上 下
220 / 468
連載

◆またお話ししました

しおりを挟む
ガンツさん達と港の倉庫で合流し、まずは今までの流れをまとめる。
「父さん、お願いね」
「あ~分かった。まずは俺からな。いいか話は昨日の親父との合流からだ……」
父さんが言うには、昨夜ドラゴさんとジュリアンさんがドラゴさんのお店に帰った後に俺があげた蒸留酒を飲みながら、色々話をしたらしい。

その中で父さんと母さんの駆け落ち話は意外と早くと言ってはなんだけど、二人の間ではすでに終わったこととして認識してしまったらしい。
あれだけ、騒いでいたのにどうして、すんなりと受け入れられたんだろうとは思うが。
実際に会えてしまったことで、納得出来るなにかがあったのだろうか。

それで、そんな駆け落ち話をお互いに納得して終わったものとして片付けた後に俺の残した物へと話が移ったらしい。
俺が渡したソロバン、魔導計算機、冷蔵庫、魔導ミキサーと話が移り、なんでドラゴさんだけとジュリアンさんが怒り出したとか。

そんな話を続けていた時に、そういえばとドワーフタウンという新興の街から最近、いろんな物が流れてきているという話に切り替わる。
それで、そのいろんな物の出元を手繰ると『トミー商店』に行き着くらしいとなり、今の服飾業界で騒がれている『スライム製ゴム紐』『ブリーフ』『ボクサーパンツ』『Tシャツ』『スポブラ』『ショーツ』に最近は『ファスナー』も売られているとか。
それが、全てトミー商店となり「まさかな」とは思ったそうだが、ゲートの魔法や携帯電話や冷蔵庫などの魔道具開発に関わっているどころかケインが張本人そのものだ。

そんな話を聞いてしまえば、駆け落ちしていた二人を探していたはずの祖父二人は頭の中でソロバンを弾くことになる。
どうやったら、ケインを引き込めるかの算段になったらしい。

「ハァ~驚いた! そこは嘘でも子供の心配をするところじゃないの? こんなことになるんなら、バラすんじゃなかった」
「でも、実際どうすんだ」
「そうだよね~向こうはなんとか父さんの利権に噛みつきたいみたいだしさ」
「そこだよな~」
「ねえ、サム兄さんって修行に出るって話だったよね?」
「ああ、そういや、そんなことを言ってたな。それがどうした?」
「ならさ、ここにシャルディーア領とドワーフタウンのアンテナショップを出すのはどうかな」
「また、ケインのよく分からない話が始まった。まずはその『アンテナショップ』ってのはなんなんだ?」
「そうだよ、思いつきもいいけどさ、まずはなにかを話してくれないと。いいも悪いも言えないじゃない」
「そうだぞ。クリスの言う通りだ」
「父さん、クリス兄さん、サム兄さん。そうだよね、じゃあ説明するね。いい『アンテナショップ』ってのはさ……」
父さんと兄さん達、ついでにガンツさん達にも話をしようと思ったが、ついでだからとデューク様も巻き込むことにしようと思いセバス様に連絡を取る。
「もしもし、セバス様」
『これは、ケイン様。どうしました?』
「実は……」
セバス様にここ、王都で店を出したい旨を話し、まずはデューク様と話をしたいとお願いする。
『そういうことでしたら、これからでもいいですよ。旦那様には私からお話ししておきますので』
「分かりました。では、今から伺いますね」
『はい。お待ちしております』

セバス様との通話を終わらせ、父さん達に今から領主様のお屋敷に向かうことを話す。
「待て! ケイン、どこからそういう話になるんだ?」
「だって、ここ王都に店を出すにしても俺達はなにも知らないし、貴族の後ろ盾はあった方がいいでしょ?」
「それは、分かるが……話が飛びすぎじゃないか?」
「でも、ここで店を開いたら、ドラゴさん達の妨害があったら、誰も味方してくれないと思うよ。二人とも王都に店を出して長いしね。新参者のいうことは誰も聞いてくれないんじゃないかな。その辺はシャルディーアで店を出した父さんも分かるでしょ」
「まあ、そうだな。そう言われてしまえば言い返せないな」
「じゃ、お屋敷に行くよ。心構えは……別にいいね。いつものデューク様だし」
「お前、仮にも相手は領主ってこと忘れてないよな?」
「ああ、多分大丈夫だと思うよ」
ゲートをお屋敷のリビングに繋ぐ。

ゲートの向こうにいるセバス様と挨拶を交わすと、父さん達と一緒にゲートを潜る。
ゲートを潜った先で、父さんがセバス様にひたすら謝っているようだ。
「セバス様、この度はすみません。ケインが無理を申しまして」
「いえいえ、トミー様。ケイン様にはいつもお世話になっておりますから。この程度のことでそんなに畏まらないで下さい」
「ですが……」
「トミー様、この話はここで終わりにしましょう。では、旦那様がお待ちのお部屋に案内しますので」
そう言われれば父さんも出掛かった言葉を引っ込めることしか出来ず、皆んなでゾロゾロとセバス様の後を着いて行く。

デューク様が待つと言う会議室の様な部屋に通されると、俺を見たデューク様が開口一番に俺に文句を言ってくる。
「今度はなんなんだ。頼むから、ここでは大人しくしていてくれよ。頼むぞ」
「デューク様、会うなりそれはひどくないですか?」
「お前が言うか。まあ、いい。ほら、トミーもそんなところに立ってないで座れ」
「はい、失礼します」
そう父さんが言うと、兄さん達も椅子に座る。

「じゃあ、座ったところで説明してくれ」
「ケイン、頼む」
「分かったよ。じゃあ、説明しますすね」

デューク様の前で、さっき話したアンテナショップを説明する。
アンテナショップと言っても、要はシャルディーア領とドワーフタウンの特産品を売る店だ。
特に説明することはないが、一番厄介な物流の話をどうにかしないといけない。
店で物が売れれば、仕入れが必要になるが、その仕入先の荷馬車がシャルディーア領から出ていないとなれば、色々と探られる結果となる。
だから、まずは港をなんとか整備して、ドワーフタウンからの航行を出来る様にしたいと話す。
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。