上 下
78 / 468
連載

◆真相は残念でした

しおりを挟む
リーサさんがベティの腕を掴んで、少し離れた場所まで歩き、二人で立ったまま話し始めた。
「なあ、ベティよ。どうしてケインに付き纏う?ケインがお前に何かした訳でもないだろう。私から見てもケインがお前に対しては何もしてないと思うが。」
「…が…の…さんに…のに。」
「ん?すまん、もう一度言ってもらえるか?」

「リーサお姉さんが、私の本当のお姉さんになるって言ったのに!嘘吐き!」
「ん?私にはお前とそんな約束をした覚えはないが、誰かと間違えてはいないか?」
「だって、言ってたもん!リーサお姉さんは私のお姉さんになるんだって。言ってたもん!」
「いや、だから私にはその覚えがないんだが…もう少し詳しく話してくれないか?」
「グスッ私のお兄ちゃんが、リーサお姉さんと結婚すれば私のお姉さんになるんだよって言ってたもん。」
「う~ん、もう少しのところまで出掛かっているんだが、もう少し詳しくお願いしてもいいか?」
「私のアンディお兄ちゃんがリーサお姉さんと見合いするって聞いて、うまくいけばリーサお姉さんが本当のお姉さんになるって言ってたもん。」
「あ~あのアンディの妹だったのか、それはすまなかった。アンディにも謝らなければと思いつつ、数十年だからな。遅くなったが今からでも謝りに行こう。案内を頼む。」
「…から。」
「さ、早く案内してくれ。」
「だから、お兄ちゃんはいないから!謝るなんて無理なの。」
「う~む、いないのか。では日を改めて伺うことにしよう。在宅の日を後で家の父母に伝えといてくれ。」
「だから、いないの。無理なの。」
「いや、だから在宅の日を教えてくれと「もう、ここにはいないの!」へ?」
「お兄ちゃんはリーサさんが家出した後に誘拐されたの。だから、もうこの里にはいないの。」
「誘拐ってのは例のアレか。」
「そう、少し前にもう向こうで新しい家族が出来たって手紙が来たの。」
「あ~そういうことか、分かった。なら、もう謝ることは無理なんだな。それで話は戻すが、何故ケインに付き纏う?」

「だって、お兄ちゃんほどイケメンでもないのにあんな子がリーサお姉さんと一緒になるなんて我慢出来ないもん!だから、私がリーサお姉さんから奪ってやろうと思ったの。」
「それにしては攻撃的だったが?現にケインも怖がっている。」
「だって、見つめていればこっちに好奇心を持ってもらえるはずだって言われたもん。」
「見つめる?あれはどう考えても『睨みつける』が正しい表現だぞ。」
「知らないもん!じっと見つめていればいいって言われたもん。」
「だからって、あの方法は間違っていると思うぞ。経験がない私が言うのもアレだが。」
「だって、潤んだ瞳で見つめればイチコロだって言われたもん。『潤んだ瞳』が分からないって言ったら『瞬きせずにジッと見てれば自然になるから』って言われたもん。」
「確かに充血して血走っていたな。それが理由か。まあいいが、そんな理由でケインを狙った訳か。」
「だって、『あのいろいろとなリーサ』お姉さんと一緒にいるくらいだから、他のエルフの女なら落とすのは楽勝だって言われたもん。」
「そうか、楽勝か…ってちょっと待て!今『いろいろと残念な』って言わなかったか?」
「言ったよ?」
「『だから何?』って雰囲気だが、おかしいからな。ちなみにそれは誰が言っているんだ?」
「え~誰って?皆んなかな。」
「そうか、皆んなか。それはこの里の連中ってことでいいんだな?」
「そうだよ、リーサお姉さんは何を言ってるのかな?もしかして、そういうところが『いろいろと』なところなのかな?」
リーサさんがベティの両頬を片手で『ぎゅっ』と挟むと「お前も里の連中ってことだよな?」と低い声で確認する。
「リ、リーサお姉さん?」
「そうか、私はこの里でそういう風に思われていたのか。なら、いっそこの手で…「はい、リーサさん。そこまで。」…ケ、ケイン何故止める。私が馬鹿にされたのだぞ。そうだ、ケインのアレを出してくれ。アレでこの里の連中を一人残らず…」
『スパ~ン』とハリセンでリーサさんの暴走を止める。

