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◆ご馳走してもらいました

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「何でガンツさんとアンジェさんは残っているの?」
「そうですよ、さっさと案内して下さい。」
「…出来ない」
「えっ」
「案内できないんじゃ。」
「何故です。約束したじゃないですか!」
「だから、出来ないんじゃ!」
「え~と話が見えないんですけど、説明してもらっていいですか?」
「説明するほどでもないが、一応説明すると…」
要は住む所を用意して欲しいと言われはしたが、二、三日で用意出来るはずもなく結局用意することが出来ずに今日を迎えたが、そのことを正直にアンジェさんに話すことが出来なかった。
ってのがガンツさんの言い分らしい。
「ガンツさんってバカだね。」
「「な、ケインそれはどういうことじゃ(ですか)」」
「だって、そんな短期間で家を用意出来るはずないじゃないですか。それを出来なかったからって、奥さんに申し訳ないって、バカでしょ。」
「ぐ、そう言われると言い返せないのぉ。」
「でも、私の為に用意しようとしてくれたのでしょう。それなのにバカは非道いです。」
「だから、バカなんですよ。どうせならもっとバカになって俺に言えばいいじゃないですか。奥さんを喜ばせたいから、家を用意して欲しいって。」
「でも、お前は『用意しない』って言ったじゃないか。」
「言ったかもしれないですね。」
「なら、ワシが言っても用意しなかったかもしれないじゃないか。」
「そうかもですね。」
「それなら、もう何を言っても一緒じゃないのか!」
「でも言わなかったでしょ。」
「ぐぅそれは…」
「それに今は部屋も空いているんだし、二人だけで空いている部屋に入ればいいじゃないですか。で、その間にガンツさんはアンジェさんの要望を出来るだけ詰め込んだ家を設計すればいいでしょ。その後の二人で考えた理想の家の建築なら喜んでお手伝いしますよ。」
「ケイン…言うたな!その言葉、ワシは忘れんぞ。たっぷり手伝って貰うからな。よしアンジェ、仮の住まいへと移るぞ。」
「はい、あなた。」

「ケインよ、お前も意外と不器用なところがあるのだな。でも、少し惚れ直したぞ。」
「さっきのどこにそういう要素があるのかな。」
「ふふっ惚けるのなら、一晩中でも解説してあげる自信はあるぞ。」
「敵わないな~さすが年のこ「その先を言うならいくら私でも拗ねるぞ」…ごめんなさい。」
「ふふっケインの後ろの爺様に感謝だな。」

ゲート潜るガンツさん達を見送った後は用意した防犯装置を用意する。
「まずはドローンを上空300mに用意して、固定と。次に門にインターフォンを設置して…よしこれでいいか。」
「ケイン、何をしたんだ?」
「まあ見てよ。」とドローンからの映像を見せる。
「これは?」と聞いてくるので、空を指差しドローンが待機していることを説明する。
「ほう、それがこの画面に映されているのだな。で、これは?」
インターフォンの説明を要求されたので、モニターを持ってもらい門扉のボタンを押すと「ひゃっケインが映っている!」とリーサさんがモニターを抱きしめる。
インターフォン越しに『お~い、リーサさん?』と声を掛けるが反応がないので、用意したハリセンで頭を叩くと初めてこちらを見る。
「あれ、ここにもケインが?」

こっちを見てくれたので、改めてインターフォンの説明をすると「ほう」とか「なかなか」とか関心した様な声がした。

「よし、これで防犯はOKと。じゃ帰ろうか。」
「はい。」と言いながら手を差し出すので、その手を握りゲートを住宅前に繋ぎリーサさんと一緒に潜る。

そういやもうすぐ昼だなと思っていたら、リーサさんから提案された。
「ケインよ、お礼を約束していながら、まだだったな。今更だが、お礼にお昼をご馳走させてくれないか。」
そういえばそうだったかもと思い、了承する。
「では、少し時間を潰してから来てくれないか。」
一緒に部屋に行くつもりだったのに、どうやって時間を潰そうか。

そう考えていたところにガンボさん夫妻とすれ違う。
相変わらず仲がいいな~とか思っていたら、声をかけられたのでこれ幸いと伝言をお願いする。
「ガンボさん、こちらが奥様ですね。初めましてケインといいます。ガンボさんにはいつもお世話になっています。」
「あら、これはご丁寧に。ガンボの妻のオードリーと言います。よろしくお願いしますね。」
「それでガンボさん、この後そうですね、三時くらいに就職希望の方を独身寮の食堂に集めてもらえますか。今人手が足りない事業を紹介しますので。」
「ああ、分かった、集めよう。」
「よろしくお願いしますね。」

さて、後はどうやって暇つぶしをしようかと考えていたところに携帯電話が鳴り、出るとリーサさんだった。
準備が出来たとのことなので、部屋の前でチャイムを鳴らす。
「は~い」の声と共にリーサさんがドアを開け、中に促す。
案内された部屋のテーブルの上には美味しそうな料理が並んでいた。
「これは、すごいですね。本当にリーサさんが?」
「ふふっ疑っているねぇ、でも普段の私からは想像出来ないって言うんだろ?」
「正直、そうですね。」
「ならば、ぜひ食べて感想を聞かせて欲しい。」
「すごい自信ですね。わかりました。でも正直に言いますよ?」
「ああ、望むところだ。ふふっ」

そんな勝負めいた雰囲気だったけど、出された料理は全部が美味しかった。
このまま、認めるのもちょっと悔しいな。どうしよう。
「リーサさん、大変美味しゅうございました。」
言うと同時にテーブルに頭を付けた。
「へっ」と間抜けな声の後に「ははは」と高い笑い声が聞こえたので顔を上げるとお腹を抱え笑い転げるリーサさんがいた。
「初めて、人に料理を振る舞ったんだが…」
お腹を抱えながら、苦しそうに言葉を繋げる。
「『美味しい』と言う言葉を聞けたのは嬉しいが、私が勝負めいたことを言ったばかりにそうなったんだろう。ふふっ。スマンな。でも人に『美味しい』と言って貰えるのはこんなに嬉しいものなんだな。それが想い人となれば、それは数倍にもなるんだと実感することが出来た。今まで友人にいくら言われても実感が伴わなかったが、今ここで感じることが出来た。改めて礼を言わせてくれ。ケイン、ありがとう。」
うわぁここまで真っ直ぐ言われると照れて何も言えなくなるよ。
でも、ここで言わないとまた『ヘタレ』の称号が…。

「リーサさん、お昼ご馳走様でした。正直ここまでの腕前とは思っていませんでした。それと俺に対する気持ちも知ることが出来ました。リーサさんの気持ちにちゃんと向かい合うにはまだ数年必要ですが、それまでよろしくお願いします。」
言い切り、頭を下げるが反応がない。
もしかして、ヘマした?怒らせた?色々な感情で一杯一杯になりながら顔を上げると泣きじゃくるリーサさんがいた。
「えと、何で泣いているの?」
「だって、嫌われているかもって思っていたケインに、そんなに真面目に応えられると思っていなかったから~」
「え?俺一言でも嫌いって言った?」
「言ってないけど、冷たかったから~グスッ」
知らない内に傷付けていたんだなと思っていたら、自然とリーサさんの頬にキスしていた。
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