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◆移住開始しました

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昨夜は色々あったな~と起き抜けのベッドの中で身悶える。
「まさか、あのリーサさんがあんなとはね~」
「ケイン、起きたのならさっさと朝食食べちゃいな!」
「は~い」と返事をし、身支度、朝食と済ませる。

「まだ、約束には早いかな。」
時計を見ると九時十分前だったけど、ゲートだし直接だから移動時間はナシ、それにリーサさんが既にスタンバっている気がするから、出かけるか。
ゲートをドワーフタウンの住宅前に繋ぎ潜る。
「じゃ、行って来ます。」
「ああ、行ってらっしゃい。」

ゲートを潜るケインを見て、サムが口にする。
「なあ、普通に挨拶して潜っているけど、これって絶対に『普通』じゃないよな。」
「そうだけど、今更だよ。兄さん。」
「だよな~当たり前になっているから、忘れがちだけど、これって世間的に非常識なんだよな。だけど、我が家の普通になっているんだよな~」
「そうだよ、ケインがいる限りはこういうことがまだ起きるからね、いちいち驚いてもいられないってのが、僕の感想かな。」
「そうかそうだよな~」

住宅前には予想通りにリーサさんが待っていた。
「来た!ケイン、おはよう。」
「おはよう、リーサさん。」
「まだ『さん』付けなんだな。もう呼び捨てで構わないぞ。店主お父様が認めた私とケインの仲なんだから。」
「いいえ、まだ『リーサさん』で行くから。」
「ふ~ん、『まだ』と言うことは『その内』呼び捨てになると思っていいんだな。ふふっ」
「ち、違うから!そんなことより、昨夜はちゃんと寝れたの?いきなりの引越しだったし、大丈夫だった?」
「そうかぁケインは心配してくれるんだな、そんなに心配なら一緒に住もうじゃないか。昨夜はお風呂の入り方も教えてくれただろう。早速使ってみたが中々良かったぞ。でもな、ちょっと使い方が分からないのもあってな。どうだ一緒に入って教えてくれたりとか?それにあんなに広い家での一人寝は淋しくてな。」
「お風呂を気に入ってもらえて良かったよ。淋しいなら、ルームメイトでも募集すればいいんじゃない。さあガンツさんの所に繋げるよ。」
「もう、照れ屋だな~」
ゲートを領都のガンツさんの工房に繋げ、手を繋いで一緒に潜る。
『ハッ自然に手を繋いでいた。いつの間に…』
リーサさんを見上げると『ニヤリ』と笑みを返された。

「おう、朝から見せつけてくれるの~」
「どこの輩ですか!それでガンツさんの準備はいいんですか?」
「ああ、ばっちりじゃ。」
「なら、部屋割りをお願いしますね。優先順位は家族構成の人数が多い順にお願いします。もし部屋数が余るなら、その時は家族構成に関わらず好きな部屋、階を選んでもらって構いません。」
「ちょっと待て、そんなに言われても仕切れんぞ。」
「なら、リーサさんと一緒にお願いしますね。じゃリーサさん、お願いね。」
「「ちょっと待て、こんなジジイ(ババア)と一緒にするのか!」」
「じゃ、お願いね。」
ドワーフの里にゲートを繋ぎ、その場にいたアンジェさんに挨拶する。
「おひさしぶりです。アンジェさん、移住準備はどうですか?大きな荷物はこのリヤカーに乗せて置いてくださいね。俺はこの里の防犯用の道具を準備するので少しの間、工房で作業するので後はガンツさんとリーサさんに確認して下さい。では。」
「分かりました、またね。ケイン君。で、うちのヤドロクは、何か言うことあるでしょう?」
「ようアンジェ、久しぶりだな。」『スパン』
「あなたは本当に…言うことが違うでしょ。『また一緒に暮らせて幸せだ』とか『嬉しい』とかあるでしょ。全く何でこんな男と一緒に…」
「あの、横から失礼します。私ケインの秘書のリーサと言います。ケインにこの里の人達の移住先の住居について、あらかじめ決めておく様に言われております。まずは家族構成の人数などを纏めていられると聞いたのですが、お聞きしてもいいですか。」
「あ、ああ、このヤドロクに話したリストならここにあります。人数で部屋を決めると言うのは?」
「そうですね、例えば単身者、ご夫婦のみ、ご夫婦とお子様とかの家族構成の人数で、一時的に住んでいただくお部屋の割り振りを決めさせて頂きます。もし、ご希望に添えるお部屋で無くても全体を割り振った後で余裕があれば、ご希望のお部屋へと案内することも出来ます。ここまでいいですか?」
「はあ、ウチのヤドロクと大違いですね。丁寧な説明ありがとうございます。」

