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◆名前もムシでした

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朝になり、格納庫へ向かうとガンツさんが作業していたので声を掛ける。
「おはよう、ガンツさん。昨日はごめんね。」
「おうケイン、おはよう。まあ旦那の気持ちも分かるし、しょうがない。ワシも少し防衛策を考えとかんとな。」
「ごめんね、俺のせいで。」
「いまさら何を言う。ワシも面白がって一緒に作ってきたんじゃ。な~に、何かあれば一発かませばいいし、逃げ込む場所もあるしな。何も心配はいらんて…今の内はな。」
「そうか、そうだよね。それで、話は変わるけど工房はいいのかな?もう、俺達の作業も落ち着いたし向こうも終わった頃じゃないの?」
「急に変わりすぎじゃ。じゃが、そう言えば、そうじゃの。少し様子を見にいくか。ついでにワシのも見せつけてくれるわ。くくく。」
「じゃあ、今日は溜まってる用事を片付けて回ろうか。」
「よし、ちょっとしたドライブじゃな。少し待ってろ、片付けてくるから。」
「あ、俺も手伝うよ。」
「そうか、すまんな。」
ガンツさんの片付けを手伝い今日回るコースを確認する。

出る前にコースを確認しようとガンツさんと軽く打ち合わせを行う。
「まずはシンディじゃな。もう一週間過ぎとるしの。」
「でも、その前に竜人達の様子も見ないと。」
「アイツらは面倒そうじゃし、アズマ村に行ってからでもええじゃろ。」
「それもそうか。何も最初っから疲れる必要もないよね。」
「そうじゃろ。で、まずは工房によってからじゃな。」
「後さ、デューク様達が出る前にバイク隊の人達の蒸気機関をエンジンに換装したいんだよね。それか少し大きめのバイクにするか。」
「それはセバスのじいさんに確認が必要じゃないのか?出発も迫っとるしの。」
「そうか、勝手にする訳にもいかないもんね。後でセバス様に確認するから、ガンツさんも忘れないでね。」
「なら、シンディの後に寄るか。マイクロバスの調子も聞いとかんとの。とりあえずは王都まではいけたんじゃろうし。」
「そう言えば、それも確認したかったのに忘れていたね。」
「まあ、セバスのじいさんの運転でくたばりかけてたしの。あの時には何を聞いても無駄じゃったろうで。」
「じゃあ、順番としては、ここの工房によって作業の確認とガンツさんのお披露目をしてから、領都までガンツさんの車で行くでしょ。」
「ああ、工房でバラされず無事ならな。」
「やっぱり、そうなると…」
「ああ、ワシならするからな。まあ、そうなったらなったでいつもの方法で行けばいいじゃろ。」
「まあね。で、領都に着いたらシンディさんの所を訪ねて現状の確認と職人の集まり具合の確認と学校のことも聞いとかないとね。」
「学校か、そう言うことも言っていたな。」
「何か今日中に終わらせられるのか不安になって来た。」
「そうじゃな、最初の工房の時点で挫けるかもしれんな。」
「そこはガンツさん次第でしょ。頑張ってよ。」
「ワシにあいつらを抑えられるのなら、こんな所で作業なんかしとらんわ!」
「それもそうだよね。話を戻すけどシンディさんの所を出てからはセバス様に確認してからバイクを預かるでしょ。」
「預かるのはいいが、どこで作業するんじゃ?ここの工房では作ったことないから、手間取るぞ。」
「ならさ、蒸気機関での製造はもうやめて、エンジンに変えていこうか。その方がいい気がしてきた。」
「そうじゃな、今のエンジンを知ると蒸気機関の暖気を待つのは、少し面倒くさいの。」
「じゃ、そう言うことで。向こうでの説明はお願いね。」
「ワシがするのか?」
「だって、親方じゃん。」
「いや、お前だって今は共同経営者みたいなもんじゃろ。」
「でも、肩書きは単なる開発部員でガンツさんが代表だからね~」
「汚いぞ!ケイン、ワシに面倒なことばかりやらせおって。」
「だって、まだ八歳にもなってないのに…児童虐待で訴えるよ?」
「何が『児童虐待』じゃ!ワシだけじゃなく領主までこき使うガキがどこにいる!」
「目の前にいるでしょ?」
「ぐっ…まあええ。これもケインへの貸しにしとくからな。『児童』と言えなくなったらまとめて払ってもらうからの。」
「結構先だけど、その時まで大丈夫?ちゃんと覚えていられるのかな?おじ「じい様言うな!」…まだ先の話をするなんてね。」
「お前はワシが十年も保たんと言うのか?」
「いや、全然そんなつもりはないけどさ。いつも『カァ~』となるから、いつかは頭の中の血管が切れないかなとは思っているよ。」
「ふん、その原因はお前じゃろうが!」
「え~そうなの?アンジェさんといちゃついている時も興奮するんじゃないの?」
「アンジェとはお互いそうならん様に気ぃ使いながらじゃから、大丈夫じゃ。…って何を言わすんじゃ。全く…」
「顔赤いよ?大丈夫?」
「う、うるさい!次じゃ次!向こうの工房に寄った後はアズマ村に行くんじゃろ。もちろんワシの車でな。」
「それなんだけど、あのフォルムを見たら討伐対象にされそうで少し心配だよね。いっそ、緑にしちゃう?」
「それやると思いっ切り虫じゃねえか。ダメだ!そんなのはダメだ。色は今のまま黒色でいい。」
「それも虫っぽいんだけどな~」
「いい!ワシがいいと言っとる。」
「じゃ、アズマ村までガンツさんの車の走破性能の確認込みで向かって、村長との移住話を確認してから、竜人との話し合いでドランさんの所に行くと。」
「はあ、今日の予定を聞くだけで疲れた気がするわ。やめようかな~」
「まずは自慢しに行くんでしょ?ほら、立って。」
「そうじゃった、アイツらの驚く顔を見らんとの。くくく。」
「なら、ほら外に出るよ。」
「ああ、分かった。分かったから押すなよ。」

