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◆押し付けました

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部屋の外に追い出され、マサオを見ると「ふぅ~」と嘆息していた。
「犬でも溜め息つくんだね」
『だから、犬じゃねぇって!』
「はいはい。で、どうするの? 一応お目当ての知り合いには会えたと思うんだけど。まあ、見た目は変わっていたけどね」
『はぁ? どうするって部屋の外で待ってろって、アイツが言ってたじゃねえか』
「そっちこそ、何言ってんの。あそこまで我儘ボディになったら、前のほっそりしていた時の服なんて絶対に入らないから。だから、ここで待っても無意味だし。何なら賭けてもいいよ。どうする? 受ける?」
『うっ、俺もそんなにアイツを知っている訳じゃないけど、俺の野生の勘が……』
「おや、野生の勘がどうしたのかな?」
『絶対に負ける……そう、訴えかけている』
「ほらね、じゃ。俺は帰るから、後は適当にね」

エレベーターで下りてアーロンさんに鍵を返す。
「ねえ、アーロンさん。ナーガさんの部屋なんだけど、ちゃんとチェックしているの?」
「あ~バレちゃったか」
「バレちゃったかじゃないでしょ! あんなに悪臭がしているんだから、虫とか絶対に湧いているよ。大事になる前にどうにかしないとダメでしょ」
「周りの部屋からの苦情もあって、何度か注意しに行ったんだが、中々部屋から出て来ないし、出て来たと思ったら、あんなだらしない格好で出て来るもんだから、男の俺としては入りづらくてな」
「なら、奥さんに頼むとかあったでしょ。それはしなかったの?」
「実はな、カミさんが……その……何だ……でな」
「全然、分からない。どう言うこと?」

昼食の仕込みをしていたキールが横から話に加わってくる。
「俺に兄弟が出来るってことだよ」
「ば、バカ、キール! まだ秘密だって言ったじゃないか」
「だって、はっきり言わないとお袋が悪者にされるじゃないか!」
「そう言うことなら、わかりました。では、竜人の里長には八月一杯に改善されないようなら退寮してもらうと伝えて下さい。俺が言っていたと言えば、アーロンさん達には迷惑は掛からないと思いますので」
「ありがとう、ケイン君。恩に切るよ」
「まあ、元はと言えば俺がお世話を押し付けた訳ですし」
「そうだぜ、何も親父が謝る必要もないさ」
「じゃあ、ナーガさんの対応はキールが監視すると言うことでお願いしますね」
「はい」
「な、何言ってんだよ! 親父も何で返事するんだ! おかしいだろうが!」
「キールは毎朝、ナーガさんが出て来るまでドアチャイムを連打して部屋から出して。もしそれでも出てこない場合は、里長に言って竜人全員で対応してもらってね」
「断る! 大体、何で俺が……」
「もしかしたら、とんでもない格好で出てくるかもね。俺もさっき、無理矢理にドアを開けて中に入ったけどさ~すごいの何のって、もうね……」
言葉を切ってキールを見ると『ゴクリ』と生唾を飲み込む音がした。
「(これはもうちょいかな)キールには刺激が強すぎるかもね~」
「な、何だよ。やってやろうじゃないか。要は毎朝起こすだけなんだろ」
「やってくれる! じゃあお願いね」
「あ、ああ、やってやるさ。ふん」
キールが会話から外れるとアーロンさんが耳打ちしてくる。
「ケイン君、あれってほとんど騙しているよね?」
「何のこと? 俺は本当のことしか言ってないけど」
「いや、だって『すごい』とか『刺激的』とかナーガさんに密かに憧れていたキールにはちょっとね」
「でも、すごいのは本当でしょ」
「まあ、確かにあの悪臭はね……」
「それに刺激的だよね」
「まあ、目や鼻に来ますね」
「ね? 俺は嘘なんか言ってないでしょ」
「確かに嘘じゃないですが……はぁ我が息子ながら情けない」
「ねえ、キールは今のナーガさんを見てないよね?」
「そうですね、食事なんかは同僚の女性がお世話していたので、ここにも下りて来ないですし」
「う~ん、キールに悪いことしたかな」
「初恋だったと思いますけどね」
「まあいっか。じゃ、後のことはよろしくお願いしますね。あと、産婆さんが必要になったら連絡して下さい」
「わかりました。ありがとうございます」
「じゃ、頑張って下さいね」
アーロンさんに挨拶をして独身寮を出る。
「あ、行っちゃった。この寮はペットの連れ込みは禁止しているのに」

