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◆過労死目前でした
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工房の自室へと戻ると「思ったより早く終わったの」とガンツさんが言う。
「確かにお昼前に終わるとは思ってなかったね」
「で、お前は双子の妹に何を作ってやるんだ?」
「聞きたい?」
「ったく、もったいつけやがる。いいから、話せよ。気になるじゃねえか」
「そんなにもったいぶるもんじゃないけどね」とメモ紙を見せながらガンツさんに一つずつ説明する。
「例えば、これは高いところに吊り下げて、音を鳴らしながらぶら下げたおもちゃを回すだけの物、これは手に持って振ると中に入れた粒がガラガラと音が鳴るだけ。後これは…」
「もうええ、大体分かった。基本は手に持って音が鳴るんじゃな」
「そう、もうある?」
「いや、今お前が言うたヤツは見たことないの。しかし、子供もおらんお前がどこからこんな発想をするのか、不思議でしょうがないの」
「(危ね~)ま、まあ俺もまだ子供だし…」
ガンツさんがこちらを訝しげに見ているが、確信を持つまでには至ってないようだ。
まあ、前世の記憶を持って異世界からやってきましたって言ったら、どこかに連れて行かれて閉じ込められるだろうな。
今の俺なら閉じ込められても、多分大丈夫だろうけどね。
「まあ、ええわ。どれ、ワシも手伝うから作ってみるか。もしかしたら、旦那の店でも売れるかもしれんしな」
「『おもちゃ工房』も立ち上げる?」
「あ~そういや、スラレールもあったな。あれは魔導列車が広まれば売れるぞ。なら、それもいいかもな」
「もし作ったとして、誰か任せられる人はいるの」
「興味を持ちそうなのは、三男かな。ちょうど子供も生まれるし」
「そうなると今の仕事を辞めることになるんじゃないの?子供が産まれる前に転職させるのは可哀想だよ」
「何も辞める必要はないさ。今は、ここで経理の仕事に就いとるからの。仕事が一つ増える程度じゃ」
「それって、過労死しそうなんだけど…」
「そうならんように今鍛えとる」
「ガンツさん、それはだめだよ。鍛える前に休みをあげなよ」
「じゃが、あいつが忙しいのは半分以上はお前のせいでもあるんだがの」
「何で俺のせいになるのさ」
「お前が作る、物が売れる、経理としての仕事が増える。それとお前が作ると材料の仕入れが必要になる、材料の発注作業が増える、経理としての仕事が増える。ってなるじゃろ」
「いやいや、忙しいんなら人を増やしてあげてよ。一応、父親なんでしょ」
「じゃがな、ただ人を増やす言うても読み書きが出来て、計算出来る奴を探すのも大変なんじゃぞ。そんな暇もないから、あいつに頑張ってもらうしかないんじゃ」
「なら、ガンボさんに言って人材を確保しないと」
「何で、そこでガンボが出て来る?」
「前に学校を作る話をしたじゃん。あれ?そういや、あれから連絡ないよね。今はどうなってんだろ。リーサさんのお父さんにも連絡してないや」
「そういや、そんなこともあったの。なら、昼には久々にガンボの所に行ってみるか」
「そうだね、そっちもちゃんと進めとかないと三男さんに会う前に過労死しそうだね」
「お前…ワシの息子じゃぞ。縁起でもないことを言うなよ」
「でも、ガッツリ働かせているのはガンツさんでしょ。それをどうにかしないと、俺の言ったことが予言から現実になるよ」
「あ~分かった。ガンボとちゃんと話して進めよう。これもドワーフタウンの為じゃて」
「そうだよ。頑張んなきゃね。『おじいちゃん』」
「…」ガンツさんがジト目でこっちを見る。
「早く慣れないとね。『おじいちゃん』」
「…」
「何?怖いんだけど…」
「ワシはお前の『おじいちゃん』ではない!」
「そんなに怒ることないじゃん。もう大人気ないな~」
「ふん!お前の双子の妹のおもちゃより、ワシの息子の方が大事じゃ。さっさと昼飯を済ませてガンボのところに行くぞ」
「もう、分かったよ」
少し不機嫌なガンツさんと無言で昼食を済ませると、ガンボさんに電話を掛けて今はどこにいるのかを確認する。
『何じゃ久しぶりじゃの』
「ガンボさんは、今どこにいるの?」
