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◆やっぱりいました

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翌朝、家を出て工房に向かうとガンツさんはいなかった。
「まさか、もう格納庫に行ったのかな?電話してみるか。」
ガンツさんに電話を掛けると『遅い!』っていきなり怒鳴られた。
「ちょっと待ってよ、ガンツさんはどこにいるのさ。」
『ワシか?ワシは竜人の里じゃ。』
「え~何で、もう行ってるの?」
『ケインのことじゃから、今日はホーク号は出さんのじゃろうと思ってな。ゲートを使って来てしもうた。』
「あ~もう、分かったから。じゃ今から行くから。」
『おう、待ってるぞ。』
ガンツさんの意外な行動力に驚きながらもゲートを繋いで里へと出る。

「おう、いきなりだな。」
「何でガンツさんが驚くのさ。早く来いって言っておいて。」
「それもそうじゃな、ははは。」
「それで、何でこんな早くに来たの?」
「特に理由はないぞ。」
「へ?」
「じゃから、特に理由はないが今日ここに来るのは決まっていた話じゃろ。ならケインは待たずに直接来てもいいかなと思ってな。」
「ったく、このじ「言うなよ!」…分かったから。で、今は何をしてるの?」
「特に何もしとらんな。単なる世間話じゃ。」
「え~早く来といてそれだけ?」
「ああ、それだけじゃ。」
「じゃあいいよもう、ガンツさんのブレスレットを貸して。」
「何じゃいきなり、ワシから取り上げるのか?」
「違うよ。今回の様にどこに行ってるか分からないのは面倒だから、位置を共有出来る様にしとこうと思ってね。」
「何だか、ケインが保護者みたいじゃの。ほれ。」
「え~何でこんなじい様の保護者なの。」
「『みたい』じゃ、実際の保護者ではないのは分かっとる。それに『じい様』言うな。」
「はいはい、終わったよ。」
「これで何が分かるんじゃ?」
「渡したタブレットは持ってる?」
「ああ、ここに。」
「じゃあ、ついでこれとカメラも収納対象にしとくね。…はい、これで出来るから試して。」
「どうやるんじゃ?」
「収納は触れて、『これ』って認識してから『収納』でいけるよ。」
「ちょっと待て。触れて、意識して、『収納』…お、おお、出来た。で、出す時はどうするんじゃ?」
「出す時は手の平に出す様にイメージしてから、『解除』だね。」
「手の平じゃな。『解除』!出た!」
「問題ないみたいね。」
「待て!ホーク号はどうなるんじゃ?収納は良くても手の平に出ても困るんじゃが…」
「(一瞬ホーク号に潰されるガンツさんを想像してしまう。ぶふっ)それは手の平をかざした方向に出る様にイメージすればいいから。」
「本当じゃな、試すぞ。」
「ここではやらないでよ。門の外で試しなよ。」
「それもそうだな。よしちょっと試してくる!」
「あ~あ、行っちゃったな~」
「ケイン、終わったか?」
「あ、ダリルさんおはようございます。」
「ああ、おはよう。それでさっきのは何なんだ?」
「さっきの?」
「ガンツと何やら出したり引っ込めたりしていただろ?」
「ああ、あれですか。あれはブレスレットに少しばかり収納を追加したんですよ。」
「そんな簡単に言える程度の物じゃないと思うがな。」
「そうですか。俺は魔法や魔道具は単に生活を便利にする道具や手段でしかありませんからね。これで世界をどうこうしようなんて思わないですし。」
「出来そうだけどなぁ。」
「嫌です。面倒臭いし。」
「そうかぁ世界を手に入れれば、大概のことは好き放題出来ると思うけどな。」
「手に入れた後はどうなるの?誰かが管理してくれるのかな。」
「そりゃ側近とか、そういうのに任せるんじゃないのか?」
「なら、俺はその人達から見て邪魔者ってことになるよね。」
「そうだな、そういう見方もあるわな。」
「じゃ、俺は世界を手に入れた後は、他の人からの暗殺対象になるわけだね。」
「…そこまで考えてなかったな。」
「ね、世界を手に入れたっていいことないでしょ?」
「そうだな、すまん。」
「いいですよ。謝られることじゃないですし。」

そこへガンツさんが戻って来て「ケイン、出てきた!これでワシも収納持ちだ。」とか騒いでいた。


「じゃガンツさんも戻って来たことだし、昨日の話の続きでもしますか。」
「いいんだが、何だか軽いな。」
「どうしてです?単なるお引越しでしょ?」
「そうは言うが俺にとっては初めて里の外に出るんだぞ。それも一家揃ってな。」
「ドズさんにとってはそうですね。」
「そうだ、俺にとっては大事だ。」
「でも、家を移すだけでドズさんはこっちに毎日帰るというか働きに戻る訳ですし。日常的には大きな違いはないでしょ?」
「それはそうだが…」
「それにダズ達も、この里の周囲よりドワーフタウンの方が安全だと思うんですけどね。あとドズさんのケースが上手くいけば後に続くご家族もいると思うんだけど、どう?」
「…」
「もしかして、まだ奥さんにも話していないとか?」
「何じゃそうなのか?」
「実は…」
「そうか。まあ、あのカミさんじゃ無理ないか。」
「え~と、俺達だけ話が見えないんですけど?」
「そうじゃな、当事者なんじゃし、あの娘だけ無視する訳にはいかんな。ドズちょっと呼んでこい。」
「え、俺が言うんですか?」
「心配するな、里長のワシが呼んでいるとでも言って連れて来れば、ワシが話してやるから。」
「約束ですよ!絶対ですからね、後でナシはやめて下さいよ!」
「いいから、行ってこい。」
ドズさんが慌てて、出ていくのを見送りダリルさんに聞いてみる。

「ダリルさん、何でドズさんはあんなに怯えているんですか?」
「まあ、ケインにはまだ分からんかもしれんが、昔は可憐な少女と思っていた女性が子を産み育てていくうちに妻を母に変え、この世で一番強い存在へと変えるんじゃ。」
「え~と、ダリルさんに聞いたのに何でガンツさんが説明を?」
「まあ、『経験者は語る』じゃな。」
「あれ?ガンツさんにお子さんていたんですか?」
「ああ、いるにはいるがな。」
「へ~で、さっきのことはアンジェさんに報告しても?」
「ん?ケイン、お前は何を言ってるのかな?」
「それでダリルさん、ドズさんの怯えは何なんですか?」
「まあ、ガンツさんの言うことも半分は合ってるかもな。」
「後の半分は?」
「多分、稼ぎのことだな。」
「そんなに悪いんですか?」
「いや、この里なら十分に暮らせると思うぞ。」
「なら、何でそこまで怒るんですか?」
「そこそこじゃ嫌なんだと。だから、レイラは…ああ、レイラってのはドズのカミさんな。そのレイラがもっと稼げるはずの外に出たいと言っているんだが、ドズは嫌がっているんだよ。ここを出ても食べていける保証もないしな。」
「うわぁこりゃ誘ったのは失敗だったかな。」
「まあ、外で稼ぐことの大変さをレイラが分かってくれるのが一番なんだがな。」
「却って逆効果かも知れませんよ。」
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