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◆足りないのは運転手でした

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ガンツさんに出来たことを報告すると「ちょっと待て!こっちももう少しじゃ。」と言うので暫く待つ。

「ああ、そう言えば前方はリフトアップ出来ないとまともに走れないよな。それだと…」
しばらく前方のリフト機構を考える。
「前の草刈り部分とベルトコンベアーとの接続箇所でリフトアップした時に干渉しないようにとなると、接続箇所に余裕を持たせておかないとまずいか。そうなると、この高さじゃダメだね…」とか、ぶつくさ言いながら草刈り部分にリフト機構を取り付け、ベルトコンベアーとの接続位置を調整する。
「これでいけるか。」
「ケイン、待たせたか?」
「あ、ガンツさん。そんなことはないよ。今は前を持ち上げるためのリフト機構を取り付けていたところだから。」
「リフトか。確かにいるわな。」
「でしょ。だから、今それを取り付けていたんだ。」
「そうか。じゃあ、お前もそれが終われば手持ちの作業は終わりか。」
「だね。どうする下に行って様子でも見る?」
「そうじゃの。進み具合でも見てやるか。」
「それとさ、作るのはガンツさんの体型に合わせてもらわないと運転出来ないってのを言うの忘れてたことに気付いてさ。」
「それは言うとかんとダメじゃろ。」
「そうなんだよね~てっきり誰かが気付いて言ってくるもんだと思ってたのにね。そこの誰かさんとかさ…」とチラッと横目で見るが無視された。

「はい、終わったよ。じゃ、片付けたら下に行こうか。」
「そうか、なら手伝うかな。」

工作室を片付け、エレベーターで下に降りようとした所で気付く。
「ガンツさん、お昼じゃない。もう、また食べ損なうところだったよ。」
「何じゃそんなに腹が減ってたのか?」
「そうだよ。ここの所はさ、そんな空腹感も忘れるくらいに忙しかったり楽しかったりしてたからね。今日みたいにちゃんと食べれる日にはゆっくりと食べないと体にも悪いよ。」
「体に悪いか。そうじゃな、なら部屋を替えて昼飯とするか。」
「うん、そうしよう。」

自室へと戻り昼食を済ませるとエレベーターで降りる。
「どれ、どのくらい出来ているかの。イーガン、いるか?」
「親方!明日の朝の約束だろ?」
「そうじゃがな、ケインがな伝え忘れたことがあるらしい。ほれケイン。」
「あのね、実は…」
「実は?」
「その、トラクターなんだけどね。」
「けど?」
「ガンツさんが運転出来る様にしてもらえるかな?」
「ハァ~何だ、そんなことか。勿体ぶって話すから何か問題があるのかと思って身構えて聞いてみれば…それなら心配無用だ。ちゃんと俺達ドワーフの体型でも運転出来るようにしてある。だから、明日の朝を楽しみにしといてくれ。」
「分かったよ。じゃ、明日朝お願いね。」
「ああ、任せとけ。」
「後、これも預けとくから三つほど作っといてもらえるかな。もちろん、トラクターの後でいいんだけどね。それと、これは明日使うから返してね。じゃ!」
「ちょい待ち、何を涼しげに言って帰ろうとしてんのかな?」
「え?何かマズかった?」
「『何か』じゃねえだろうが!何サラッと説明しただけで済ませるんだ。もう少し何に使う物で、ここに注意してとか、何か言うことがあるだろうが!」
「ガンツさん、パス!」
「こっちに寄越すな!ったく、イーガンよ。これは無理か?」
「親方!無理かどうかの前にちゃんとした説明をしてくれ。何もないまま『同じ物を用意しろ』って言われても無理だろう。」
「そうか?ワシはそのケインの無茶振りには耐えてきたがの。そうか、無理か~」
「ぐっ、このくそ親父!安い挑発しやがって!いいだろ、やってやるよ。だが、親父も手ぶらで作った訳じゃないんだろう。何か手本にしたヤツがあるはずだ。それも出してくれ!」
「チッいらんことに目敏いの~ケイン、出してやってくれ。」
「はい、これがその元になった模型ね。今作っているそのトラクターに接続して使うヤツだから。」
トラクターの模型をアタッチメントを接続した状態でテーブルの上に出す。
「ここの前に付けた奴でトラクター前方の雑草のした部分を刈り込んで後ろに流すと、今度は縦に分割して切断するんだ。そして、また後ろの粉砕機に入れて最後は圧縮して出てくるんだ。ここまではいい?」
「あ、ああ分かった。要は雑草を刈って纏めるまでが、このアタッチメントとやらの仕事って訳だ。」
「そう!そういうこと。じゃあお願いね。俺達はそこの隅っこを使わせてもらって回収用の軽トラックを作るから。」
「分かったから、大人しくしといてくれよ。」
「は~い、分かった。」
「本当、頼むぞ。」

ガンツさんと工房の隅っこで、次にすることを相談する。
「で、ケインよ。さっきはイーガンに軽トラックを作るとか言うてた様じゃが、それはどんなもんじゃ。」
「前に軽貨物を作ったでしょ?」
「ああ、作ったな。それが?」
「今度の軽トラックは、そのサイズで後ろの後部座席がなくて荷台になっただけだから、簡単でしょ?」
「まあ、作りは分かったが、何でそれが必要なんじゃ?」
「だって、圧縮したら、その固めた物は雑草を刈った後の地面に放り出していくから誰かが回収しないとダメでしょ。だから、それを作るの。」
「作るのはいいが、誰が運転するんじゃ?」
「誰って…あ、ガンツさんはトラクターを運転するよね。」
「まあ、そうじゃな。じゃからワシには無理じゃぞ。」
「そうすると、イーガンさん?」
「まあアイツがライセンス保持者かどうかは知らんが、素直に言うことを聞いてくれるかもわからんぞ。」
「困ったね。」
「困ったの。」
「じゃ、作ろうか。」
「おい、話は聞いていたじゃろ。誰も運転してくれないかもしれんぞ。」
「でも、してくれるかもなんでしょ。なら、先に作っちゃおうよ。運転手は後でどうにでもなるんだし。ほら、作るよ。」
「ったく、相変わらずの能天気と言うか、お調子者と言うか、楽天的じゃな。言うとくが褒めとらんからの。」
「…あ、先に言われちゃった。」
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