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◆サービスしてもらいました

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ケイン達の前に条件に合致する複数の物件を並べて見せたが、ケインが手に取ったのは最も高い物件だった。
しかも内見もせずに「これでいい。」と言うのだから、お姉さんも驚いてしまうのもしょうがない。

お姉さんから物件の地図と鍵を受け取り、賃貸契約の書類にサインを済ませる。
「では、お支払いはどの様に?」
「俺の口座からの引き落としで。」
「はい。ではギルドカードをお借りします。」
「はい、これね。」
「では、少々お待ち下さい。」
お姉さんが退室していくのを眺める。

「ケイン、あの物件で本当にいいのか?」
「問題ないよ。通りにも面しているし、ある程度の広さも確保出来ているから。」
「まあ、ケインがそう言うのならいいんだが。さっきあれだけ言ってたのはいいのか?」
「いいよ。そのくらいなら俺で何とか出来るから。」
「ふぅそうかそうだよな、ケインならそのくらいは簡単だよな。」
ほどなくしてお姉さんがカードを手に戻って来た。

「引き落としの手続きは完了しましたので、このカードはお返しします。ご確認を。」
「ああ、間違いなく。」
「では、またのご利用をお待ちしております。」
「ああ。」
ケインがギルドを出た後にギルド長が横に来て呟く。
「まさか、あれが最近の噂になっていたガキだったとはな。」
「私がギルドの預金口座を確認した時には、それほど預金されてはいせんでしたよ。」
「あれでも一度はほぼ空にしたんだぞ。それなのにごく短期間であの金額になったことが驚きだろう。また期間を空けずにギルドが困ることになるだろうな。」
「へえ、ここで何か事業をして貰えるなら、私が担当になりたいな。そうすれば私も…」
「やめとけ。下手に触らない方がいい相手ってのもいることは分かるだろ。」
「それもそうですね。でも、もったいないな~」

ギルドを出た後は、地図を手に港の倉庫を目指し歩いていく。
「地図だとこの辺だね。」
「そうだな、あれがそうじゃないか?」
「ああ、そうだ。あれだね。」
目的の倉庫を見つけ、前まで近付く。

「パッと見はどこも異常なさそうだね。」
「そうだな、特に損壊している場所もなさそうに見える。しかし港の側と言ったが、これが港なのか?」
「王都の港だから、それなりに整備されていると思ったんだけど、酷いね。まさかここも遠浅とか何か原因があるのかな。」
「まあ、今の私達には関係ないか。」
「まあね、でも向こうの港を整備したら、こっちもどうにかしないと無駄になりそう。」
「ああ、そうなるのか。でも、今は考えなくてもいいだろ。もうすぐ一日が終わるんだし。」
「それもそうだね。じゃ中を見て、色々仕掛けて宿を探そうか。」
「ああ、そうしてくれ。」
渡された倉庫の鍵を使い倉庫の大きな扉ではなく、横の通用口を開く。

中は真っ暗だったので、感知式の灯りを壁面に付ける。
広いのは分かるが、全体が見えない。
ならばと正面の大きな扉を左右に開き明るくして中が分かるようにする。
「うわ~高いだけあって、無駄に広いね。」
「そうだな、ここまで広くなくてもよかったんじゃないか。」
「まあ、いいじゃん。とりあえずは灯が欲しいから、ちょっと待っててね。」
天井に張り付き、灯りの魔道具を設置していく。
「これでよし。じゃ扉を閉めるね。」

扉を閉めると感知式の灯りが反応し、倉庫の中を照らす。
「よし、灯りは十分だね。じゃ、後は仕掛けを施して…よし、これでいいかな。」
倉庫の通用口と正面に認証機能を備えた警備セットを付けて、倉庫自体には全体に『障壁』を掛け警備セットと連動する様にしておく。
「今は何もないから、今夜は何もないと思うけど警備は必要だよね。」

倉庫から出て、リーサさんと歩く。
「思ったより、時間が掛かったね。まずは宿を確保してから夕食にしようか。」
「そ、そうだな宿は大事だよな。ゆ、夕食よりも優先しないとな。うんうん。」
「リーサさん、今は変な妄想は無しだからね。暴走しないように気を付けてよ。」
「あ、ああ分かっている。分かってはいるが…」
「もう、別に妄想する必要はなくない?」
「むぅそれはそうだが、癖になっていると言うか何だろうな。」
「『何だろうな』とか俺に言われても困るし。」

宿探しで条件にしているのは、鍵付き風呂付きベッドが綺麗なことだ。
安い宿だと鍵が付いていないのは珍しいことではないらしい。
なので、それなりに高そうな宿を中心に見て回ることになる。

「ここは雰囲気がいいね。どう?」
「ああ、中で聞いてみよう。」
少し入った所にカウンターらしき場所があったので近付いて尋ねる。

「すみません、宿泊したいんですが部屋は空いてますか?」
「あら、親子なの。なら一部屋でいいのかしら?」
「いや、夫婦だ。ベッドはダブル希望で。」
「夫婦なの?ねえボク衛兵さん呼ぶ?」
「失礼な夫婦と「リーサさんはややこしくなるから、しばらく黙ってようね。それから衛兵は不要です。部屋は一部屋でいいのですが、ベッドはツインでお願いします。」…夫婦なのに。」
「あら、何か訳ありのようね。いいわ、ツインのお部屋ね。お風呂は希望かしら。」
「ええ、お願いします。」
「ふふふ、あまり汚さない様にね。」
「よ、汚すようなことはしませんよ。しないはずです。多分…」
「なんだケイン、しないのか?」
「だから、しないし、人前でそういうことは言わない!」
「す、すまん。」
「ふふふ、いいわよ。最初はワケも分からず天井のシミを数えたものよ。ボクは何を数えるのかしらね。うふふ。」
「そ、そう言うことはま、まだしないし。何も数えないから!」
「ケイン、数える間もないってことなのか。それはそれで問題だと思うぞ。知り合いの話だがな、あっという間に終わって、『1』すら届かなかったとか。」
「リーサさん、人前でする話じゃないよね。お姉さんも煽るようなことはやめてもらえませんか。」
「あら、『お姉さん』と言ってくれるのね、ありがとうね。遅くなったけど、私はこの宿の女将でもあるのよ。『女将さん』て呼んでね。」
「じゃ、部屋は確保出来たし次は夕食だね。」
「何、夕食はまだなの?なら、ここで済ませなさい。さっきからかったお詫びじゃないけど、サービスさせてもらうわよ。どう?」
「ここでいい?」
「ああ、サービスしてくれると言うし、もう探す時間もないだろう。」
「そうだね、さっきので疲れたし。じゃあお願いします。」
「ふふふ、じゃこちらへどうぞ。」

女将さんにホテル内のレストランらしき場所へと案内され席へと通される。
「女将さん、こんな格好で来ていい場所とは思えないけど?」
「いいのよ。私のお客様なんですもの。」
テーブルへと近付いて来たウェイターに女将さんが、「私のお客さまなの。お願いね。」と声を掛けると「ごゆっくり」とその場から去っていく。
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