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◆区割りしました

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ガンツさんと工房の自室に戻ると改めてドラゴニュータウンの区割りを話し合う。
「まずは水田だよね。これは川側で決まりとして、どれくらいにするかだよね。」
「最初はそんなに作れんのだろ?種も用意がないしな。」
「そこは任せてよ。少しあれば大丈夫だから。」
「何かイヤな予感しかしないが…まあ、お前がやれると言うんならやってみたらええ。」
「うん、じゃあ区割りに戻るけど川側がいいよね。それから…」
「ちょっと待て!まさか川側って山の麓まで広げるつもりか?」
「ん?そうだけど。」
「その『そうですけど何か?』って顔やめろ。大体、そんなに広げて大量に作ったとして余らせたらどうするつもりじゃ?」
「何言ってんの。余る訳ないじゃない。これでも足りないくらいなんだから。」
「だから、なぜそうなる。ワシは米については詳しくはないが。明らかにアズマ村よりは多いじゃろ。」
「そうは言ってもさ。食べる分にお酒に回す分、それに糊に米粉にって色々使い道はあるし。それにパンに比べて腹持ちもいいから、この街でも広めたら足りなくなると思うんだけどね。」
「それはやってみないと分からんのじゃないか?」
「うっ…それはそうだけどさ。いいの!俺が広めるから!」
「そういう変なところは強情じゃの。」
「いいから、区割りを進めるよ。」
「はいよ~しかし、何でワシらだけでやる必要がるのかの?」
「それはさっきのを見て分かったでしょ?」
「まあ、分からんでもないが。それでも経験者は必要じゃぞ。」
「問題はそこなんだよね。もう、いっそのこと直接スカウトしてこようかな。」
「もう、アイツらの手は借りんと言うことか?」
「う~ん、はっきりと言えばそうなるね。」
「じゃが、アイツらと反目したままで、仮にそのスカウトとやらが上手くいっても素直に来てくれるのかは微妙なところじゃろ。」
「そう言われれば、そうだけど…こっちから頭を下げるのはやりたくはないかな。」
「それはワシもお勧めしないが、どこかで妥協してやった方がいいとは思うぞ。」
「じゃあ、向こうから謝罪して来るなら譲歩するってことで。」
「そんな構えんでも、こっちから助け舟を出してやれば、大きな貸しにはなると思うが?」
「そうだね、待つよりもこっちから動こうか。」
「ああ、そうしてやれ。あんな陰気臭いのが側にいられると、こっちまで気が滅入るわ。それに区割りの話をするなら、アイツらも加えてやれ。その方が話も早いじゃろ。」
「え~」
「話を聞くだけ聞いて区割りが済んだら、その後でまた考えればいいじゃろ。」
「う~分かったよ。でも、今日はやめとくね。」
「まあ、ついさっきの話じゃからな。」
「じゃあ、とりあえずで区割りを考えて明日にでも確認してみるってことにしようか。」
「そこはまだ、諦めんのか…」
「いいから、ほら。」とドラゴニュータウンの地図をタブレットに表示するとA3サイズの用紙に転写する。

まずは河の側に大型車が行き違い出来る位の幅で車道を確保する。
「水田だから、取水口は上流のここに設けて排水は下流のこの辺かな。」
「橋の近くは便がいいから、住宅地とか穀物倉庫とかの為に空けといた方が良くないか?」
「住宅地は別として、穀物倉庫は必要か。後は道路側だと水田や畑にはよくないのかな。じゃガンツさんの案を採用して、間の道路から500mは施設用に確保と。」
「住宅地は別って…本気で移住を断るつもりか?」
「別に。ただ、今は白紙に戻したって感じかな。」
「お前、拾ったらちゃんと面倒を見るのがマナーじゃぞ。」
「ガンツさん、それは言い過ぎ。」

施設用の空き地を確保し、周囲を道路で囲む。
「こうやっているとシ○シ○ィを思い出すな。」
「何じゃ?その『シ○シ○ィ』ってのは?」
「(あ、口に出てたか。)何でもないよ。ちょっとしたパズルみたいで面白いなと思ってね。」
「ワシにはその『パズル』ってのが分からんから、何が面白いのか分からんがな。」
「あれ?もしかして『パズル』もないの?」
「じゃから、ワシは知らん。王都にならあるかも知れんがな。」
「そうなんだ。へ~じゃ水田はここから、縦に100mで横も100mで一面として、山側まで作るとして…間に農道を入れて…と、こんなもんかな。」
「お前、人の土地だと言うのに遠慮がないな。」
「いいでしょ。代わりに面倒なことをやってあげているんだから。」
「それにしても水田だけで、この広さは必要か?欲張り過ぎな気もするが。」
「まあ、今はあくまでも予定だから。気にしない、気にしない。で、次は畑の方だね。まずは水田とは広めの道路で分断して…」
同じように畑にビニールハウス…いや、ここはスライム樹脂ハウスに果樹園と作れるだけ作って区割りを終わらせる。

「結構、作ったな。だが、あれだけの土地を畑にするだけでも人手が足りんぞ。」
「やだな~ガンツさん、俺達のモットーを忘れたの?」
「忘れはしとらん。『無ければ作る』じゃろ。ワシもそこまで耄碌はしとらん。じゃが、それをするための知恵というかアイデアが湧いてこん。」
「そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないの?まずは草を刈る必要があるよね。」
手元で模型を弄りながら、ガンツさんに話しかける。
「まずはそうじゃな。草を刈ってしまわんことには進めることは出来ん。」
「じゃあ、その『草を刈る』のが必要だから、前方にその草刈り用の刃を付けるでしょ。」
手元の模型に『草刈り用の回転刃』を取り付ける。
「で、刈った後にそのままだと、長すぎて邪魔だから『粉砕』しないとね。」
今度は『回転刃』の後ろに粉砕用の刃を組み合わせて『粉砕機』を取り付ける。
「そうすると、粉砕して細かくなった雑草もそのままじゃ邪魔になるから、今度はそれを圧縮してやる必要があるね。」
また手元の模型に今度は『圧縮機』を『粉砕機』の後に追加する。
「ほら、これで草刈りから刈り取った雑草の圧縮までをこの一台でこなせるようになりました。」
「ハァ~お前は…」
「何?褒めるんなら、早くね。」
「褒めんわ!ったく。で、この車の部分は今作ってる物で間に合わせるのか?」
「違うよ。もう今までの車とは使い方から違うから、新しく作る必要があるね。」
「まあ、それはいいが。今は草刈りに特化しとるが目的別に他のも作っていくのか?」
「そんな面倒なことはしないよ。まずはこの元になるトラクターを作って、後はそれぞれ専用のアタッチメントで何役もこなせるようにするつもりだよ。」
「その『トラクター』ってのは、この妙な車部分のことでいいんだよな?」
「そう!これが色んな場所で活躍するんだよ。耕して、収穫して、運んでって具合にね。」
「確かにこれ一台で賄えるなら、色々と助かるし人もそんなには必要ないな。」
「でしょ!でも、水田だけは、それ専用のが必要になるんだよね。」
「まあ、水に浸かるんじゃから、その辺はしょうがないのじゃろ?」
「それでも稲を植える、刈るの二つだけどね。特化させるのは勿体無いと感じるけど、これだけは他のと一緒には出来ないんだよね。」
「まあ、ええわ。とりあえずは、そのトラクターってのを作るぞ。」
「数が必要だし、下に行こうか。」
「数って、一体何台作るつもりじゃ?」
「少なくとも十台は欲しいかな。」
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