「そういうところが『いろいろ』な部分に含まれるんじゃないの?」
「ケインまで私を残念呼ばわりするのか!」
「だって、実際そうだし。」
「ケイン、それはいくらケインでも言い過ぎじゃないか。」
「いいから、リーサさんはそれも含めてリーサさんだから、残念なところがあったから、今こうして俺といるんでしょ?なら、そのままでいいじゃん。残念だったからお見合いが嫌で家出したんだし。」
「そう言えばそうだな、だがあまり『残念』を繰り返してくれるな。いくら私でも少しは傷付く。」
「(少しなんだ。)まあいいから、クレイグさんの荷造りも終わったし帰るよ。」
「ああ、分かった。ベティ、すまんがケインは渡せないからな。」
「べ、別にいらないもん。」
「ほら、帰るからね。ベティもまたね。」
「あ、ああ。」

家まで戻るとクレイグさんと他の家族が揉めている。
どうやら、リヤカーに積んだ荷物の上に自分達の荷物を乗せて一緒に来ようとしているみたいだ。
「リーサさん、GO!」
「何だか知らんが任された。おい!」
「「「げっ戻って来た。」」」
「兄の荷物以外もある様だが?」
「「「ギクッ」」」
「この辺のはどう見ても女性の下着の様だが?」
「だって、ズルいじゃない。」
「そうだ!俺だって何かやれることがあるはずだ!」
「そうよ!私にも出来ることがあるはずよ!」
「僕は…何も出来ないけど、ダメ?」

「は~いいか?クレイグは本採用じゃないからな、言うなればだ。『仮』分かるか?成果は求めないが、何も出来ないのなら、予定だからな。この家が失くなるとどこに返せばいいんだ?」
「(あ、あれ本気だったんだ。)」
「なら、その『仮』が取れればそっちに行ってもいいの?」
「だから、何故そうなる!」
「だって、本採用になれば返品予定がなくなるんでしょ?なら、私達がそっちに行っても問題ないわよね?」
「それで、こっちに来て仕事はどうするんだ?」
「そりゃ今まで面倒みてきたんだもの。リーサやクレイグにお任せするわよ。ねえ、あなた。」
「ああ、そのつもりだ。何も心配することはない。」
「「大ありだ!」」
「あら、クレイグ。今までニートでダラダラと暮らすのを許していたのにそういうことを言うの?」
「俺だって、好きでダラダラとしていた訳じゃないんだ。どこも働かせてくれなかったから仕方がなかったんだ。」
「でも、ず~っと本を読んでいただけでしょ?」
「ここには知識を学ぶ場所がないんだから、しょうがないじゃないか。」
「なら、あなたもリーサみたいに家を出ればよかったじゃない。」
「俺は家事が出来ないのを知っているだろ?」
「それはリーサも同じだったわよ。でも今は一人でこなしているのをあなたも見たでしょ。」
「ぐっ、そ、それはそうだが。」

リーサさんやクレイグさんが言い負けそうになってきた。
『また、変な話になってきたな。このままじゃ収拾がつかないから、間に入るか。』

「すみません、ちょっといいですか?」
「何?ケイン君。婿であるあなたが私達を養ってくれるの?」
「まだ婿じゃありませんし、それは無理です。」
「あなたもそう言うの。」
「え~とですね、仮に面倒をみたとしてですよ、種族的に俺の方が先に逝きますよね?その後はどうするんですか?」
「その頃にはリーサとの間に孫も産まれているでしょうから、ちゃんと面倒見るわよ。どう?いいお婆ちゃんになるわよ。」
「…子供、ケインとの子供、一番上が娘で次が息子の一姫二太郎で少なくとも二人。ふふふ…ふふふ…いいかも。」
「リーサさん、お~い!戻ってきてね。このままじゃなんて出来る環境にはならないからね。」
「はっそうだ!そんなに家族が多くなるとケインと二人っきりになることなんて無理だ!絶対に阻止しないと!」
「もう、後少しだったのに~でもケイン君も意外となのね。うふふ、本当に孫の顔を見るのが早まるかもね。」
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

