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◆体で払ってもらいました

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「…お…」
「…ガ…よ。」
ドアの向こうから物音がするので、リーサさんに指で『シー』と合図をしてからドアを思いっきり開けるとガンツさん、アンジェさん、モニカさんが転がって来た。
「何やってるんですか?ガンツさん。アンジェさんにモニカさんまで。」
「ま、まあな。」
「ね、ねえ。」
「まあなんだ。もうヤったのか?」
「「な、何を!」」
「モニカ、今それは言っちゃいかん!」

「はぁヤッたも何もず~っと前で聞いてたんでしょ?」
「「「ごめんなさい。」」」
「で、まあ理由はなんとなく分かりますが…」
「いやぁ、一週間前にあんなことになっただろう?アンジェはリーサの様子を見ていて知っているが、ワシは話に聞くだけだし。逆にアンジェはワシからケインの様子は聞くが気になってしまったようでな。」
「で、こうなったと。まあお二人はいいでしょう。それでモニカさんは?」
「わ、私か?私はこの二人がドアの前で何やらやっているので興味を持ってな。まあついでなのかな?」
「ついでとは?」
「ほら、ライセンスを取ったら里に連れて行ってくれると言っていただろ。その件だ。」
「ってことは、もしかして…」
「ああ、この通りだほら!」
モニカさんがバイクのライセンスを俺達の目の前に誇らしげに掲げる。

「分かりました。じゃ、ついでにいつ行くのか決めちゃいましょ。行くのは今のこのメンバー前提でいいですか?」
「「「「ああ。」」」」
「じゃ、日程ですけどリーサさんから出来れば保育所の休みに合わせて欲しいと言われてますけど、アンジェさんはどうです?」
「私はリーサさんに合わせるから問題はないわよ。」
「なら、モニカさんは?」
「私はとりあえずの予定は無くなったから、いつでもいいぞ。だが、今度は車のライセンスが欲しいな。」
「分かりました。じゃ、明日は急だから明後日でどう?」
「「「「分かった。」」」」
「じゃ、明後日の十時にここに集合で。」
「それじゃ、ワシはもう一度、格納庫に行ってみようかの。
「じゃ、リーサさん私達は戻りましょうか。」
「ああ、分かった。ケイン、それじゃまたな。」
「うん、リーサさん美味しかったよ、ありがとうね。」
「あ、ああまた作ってもいいが…」
「ふふふ、うん明後日もお願いね。」
「ああ、任せてくれ。」
「じゃ、明後日ね。」
「ああ。」

「よし、作業に戻るか。」
「あの…」
「あれ、モニカさんまだいたの?」
「まだって、ちょっと扱いひどくない?」
「それはしょうがないでしょ。で、何?」
「うわぁ本当に温度差が酷過ぎる。あのさ、車のライセンスも取りたいって話したじゃない?」
「ええ、しましたね。」
「だからね、もうしばらくここに置いてもらってもいい?」
「ああ、そういうことね。俺は構わないけど、もうお客さん扱いは出来なくなるけどそれでもいい?」
「え?急に態度が変わるのか?」
「急も何も里へ行くための手段を用意する間の暇つぶしってことで、ついでにバイクのライセンスを取ってもらっただけだし。」
「ああ、そういえばそう言われたかも。」
「分かってくれたようで。」
「ちょっと待って。なら、私は何をすればいいんだ?」
「さあ?」
「『さあ?』ってここで放り出すのか!」
「いや、俺にはモニカさんが何が出来て何を得意とするのか全然分からないし。」
「それは聞かれなかったし…」
「それで何が出来るの?」
「特にこれといったことはないんだけど。」
「じゃあなぜ、聞かせたのかな。まあそれなら体使ってもらうしかないね。」
「え?ちょっと待って!体なのか?私の体が目的なのか?」
「まあ、間違った言い方ではあるけど、そうとも言うね。ふふふ。」
「何?その目は…その手つきは何!どうするつもりなんだ。」
「ふふふ、どうしましょう。」
「言っとくけど、これでも竜人ドラゴニュートだってこと忘れてないよな。」
「ああ、そうでしたね。あまりにもなポンコツ振りに忘れてました。」
「ポンコツって…確かにそうかもしれないけど、きっと役に立つことがあるはず!」
「だから、その体を使って役に立ってもらいますから。ね?」
「待て!落ち着いて話し合おう!何かいい手があるはずだから。な、一回落ち着こう。」
「だから、俺は落ち着いてますから。さあ行きますよ。」
「な…何だこれは?」
暴れるモニカさんを落ち着かせるために手足を金具で拘束し浮かせる。

