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◆カモに見えました

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王都の城門を何とか無事に抜けることが出来た。
「じゃ、またね。」
「ああ、またな…って、ならないからな。逃がさないって言ったろ。」
「チッまあいいや、リーサさんお昼食べよう。どこか知っているところか食べたい物ある?」
「私は王都には来たことがないからな。どこがいいかは分からない。食べたい物なら、この暑さだからな、何かさっぱりした物が食べたいかな。」
「じゃ、冷たくてさっぱりした物を探して、入ろうか。」
「ああ、そうしよう。」
「なあ、しっかり無視されているけど、そう言う店なら案内出来るぞ。」
「ないねぇ、見つけようとするとこう言うのってなかなか見つからないよね。」
「そうだな、いっそ誰かに聞くか。」
「もしも~し、聞いてます?案内出来る人がここにいますよ~」

出来る子アピールが凄いモニカさんがどうしても視界に入ってくるので、ちょっとお話をしてみようと思う。
「モニカさん、いいからそっとしといてもらえますか?」
「え、何で?だってまだ何も話してくれてないし。それにお昼もまだ何でしょ?それなら、私に任せてよ。いいところ教えてあ・げ・る!」
「「ウザい!」」
「え~ひどい!」
「モニカさん、ちょっといいかな。」
「え~そんな路地裏に呼び込むなんて、いくらお姉さんでもちょっと怖いかな。」
「いいから、ちょっと来てもらえますか?」
空き家っぽい家のドアいっぱいにガンツさんの工房へと繋がるゲートを用意しドアを開けた瞬間にモニカさんを押し込みゲートを閉じる。
「これで、よし。」

ガンツさんに電話を掛けると「ケイン、今竜人の女が飛び込んで来たぞ!」と言われたので、これまでの経緯を話し、モトクロスバイクに興味があるようなので適当に相手をしてから、放り出すようにお願いした。
「結構、無責任だな。」と言われるが、今はこっちが大事だ。
「ケイン、思い切ったな。」
「まあね、どうせ行き着く先が同じなら、とっとと送り込んだ方がいいでしょ。」
「何か帰った時が怖いな。」
「まあ、終わったことだから。まずは先にお昼をすませちゃおうよ。お腹減った~」
「ふふふ、そうだな。後のことは後で考えるか。」
「そういうことだね。」
冷たくてさっぱりした物を探していると頭の中には『そうめん』『ざるそば』『冷やし中華』と夏の冷たいさっぱりした物の代表格がぐるぐると回る。
「はぁどっかで食べられないかな?」

結局、そういう感じのお店を見つけることも出来ず屋台で買ったもので簡単に済ませ散策を続ける。
「そう言えばさ、結構お土産を頼まれたんだけど、色々あって悩むよね。」
「そうだな、いざ買うとなると悩むな。」
「いっそ大人買いして、あとは『好きな物を持って行って』とかいいかもね。」
「ふふふ、それは楽しそうだな。ケインがいるからこそ出来る力技だけどな。」
「じゃ、まずは小さい倉庫を借りて、そこに集めてからまとめて送ろうか。」
「うむ、いい考えだと思うぞ。じゃ商業ギルドに行くか。」
「うん、行こう。」
その辺の人に商業ギルドまでの道を訪ね、そこまでの道中の店を冷やかしながら向かう。

商業ギルドに到着し、まずは王都で売られている物を確認し、目的の物が売られている店の場所を聞き出す。
そして目的である倉庫を借りられるかを確認して見ると、今は港寄りにしかないと言われた。
「港か、まあ一度は確認したかったし、それでもいいか。リーサさんはどう思う?」
「私はいい話だと思うぞ。」
「だね、じゃあそこで。」
「いいんですか?中も見ないままで。」
「時間も惜しいし、ギルドおすすめの物件でしょ?何かあったらギルド責任ってことでお願いしますね。」
「え?それはちょっと困ると言うか…」
「ええ、何?それは何かが絶対起こるって前提で言ってんの?ギルドがお薦めする物件でそんなことがあるの?」
「いや、それは…ちょっと違うと言うか…」
「じゃあ、ここはいいからさ、絶対に間違いのない物件てあるの?それとも今の様な物件しかないの?どっち?」
「それは…ギルド長~」
「あ~あ、ケインが泣かすから。」
「え~俺の責任なのかな。だって、契約さえ済ませれば『ギルドには何も責任ありません。』ってのは『マッチポンプ』を疑っちゃうでしょ?」
「その『マッチポンプ』が何を意味するかは分からんが、言われてみれば不思議だな。」

