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第3章 ただいま、放浪中

第29話 酔ってないれす!

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 ドワーフ達が片手に発泡酒、片手に定規を持ちジョッキを掲げ「お願いします!」と拝めば、どこからともなく『いいよぉ~』と聞こえジョッキグラスがキンキンに冷やされる。

「ほほっ! これこれ! じゃ、温まる前に……」と発泡酒のアルミ缶を手に持つ定規でプルタブを開けるとジョッキになみなみと注ぎ込み、満足そうに「プハァ!」と声を漏らす。

「ありゃりゃ……」
「な? お前のやり方が新しい酒の飲み方として定着しつつあるぞ」
「だね。でもさ、それはいいんだけどね。この発泡酒ってここで作れるのかな」
「ムリだな」
「だよね」
「だが、今はまだムリだと言うことだ」
「え?」
「ふふふ、分からないか? お前が新しい酒を持ち込んだんだ。アイツらが今更、他の酒に目を向けるとは思えない。まあ、少なくとも自分達が作れるようになるまでは真剣に取り組むだろうな」
「あ~そういうことね」

 俺は嬉しそうに美味しそうにお酒を楽しむドワーフ達を見ながら悪いことをしてしまったかなと嘆息するとガルちゃんが何が不満だと聞いてきた。

「あぁ……あのね」と発泡酒を構成するアルミ缶の元になるアルミニウムを精錬するのに大量の電力が必要であることと、そもそもの鉱石がここにあるのかどうかも分からないとガルちゃんに話す。

「そういうのはアイツらが自分でなんとかするだろうから気にするな」
「え? いいの?」
「良いも悪いも俺達はただこう言う物があると教えただけに過ぎない。後はアイツらが自分達なりに探求するだけだ。だから、俺達がしてやれるのはここまでだな」
「俺達って……」
「ん? 何か問題か?」
「いや、別にいいけどさ……俺達って……ガルちゃんは「それを言うならお前もだろ」……え?」
「だから、お前も日本向こうから持ち込んできただけじゃないか」
「あぁ~確かに」
「な? だから、小さいことは気にするな」
「また、小さい言われた……」
「お! そう言えば聞いたことがあるな。男には禁句だと」
「お、俺は違うからね!」
「俺にそう言われてもな。実物はお前の以外は小さな子供のしか見たことがないからな」

 ガルちゃんはそう言って俺の一部分をジッと見てきたので俺は慌てて隠し「とにかく!」と話を打ち切り、もうドワーフの里ここでの話は終わりならと、自分達もここで一緒に楽しむことを提案する。

「だな。じゃ、改めてかんぱ~い!」
「「「かんぱ~い!」」」
「って、何に?」
「何ってもちろん、俺とお前の婚姻だろ。他にあるか?」
「……えっと、もうそれって決定事項なの?」
「なんだ? イヤなのか?」
「いや、別にイヤとかそんなんじゃなくて「私が先ですから」……リーアさん?」
「はい! あなたの奥様のリーアさんですよ」
「もしかして酔ってます?」
「酔ってないれすよ……」

 ガルちゃんの乾杯の音頭に合わせて俺達もジョッキを掲げるが、ふと何に対する乾杯なのかが気になりガルちゃんに問い掛ければ、当然の様に俺との婚姻だと言われギョッとする。

 別にガルちゃんと一緒になるのが絶対にイヤだと言う訳ではないけれど、順番的にはリーアさんが先だし、もう一つ言うならクリスとのこともちゃんとハッキリさせていないこともあり、今すぐガルちゃんとどうこうと言うのは違うだろうと思っていたら、横からリーアさんが私が先だからと割って入ってくるが、どうも様子がおかしい。