独身寮を出て、学校に戻ろうとしたところでセバス様から連絡が入り、バイクの担当が決まったのでブレスレットへの登録をお願いしたいとのことなので、お屋敷のお庭へとゲートを繋いで潜る。

「セバス様、バイク隊はどちらに?」
「その前にケイン様よろしいですか。ここへはペットを連れて来られるのはご遠慮願いたいのですが」
「ペット? 俺はペットなんて連れてないですよ?」
「では、その後ろに控えている大型犬はどこから迷い込んだのでしょうか。私にはケイン様の後ろにピッタリとくっついてゲートを潜って来るのが見えましたが」
「へ? まさか……」
その場で振り返ると尻尾をぶんぶんと振るマサオがいた。
「マサオ! 何でお前がここにいるんだ! 帰ったんじゃないのかよ!」
『いや、お前の側にいた方が面白そうだし……ダメ?』
「ダメって、ああもう「ケイン様」……あ、セバス様。申し訳ありません。すぐに山に戻して来ますので」
『え~いいじゃん。しばらくいさせてよ~』
「だから、大人しくしてろって!」
「ケイン様、少しよろしいでしょうか?」
「はい、セバス様。何でしょう?」
「私の耳が確かならばですが、さっきから、その犬と会話していませんか?」
「え、な、何のことでしょうか? 俺が犬と会話何て、そんなこと『だから、犬じゃねえって!』あ、このバカ!」
「話していますね」
セバス様が嘘は許しませんとばかりに圧を増してくる。

「ハァ~少々面倒な話になりますが、聞いてもらえますか」
「わかりました。旦那様に許可を取って来ますので。その間にブレスレットへの登録をお願いします」
「はい、やらせていただきます」
セバス様がお屋敷の中に入るのを確認するとマサオの頬を両手で押さえ、小声で脅しつける。
「(何でここにいるんだ)」
『(だから、面白そうだな~と思ってだけど)』
「(なら、他の人の前では犬のフリをしてろよ。面倒だろうが!)」
『(それは謝るけどよ。犬のフリってのも中々大変なんだぞ)』
「(そんな訳あるか! 大体話さなきゃ犬で行けるだろうが!)」
『(そうだな、うんこれから大人しくしてるから)』
「(もう、遅いよ)」
『(どういうことだ?)』

「あ!わんちゃんだ~」
遠くからマサオを見つけたマリー様が走ってくる。
「いいか、絶対にバレるなよ。後、ケガもさせるなよ」
『(分かった)』
「いいか、お前はこれから犬になりきるんだ。いいな!」
『(ああ、任せろ)』

マリー様が走って俺に飛び付いてくる。
「けいんおにいさま、おひさしぶりです。しゅっぱつまえにあいにきてくれたんですか。そっちのわんちゃんはけいんおにいさまのぺっとですか」
マサオに目で『分かっているな』と合図を送るとマサオからも『分かった』と返される。
「はい、先日山の中で拾いました。名をマサオといいます。触っても大丈夫ですが、あまり掴んだり引っ張ったりしないで下さいね」
「うん、だいじょうぶだから。マサオ、お手」
ちらりとこちらを見るマサオに『言う通りに』と目配せする。
マサオが左前足をマリー様の手の平にゆっくりと乗せる。
「わ~マサオ、おりこうだね。じゃつぎはちんちん」
マサオがこちらを見て首を横に振る。
「あれ、できないの? マサオ、ちんちん」
マサオが伏せの状態で頭を抱え込む。
「マサオそうじゃないよ。けいんおにいちゃん、マサオできないの?」
「マリー様、マサオは拾ったばかりなので。まだそういうことは教えていません。ごめんね」
「そうなんだ。じゃゆるしてあげる」
そう言いながら、マサオに抱きつきもふもふを堪能する。

俺はこの間にブレスレットの登録を済ませるべくバイク担当者の元へ向かい十台のバイク、ついでにマイクロバスも登録して、マサオの所に戻る。
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