そんなことを話していると『奥へいいですか?」とカウンター奥の部屋へと案内される。
「お客様、当ギルドが紹介する物件に何か問題があるとのことですが。」
「問題と言うかですね、そこの受付のお姉さんに契約後に何かあったら全部自己責任ですよってことを言われたから、それなら出来るだけ安全な物件をお薦めしてもらえますか?ってお願いしただけですが?」
「ふふふ、そうですか。失礼ですがお客様はまだお若いようなので、世間という物がよく分かってない様子ですね。」
「えっと、何か俺が間違っていると?」
「いえ、そうではないのですが、倉庫に対し賊が入ったりすることもありますよね。ですが、その責任をギルドに対し補償してもらうと言うのは聞いたことがないので。」
「でもギルドお薦めの物件が賊の御用達ってのも変ですよね。」
「…御用達ってのは言い過ぎじゃないですか?」
「でも、さっきから説明を聞いていると『賊が入ることが前提』で話されてますよね?なので俺はそういう可能性が一番低い物件を用意して欲しいと言っているんです。どこかおかしいところがありますか?」
「ふむ、確かにお話は分かります。ですが、絶対に賊に入られないという保証は付けられませんよ。」
「まあ、それは無理でしょうね。だから人通りが多い区画とか狙われにくい物件を紹介してもらえますか?」
「分かりました。では、準備しますので少々お待ち下さい。」

受付のお姉さんとギルド長の退室を待って、リーサさんが話しかけて来る。
「ケイン、何だかケンカ腰と言うか、不信感がてんこ盛りだったと思えるが。」
「そりゃね、お薦め物件が『狙って下さい』って感じの場所にある倉庫だからね。これって田舎者だからと馬鹿にしているか、最初っからカモにするつもりかのどっちかだろうなと思ったからね。現に今もこの部屋は盗聴されているしね。」
「と、盗聴っていいのか?私達は普通に話しているが。」
「ふふ、アリー様に渡した防音の魔道具を展開しているから大丈夫。反対に向こうは何も聞こえずに苛立っているかもね。」
「ったく、こういうのまで面白がるのか。ケインといると退屈しないな。ふふふ。」

~その頃のギルド長室~
「全く、何なんだあの小僧は!」
「すみません、ギルド長。あの物件を薦めてはみたんですが…」
「あの小僧には何か感じる物があったんでしょうね。だからギルドに補償を求め、あなたはそれに応えることが出来ずに困って私のところに来てしまったと。下手すれば読まれていますね。あなたも身の振り方を考えた方がいいですね。」
「…そんな。」
「それにあの部屋の音声が全く拾えません。盗聴に気付いたのか、そもそも会話をしていないのかのどちらかでしょうが。まさか盗聴に気付いたと言うのでしょうか。そんなことがあり得るのか。」
「ギルド長、とりあえずは物件を用意しないといけないのですがどの辺りを紹介すればよろしいですか?」
「そうですね、多少は割高になっても、あの小僧のいう通りの条件に合うのをお願いしますね。」
「分かりました。」

ケイン達の待つ部屋へ受付のお姉さんが戻って来た。
「何かいい物件は見つかりましたか?」
「はい、何件がありましたのでこちらをご覧下さい。」
「じゃこれでお願いします。」
「え、他のはいいんですか?」
「いいです。これでお願いします。」
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