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◆成長したのは体だけでした

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『おう、言ってなかったな。俺の名はマサオだ』
「マサオ? マサオね~」
『何だ、何かあるのか』
「(まさかね、某番組で犬と一緒に旅する番組があったけど……)いや、いい名前だと思うよ。自分で付けたの?」
『いや、しばらく一緒にいた奴が付けてくれたんだ。今は俺も気に入って名乗っているんだ』
そう呟いたフェンリル……いや、マサオが遠くを見る様子で何かを懐かしんでいる。

『そんなことより、早くアイツの所に案内してくれ』
「ああ、そうだったね。ガンボさん、施設に必要な物はガンツさん宛にお願いね。俺はマサオを竜人の所に連れて行くから」
「あ、ああ分かった。なるべく騒ぎは起こさんでくれよ」
「それは分からないよ。マサオ次第だけど」
「お前、拾ったのなら、ちゃんと世話しろよ」
「ガンツさん、俺は拾った覚えはないんだけど」
『俺も拾われた訳じゃねえから』
「お、おおそうか。まあ、とにかく気をつけろや」
「うん、じゃあここは任せたね」
ガンツさん、ガンボさん、カーティスさんと別れ独身寮へゲートを繋ぐ。

『お前、こんな魔法使えるのか?』
「え、そんなに不思議なこと?」
『まあな、今はいいか。ほれ、案内してくれ』
マサオと一緒にゲートを潜り独身寮の前に出る。

マサオが鼻をヒクヒクさせる。
『ん、間違いなくここにいるな』
「本当はいられると困るんだけどね。あの駄竜は、本当に……」
独身寮の中に入り、ナーガさんの部屋のドアをノックする。

「ナーガさん、いるんでしょ? 起きてますか? ナーガさん?」
ドアを激しくノックするが、起きて来る気配はない。
『何だおらんのか』
「いや、いるはずなんだけど……多分寝てるね」
『なら、俺に任せろ』
「何するの?」
『起こせばいいんだろ? アイツも腐ったとは言え竜だ。これで起きるだろうと思うがな。もしやっちまったら勘弁な』
「ちょ、ちょっと待って! 何をするつもりなのかだけ、教えて」
『何って、ちょいと殺気をぶつけるだけだが?』
「いやいやいや、そんなの出されたらあちこちで気絶する人が出て来ちゃうよ。ダメ、絶対!」
顔の前で両手でバッテンを作り必死でマサオに抗議する。
『だが、ここで起きるまで待つのは嫌だぞ』
「分かってる。だから、ここは任せて。とりあえず、ここにいてよ! いいね、動かないでよ」
『ああ、分かったから、さっさと行って来い』

アーロンさんの元に行き、理由を話してナーガさんのマスターキーを借りて急いでナーガさんの部屋の前に戻ると、マサオがお座りの状態で待っていたことに安堵する。
「よかった。無事だった」
『ん? 俺のことを心配したのか?』
「違うよ、実力行使でドアをぶち破るのかと思っていただけだから」
『しまった……その手があったか』
「やめてね」
『いいから、さっさと開けてくれ』
「はいはい、じゃ開けるね。ナーガさん開けますよ~うっ何この臭い……ぷはっ、ダメだ」
『何じゃこの臭いは……グハァ、ダメだ鼻がもげる。そいつを起こして外に出してくれ』
「え~俺がなの?」
『俺には無理だ! 頼む!』
「もう、嫌だけどしょうがないか。とりあえず風魔法で顔の周りの空気を霧散させて……」
『おい、それ……俺にもかけてくれ』
「何? 自分で出来ないの」
『む! 出来ない訳じゃないが、今は手が離せないから頼むんだ』
マサオが両前足で鼻先を押さえながら言う。
「手って、足とは言わないんだね。まあいいか、ほいっと。これで楽になったでしょ。なら、入って来なよ」
『ふぅ、まあ助かったのは事実だし行ってやるか』
「それにしても、よくこれだけ散らかせるもんだよな~もう野生に戻れないんじゃないの。今度、里に追い返されるって聞いたらどんな顔するんだろうね。っと、いたよ。ゴミの中に顔突っ込んで寝るなんて」
『いたか?』
「うん、ゴミに半分埋もれていたけどね」
『まあ、早く起こしてやれ』
「あまり、気が進まないけど起こすとしましょうかね。ナーガさん、起きて下さい。ナーガさん!」
『起きないな』
「起きないね。なら、とっておきで起こすか」
『おい、大丈夫なんだろうな。顔が怖いぞ』
「そんなことは気にしない!『電撃MAX』」
両手でナーガさんの頬を挟み『電撃』を食らわすとナーガさんが飛び跳ねる。

『ケイン、生きているよな?』
「多分、大丈夫じゃない」
「何だ! 誰だ! いきなり人の顔に何をする!」
「おはよう、ナーガさん。とりあえず服装を正そうか」
「服装? あっ見たわね」
「いいえ、見てません。見たくもありません。なので早くして下さい。こちらのお友達がお待ちなので」
「お友達?」
『よう、久しぶり!』
気楽に挨拶するマサオを見て、ナーガさんが呟く。
「あなた、誰?」
『誰ってマサオだよ! 忘れたのか! このポンコツ娘は!』
「マサオ? マサオって犬じゃなくってフェンリルだった筈よ?」
『だから、犬じゃねえって!』
「いいから、とっとと起きてベッドから下りて下さい。それにしてもこんなに汚して散らかすなんて、アーロンさんには定期的な監視をお願いしているはずなのに」
「ケ、ケイン君。これには理由があってね」
「何の理由かは知りませんが、あなたはここで寝腐って何をしているんですか? 他の人達は教習所に通っていましたけど?」
「あれ? そうだっけ? おかしいな~私も一緒に行く予定なんだけどな~」
「では、早く行った方がいいんじゃないですか? 俺はアーロンさんにこの惨状を話さないといけないし」
「え~と、ケイン君。それはどんな報告をするのかな?」
「どんなって、見たまんまですよ。今すぐに連れて来て管理人としての資質を問いただしますけどね」
「それは私が困る~ねえ何とかして! ほら、マサオからも言ってよ!」
『いや、無理だろ』
「何でよ~」
「ナーガさんまだいたんですか? 早く着替えないと、そのまま放り出しますよ」
「分かったわ。分かったから五分ちょうだい。いいわね、お願いよ」
「はいはい、いいから早くして下さいね。でも、持ってる服が入るんですかね~」
「え? ケイン君、それはどういう意味かな~」
「どういう意味って、本気で言ってます?」
「何よ! 私のどこが悪いって言うの!」
「これですよ!」
ナーガさんの脇腹を思いっ切り掴む。
「ケ、ケイン君、何をするの?」
「こんだけ掴めるってことは、あれだけ言ってたのに、どんだけ自堕落な生活を送っていたんですか? これで竜になっても飛べるんですかね~」
「な、何を言うのよ。これくらい何てことはないわよ。いいから、部屋の前で待ってなさいよ。ふん!」
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