上 下
149 / 468
連載

◆婚約解消しました

しおりを挟む
サム兄さんの説得に失敗し暗い気持ちで保育所に行こうとするとガンツさんに止められた。
「そんな顔でアンジェやリーサの前に出られると余計な心配をさせちまう。少し落ち着け。旦那にはワシから話しておくから。な、今はいつものお前らしくしとけ。」
「ありがとう、ガンツさん。よ~し!じゃ行こうか。」
「ああ、それでええ。」

保育所の庭にゲートを繋ぎガンツさんと潜る。

「あれ、お兄ちゃん達どこから来たの?」
「ホントだ。ねえどこから?ねえ、どこから?」
「(ケイン、出る場所は今度から考えような。)」
「(ごめん、ガンツさん。こうなるとは思ってなかったよ。)」
「ほら、あなた達何をしているの?って貴方!何でここに?」
「園長先生の知り合いなの?」
「ええ、私の旦那様よ。」
「え~このおじいさんが~似合わな~い。」
「ほ~ら、そんなことを言わない。さあ中へ入りなさい。」
「リーサお姉ちゃんも知っている人?」
「ああ、私の旦那様だ。」
「え~このおじいさんが~それって浮気っていうんだよ~」
「違うぞ。私の旦那様はこっちの方だ。」とグイッとリーサさんに引き寄せられる。
「ダメだ!リーサお姉さんは俺と結婚するって約束したんだ!だから、お前は偽物だ!」
「え~と、リーサさん?」
「済まない、あの子にはずっとプロポーズをされていてな。子供の言うことだとつい、プロポーズを受けてしまったのだ。」
「そうですか、短い間でしたが、お世話になりました。では、僕はこれで。」
「ま、待て待ってくれケイン、子供の言うことじゃあないか。何をそんなに怒るんだ。」
「リーサさん、相手は小さいとは言え、男の子です。その思いを中途半端に弄んではいけません。ちゃんと終わらせて下さい。いいですね。」
「あ、ああ、だが何だか怖いぞ、ケイン。もしかして嫉妬か、そうなのかケイン。」
「だから、そう「顔が紅いな。やっぱりヤキモチなんだな。なんだ~そうか~」…リーサさん、婚約者がもの凄い目で睨んでますよ。先に向こうをちゃんと終わらせて下さいね。これは返事をしてしまったリーサさんの責任ですからね。」
「あ、ああ分かった。ちゃんと終わらせるから。」
「は~何で俺が浮気者みたいな扱いになるんだ。」
「そうか~ケインも嫉妬するんだな。それだけで私は十分だぞ。」
「もう、いいですから。あの婚約者とはキッチリ婚約解消して下さいね。俺は食器洗浄機を取り付けて来るので、その間にお願いしますね。」
「あ、ああ何とかしよう。」
「ガンツさんは、この洗濯機をお願いしますね。」と三台の洗濯機を出す。
「ああ、分かった。ケインも苦労が耐えんのう。」
「いいから動く!」
「「はい!」」

保育所内の台所の流しに食器洗浄機を設置し、側にいた人を呼び止め使い方を説明する。
「へえ、これは便利になるわね。ふふふ、リーサさんが自慢したくなるのも分かるわ。」
「え?自慢て?」
「ああ、リーサさんが男の子に結婚を迫られているのは知ってる?」
「ええ、さっきイヤというほど。」
「その子のプロポーズを断る時にね、『私には素敵な旦那様がいるから、あなたのプロポーズは受けられない』って、毎回言っていたもの。」
「でも、リーサさんは受けたって。」
「だって、しつこいんだもの。私達も一度、受ければ大人しくなるんじゃないのって言っちゃったのよ。ごめんね。」
「いえ、教えてもらってありがとうございます。」
「いいのよ~これ、ありがとうね。」

庭に出るとリーサさんが、あの男の子と向かい合い話している。
「お前にリーサさんは渡せない。」
「ケイン、どうして…」
「何だよ、お前は。リーサお姉さんは俺のプロポーズを受けたんだからな。」
「俺はその前にプロポーズしている。だから、お前の負けだ。文句があるなら俺以上の男になってから出直すんだな。俺はケインと言う。」
「そんなのが何だ。俺はお前なんかに負けないからな!」
「だから、リーサさんじゃなく俺に言って来いとさっきから言っている。俺はそこの工房にいるから、いつでも来るといい。じゃ。リーサさんは俺との用事があるから連れて行くぞ。」
「あ…」

リーサさんの腕を掴んで強制的に連れて来てしまった。
「ケイン離してくれないかな。」
「あ、ごめん。痛かった?」
掴んでいたリーサさんの腕を離し謝る。

「ふふふ、謝らないで欲しいな。私は嬉しかったんだから。あんなにハッキリと他の人に『俺の婚約者』と言ってくれたし。まあ相手は小さい男の子だけどな。」
「そんな意地悪言うんだ。」
「私は頑張って婚約解消しようとしたのに横から邪魔したんだから、それくらい言わせて欲しいんだが。」
「俺は助けたつもりだったんだけどな。」

