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◆まだ狙われていました

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マリー様とお屋敷のお庭に出るとマリー様がくるくると回りながら、楽しそうに笑う。
「ねえ、なにしてあそぶ?」
「マリー様、これを投げて下さい。マサオが走って取って来ますので」
懐から出した様に見せて、スライム樹脂で作ったソフトボール大のボールをマリー様に渡す。
「ほんとに? これを投げたらマサオが取ってきてくれるの?」
『何で、俺がそんなことを……』
「お前のせいでこうなったんだでしょ! しばらく付き合ってやって」
『チッしょうがねえな~いいぜ、嬢ちゃん投げてみな』
「うん、じゃあいくよ。えいっ!」
マリー様がボールを投げるが、五メートル先にバウンドしてポンポンと転がっていく。
「ほら、マサオ取ってくるんだよ」
『チッ分かったよ。ふぁ~ぁ』
マサオが五メートル先のボールをしょうがねえな~みたいな雰囲気を隠すことなく口に咥え持って来る。
『ほらよ。嬢ちゃんもっと遠くに飛ばしてくれないとな。俺の見せ場がないんだがな』
「だって、マリーまだこどもだもん。グスッ」
「このバカ。小さい子を泣かすなよ」
『だってよ、しょうがねえじゃんか』
「分かった。じゃ、次はこれな」
懐からフリスビーを取り出し、まずはマサオに興味を持たせる為にマサオの鼻先に近付け左右に振ってみる。
『お、何だこれ。何か妙にそそるな~いいぜ、早く投げてくれ! 俺はいつでもいいぜ!』
「取れればな」
『はん、いいから投げてみろ!』
「よ~し、ほら! 取ってこ~い!」
フリスビーを思いっ切り、遠くに投げる。
こりゃ思ったより飛んだかなと思っていたら、失速する前に『パクッ』とマサオがキャッチする。
フリスビーを咥えたマサオが足元に戻ってきて、フリスビーを落とす。
『ふふん、どうだ。俺様の実力ってヤツだな』
「あらあら、ケイン様じゃ遠くまで飛ばせなかった様ですね~私が投げてみても?」
「リリスさんがですか?」
「ええ、こう見えてもすごいんですよ」
『おお、俺はいいぜ。さあ投げてくれ』
「じゃ~行きますね~そぉれぇ~」
リリスさんがフリスビーを投げると、あっと言う間に百メートルを越して行く。
『な、何だよ。嘘だろ! くそっ間に合え!』
マサオがダッシュし追い着くかと思ったが、咥えようとした時は既に地面の近くだったために咥えることは出来ず、そのまま前転しへそ天で寝転がる。
その後、しばらくへそ天で呆然としていたマサオだが気を取り直したのか落ちていたフリスビーを咥えて戻ってくる。

『くそ、油断した……姉ちゃん、あんた何者だ?』
「私は~単なるメイドですよ~」
「「『嘘だ』」」
「どうしたんですか~皆さん、そんな目で見られると照れちゃいます~キャッ」
『まあいい、さっきは油断したが今度はちゃんと取ってみせるさ。さあ、投げてくれ』
「おや、大きく出ましたね~本気を出してもいいんですか~」
『おう、望むところだ』
「そうなんですね。じゃ、行きますよ~そぉれぇ~」
リリスさんが投げたフリスビーはさっきとは違う音を出して、はるか彼方に飛んで行く。
それを見たマサオが準備していた筈なのに焦って走り出す。
『やべ、あの姉ちゃん本当に本気でやりやがった』
フリスビーを追いかけるマサオが何とか地面に落ちる前に飛びつくことが出来た。
『ふぅ危なかった~』
マサオが戻って来て、リリスさんにドヤ顔で告げる。
『どうだ? 俺に掛かればこんなもんよ』
「まあ、いいですけどね。ん? マリー様、どうなさいました」
「マリーつまんない。リリスとマサオだけであそんでばかり。マサオはマリーとあそんでくれるっていったのに」
マリー様が俯き泣きそうになる。

「(リリスさんがムキになるから)」
「(ですが、マサオが……)」
『(俺のせいじゃないだろ)』
「(とにかく、この場を何とかしないと。マサオ、分かってるな)」
『(ああ、分かったよ)』
「マリー様、マサオが遊びたいと言ってますよ」
「マサオが? うそ! だって、マリーのあいてはつまらないっていったもん」
「今度はちゃんとマサオが相手にしますから。そんなことは言わずに遊んであげて下さい」
「ほんとに?」
「ええ、今度はこの大きなボールではどうでしょう」
ビーチボールを取り出しマリー様に渡す。
「これをマサオに投げると、マサオが返してくれますよ。なあマサオ」
『あ、ああ分かった』
「じゃあ、なげるね。はい!」
ポ~ンと山なりにマサオの方へビーチボールが投げられると、マサオが鼻先でトンと弾くとマリー様の懐へと返す。
「その調子です。たまには違う方向へと投げるのもいいでしょう」
「わかった。こう?」
今度は正面にいるマサオではなく、少しだけ横にずらして投げるとマサオが、ささっとビーチボールの下に入ると鼻先で返す。
「きゃっきゃっ、マサオすご~い!」

はしゃぐマリー様を見て、機嫌が戻ったことにやれやれと嘆息する。
「ケイン様、あちらでお茶でもいかがですか」
お庭に置かれたテーブルへとリリスさんに案内され、お茶をご馳走になる。
「それで、マサオのことは旦那様とセバス様以外に誰がご存じですの」
「他はショーン様ですね」
「まあ、お気の毒に」
「次期当主としては知っておかないとダメなんでしょ」
「それはそうですが、まだ覚悟が足りないといいますか」
「そうなんですか」
「ええ、少し前なら今のショーン様でも問題なかったんでしょうが、今はとんでもない存在がいますからね」
「へぇ~大変なんですね」
「はぁ何言ってるんですか! 全部ケイン様のせいでしょ。前の大人しいシャルディーア領ならよかったんでしょうが、今は色んなところから目を付けられてしまっています。多分、ショーン様は大変な目に遭うんでしょうね。それこそハゲ散らかすくらいに……ああ、可哀想なショーン様」
「そんな大袈裟な」
「いいえ、セバス様に聞きましたが、最近の旦那様はつむじの大きさを毎日測ってらっしゃるとか。それってどう考えてもケイン様のせいですよね」
「そうですか、いやなら断ればいいだけの話なのに」
「もう、あんな便利な物を知ってしまったら元には戻れません。やはり、ここは私も責任取ってもらわないと」
「何で、そこにいくんですか。強引すぎますって。それに俺はリーサさんと……その、約束してますし」
「ですが、まだ何でしょ? なら、私にも少しはチャンスがあってもいいと思いません?」
「いいえ、思いません」
「そうですか。では、この話はここまでにしときましょう」
「また、するつもりですか?」
「あら、簡単に逃げられると思いまして。拗らせ女子は我慢強いんですよ。覚えておいて下さい」
「え~」
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