軽く一礼し後ろに控えていた移住希望者に声を掛ける。
「いいですか~移住先の部屋決めの為にグループを分けます。家族持ちの方は代表者を一名選んで下さい。では、向かって左から単身者、夫婦のみ、夫婦+子あり、または親も含めての人数が三人以上の人で、まずは別れて下さい。それと荷物は、ここにあるリヤカーに乗せられる物は乗せておく様に。以上。」

説明が終わると同時に動き出す里の住人たち。
「単身者、総勢五十二名整列しました!」
先頭に立っている男がアンジェさんに声を掛ける。
「ねえガンツ、この人数は単身者用の住居に入れるの?」
「ああ、問題ないと思うぞ。」と左頬を押さえながら、ガンツさんが応える。
「そう、ならあなたたちは、そこのリヤカーを持って行ってそれぞれ自分の荷物を乗せておくように。はい動く。」
『パン』と手を叩くと単身者が動き出す。

「夫婦のみのグループです。総勢二十四組です。」
「そう、リーサさん、この人達は入れるかしら。」
「はい、問題ありません。」
「ありがとうございます。では皆さんも荷物をリヤカーに乗せて準備して下さいね。」

次が家族が多い人達のグループだ。
まずは世帯数を確認し、部屋数に余裕があるかを確認する。
結果、世帯数<部屋数となったので、余裕がある。
「では、人数が多い世帯から決めましょう。だけど、いいですか!これは仮住まいです。不満や、これ以上の要求があるならば、移住先の住宅地にそれぞれで用意してください。では、始めます。」
どうにか部屋割りが気まった様で、後はケインを待つだけとなった。

その頃のケインは工房内の工作室で唸っていた。
「里の防衛ってどうすればいいのか?考えてもしょうがない。まずは目先から一つずつ解消するか。」
第一に人がいないってのが問題なんだよな。
なら、モニター付きのインターホンで移住先の里の人と繋がればいいってことだ。
これは携帯電話と監視カメラの応用で出来る。
次に防衛だな、これは上空から監視して不審な人影をみたら、警告音を出してモニターに出せばいいか。
意外と簡単?

捻り出したアイデアを形にして作り上げた所で、いい時間になったのでドワーフの里へとゲートを繋いで潜る。

「ガンツさん?また何か余計なことを言ったの?」
氷を渡しながら尋ねると「言ったんじゃねえ、言わなかったら、こうなった。」ってどう言うことと、リーサさんを見ると、カクカクシカジカと話してくれた。
「そりゃガンツさんが悪い」と俺は言えない。
なぜなら、全く同じことを言う自信しかない。
ってかそんな答えは自分の中には出てこない。

そんな多少自業自得なガンツさんは置いといて、リーサさんに移住準備の状況を尋ねてみるとほぼ終わっているとのことだった。
何気に優秀な残念エ□フを少しは見直した。

「では、そうですね。比較的移住がらくな単身者から行きましょうか。」
単身者の前に移動し、ドワーフタウンの独身寮の前にゲートを繋げる。
独身者達にゲートを潜らせ、後はアーロンさんにお任せする。

次に家族が多い世帯を集合住宅前に繋いだゲートを潜らせ、後の説明も含めリーサさんに任せる。
後に残るのはアンジェさんとガンツさんだが、どうすんだ?
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