「じゃ、新しい雇い主の所に行きますね。」
「離せ!離せ~!」
「もう、うるさい!」
猿轡を噛ませて大人しくさせてから、ゲートを潜り父さんの店へと出る。

「父さん、サム兄さんはどこにいる?」
「サムなら、その辺にいたと思うぞ。」
「そう、ありがとう。」
「ああ、がんば…って、おい!お前、そのお姉さんはどうするつもり何だ?」
「ああ、これ?サム兄さんへのプレゼントかな。」
「お前…あまりそういった趣味は関心しないし、そのまま外に連れて行くのはウチの店の信用に関わるから、出来ればやめて欲しいんだが。」
「そうか、そうだよね。じゃ、俺の部屋に転がしとくから何もしないでね。いい?」
「わ、分かった。なるべく早くな。」
「それはサム兄さん次第かな、じゃね。」

サム兄さんを探して、近くを回ると何やら話し込んでいるサム兄さんを見つけた。
「兄さん、ちょっといい?」
「おうケインがここに来るなんて珍しいな。」
「サム兄さんにお願いと贈り物かな?」
「贈り物?もしかして、あれか!」
「期待しているようだけど、それとは違うと思うよ。」
「まあ、いい。何にせよ俺への贈り物だろ。早く見せろよ。」
「じゃあ着いて来て。」
「分かった。」

店内の俺の部屋の扉を開きサム兄さんを案内するが、転がっている人物を見てサム兄さんが目を丸くする。
「ケイン、この人ってもしかして…」
「そう、モニカさん。あ、これじゃ喋れないね。…はいこれでどう?」
「ケイン、どう言うつもりだ!」
「もう大声出さないでよ。」
防音の魔道具を起動する。

「ケイン、何でこの人は拘束されているんだ?」
「だって、働くのが嫌とか言うから、暴れられないように拘束して連れて来た。」
「で、何でこれが俺への贈り物になるんだ?」
「人手が欲しかったでしょ?」
「ああ、確かにな。」
「俺はモニカさんに働いてほしい。兄さんは働き手が欲しい。ほら、成り立つでしょ。」
「待て、肝心のモニカさんはどうなんだ?」
「え~まさか働きたくないとは言わないでしょ。ねえ、モニカさん。」
「…わ、私は何をすれば?」
「手っ取り早く体を使って稼いでもらいます。」
「やっぱり、体が目的か!」
「ケイン、言い方。」
「だって体目的でしょ?」
「否定出来ない…」
「な、兄弟で何をするつもりだ!」
「だから、兄さんのところで文字通り体を使って働いてもらいますから。」
「ケイン!だから、言い方!」
「やっぱり、恥ずかしながら今の今まで守って来たのに…だが、一宿一飯とは言え重くはないか。」
「何言ってんの!一宿一飯どころからこの先まで面倒見させようとしたよね?」
「そう取れるか。」
「そう取りましたが?」
「ふぅまあいいわ、で『サム』とやらの相手をすればいいのか?出来れば一瞬で済ませて欲しいんだけど。」
「もう何言ってんの。一回でチャラになると思ってんの?」
「な、何度もすると言うのか!」
「って言うか、毎日だね。」
「こんな幼いのに…何て極悪非道な…」

「ケイン、見ていて可哀想だから、その辺にしてやりなよ。」
「サム兄さん。ちぇもう少し楽しめたのに。」
「ん?待て、何の話なの。」
「何のってモニカさんの就職先の話だよ。」
「え?なら、体を使って払えと言うのは?」
「ああ、サム兄さんの運送業で文字通り体を使って働いてもらうから。」
「な、ハァ~私一人が勘違いして暴れていたと言うの。」
「そう言うこと。じゃサム兄さん後は任せた。じゃ、モニカさんは頑張ってね。あと、モニカさんは日曜日は用事があるのと、教習所にまた通うから時間調整もよろしく!」
「あ、ああ分かった。いろいろありがとうなケイン。」
「頑張ってね!」とサムズアップで自分の工房へと戻る。
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