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◆真相は残念でした

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リーサさんがベティの腕を掴んで、少し離れた場所まで歩き、二人で立ったまま話し始めた。
「なあ、ベティよ。どうしてケインに付き纏う?ケインがお前に何かした訳でもないだろう。私から見てもケインがお前に対しては何もしてないと思うが。」
「…が…の…さんに…のに。」
「ん?すまん、もう一度言ってもらえるか?」

「リーサお姉さんが、私の本当のお姉さんになるって言ったのに!嘘吐き!」
「ん?私にはお前とそんな約束をした覚えはないが、誰かと間違えてはいないか?」
「だって、言ってたもん!リーサお姉さんは私のお姉さんになるんだって。言ってたもん!」
「いや、だから私にはその覚えがないんだが…もう少し詳しく話してくれないか?」
「グスッ私のお兄ちゃんが、リーサお姉さんと結婚すれば私のお姉さんになるんだよって言ってたもん。」
「う~ん、もう少しのところまで出掛かっているんだが、もう少し詳しくお願いしてもいいか?」
「私のアンディお兄ちゃんがリーサお姉さんと見合いするって聞いて、うまくいけばリーサお姉さんが本当のお姉さんになるって言ってたもん。」
「あ~あのアンディの妹だったのか、それはすまなかった。アンディにも謝らなければと思いつつ、数十年だからな。遅くなったが今からでも謝りに行こう。案内を頼む。」
「…から。」
「さ、早く案内してくれ。」
「だから、お兄ちゃんはいないから!謝るなんて無理なの。」
「う~む、いないのか。では日を改めて伺うことにしよう。在宅の日を後で家の父母に伝えといてくれ。」
「だから、いないの。無理なの。」
「いや、だから在宅の日を教えてくれと「もう、ここにはいないの!」へ?」
「お兄ちゃんはリーサさんが家出した後に誘拐されたの。だから、もうこの里にはいないの。」
「誘拐ってのは例のアレか。」
「そう、少し前にもう向こうで新しい家族が出来たって手紙が来たの。」
「あ~そういうことか、分かった。なら、もう謝ることは無理なんだな。それで話は戻すが、何故ケインに付き纏う?」

「だって、お兄ちゃんほどイケメンでもないのにあんな子がリーサお姉さんと一緒になるなんて我慢出来ないもん!だから、私がリーサお姉さんから奪ってやろうと思ったの。」
「それにしては攻撃的だったが?現にケインも怖がっている。」
「だって、見つめていればこっちに好奇心を持ってもらえるはずだって言われたもん。」
「見つめる?あれはどう考えても『睨みつける』が正しい表現だぞ。」
「知らないもん!じっと見つめていればいいって言われたもん。」
「だからって、あの方法は間違っていると思うぞ。経験がない私が言うのもアレだが。」
「だって、潤んだ瞳で見つめればイチコロだって言われたもん。『潤んだ瞳』が分からないって言ったら『瞬きせずにジッと見てれば自然になるから』って言われたもん。」
「確かに充血して血走っていたな。それが理由か。まあいいが、そんな理由でケインを狙った訳か。」
「だって、『あのいろいろとなリーサ』お姉さんと一緒にいるくらいだから、他のエルフの女なら落とすのは楽勝だって言われたもん。」
「そうか、楽勝か…ってちょっと待て!今『いろいろと残念な』って言わなかったか?」
「言ったよ?」
「『だから何?』って雰囲気だが、おかしいからな。ちなみにそれは誰が言っているんだ?」
「え~誰って?皆んなかな。」
「そうか、皆んなか。それはこの里の連中ってことでいいんだな?」
「そうだよ、リーサお姉さんは何を言ってるのかな?もしかして、そういうところが『いろいろと』なところなのかな?」
リーサさんがベティの両頬を片手で『ぎゅっ』と挟むと「お前も里の連中ってことだよな?」と低い声で確認する。
「リ、リーサお姉さん?」
「そうか、私はこの里でそういう風に思われていたのか。なら、いっそこの手で…「はい、リーサさん。そこまで。」…ケ、ケイン何故止める。私が馬鹿にされたのだぞ。そうだ、ケインのアレを出してくれ。アレでこの里の連中を一人残らず…」
『スパ~ン』とハリセンでリーサさんの暴走を止める。

