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◆移住は保留になりました

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「ねえ、ダリルさんの話を聞いちゃうと、奥さんを連れて行くのはやめといた方がいいかもね。」
「ああ、そうだな。だが、子供達はどうするんじゃ?」
「それは子供達だけが通えばいいんじゃないかな。」
「じゃが、そうするとテストケースがいなくなるんじゃが。」
「それはダリルさんにお願いするとか。どうです?」
「そこで俺に振るのか。」
「もう、モニカさんもいるしダリルさんは信用出来そうだし。奥さんは…分からないね。」
「ふふふ、ダリルのカミさんはいい奥さんじゃよ。モニカからは想像出来んだろうがな。」
「里長…」
「まあ、それも一つの案として検討の価値はあるじゃろ。ダリルよ、お前も閉鎖的なこの里のことで悩んでいたじゃろ。これをいい機会と考えればよかろう。」
「そうですよね。正直、話がうますぎて、モニカがいなかったら笑って追い出していたところですよ。」
「どうじゃ、ガンツよ。もう二、三家族連れていかんか?」
「いや、こっちは構わんが、そっちは人数が減っても大丈夫なのか?」
「ああ、この里は狩猟が主な生業でな。畑とかやろうと思っても作物が育つには土地自体が痩せていてな上手く育てることが出来ん。だから、麓の村で交換するんじゃが、足元を見られているのか、あまりいい相手ではない。だから、そっちに移住出来るのならば本気で考えたいんじゃがな。」
「じゃあ、ドワーフの里みたいに全員で移住して、用がある人だけ通えばいいんじゃない?」
「ほう、例えば?」
「多分だけど、里の周りの野生動物の調整も、この里の仕事として考えるなら、朝はドワーフタウンからここに通って、十分狩ったら戻ればいいんじゃないの。で、狩って来たのはドワーフタウンで売ればいいし。」
「ふふふ、ケイン。確かに周りの野生動物の調整もこの里の仕事の一つとして、先祖代々担ってきた。そうじゃな、里に管理する数人だけ残して、他は移住ってのもいい考えだな。」
「別に残らなくても大丈夫だよ。」
「しかし、用があって訪ねて来るのもいるだろう。そういう時に誰もいないと互いに困るんじゃないのか?」
「それはドワーフの里で対策済みだから。」
「ああ、ケインがな防犯装置と訪ねて来た奴と連絡を取れるようにしてくれてな。今は本当に草刈りと家の風通しに一時的に戻るくらいじゃ。」
「ほう、そういう風にも出来るんじゃな。」
「見てみる?」
「いや、いい。」
「(チッ)ダメか。」
「何か企んでいた顔じゃな。」

そこへドズさんが奥さんらしき人とダズ、リズと一緒に入ってくる。
「里長、お待たせしました。」
「「あ、ケイン!」」
ダズ、リズがこっちに向かって来る。
「やあ。」
「「ねえ、ケインのところに行けるの?」」
「さあ、それはどうかな?」
「「え~お父さん!」」
「待ってくれ。今、その話をしているところだから。」
「あ、ドズさんの話は今は保留になりましたから。」
「え?何でだ。」
「何でと言われても…」
「ワシから話そう。」
「里長!」
「いやな、お前のところがダメならダリルのところに行ってもらおうかと思っていたんだがな、そこのケインから嬉しい提案がされたんでな。ちょっと考え直しているところだ。」
「そうなんですね。」
「ちょっと、ドズ!話が違うじゃない!外に出られるって話じゃないの?」
「そうドズを責めるなレイラ。まだ検討中と言うたじゃろ。だから、ドズを責めるな。」
「分かりましたよ。」
「(うわぁびっくりしたね~まさにドラゴン。)」
「(ケイン、それ絶対言うなよ!)」
「(でも、ちょっと受け入れ難いね。)」
「(まあワシもそう思うがな。あまり好き嫌いするのもな。)」
「(良くも悪くも個性ってこと?)」
「(ああ、犯罪を犯していない限りはな。)」
「何?そこのお子様は私が何か気にいらないのかしら?」
「レイラ!その人は今回の移住でお世話になる人だ。」
「あら、そうなの。ドズの妻のレイラです。初めまして。」
「ああ、初めましてケインです。」
「あら、あなたがケイン君なの。娘達が世話になったそうね。お礼を言うのが遅くなったけど、ありがとうね。」
「いえ。」
「ねえ、それで保留になった理由はあなたは知っているのよね、教えてくれる?」
「えっと…」と里長を見ると、里長が「今から説明するから、まず落ち着け!」とレイラさんに強めに言う。

「はい、分かりました。座ればいいんでしょ。座れば!」
「まったく。」
「で、説明は?」
「待てと言うとろうが!」
「じゃ、俺は確認取って来ますんで、里長達は説明をお願いしますね。」
「あ、ケイン!」
部屋を出る俺の背中に声を掛けられるが、お構いなしに家の外へと出る。

「まずはデューク様におねだりだな。」
セバス様に電話を掛けデューク様へ繋いでもらう。
『何だケインは竜人の里に行ったんじゃなかったのか?』
「ええ、今は里にいます。」
『そうか、で?俺に何のようだ。』
「ええとですね。土地を用意してもらえないでしょうか?」
『土地だと!お前は俺からドワーフタウンの土地をもらったばかりだろうが。』
「ええ、覚えていますよ。まだ惚ける歳でもないですし。」
『なら、何だ。訳もなく土地を寄越せと言うお前じゃないだろう。』
「実はですね…」と竜人の移住計画と開墾して耕作したいと話す。
『なるほどな。』
「ドワーフタウンの海とは反対側の土地がまだ、手付かずですよね?もらえませんか。」
『確かに手付かずで、放っている。だが、ただって訳にもな。』
「アズマ村からも農作業の指導を頼みたいと思っています。そうなれば、美味しいお酒も出来ると思いますよ。そのお酒は、新しい特産品になりますよね。」
『そ、それは本当なんだろうな!』
「まあ確実とは言えません、新しい食文化が広がるでしょうね。」
『もう一声と言いたいが、その辺が落としどころかな。いいだろう好きに使え。』
「分かりました、ありがとうございます。では、すみませんがセバス様に代わっていただいてもいいですか?」
『セバスに?ああ、ほらセバス。』
『ケイン様、代わりましたセバスです。何用でしょうか?』
「セバス様、申し訳ありませんが、先程のデューク様と約束した内容を書面にしといてもらえますか?」
『なるほど、それくらいでしたらお安い御用です。ふふふ。』
「ありがとうございます。お礼はレース場で。」
『これはこれは、では旦那様の気が変わらない内に済ませてしまいますので、これで失礼いたします。』
「はい、お願いします。」
デューク様の確約を得られたので、中に戻る。
「ハァ~何か気が重い。」
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