上 下
142 / 468
連載

◆実験台は彼しかいませんでした

しおりを挟む
ショーン様の左手首にセバス様に渡したブレスレットを取り付ける。
「ケイン?これは何だ?」
「これのこと?」
「ああ、何でいきなり着けたんだ?」
「いや、正直に言っても着けてくれないと思ったので。」
「まあ、確かに男から、こういうのをもらってもな。」
「では、そのブレスレットに軽く魔力を通して下さい。」
「魔力を?こうか。」
ショーン様のブレスレットに魔力が登録された。

「では、セバス様、試しに水球をショーン様に放って下さい。」
「なっケイン、それってどう「承知しました。では『水球』」」
「おい、セバス…チッ躊躇わずに撃ちやがった。そんなことよりショーンだ。あんなんでも息子だからな。大丈夫だろうな。おい、ショーン!無事か。」
「あ~びっくりした~父上、一体なにが?」
「ああ、無事だったみたいだな。ショーンどこか痛いところはないか?」
「父上、どこにも怪我はありません。」
「あれ?濡れてないな。どういうことだ?ショーン何があった?」
「あの…水球が飛んできたと思ったら、目の前で弾けました。これってどういうことなんです?」
「ケイン!説明してくれ。」
「結果は見ての通りですが、一応説明しますね。」
「ああ、頼む。」
「このブレスレットに魔力を通し登録者となります。ここまではいいですよね。」
「ああ、分かっている。」
「その登録者が何らかの攻撃を受けた場合には、一瞬で障壁が張られ登録者を守ります。」
「それが人数分ってことか。」
「ええ、そうです。ちなみにセバス様のブレスレットにも同様の機能があります。」
「しかし、ショーンを実験台にするとはな。」
「そう言われますが、デューク様は『うん』と言いませんよね。」
「まあ、そうだな。」
「セバス様だと自力でどうにかしそうなので、実験台には向かない。」
「危ないと思えば、自分で判断して動いてしまいますね。」
「俺の場合には、別の仕掛けがあると疑われてしまう。」
「そうだな。」
「メイドさんに怖い思いをさせるのは忍びない。」
「ええ、そんなことはしてはなりません。」
「ダンさん達を探したんですが、見当たらなかったので。」
「ダン達はまだ帰ったと報告は来ていないな。」
「ええ、まだ帰ってません。」
「それで、残ったのがショーンと言う訳か。」
「ええ。」
「そんなことで私が…ケイン、非道いぞ。」
「でも、無事だったし、これからは落ち着いて対処出来るんじゃないですか?」
「そ、そう言われるとそうだけど…納得出来ない!」
「ショーン、もういいぞ。用は済んだから。」
「父上まで…ん?これって…」
「今度、王都までこれで行くとか。」
「そうなのセバス?」
「ええ、良ければ中をご覧になりますか?」
「うん、見る。」

ショーン様が車の中に入り、座ったり背面のテーブルを出したり、肘掛けを上げ下げしたりリクライニングを試したりと、こちらが説明する前にほとんどの機能を満喫していた。

ショーン様が車から降りて俺に声を掛ける。
「すごいな。これをケインが作ったのか?」
「ええ、ガンツさんと二人でですけどね。」
「二人でもすごいよ。」
「ただ、そのせいでショーン様達が危険な目に遭うかもしれないので、そのブレスレットを贈らせてもらいました。」
「ああ、それで。」
「ええ、今度の王都行きは楽しさもあると思いますが、帰り道は十分にお気を付けください。後は婚約者候補にも十分に気を配って下さいね。厄介な美人局とか注意して下さいよ。」
「あ~そんなことまで、注意しなきゃいけないのか?」
「跡取りなんですから、注意は必要でしょ。大丈夫ですか?」
「ケイン様、その辺りは私も十分に注意しますので。ご心配なく。」
「でも、不安になりますね。いっそ『性欲減衰タタナクナ~ル』の魔法でも掛けときますか?」
「それはいい「ダメだ!そんなことはしちゃダメだ!」…ショーン様?」
「大丈夫だから、私は大丈夫だから。」
「では、失敗した場合は…ケイン様お願いしますね。」
「分かりました。」
「え?私の意見は…」

車の運転席に回り、助手席にセバス様を案内し説明する。
「セバス様、緊急時には、このカバーを開けて赤いボタンを押して下さい。」
「これですか?」
「ええ、普段は触れないようにカバーして下さい。」
「ちなみにこれを押すと?」
「とんでもない速さで走り出します。」
「これを試すことは出来ますか?」
「ええ、使用回数に制限は設けていないので。」
「では、近い内にレース場で試してみますね。どんなに速いのか楽しみですねぇ。」
「それとダンさんには速すぎると思いますので、十分に注意して下さいね。」
「おや?私の心配はしてくれないのですか?」
「セバス様なら、十分に乗りこなせると思っていますので。」
「これはこれは…ありがとうございます。」
『コンコン』と窓ガラスをノックされ見るとデューク様が立っていた。
「もう内緒話はいいのか?」
「内緒話だなんて、車の説明ですよ。」
「どうだかな~セバスにだけ秘密の機能とか教えてんじゃねえのか?」
「「ギクッ…」」
「お、何だか図星みたいだな。まあいい。俺達のことを思ってのことなんだろうからな。」
「…」
「何も言わないってのは当たったみたいだな。」
「ええ、安全の為にセバス様だけにお教えしました。」
「ありがとうな。これで予定通りに王都に行けそうだ。どうだ、お前も王都に一緒に来るか?」
「行くなら、自分で行きますので。」
「か~そうだよな。普通なら滅多に行けない王都なら喜んで着いて来るもんだぜ。相変わらず可愛くね~な~」
「ありがとうございます。」
「褒めてねえから。」

デューク様が左手に着けたブレスレットを触りながら俺に言う。
「なあ、このブレスレットをな、人数分欲しいんだが。」
「人数分と言うと?」
「最低でも百は欲しいな。」
「ふぅ~分かりました。出発日までには用意しましょう。」
「おう、助かる。頼むな。」

セバス様にマイクロバス用のブレスレットを渡し、お屋敷を後にする。
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。