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◆あの捕食シーンを思い出しました

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家に戻るとクリス兄さんだけが残っていた。
「クリス兄さん、父さんはどうだった?」
「ケイン、おかえり。父さんね、最初はゴネていたけどケインはここにいないし、物はないしでカメラも収納して、現物を見に行ったよ。まあ、説教もされるだろうけどね。」
「そうなんだ。ありがとうねクリス兄さん。」
「ふふふ、お礼なんていいよ。僕達の父さんなんだし。それよりさ、あのカメラって言うの?僕も欲しいんだけど、ダメかな?」
「いいよ。ちょうど予備もあるし。ブレスレットも渡すね。何色がいい?」
「何でブレスレット?まあ、水色で。」
「じゃあ、はい。ブレスレットとカメラとタブレットね。」
「これ?どうするの。」
「まずはブレスレットを腕に嵌めて、魔力を流して。」
「これでいいの?」とクリス兄さんがブレスレットに魔力を通すと一瞬光り登録出来たようだ。
「うん、いいよ。じゃ一度カメラとタブレットを収納してもらえる?対象に手を翳して『収納』って呟けばいいから。」
「こう?『収納』…あっ消えた。じゃ、こっちも『収納』…へぇこれは便利だね。ありがとうケイン。」
「じゃ、今度は出す方ね。頭の中で例えばカメラをイメージしてから手の平を上にして『解除』って呟いて。」
「分かった。だんだん慣れて来たよ。手の平を上にして、カメラをイメージして『解除』…うわ、重っ。」
「重たい時は、テーブルとかの上で手の平を下にして『解除』って言えばいいから。」
「そういうことも出来るんだね。でも壊さないか心配だから、手に乗せるようにするよ。」
「それから、カメラの使い方は…」
「それは大丈夫。父さんがガンツさんから教えてもらっていたのを聞いていたから。」
「そうなんだ。それはそれで凄いね。」
「こんなのを作れるケインに凄いって言われてもな~」
「クリス兄さんもそう言うこと言うの~」
「もしかして、サム兄さんとのケンカの原因も同じ?」
「まったく同じじゃないけど、一因ではあるのかな。もう兄弟なんだから、そう言うのは嫌なんだけどね。」
「それは逆だよ。兄弟で、しかも男同士だし、ケインが一番下だからね。今は違うけど…あ、男兄弟で括れば下か。ふふふ。」
「え~俺には分からないよ。」
「それは負けてもいいって思える人が上にいるからだよ。僕なんかサム兄さんに勝ちたいって気持ちもあれば、ケインには負けたくないって思うからね。サム兄さんなんかは僕達に負けない!って気持ちが強いんじゃないかな。」
「あ~そう言うことなんだ。」
「そうだよ。だから、ケインの活躍は嬉しいんだけど、負けたくないって気持ちもあって、難しいんだよ。特に今日の夕食だってさ、メニューもそうだけど料理に使った道具もケインが用意したんでしょ。もう勝てる要素が見つからないんだけどね。どうしようか?」
「もう、クリス兄さんは俺にない物も持っているじゃない。俺には店の経営なんて分からないしね。」
「ふふふ、そこはケインにもサム兄さんにも負けるつもりはないよ。でも、口に出して褒めてもらうのは気持ちいいね。今度からたまには褒めてよ。」
「いいよ、覚えていればだけど。」
「ふふふ、毎回褒められると嘘になりそうだから、思い出したらでいいからお願いね。じゃ、僕も寝るね。今日は本当にありがとう。おやすみケイン。」
「おやすみなさい。」

サム兄さんだけじゃなく、クリス兄さんまで俺をライバル視していた事に驚いたけど、男兄弟なら当然なのかな。
前世でも末っ子だったから、その辺の感情には疎いままだけどね。
「まあいいや、お風呂入って寝てしまえ。」

