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◆出て来たのはオヤジでした

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機体のデザインはとりあえずガンツさんに任せて、ジェットエンジンの内部に魔法陣を刻んでいく。
「まずは燃焼部分に炎の魔法陣だな。…よし、こんなもんか。」
魔法陣を刻んで、試運転をしてみる。
「最初は回してやらないとダメだから、それは魔導モーターで用意するとして、これでよし。」
ジェットエンジンを回すセルモーターを作り、試運転に挑む。
「ガンツさんは…まあ、いいか。」
「なあ、ケインよ。ガンツは呼ばなくてもいいのか?」
「え?いいんじゃないの。多分、向こうで考えている最中だろうし邪魔するのも悪いよ。」
「そうなのか?まあケインが言うならいいんだが。」
「そうよ、リーサさんあの人にはちょうどいいバツよ。」
「じゃ、セルモーターのスイッチを『ポチッ』とな。」
『ブ~ン』とセルモーターが回りジェットエンジンのファンが回り出す。
「じゃ、次に燃焼部分の魔法陣を起動!『ポチッ』」
『ゴォ~』と音と共にジェットエンジンから炎が排出される。
台に固定はしているが心配するほどの推力はないようで、ちょっと大きめのバーナーみたいだ。

「何だろう何が足りないのかな。やっぱり燃料を使わないと爆発力が足りないのかな?」
化石燃料以外での爆発力を得られるようにするには、何があるかを考えてみる。

「ケイン、そろそろ昼にしないか?っておい!何勝手に試運転しとるんじゃ!なぜワシを誘わんかった!」
「い、いや~誘おうと思ったんだけどね。格好いいデザインを考えているのを邪魔しちゃ悪いかと思ってさ。それにはやく動かしてみたかったしさ。」
「そんな言い訳が通用するか~!どれ、もう一度見せてみろ。ワシが朝早くから作ったんじゃからな。どれ。」
「じゃ、動かすよ。」
「おう、やってくれ。」
「じゃ『ポチッ』と」
『ゴォ~』とジェットエンジンから音がするが、ガンツさんの様子がおかしい。
「なあケイン、これで完成なのか?何も力を感じられないのだが。」
「やっぱり、ガンツさんもそう思う?」
「思うも何も見たまんまじゃろ。話に聞いた何もかも吹き飛ばすどころか単なる大きめのバーナーにしか見えん。」
「だよね~だから、今からそれをどうやって爆発力を上げようかと考えているんだけどね。」
「じゃあ、それが決まったら教えてくれ。さあ昼にしようか。」
「ガンツさん、そこはあっさりだね。」
「そりゃワシが考えたって分からんしの。それにそれはケインの役目じゃ。ワシには出来んから頑張ってくれ。」
「ハァ~分かりました。考えます。その前にお昼だね。今日もアンジェさんにお任せでいいの?」
「えっと、ごめんなさいね。今日はほら、ガンツが急かすものだから何も用意出来てないのよ。ごめんなさい。」
「いや、アンジェさんが謝ることじゃないし。そこのおじいさんが悪いんだから。ね、ほら謝るのはガンツさんでしょ!何してんのさ。」
「また爺さん呼ばわりした…まあ今朝は確かにワシが悪かった。すまんアンジェ。」
「あら、珍しい。ふふふ、いいわよ。でもお昼はどうしましょうか?」
「なら、領都の食堂か独身寮の食堂かどっかに行こうよ。」
「そうじゃな、久々に領都に行きたいの。」
「じゃあアンジェさん達もそれでいい?」
「ええ。」
「いいぞ。」
「じゃ、父さんの店に一度寄るね。」
「何じゃ、何か用事でもあるのか?」
「そうじゃないけど、ゲート用の部屋を用意してもらっているからさ。」
「ああ、そういうことか。旦那とも久しぶりに会うの。」
ゲートを繋いで潜ってもらう。
「さあ入って入って。」

父さんの店に繋いだゲートの先の部屋に出る。
「なるほどの。一室を借りて人目を避ける訳か。」
「じゃ、出るよ。」
部屋のドアを開け、出た所で父さんと鉢合わせる。
「おお旦那、久しぶりじゃな。」
「ガンツさん!急に人の気配がしたからケインとは思っていたけどガンツさんまで来てるとは珍しいですね。それで、今日はどうしたんですか?」
「いやな、今朝ワシの我儘で急かしてしまったもんで、いつもアンジェが用意してくれているお昼が用意出来なかったんでな、たまにはみんなで領都の店に行こうとなったんじゃよ」
「そうなんですね、分かりました。ではお気をつけて。」
「おうありがとう。帰りも使わせてもらうでな。」
「はい、ケイン頼むぞ。」
「うん。」

父さんの店を出たはいいが、どこのお店がいいか全く見当がつかない。
「何食べよう。」
「何じゃケインは食べたい物は思い付かんのか?」
「そうだね、今これが!ってのはないね。」
「なら、ワシが決めてもいいか?」
「いいよ、おまかせするね。」
「アンジェ達もそれでいいか?」
「私はいいわ。貴方に委ねます。」
「ああ、私もお手並拝見だ。」
「…なあ、ケイン。昼飯食うだけだよな?ワシ何か大変なことを任されているのかな?」
「ぷっ。た、多分揶揄われているだけじゃない。今朝の軽いお返しだよ。」
「そうか、まあそれで気が晴れるのならいいか。よし着いて来い。」

ガンツさんが目的とするお店は父さんの店から割と近かった。
「よう、生きてるか?」
「何だ!ケンカ売ってんのか~ってガンツじゃねえか!お前こそ急にどっか行っちまってよ、死んじまったかと思ってたぞ。それにしても久しぶりだな。」
「いや~死んだ訳じゃないが、ウチのカミさんと一緒に住むことにしたんでな。住処替わりの工房にそのまま住まわせる訳にもいかないからってドワーフタウンに移ったんじゃ。今はそこの工房で働いてんだよ。」
「へえ、ってことはこちらが奥様ってこと?」
「はい、ガンツの奥様のアンジェと言います。」
「よ、よろしく俺は見ての通り食堂のオヤジでマーティンと言う。で、こっちの坊ちゃんは?」
「こいつは今のワシの相棒でトミーの旦那の息子のケインだ。」
「ケインです。よろしくお願いし「ケインの奥様のリーサだ。」ますって、もうリーサさんは『まだ』でしょうが!」
「すまん。」
「まあ、リーサは昔から知っているが、噂通り捕まえたんだな。で、こっちが捕まった坊ちゃんと。」
「『ケイン』ですから。」
「ああ、悪い。ケインでいいな。」
「マーティン、こいつはワシの相棒と言うたろ。仲良くしといて損はないぞ。」
「へ~ガンツにそこまで言わせるか。面白えな、よし気に入った!リーサの婚約祝いも兼ねて今日は奢ってやる。何でも言ってくれ。」
「おい、いいのか?」
「いいさ、たまにはこんなのも悪くないしな。それに揚げ物のレシピも試してみたいからな。」
「何じゃワシらは実験台か。」
「そう言うなよ。じゃ適当に持って来るから食って感想聞かせてくれや。な?」
「あ~分かった分かったから早くしてくれ。こっちは腹が減ってんだからよ。」
「おう、待ってな。」
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