天災少年はやらかしたくありません!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )
ファンタジー
旧題:チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?! 【アルファポリス様にて発売中!!】 「天災少年はやらかしたくありません!」のタイトルで2022年10月19日出荷されました! ※書籍化に伴い一部を掲載停止させて頂きます あれ?何でこうなった? 僕の目の前の標的どころか防御結界が消滅。またその先の校舎の上部が消滅。 さらにさらに遠く離れた山の山頂がゴッソリと抉れてしまっている。 あっけにとられる受験者。気絶する女の子。呆然とする教員。 ま……まわりの視線があまりにも痛すぎる…… 1人に1つの魂(加護)を3つも持ってしまった少年が、個性の強い魂に振り回されて知らず知らずの内に大災害を発生させて、更なるチートで解決していく物語です! 書籍化記念書き下ろし 天災少年はやらかしたくありません!スピンオフ Stories https://www.alphapolis.co.jp/novel/589572036/842685585 第2部『旅行中でもチート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/589572036/979266310 第3部『ダンジョンでもチート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/589572036/211266610

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)
ファンタジー
 元々、トラブルに遭いやすい体質だった男の異世界転生記。  トラブルに巻き込まれたり、自分から飛び込んだり、たまに自分で作ったり、魔物と魔法や剣のある異世界での転生物語。余り期待せずに読んで頂ければありがたいです。    戦闘は少な目です。アルフレッドが強すぎて一方的な戦いが多くなっています。  身内には優しく頼れる存在ですが、家族の幸せの為なら、魔物と悪人限定で無慈悲で引くくらい冷酷になれます。  転生した村は辺境過ぎて、お店もありません。(隣町にはあります)魔法の練習をしたり、魔狼に襲われ討伐したり、日照り解消のために用水路を整備したり、井戸の改良をしたり、猪被害から村に柵を作ったり、盗賊・熊・ゴブリンに襲われたり、水車に風車に手押しポンプ、色々と前世の記憶で作ったりして、段々と発展させて行きます。一部の人達からは神の使いと思われ始めています。………etc そんな日々、アルフレッドの忙しい日常をお楽しみいただければ!  知識チート、魔法チート、剣術チート、アルは無自覚ですが、強制的に出世?させられ、婚約申込者も増えていきます。6歳である事や身分の違いなどもある為、なかなか正式に婚約者が決まりません。女難あり。(メダリオン王国は一夫一妻制)  戦闘は短めを心掛けていますが、時にシリアスパートがあります。ご都合主義です。  基本は、登場人物達のズレた思考により、このお話は成り立っております。コメディーの域にはまったく届いていませんが、偶に、クスッと笑ってもらえる作品になればと考えております。コメディー要素多めを目指しております。女神と神獣も出てきます。 ※舞台のイメージは中世ヨーロッパを少し過去に遡った感じにしています。魔法がある為に、産業、医療などは発展が遅れている感じだと思っていただければ。  中世ヨーロッパの史実に出来るだけ近い状態にしたいと考えていますが、婚姻、出産、平均寿命などは現代と余りにも違い過ぎて適用は困難と判断しました。ご理解くださいますようお願いします。    俺はアラサーのシステムエンジニアだったはずだが、取引先のシステムがウイルスに感染、復旧作業した後に睡魔に襲われ、自前のシュラフで仮眠したところまで覚えているが、どうも過労死して、辺境騎士の3男のアルフレッド6歳児に転生? 前世では早くに両親を亡くし、最愛の妹を残して過労死した社畜ブラックどっぷりの幸薄な人生だった男が、今度こそ家族と幸せに暮らしたいと願い、日々、努力する日常。 ※最後になりますが、作者のスキル不足により、不快な思いをなされる方がおられましたら、申し訳なく思っております。何卒、お許しくださいますようお願い申し上げます。   この作品は、空想の産物であり、現実世界とは一切無関係です。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。