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◆避難させました

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挨拶もそこそこにガンボさんが部屋に入って来る。
「ちと、遅くなったか?」
「早うせんか! ワシの息子が過労死するじゃろ!」
「ん? どういうことじゃ。ケイン、説明頼む」
「実はね……」とガンツさんの三男が置かれている状況と学校の必要性を説明する。
「ハァ~何も今、少しワシが遅れたくらいでどうにかなるもんじゃなかろうて。そんなに心配なら、休ませてやるんが先じゃないのかの」
「俺もそう思うんだけどね、今さっき気付いたみたいで」
「相変わらずというか、なんというか……」
「いいから、ガンボよ。今はどこまで進んでいるんじゃ」
「教師の当てはついた。後は教室じゃな」
「あれ?ガンツさん、そういやカーティスさんの話ってしてたっけ?」
「そういや、誰にも言ってなかったような」
「ねえ、ガンボさん。実はねエルフの里で……」とエルフの里でのカーティスとのやりとりを説明する。
「何じゃ、そんなことか。こちらとしては教師役が増えるのなら好都合じゃ。多少の性格の面倒臭さはお前らで慣れとるからの。心配は無用じゃ。ほれ、そいつの連絡先を教えろ」
「じゃあ、これ。お願いしますね。」
「おう、今から連絡してみるからの。待っとれ」
ガンボさんがカーティスさんの番号を押して掛ける。
『プル』と呼び出し音が鳴ったと思ったら『はい、カーティスです』とワンコールも鳴らない内にカーティスさんが電話口に出る。
「あ~ワシはケインとガンツの知り合いのガンボと言う。カーティスさんで間違いないか?」
『は、はい。私がケイン君の義父のカーティスです。』
「教師をやりたいとケインから、聞いたがそれは今でも変わりないか?」
『はいはい!やります。やらせてください!』
「そうか、分かった。では、いつから来れるかの?」
『それは、今すぐにでも行きます! 行かせて下さい』
「最初に言うとくが、これるのはカーティスさん本人のみじゃからの。その辺は大丈夫かの?」
すると電話口の向こうが急に騒がしくなったのが分かったが、こちらからは敢えて何も聞かないでおく。
『も、問題ありません。大丈夫です。では、荷造りしたいので一日時間をもらえますか?』
「そうか、じゃあ明「ちょっと代わって」ケイン、ああいいぞ」
「カーティスさん、お久しぶりです」
『おおケイン君、我が息子』
「それはいいですから、いいですか。荷造りは必要最低限の物だけにしてすぐに出られるようにしてください。そうですね二泊三日くらいの旅装で」
『それはいいが、理由を聞いても?』
「後ろにいる人達が暴れ出しそうなので、早めに脱出したほうがいいかなと思って」
『……聞こえた?』
「ええ、バッチリ」
『そうか、分かった。では、どうすればいい?』
「準備して転送小屋の前に着いたら、連絡もらえますか?」
『ああ、分かった。またしばらくしてから連絡する』
「はい、お願いしますね」と通話を終わらせガンボさんに携帯電話を返す。

「話はついたのか?」とガンボさんに聞かれたので、周りがついて来そうなので早目にこっちに引っ張って来ることにしたと伝える。

「なら、これで教師の問題は方が付いたと思っていいんじゃな?」
「うん、ガンツさん。これで後は校舎を用意すれば九月には開校出来るね」
「だがのう、肝心の生徒は集まるのか?」と珍しく不安気なガンツさん。
「別に最初は子供に限らなくてもいいと思うんだけどね」
「それは読み書き計算が不安な大人も対象にすると言うんじゃな」
「そう、ガンツさんの言う通り。やっぱりまだ識字率は低いよね。特に職人さんがね」
「まあの、それが出来ないから職人に進むってのが常識みたいなことがあったしの」
「ガンツさんは、そう言うけどさ。職人さんでも読み書き計算は必要だからね」
「ケインは親から必要最低限の教育をされたから、そう言うことが出来るんじゃ。親世代で出来ないのもいるからの」
「うわぁやっぱり難しいんだね。そういう人達の子供が来てくれるのかな?」

ガンツさんと教育評論番組みたいなことを話していると電話が鳴るので出るとカーティスさんだった。
「もしもしカーティスさん」
『ケイン君、早く! 早く来てくれ! もう限界だ……』
「あちゃ~やっぱり。じゃすぐ行きますね。ガンツさん行って来るから」とその場でゲートを繋いで転送小屋の前に出ると、組み伏せられているカーティスさんがいた。
ちなみにそのカーティスさんに乗っかっているのは、リディアさんで姉弟はただ側で見ているだけだった。
「カーティスさん、そのおぶさっているのも荷物ですか?」
「あ、ケイン君。よかった……早く助けてくれないか」
「いいですけど、上のはどうします?」
「ハァ~リディアよ。さっき話しただろ? 私は教育者として招かれたんだ。それに私一人でと言われたと」
「いやよ! 絶対に離れないから!」
「じゃあ、いいですか?」
「「へ?」」と間抜けな返事をするカーティスさんとリディアさんだったが、お構いなしにカーティスさんの左腕にブレスレットを嵌める。
「じゃあ、カーティさんブレスレットに魔力を通して下さい」
「これに? あ、ああ分かった」とブレスレットに魔力を登録した瞬間にリディアさんが跳ね除けられる。
「きゃ……え?どうして」
「はぁ楽になった。ケイン君、行こうか」
「ええ、いいですけど。あれはいいんですか?」
「まあ、頭が冷えた頃に様子見に来るよ。さあ急ごう」
「あなた! 待ちなさいよ!」とリディアさんが手を伸ばすが弾かれる。
「え? 何で?」
「ほう、これはいい。非力な私にはちょうどいい」
「何でよ!」
「リディアさん、カーティスさんに着けたブレスレットは悪意ある人から身を守る機能が盛り込まれていますので、まずは心穏やかに接することをお勧めします」
「キー何よ! あんたは婿でしょ。何とかしなさいよ!」
「ですから、何とかしてカーティスさんの身の安全を守らせていただいています」
「私は! 私はどうなるのよ!」
「だから、向こうで落ち着いたら連絡するから、待っててくれと言ってるじゃないか」
「そんなこと言って……」
二人の言い合いが続くので、ただ見ているだけの姉弟に近付く。

「ねえ、いつもあんな感じなの?」
「う~ん、いつもじゃないけど……食事前後にはなりやすいかな?」とメアリーが言う。
「そう、じゃあさ提案なんだけど、二人ともリーサさんの所に避難しようか?」
「「避難?」」
「そう、多分リディアさんは当分荒れっぱなしだろうからね」と説明しカーティスさんを見る。

「あちゃ~リディアさんもめげないね。まるでぶつかり稽古だよ」
カーティスさんに向かっては、弾かれることを繰り返すリディアさん。
そんなカーティさんの元に近付き姉弟をリーサさんの所で預かってもらうことを話しカーティさんのブレスレットに転送小屋の鍵を登録したので、後は自力で来て下さいと告げる。

「じゃちょっとお父さん達から離れようね。危ないから」とリディアさんの突撃を避けるためにカーティスさん達から離れた所でゲートを開いて潜る。

「あっ!」と声が聞こえたが気にしない。
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