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◆駄竜が目覚めました

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里長達が現場視察を行なっていた頃、微睡から目を覚ます…駄竜。
「う~ん、寝ちゃったな~ねぇマーサ、今何時?あれ、ここは…どこ?」
やっと目を覚ました駄竜が寝ぼけ眼を擦りながら、少しずつ意識を覚醒させる。
「そうでした。視察目的でこの街に来たんでしたね。それで宿代わりにと、この施設に案内されてベッドを見つけたから、少しだけと横になったら、いつの間にか寝てしまったと言うことでしょうか…ヤバい!」
マーサの部屋を訪ねてノックしても何の応答もない。
「マジ?」
と、その時に「ぐ~」と腹が鳴る。
「少し寝たからお腹がすいちゃったな。そうだ食堂で何か食べさせてもらえないかしら。」

一階に下りて食堂に向かうと少年がいたので、何か食べさせてもらえないかと尋ねる。
一瞬、驚いた様な顔をしたが、直ぐに紅潮し「な、何かご、ご用ですか?」と言われた。
「ねえ、お腹が空いたの。何か軽く食べられるものないかしら?」
「食べるものですか?それよりお姉さんは、一緒に行かなくてよかったんですか?」
「一緒に行く?」
「ええ、あの後ケインが皆さんを連れて出て行きましたよ。」
「え~本当に!ヤバい!また、あの子にポンコツ扱いされてしまいます。どうしよう…ねえ、どこに行ったか分かるかしら?」
「え~と、確かドラゴニュータウンに行くとか言ってましたね。」
「そう、ありがとう。」
「あ、待って下さい。」
「何?急いでるんですけど。」
「少し距離があるのでママチャリを使った方がいいですよ。歩いて行くには遠いので。」
「何?そのママチャリってのは?」
「じゃ、外にいいですか。」
「いいわ。」

独身寮の外に出てママチャリを指差して「あれですよ。」と言うが、駄竜は「どれ?」と言うばかり。
ここでキールは駄竜が外部から来た人だと言うことを思い出し、ママチャリを一台引いて持って来ると「これです。」と駄竜の前に置く。
「これは?」
「これがママチャリです。」
「で、これはどうするんですか?」
「どうする?」
「ええ、これをどうするんですか?」
「え~と、ちょっと見てて下さい。」
キールがママチャリに乗ってみせ「どうです、分かりました?」と聞くが反応がない。
「だから、どうするんでしょう?」
「え~参ったな。」
「ねえ、私もあの人達を追いかけたいんだけど、このママチャリをどう使えばいいの?」
「ですから、さっき俺が見せたようにお姉さんがこれに乗って行くんです。」
「私が?」
「ええ。」
「これに?」
「ええ。」
「どうやって乗るの?」
「それなら、俺が教えますので。他の人にも俺が教えてすぐに乗れましたよ。任せて下さい。」
「そうなの。じゃ、お願いね。」
「ええ。じゃ、こちらにお願いします。」
「ええ。」
サドルの位置を調整し駄竜を乗せてみる。

キールも同じようにママチャリに乗り横に並ぶと「じゃ、俺の動きを真似してみて下さい。行きますよ。」と漕ぎ出すが、駄竜はペダルを踏み込むが…『パタン』と倒れる。
「え、あれ?何で?」
他の人達がすぐ乗れるようになったので、駄竜もすぐに乗れるものと思っていたキールだが、まさかここまでとは思っていなかった。

「お姉さん、何でペダルを漕がないんですか?ペダルを漕がないと進みませんから。」
「え?どうして?」
「どうしてって…落ち着け、キール。あいつはこんな時にどうしてた。どうやって切り抜けた…」
「ねえ、まだ乗れないの?」
「あ~もう、こんなとんでもないポンコツどうすんだ。どうすればいいんだ。ケイン、お前はどうした?」
「呼んだ?」
「ああ、ケイン来てくれたんだ…って何の用だ?」
「そろそろそこの駄…ナーガが起きる時間かなと思って来てみたんだけど。用がなさそうだから、帰るね。」
「ま、待て!待ってくれ。」
「何?」
「あのお姉さんをママチャリに乗れるようにしてくれ。」
「へ~それって命令?」
「違う!頼んでいるんだ。」
「それで?」
「頼むから、あのお姉さんをママチャリに乗れるようにして下さい。頼みます。」
「イヤです。」
「そうか、引き受けてくれるか。」
「イヤです。」
「ん?聞き間違いかな。今何て?」
「イヤです。」
「何でだよ。俺がこうやって頼んでいるのに!」
「だから、俺が教えるのがイヤだってだけで、キールが教えるのを手伝うのは構わないってこと。」
「何で?」
「だって、これからこういう人が増えると思うんだ。でも、ここに教えてくれる人がいれば助かるからね。これから独身寮には、ああいう人達が来るからさ。まずはママチャリに乗ってもらわないと、ここではキツイからね。」
「だから、それが何で俺なんだ?」
「だってそれなりに暇でしょ?」
「違う!暇じゃない。」
「ちゃんとアーロンさんに確認済みだから、問題ないって了承は得ているから。」
「親父~」

気を取り直して、クレイグさんに教えた時の話をキールに教えて、後は実践してもらうだけとなった。
「(頑張れ、キール。その駄竜は一筋縄じゃ行かないと思うぞ。)」
キールが苦労しながら駄竜に教えているのを横目にその場を離れる。

セバス様に電話を掛けて、デューク様の予定を確認してもらうと今からなら少しだけなら大丈夫と言われたので、了解を得てから執務室へとゲートを繋いで潜る。

「来たか、ケイン。今日は何の用だ。というか今度は俺から何をもぎ取って行くんだ。あ~ん」
「デューク様、そんな人聞きの悪い。今日はまともなお願いですよ。」
「怪しいな。まあいい言ってみろ。」
「ドワーフタウンの教習所に何人か回して欲しいんです。バイクと車の両方で。」
「車は何となく分かるが、バイクはどうしてだ?」
「少し前に里長達をドラゴニュータウンに案内したんですが、まだ単なる草原なんで確認するにも足だけじゃ辛いんですよ。で、ママチャリに乗せてみたんですが、これでもあの広い草原を走るには少し物足りないと言うか、単にキツいだけだなと思ったんで、それならバイクのライセンスを取ってもらえばいいかなと思ったんですよね。それに車の方は、大型車の開発が意外と早く終わりそうなので、大型車の教習の片手間に車の教習もやってもらえないかなと思ってます。あ、大型車の運転手候補は最初の三人でお願いしますね。」
「待て待て、一度に言い過ぎだ。少し理解する時間をもらえないか。」
「旦那様、大丈夫です。私の方でまとめていますので。」
「そうか、ではセバスから見てどう思う?」
「教官は随時増やしていますから、貸出として考えるのであれば、短期間なら問題ありません。ただ…」
「ただ?」
「ドワーフタウンの利便性に慣れてしまうとこちらに戻ってこれるかどうかが心配ですね。」
「それは分かるがな。その辺はちゃんと契約で縛ってくれな。」
「賜りました。それで期間の方は?」
「大型車の試作車が明後日には出来るから、その辺りからお願い出来ますか?」
「では明明後日からダン達は大型車が完成し運転に慣れるまでとして、その後に他の教官を派遣するように致します。それでよろしいでしょうか。」
「はい、お願いします。」
「ダン達にもその様に伝えておきますね。」
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