『ワシか?ワシは今は醸造所の建設が終わって、醸造所の中の設備に取り掛かっているところじゃ。それがどうした?』
「あのさ、学校の話はどうなったの?人集めとか色々話していたと思うんだけど」
『おう、それな。こっちから連絡するつもりがすっかり忘れとったな。いかんな~酒の方に話がそれてしもうての。人は集めたが、ケインに連絡しとらんかったから施設もまだじゃな』
「じゃあさ、学校について確認したいから、今から工房まで来れる?」
『今からか…ああ、いいぞ。少し待っとれ。引き継ぎ済ませたら行くから』
「お願いね。じゃ」と電話を切る。
「どうじゃった?」
「向こうも忘れていたみたいだけど、ある程度の人集めは終わっている見たいよ」
「そうか。で、ガンボは来るのか?」
「うん、引き継いだら来るって」
「そうか。カーティスにはちゃんと連絡したのかの」
「聞くの忘れたけど、来てから聞けばいいよね」
「じゃな。なら、それまでワシの息子の為に何が必要かを考えてみようかの」
「まずは父親の優しさが必要だと思うよ」
「ぐっ」
「過労死ギリギリまで働かせるのは、どうなんだろうね」
「…あいつが平気だと言うたんじゃ。ワシは悪くない…と思う」
「ふ~ん、そんなこと言うんだ」
「何でじゃ、本人が言うんじゃ。自分の体は本人がよく分かっているんじゃないんか」
「それはダメだよ。ガンツさん、本人は『自分がやらなきゃダメなんだ』って思い込んでいるからね」
「それのどこが悪いんじゃ?」
「え~大体の仕事は特殊なこと以外は誰がやってもそんなに大きくは変わらないって」
「じゃが、代わりにやってくれる奴がおらんのだから、しょうがないことじゃろ」
「そうだよね、結局はそこに戻るんだよね~」
「だから、あいつには頑張ってもらわんとな」
「あのさ、前に作った魔導計算機は使わせているの?」
「どうじゃろ?」
「まずは、それを用意して使える人を増やそうよ。それから、ちゃんと早く家に帰してあげて、休みもちゃんと取らしてあげてね」
「そこまで必要か?」
「そこまで必要だから、これでも少ないくらいだから」
「お、おお…分かった」
そこへ部屋の扉がノックされガンボさんが入って来る。
「邪魔するぞ~」
「確かにお昼前に終わるとは思ってなかったね」
「で、お前は双子の妹に何を作ってやるんだ?」
「聞きたい?」
「ったく、もったいつけやがる。いいから、話せよ。気になるじゃねえか」
「そんなにもったいぶるもんじゃないけどね」とメモ紙を見せながらガンツさんに一つずつ説明する。
「例えば、これは高いところに吊り下げて、音を鳴らしながらぶら下げたおもちゃを回すだけの物、これは手に持って振ると中に入れた粒がガラガラと音が鳴るだけ。後これは…」
「もうええ、大体分かった。基本は手に持って音が鳴るんじゃな」
「そう、もうある?」
「いや、今お前が言うたヤツは見たことないの。しかし、子供もおらんお前がどこからこんな発想をするのか、不思議でしょうがないの」
「(危ね~)ま、まあ俺もまだ子供だし…」
ガンツさんがこちらを訝しげに見ているが、確信を持つまでには至ってないようだ。
まあ、前世の記憶を持って異世界からやってきましたって言ったら、どこかに連れて行かれて閉じ込められるだろうな。
今の俺なら閉じ込められても、多分大丈夫だろうけどね。
「まあ、ええわ。どれ、ワシも手伝うから作ってみるか。もしかしたら、旦那の店でも売れるかもしれんしな」
「『おもちゃ工房』も立ち上げる?」
「あ~そういや、スラレールもあったな。あれは魔導列車が広まれば売れるぞ。なら、それもいいかもな」
「もし作ったとして、誰か任せられる人はいるの」
「興味を持ちそうなのは、三男かな。ちょうど子供も生まれるし」
「そうなると今の仕事を辞めることになるんじゃないの?子供が産まれる前に転職させるのは可哀想だよ」
「何も辞める必要はないさ。今は、ここで経理の仕事に就いとるからの。仕事が一つ増える程度じゃ」
「それって、過労死しそうなんだけど…」
「そうならんように今鍛えとる」
「ガンツさん、それはだめだよ。鍛える前に休みをあげなよ」
「じゃが、あいつが忙しいのは半分以上はお前のせいでもあるんだがの」