ガンツさんと合流しガンツさん達は向こうの工房へとゲートを繋いで潜ってもらう。
「デート頑張れよ。」
「あら、そうなの。だから、リーサさんは朝から嬉しそうだったのね。応援するわよケイン君。」
「はいはい、後で家まで来て下さいね。」

二人を送り出し、リーサさんと父さんの店へと出る。
父さんの店で小麦粉、卵、玉ねぎ等を購入する。
次は肉屋に向かい豚肉を購入し家に帰る。

「それでケインは何を作るんだ?」
「まずは小麦粉と卵、塩を用意します。」
「何が始まったんだ?」
「いいから、俺のを真似して。」
「分かった。」
リーサさんも俺の指示通りに小麦粉、卵、塩を用意する。

まずは小麦粉をテーブルの上で小山を作り、中央部に卵を落とし塩を少々入れる。
後は小麦粉と卵を丁寧に混ぜながら、練り込む。

「ここまでは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だと思う。」
「じゃあ、このまま練り込んで、まとめていくからね。」
「ああ、分かった。」

そこから無言で練り上げていく。
ボソボソとした感じがなくなり綺麗な丸になった時点で生地を休ませる。

「じゃあここでしばらく休憩させます。」
「ああ、分かった。結構力を使うもんだな。」
「そうだね。でもここからは、楽になるから。じゃ休ませている間にソース作りをしちゃおう。」
「ああ。で、何をするんだ。」
「まずはひき肉を作ります。」
「ひき肉か、なら魔導ミキサーがいるな。」
「待って、今回は量も多いのでこれを使います。じゃ~ん。」と言い取り出したのは『ミンサー』だ。
「これでひき肉を作るのか?」
「そう、ここに肉を入れて、後はハンドルを回すだけでひき肉が出てきます。じゃ、見ててね。そ~れ。」
肉を投入口に入れながらハンドルを回すとひき肉になって出てくる。
「ほう、魔導ミキサーだと量が作れないから、多く作る場合はこっちがいいと。」
「そう、意外と便利でしょ。じゃリーサさんは玉ねぎを魔導ミキサーで刻んでくれるかな。」
「分かった。どのくらいだ?」
「とりあえずは三個かな。」

ひき肉を作り終えた俺はトマトを湯がき皮を剥きトマトソースのベースを作る。
「ケイン、刻んだぞ。これはどうする?」
「じゃあ、そこのひき肉と一緒に炒めてもらえる?」
「全部か?」
「そう、全部お願い。」
「分かった。味付けはどうする?」
「リーサさんに任せるから。お願いね。」
「ああ、任された。よし、やるか。」

トマトソースもいい感じになったので、リーサさんの炒めた具材と混ぜ合わせるようにお願いする。
「もうちょっと待ってくれ。玉ねぎに火が通るから。よし、いいぞ。」
「じゃ。少しずつ入れていくね。」
鍋の中に炒めた具材とトマトソースを入れ味を整えてミートソースが出来上がる。

「よし、これでソースは出来上がりっと。じゃ、麺を伸ばして切るところまで済ませようか。」
製麺機を出し休ませた記事を伸ばしながら製麺機に入れ伸ばしていく。

「最初は厚くていいんだけど、全部を伸ばし終わったら、今度はここで厚みを薄くして、また伸ばしていくから。」
「どこまで薄くするんだ?」
「大体2mmくらいかな。」
「分かった。じゃあやっていこう。」

予定の厚さになったところで、製麺機の仕掛けを変更し麺のカット作業に移る。
「じゃあ、ここに伸ばした麺を入れて細く食べやすい長さにカットして行きます。」
「同じ機械で出来るのか?」
「出来るんです。さあ、やっていきましょう!」
「よく分からんが、やってみよう。」

製麺機からパスタ麺が切り出されていくのを一玉に丸めて、木箱に移していく。
用意した生地を使い終わったところで、いい時間になったのでリーサさんがお茶を淹れてくれた。
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし
ファンタジー
主人公、柏木 和(かしわぎ かず)は「武人」と呼ばれる武術を極めんとする者であり、ある日祖父から自分が世界で最強であることを知らされたのだった。 そして次の瞬間、自宅のコタツにいたはずの和は見知らぬ土地で寝転がっていた―― 「……いや草」

神々に天界に召喚され下界に追放された戦場カメラマンは神々に戦いを挑む。

黒ハット
ファンタジー
戦場カメラマンの北村大和は,異世界の神々の戦の戦力として神々の召喚魔法で特殊部隊の召喚に巻き込まれてしまい、天界に召喚されるが神力が弱い無能者の烙印を押され、役に立たないという理由で異世界の人間界に追放されて冒険者になる。剣と魔法の力をつけて人間を玩具のように扱う神々に戦いを挑むが果たして彼は神々に勝てるのだろうか

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。