管理者とかも含まれるのでは? もし、港の管理者が健在だとしても、そこはなんとかしてデューク様に港の管理者として、権限を確保してもらってから、港の整備を行いたいと思います」
「思いますって、お前。そう簡単に言って出来ることじゃねえだろ! 大体、どうやって港を手に入れるって言うんだ?」
「でも、ここの港はもう一つの港と違って、とりあえず用意しましたってくらいの小さな港でしょ? こんな港に利権が生まれるとは誰も思わないでしょうから、簡単に手に入れられるのではないでしょうか。ねえ、セバス様」
「はい、ケイン様の言う様に、あそこの港は大きな船を着けることも出来ないので、港とは名ばかりの場所ですね。なので、管理者と言っても本当にただ任命されただけの者がいるだけで、利権が欲しいといえば、些少の金でも譲るのではないでしょうか」
「えらく、セバスは乗り気だな」
「ええ、今度はどんな乗り物を作って貰えるのかと思うと、楽しみでしょうがないです。ええ、本当に……」
セバス様の目が遠くを見ている。多分、海の上を颯爽と駆け抜けるなにかを想像しているのだろう。
「デューク様、今なら王様に訴えれば、簡単に港が手に入れられますよね? それに新たな交通手段が発達するとなれば、国としても喜ばしいことだと思えますが?」
「それは、そうなんだがな……お前はいいのか? 今以上に目を着けられることになるんだぞ?」
「そんなの、今更でしょ。別にどうってことはないですよ。ほぼ0距離で家と工房を行き来しているだけなので」
「お前、ぜんぜんお構いなしなのな」
「その辺はデューク様のおかげで開き直ることが出来ましたので」
「俺のせいかよ。まあいいが、王と直接やり合うのか……」
「なにかお土産が必要ですか?」
「土産な~それもそうだが、絶対にお前がらみだってのはバレるよな。そうなると、お前に会わせろって言われるのは避けられねえぞ」
「そこはなんとか頑張ってもらうってのはダメですか?」
「俺だって、これでも頑張って、壁として役立ってると思うんだが、その壁の上をお前が走り回るからな~」
「それは、すみません」
「いいって、好きにやれって言ったのも俺だしな。そこは後ろ盾の役目として頑張るからよ。まずは王に掛け合って、港の権利をもらってくるとするか。セバス、面会予約頼むな」
「旦那様、すでに王様より登城するように言われています」
「ハァ~いつ来たんだ?」
「それが、ケイン様達のお相手をしている頃にだと思いますが、家に王城より使いの者が来たようで」
「あ~まあ、今日の祭りのことだろうな。ただ、今日だけじゃ終わらないって俺達は知っているから、呼ばれるのはもっと先だと思っていたんだがな」
「旦那様、やはり王様達は今日で終わりと思っているんでしょうか」
「ああ、多分な。明日以降も続くと知ったらどうするんだろうな」
「デューク様、それはさり気なくでも、伝えておかないとまずいですよね」
「さり気なくね~お前も無茶な注文するな」
「でも、後で知られてなんで言わなかったって言われるよりはマシでしょ」
「まあな、だが問題はそこじゃねえよな。港の権利を得る代わりに王になにを求められるかだよな」
「新しく港を整備するだけでも王家には、十分得だと思えるんですけどね」
「そこをもう一つなにかないか?」
「父さんはなにかある?」
「あ! 悪い。少し話の内容についていけてなかった。で、なにがどうなった?」
「父さん、しっかりしてよ」
「クリス、そういうがなにもかもが想定以上でな。お前はなにかあるのか?」
「急に言われてもね~それにしてもここは暑いね」
「あ、それ! 俺も思った。セバス様、どうして?」
「ケイン様、ここは領都のお屋敷ではないのでエアコンを用意しておりません」
「え? そうなの? なんで?」
「なんでって、お前な」
「いつもなら、俺にすぐに言うのに」
「そう言われれば、そうだな。なんとかなるのか?」
「じゃあ、今手持ちのヤツを……」
そう言ってインベントリから十台くらいのエアコンを出す。
「ケイン様、助かります。不足分は別途、ご連絡致しますのでご用意してもらえますか?」
「いいですよ。ね、ガンツさん」
「ああ、まだ在庫はあるだろうからな。十分、対応出来ると思うぞ」
「分かりました。助かります。では、急いで設置させますので」
「それが、いいな。その間、休憩としよう」
セバス様が外にいるメイドの人にエアコンの設置を手分けして行うように指示を出す。

「ねえ、デューク様。王城にはエアコンって着けてるの?」
「いや、俺は献上してないが……そうか! これが武器になるんだな。くくく、いいぞケイン。これなら、文句を言われることもないだろうな」
「ついでに防音の魔道具もどうです?」
「ああ、あれな。俺にはあまりいい思い出はないが、王には必要になるだろうな。すまんが三つほど用意してもらえるか」
「分かりました。後でセバス様にでも渡しておきます」
「ああ、助かる」
「それで、話は最初に戻って、アンテナショップの場所なんですけどね」
「ああ、そうだったな。それは少し待て。お前も知っての通り、王都の貴族も商家もボロボロだ。少し待てば売りに出されるところもあるだろう」
「そうか、それもそうですね。分かりました。では、エアコンと港の整備の準備をしておきます」
「ああ、そうしてくれ」
その後、会議室にもエアコンが設置され、涼しくなったところで今まで出された案をまとめていく。
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