翌朝、父さんに車の説明と試乗をして欲しいと話すと、昼過ぎに時間が空くから電話すると言われる。
「じゃあ、お願いね。」と格納庫へと出かける。

「おはようガンツさん。」
「おう、おはようケイン。昨夜はどうじゃった?」
「父さんからタブレットを離す事が出来ずに兄弟三人で協力して、何とか離したよ。俺の時はあそこまで親バカじゃなかった気がするんだけどね。」
「まあ、誰もがそう思うんだろうが、ほぼ一緒だと思うぞ。だが、双子のしかも女の子だろ?やっぱり、お前達以上かもな。」
「だよね~」
「ほれ、それはいいから手伝え。ワシだけで少しは進めていたが、やっぱり一人じゃどうしようもならん。」
「はいはい、手伝うね。そう言えばさ、シンディさんから連絡はあったの?三日後に連絡するって言いながら、一週間経ったけどさ。」
「そういや、そう言ってたな。ワシも忘れていたが、何の連絡もないってのも気になるな。これが終わったら寄ってみるか。」
「そうだね、それがいいと思うよ。」
「あ!そこは違うぞ。」
「え?これでいんでしょ。」
「だから、お前の模型ではここは…ほれ!こうなっているじゃないか。」
「俺の模型って、ガンツさん手は加えないの?」
「何を言う!ワシが言うことをお前が形にしてくれたのがコレじゃろ。なら、ワシが作ったも同然じゃないか。ほら、間違っているところを直さんか。」
「はいはい、俺が間違ってました…っと、これでいいの?」
「おう、それでええ。じゃ次は…」

お昼近くになり、ある程度の形が出来上がる。
「何だか虫っぽいね。」
「言うな!言ったらアンジェが乗ってくれなくなる。」
「分かったよ。でも、虫か…そういや昔のSF映画で口が出てってのがあったな。ねえ、ガンツさん乗り方だけどさ。ここをこうしてさ…」
模型に手を加えながら、ガンツさんに提案してみる。
「お前…これってまんま捕食シーンじゃないか。何も知らない他の奴が見たら『食われる!』と思って騒ぎ出すぞ!」
「そうかな~でも、乗り方としては面白いし格好いいと思うんだけど。ダメかな?」
「まあ、確かに今のままじゃ運転席に乗るには後部座席から回り込むしかないからの。う~ん、よしやってみるか!」
「さすが!ガンツさん、分かってくれるよね。」
「まあ、話を聞いてから、何か胸の奥が騒ついてな。言葉にするのは難しいんだが。」
「(ガンツさん、それは厨二病って言うんだよ。って教えてやりたい!)そうなんだ。へ~」
「ほれ、そうと決まったら仕組みから考え直すぞ。手伝え!」
「はいはい、言い出しっぺは俺だしね。」

搭乗口を追加して…ってまんま『口』だなと思いつつも出来上がったガンツさんの車を眺める。
「まだ、内装が残っているぞ。完成までは手伝ってもらうからな。」
「分かってるって。ねえ、お昼にしない?」
「もう、そんな時間か。いいぞ、昼にするか。」

お昼を食べながら、父さんの車を教習所のコースで走らせることを話す。
「そうか、旦那の車の試乗をな…なあ、ワシの車も間に合うよな。いや、間に合わせるからワシも行くぞ。そうと決まれば急がないとな。ほれ、ケインもいつまでも食っとらんで、手伝え。」
「いや、さっき食べ始めたばかりだよ。もう落ち着いて食べなよ。」
「何を言うとるんじゃ、間に合わんだろうが。」
「だって内装だけでしょ?もう走れるんだから、急ぐ必要はないじゃん。」
「あ、それもそうだな。じゃ食べるか。」
「ホント、このじ「じい様言うな!」…でも、もうすぐじいちゃんなんだから、慣れとく必要があるんじゃないの?」
「少なくともあと二年は『じいちゃん』とは口にすることもあるまいて。まともに喋れんのじゃからな。それにお前のは『悪意』を感じる。」
「そ、そうかな~」
「ふん、まあいいわ。午後はこき使うでな。」
「え~」
「文句言うな!」
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