 ちょっと顔が赤いしどことなくフラついているから、もしかして酔っているのかなと声を掛ければ酔っ払いが絶対に言う言葉『酔ってないです!』を戴く。

「だから、順番としては私が先なんれすから、そこはちゃんと守ってくらさいね!」
「チッ面倒くせぇなぁ」
「いいれすか! わらしがさきれすからね!」
「ちょ! ちょっとリーアさん、ちゃんと立って下さいよ!」
「へへへ……ヒロさん……」
「はい、ここにいますよ」
「いいれすか! わらしがさきなんれすからね!」
「はいはい、じゃガルちゃんそういうことで」

 酔って真っ直ぐ立てないリーアさんが俺にしな垂れかかって来たのを支えていたが、これ以上はムリかなと思い屋敷に転移しようとガルちゃんに言うとガルちゃんが面白くなさそうに「ん? 何がそういうことでなんだ?」と突っ掛かってくる。

「だから、リーアさんがこうなっちゃったから戻ろう「は?」かと……え?」
「お前な! 楽しいのはこれからだろうが! そんなのはその辺に放っておけばいいだろうが!」
「いや、さすがにそれは……」
「ちっ……じゃ、直ぐに戻って来るよな?」
「え……でも、リーアさんを一人にするのも……」
「あ~もう! お前な! そいつが何歳なのか分かるだろ! そんな小さな子供を心配するように世話をやくことはないんだよ!」
「……それは分かってるよ」
「なら「俺はガルちゃんでも一緒だよ」……ん?」

 終いにはこの世界で誰よりも年上なリーアさんをそんなに心配必要はないと言い切るが、まだ不満がありそうで言葉を続けるが俺がそれをぶった切ると、ガルちゃんは俺が言った言葉の意味が分からずキョトンとしている。なので、それを説明するように続けて話す。

「だからさ、もしこれがリーアさんでなくガルちゃんが同じ状態になったとしても俺は同じ様に心配するってこと」
「な、何を言い出すんだよ! 今はそんなこと関係ないだろ!」
「そうかもしれないけど、俺は二人を分け隔てたりはしないってことを知っていてほしいと思ってさ」
「……分かったよ」
「え?」
「だから、分かったって言ったんだ! さっさとソイツを連れて行けって!」
「あ、うん。ありがとね。じゃ、少ししたら迎えに来るから」
「あ?」

 俺の言った言葉を理解したのかガルちゃんの顔が少しだけ赤らみリーアさんを連れて行けとお許しが出たので、ガルちゃんも後で迎えに来るかと言えばガルちゃんの様子が変わる。


「だから、迎えに来るって言ったんだけど……もしかしていらなかった?」
「何時だ!」
「えっと……そうだね、大体三十分後くらいかな。遅くても一時間は掛からないと思うよ」
「ホントだな!」
「た、多分だけど……」
「どこで待ってればいいんだ?」
「いや、どこって……ここでいいんだけど?」
「なんでだよ!」
「いや、なんでって単に迎えに来るだけだし」
「デートじゃないのかよ!」
「え? なんでデートの話になっているの?」
「いや、だってよ。迎えに来るってのはそういうことだろ? 違うのか? 俺は昔、男が女を迎えに来るのはそういうことだと聞いたぞ」
「あ~確かにそういう場合もあるけどさ」
「ほら、ならデートじゃないか!」
「いや、この場合は単にガルちゃんを迎えに来て一緒に帰るだけだから」
「く……」

 多分、遠い昔のまれびとに聞いたのかもしれないが、男が女を迎えに来る=デートではないと言い聞かせあからさまにガルちゃんがガックリしたので、俺は少し考え「でも、今回は一緒に住んでいる女性を迎えに来るってのが正解かな」と言えば「それって同棲ってヤツだな!」と食い付いてきたが、単なる同居だからとそれを断ち切ればガックリと肩を落とす。

 取り敢えずは今の内だなとオジーをその場に残しリーアさんをお姫様抱っこしながら屋敷に転移すれば「やっと二人きりになれましたね」とリーアさんが俺の首に腕を回しギュッと力を込めるが『セツもいるよぉ~』とセツがひょっこり顔を出したことで「忘れてました……私としたことが……」とリーアさんが落ち込む。
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