「何で俺のせいになるのさ」
「お前が作る、物が売れる、経理としての仕事が増える。それとお前が作ると材料の仕入れが必要になる、材料の発注作業が増える、経理としての仕事が増える。ってなるじゃろ」
「いやいや、忙しいんなら人を増やしてあげてよ。一応、父親なんでしょ」
「じゃがな、ただ人を増やす言うても読み書きが出来て、計算出来る奴を探すのも大変なんじゃぞ。そんな暇もないから、あいつに頑張ってもらうしかないんじゃ」
「なら、ガンボさんに言って人材を確保しないと」
「何で、そこでガンボが出て来る?」
「前に学校を作る話をしたじゃん。あれ?そういや、あれから連絡ないよね。今はどうなってんだろ。リーサさんのお父さんにも連絡してないや」
「そういや、そんなこともあったの。なら、昼には久々にガンボの所に行ってみるか」
「そうだね、そっちもちゃんと進めとかないと三男さんに会う前に過労死しそうだね」
「お前…ワシの息子じゃぞ。縁起でもないことを言うなよ」
「でも、ガッツリ働かせているのはガンツさんでしょ。それをどうにかしないと、俺の言ったことが予言から現実になるよ」
「あ~分かった。ガンボとちゃんと話して進めよう。これもドワーフタウンの為じゃて」
「そうだよ。頑張んなきゃね。『おじいちゃん』」
「…」ガンツさんがジト目でこっちを見る。
「早く慣れないとね。『おじいちゃん』」
「…」
「何?怖いんだけど…」
「ワシはお前の『おじいちゃん』ではない!」
「そんなに怒ることないじゃん。もう大人気ないな~」
「ふん!お前の双子の妹のおもちゃより、ワシの息子の方が大事じゃ。さっさと昼飯を済ませてガンボのところに行くぞ」
「もう、分かったよ」
少し不機嫌なガンツさんと無言で昼食を済ませると、ガンボさんに電話を掛けて今はどこにいるのかを確認する。
『何じゃ久しぶりじゃの』
「ガンボさんは、今どこにいるの?」
『ワシか?ワシは今は醸造所の建設が終わって、醸造所の中の設備に取り掛かっているところじゃ。それがどうした?』
「あのさ、学校の話はどうなったの?人集めとか色々話していたと思うんだけど」
『おう、それな。こっちから連絡するつもりがすっかり忘れとったな。いかんな~酒の方に話がそれてしもうての。人は集めたが、ケインに連絡しとらんかったから施設もまだじゃな』
「じゃあさ、学校について確認したいから、今から工房まで来れる?」
『今からか…ああ、いいぞ。少し待っとれ。引き継ぎ済ませたら行くから』
「お願いね。じゃ」と電話を切る。
「どうじゃった?」
「向こうも忘れていたみたいだけど、ある程度の人集めは終わっている見たいよ」
「そうか。で、ガンボは来るのか?」
「うん、引き継いだら来るって」
「そうか。カーティスにはちゃんと連絡したのかの」
「聞くの忘れたけど、来てから聞けばいいよね」
「じゃな。なら、それまでワシの息子の為に何が必要かを考えてみようかの」
「まずは父親の優しさが必要だと思うよ」
「ぐっ」
「過労死ギリギリまで働かせるのは、どうなんだろうね」
「…あいつが平気だと言うたんじゃ。ワシは悪くない…と思う」
「ふ~ん、そんなこと言うんだ」
「何でじゃ、本人が言うんじゃ。自分の体は本人がよく分かっているんじゃないんか」
「それはダメだよ。ガンツさん、本人は『自分がやらなきゃダメなんだ』って思い込んでいるからね」
「それのどこが悪いんじゃ?」
「え~大体の仕事は特殊なこと以外は誰がやってもそんなに大きくは変わらないって」
「じゃが、代わりにやってくれる奴がおらんのだから、しょうがないことじゃろ」
「そうだよね、結局はそこに戻るんだよね~」
「だから、あいつには頑張ってもらわんとな」
「あのさ、前に作った魔導計算機は使わせているの?」
「どうじゃろ?」
「まずは、それを用意して使える人を増やそうよ。それから、ちゃんと早く家に帰してあげて、休みもちゃんと取らしてあげてね」
「そこまで必要か?」
「そこまで必要だから、これでも少ないくらいだから」
「お、おお…分かった」
そこへ部屋の扉がノックされガンボさんが入って来る。
「邪魔するぞ~」
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