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◆次の移住計画が始まりました

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昼食をご馳走になりながら、四輪駆動車の構造について話し合う。
「おい、ケイン、そろそろ行かないと。」
「そうだね。じゃガンツさん、お願いね。」
「ああ。」

ガンツさんの車に乗って独身寮まで行く。
中に入り食堂に行くとみんな揃っていたので、外に停めてあるガンツさんの車に乗ってもらう。
「また、これは少し形が異なるな。」
「すまんが、これはワシらドワーフの体型に合わせているもんでな。多少は乗りづらいかもしれんがしばらくは我慢してくれ。」
「ああ、すまんがよろしく頼む。」
「ああ。」
「じゃ、ガンツさんゲートを開くんで、入ってね。」
「分かった。」
ゲートを開いてアズマ村近くの街道に出る。

「むぅ急に景色が変わったな。」
「ゲートを抜けましたからね。ほら、あそこがアズマ村だから。」
しばらく走りアズマ村の門に近付く。

「お久しぶりです。トミーの息子のケインです。」
「おう、あの時の坊主か、久しぶりだな。入れ入れ。」
「ありがとうございます。」
車を中に進め、村長の家の前で停める。

村長の家に入れてもらい、すぐに交渉を始める。
「ダルクさん、お久しぶりです。」
「ん?ああ、確かケインだったな。久しぶりじゃな。今日はどうした?」
「今日はお願いに来ました。」
「お願いとは?」
「実はですね…」とこれまでの経緯とドラゴニュータウンでの農業指導をお願いしたいことを話す。
「なるほどの。その竜人の方々に直々に農業指導をしてほしいと。」
「はい、そうです。」
「で、我々に対する見返りは?」
「え~と、すみません。農業指導のことばかり考えていて報酬のことは考えていませんでした。今更ですが、金銭でも物でもある程度は用意することが出来るかと思います。どうでしょうか?」
「まずは、その土地を見せてもらえるか。何も見ずに何が出来るとも言えんのでな。」
「分かりました。その案内はさせて頂きます。」
「後な、この村からの移住を受け入れてはもらえんか。」
「それは構いませんが、理由を聞いても?」

村長のダルクさんが言うには、農作業を嫌がる村の若者が外に出てしまいアズマ村でも人手不足に悩んでいたところだと言う。
そんな時にドラゴニュータウンでの大規模農業で、ほとんどを魔道具で行えるのならば出ていった若者も戻って来るかもしれないし、今残っている村人だけでも対応可能になるかもしれないと考えているらしい。

里長の方を見ると黙って頷いていたので移住の方は問題ないだろう。
ならば、ここからはアズマ村移住プロジェクトに移行して進めるべきだな。

「移住の件は分かりました。ただ今私に任されているのは農業指導の依頼だけなんですよ。ちなみにですが、これを見て貰えますか?」
「これは…確かに農業指導でワシらに依頼することについては領主も了承していると。ただし移住の件は別と言うことなんだな。」
「そうです。ドラゴニュータウンの方では受け入れ可能ですが、アズマ村の人が移住となると少々厄介になります。なので俺からの提案なんですが、聞きますか?」
「まあ、聞くだけ聞こうじゃないか。」
「実はですね…」とドワーフの里の移住させた話を聞かせる。

「その転送ゲートと門に警備を任せる魔道具を付けることで、それぞれの対応が可能になると、そういう訳か。」
「はい、その通りです。どっちみちドラゴニュータウンはまだ、開発すら始まっていない状況なので住む家すら建てられないままです。なので、ここの家から転送ゲートを通じてドラゴニュータウンに行き、仕事を終えたら、この村に帰って来るということになります。」
「確かにな領都までは馬車でも半日、更にそこから進むとなると移動だけで一日が終わるからな。で、その転送ゲートってのはいつ出来る?」
「すぐに出来ますよ。何なら作っちゃいますか?」
「すぐに必要になるんだから、この家の前にでも作ってくれ。」
「いいんですね?」
「ああ、いい。ちゃっちゃとやらないと日が暮れるぞ。」
「わかりました。では、作りますね。」

村長の家から出て、少し広めの場所に転送小屋を「えぃっ」と建てると、中に入り転送ゲートを設置し、そのまま転送ゲートタワーの五階に出て、転送ゲートをアズマ村と繋ぎ戻る。
小屋から出るとポカーンとしているダルクさんの左腕にブレスレットを嵌めると「魔力を通して下さい。」とお願いする。
ブレスレットが光るのを確認したので、「では、登録しますね。」と転送小屋の扉に転送小屋内の転送ゲートとダルクさんのブレスレットを登録する。
「ガンツさんや、里長達も登録をお願いね。」
「分かった。ほら、ワシらも済ませるぞ。」
里長達の登録を待ってから、転送ゲートを潜りドワーフタウンへと出る。

ダルクさんが覚醒しないまま、ドワーフタウンへと辿り着くと、やっとダルクさんが覚醒する。
「ここはどこだ?」
「ここがドワーフタウンで、実際に農業指導をしてもらうのは向こうに見える草原です。」
「端っこが見えん…」
「そうですね、広さだけはありますから。」
「なあ、ワシ一人じゃちぃとばかしキツい。何人か連れて来ても構わんか。」
「いいですよ。なら、戻りますか。里長達の顔合わせは済んだので、ここで解散にしますね。ガンツさんは車の回収をお願いします。」
「「分かった。」」

アズマ村に戻ると転送小屋の周りに人が集まっていた。
「あ~これのことはワシから説明する。あと、四~五人ほどワシを手伝ってくれる者も欲しいから、少しばかり話に付き合ってくれ。ケイン、悪いがまた後日来てもらえるか。」
「いいですよ。なら、これを渡しておきますね。」
「何じゃこれは?」
「携帯電話といいます。これが俺の番号なので、これを押してもらえますか?」
「この番号通りに押していくんじゃな。」
「そうです。」と一通りの携帯電話の扱い方を説明し、人選が終わったら連絡して貰うようにお願いし、ガンツさんと車で戻る。

途中ゲートを使い工房へと戻るとガンツさんの車もブレスレットに収納したいとお願いされたので、ブレスレットに車を収納出来るようにしてから、自室へと戻る。

「で、何の話をしていたんだっけか?」
「四輪駆動の車の話だよ。」
「ああ、そうそう。それで模型があるんだろう?見せてみろ。」
某番組のダーツでお馴染みの模型を出す。

「確かに車高も高いしタイヤもデカいな。これならすぐに出来そうだがな。何が問題なんだ。」
「まずは前輪部分にも動力を伝えることだね。」
「何が問題なんだ。」
「何がって、曲がるんだよ。曲がるのに動力を伝えるって難しいと思うんだけど。」
「あ、そうかそうだよな。今はただ後輪を回しているだけだもんな。」
「でしょ。曲がっても動力を伝えるのが複雑になりそうなのと、前輪と後輪の回転数を変えなきゃダメってのがね。」
「待て、何でそこで回転数が出て来る?」
ガンツさんに模型を使って内輪差と外輪差を説明する。
「そういうことか。こりゃ複雑だわ。」
「だよね~やめる?」
「バカ言え。こんなんでやめるはずがないだろう。逆だよ、逆。」
「逆?」
「ああ、無理って言われると、ならやってやらぁって気持ちになるだろ。」
「まあ、そういうもんかもね。」
「お前が一番、その気になってるじゃねえか。ワシが無理って言ってもお前は一人で作っていただろうが。」
「よく分かったね。」
「当たり前だ!ワシはお前の相棒だぞ!ん?逆か。」
「どっちでもいいよ。」
「ま、そうだな。ははは。」
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