「そういうところが『いろいろ』な部分に含まれるんじゃないの?」
「ケインまで私を残念呼ばわりするのか!」
「だって、実際そうだし。」
「ケイン、それはいくらケインでも言い過ぎじゃないか。」
「いいから、リーサさんはそれも含めてリーサさんだから、残念なところがあったから、今こうして俺といるんでしょ?なら、そのままでいいじゃん。残念だったからお見合いが嫌で家出したんだし。」
「そう言えばそうだな、だがあまり『残念』を繰り返してくれるな。いくら私でも少しは傷付く。」
「(少しなんだ。)まあいいから、クレイグさんの荷造りも終わったし帰るよ。」
「ああ、分かった。ベティ、すまんがケインは渡せないからな。」
「べ、別にいらないもん。」
「ほら、帰るからね。ベティもまたね。」
「あ、ああ。」

家まで戻るとクレイグさんと他の家族が揉めている。
どうやら、リヤカーに積んだ荷物の上に自分達の荷物を乗せて一緒に来ようとしているみたいだ。
「リーサさん、GO!」
「何だか知らんが任された。おい!」
「「「げっ戻って来た。」」」
「兄の荷物以外もある様だが?」
「「「ギクッ」」」
「この辺のはどう見ても女性の下着の様だが?」
「だって、ズルいじゃない。」
「そうだ!俺だって何かやれることがあるはずだ!」
「そうよ!私にも出来ることがあるはずよ!」
「僕は…何も出来ないけど、ダメ?」

「は~いいか?クレイグは本採用じゃないからな、言うなればだ。『仮』分かるか?成果は求めないが、何も出来ないのなら、予定だからな。この家が失くなるとどこに返せばいいんだ?」
「(あ、あれ本気だったんだ。)」
「なら、その『仮』が取れればそっちに行ってもいいの?」
「だから、何故そうなる!」
「だって、本採用になれば返品予定がなくなるんでしょ?なら、私達がそっちに行っても問題ないわよね?」
「それで、こっちに来て仕事はどうするんだ?」
「そりゃ今まで面倒みてきたんだもの。リーサやクレイグにお任せするわよ。ねえ、あなた。」
「ああ、そのつもりだ。何も心配することはない。」
「「大ありだ!」」
「あら、クレイグ。今までニートでダラダラと暮らすのを許していたのにそういうことを言うの?」
「俺だって、好きでダラダラとしていた訳じゃないんだ。どこも働かせてくれなかったから仕方がなかったんだ。」
「でも、ず~っと本を読んでいただけでしょ?」
「ここには知識を学ぶ場所がないんだから、しょうがないじゃないか。」
「なら、あなたもリーサみたいに家を出ればよかったじゃない。」
「俺は家事が出来ないのを知っているだろ?」
「それはリーサも同じだったわよ。でも今は一人でこなしているのをあなたも見たでしょ。」
「ぐっ、そ、それはそうだが。」

リーサさんやクレイグさんが言い負けそうになってきた。
『また、変な話になってきたな。このままじゃ収拾がつかないから、間に入るか。』

「すみません、ちょっといいですか?」
「何?ケイン君。婿であるあなたが私達を養ってくれるの?」
「まだ婿じゃありませんし、それは無理です。」
「あなたもそう言うの。」
「え~とですね、仮に面倒をみたとしてですよ、種族的に俺の方が先に逝きますよね?その後はどうするんですか?」
「その頃にはリーサとの間に孫も産まれているでしょうから、ちゃんと面倒見るわよ。どう?いいお婆ちゃんになるわよ。」
「…子供、ケインとの子供、一番上が娘で次が息子の一姫二太郎で少なくとも二人。ふふふ…ふふふ…いいかも。」
「リーサさん、お~い!戻ってきてね。このままじゃなんて出来る環境にはならないからね。」
「はっそうだ!そんなに家族が多くなるとケインと二人っきりになることなんて無理だ!絶対に阻止しないと!」
「もう、後少しだったのに~でもケイン君も意外となのね。うふふ、本当に孫の顔を見るのが早まるかもね。」
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