格納庫の外に出てガンツさんに車を出してもらう。
「いくぞ!『解除!』」
「ガンツさん、これには名前付けないの?付けた方が解除する時にイメージし易くなるでしょ。」
「確かにな。う~ん…いきなりじゃいいのが思い浮かばんな。」
「(見た目がコオロギっぽいんだよな。)ロギ、ロギー、コロ…」
「ケイン、それじゃ!」
「それってどれ?」
「『ロギー』じゃ。よし、こいつはロギーじゃ!」
「(うわぁ決まっちゃったよ。)…い、いいんじゃないかな。」
「ふふふ、待ってろよ。」
「(うん、秘密結社の親玉の乗り物だよね。ダーク感満載だし。)」
「ほれ、ケイン!行くぞ、さっさと乗るんじゃ。」
口元から下りて来た運転席と助手席に乗り込む。
「やっぱり別々にしといてよかったね。」
「そうじゃな、最初は面倒と思ったが、こうやって実際に乗り降りすると、やってよかったと思えるな。」
二人して口元に飲み込まれると目の前の視界が広がる。
「うわぁ意外と高いね。それにガラス張りにしたせいか広い!」
「ふふふ、どうだ!この見晴らしの良さは!」
「俺のアイデアじゃん。」
「ま、まあそうとも言うな。よし、出すぞ。」
『ブオン』とエンジンが始動し一速に入れると静かに動き出す。
「意外と静かだね。後ろにエンジンがあるから、もっとうるさいかと思ってた。」
「エンジンルームにあの防音の魔道具を使っているからな。だが、最初に動かしてエンジン音がしないのは少し淋しいんでな、最初は起動せずに動き出したら魔道具のスイッチが入るようにしたんじゃ。」
「へ~なるほど。いいね、俺もやらせてもらおう。」
「何じゃワシのをパクるのか?」
「いいでしょ。『いいものは俺のもの』なんだし。」
「何じゃそのどこぞのガキ大将のような台詞は?」
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