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第2章 新天地を求めて

第7話 見てないハズなんだけど

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「ねぇ、もういいでしょ返して!」
「「「……」」」
「ちょっと、無視しないでよ! 聞こえてるんでしょ! ねえ、お願いだから!」
「「「……」」」
「ちょっと、ヒロ! あなたのせいでもあるのよ。どうにかしてよ! なんで私のブラやパンツを他人に凝視されないとダメなのよ! これってイジメなの?」
「えっと……なんかすみません……」
「謝らないでよ!」
「えぇ~どうしろと……」

 事の起こりは少し前にセシルとオジーが一緒に王都へと行くことが決まり、伯爵は俺が遅れることの言い訳と先輩という新たなまれびとが現れてしまったことを王様へ報告する為の手紙を執筆中の間に「じゃあ、お風呂にでも」とユリアに促されてお風呂に向かおうとした先輩も一瞬喜んだ後に顔が曇り「でも、替えが……」と呟いたので「これですか?」と俺がインベントリから先輩の買い物袋を取り出すと「ソレ!」と先輩が奪い取る。

「見た?」
「見てないです」
「ホントに?」
「はい、見てないです」
「正直に言っても怒らないから……見たんでしょ?」
「見てないですよ」
「ふ~ん、そっか。ヒロは新品じゃダメと。なら、洗う前の使用済みの方が……とか?」
「いやいやいや、何を言い出すんですか! 大体、そんな布切れを見て興奮するなんてことないでしょ!」
「あれ? そう言えば実物私の全裸見ても何も反応してなかった様な気が……やっぱりヒロ様は……」
「いやいやいや、止めてよ。そんな妙な疑いを掛けるのは!」
「そうですよ。ヒロ様は年上の人オバさんに興味がないだけですよ」
「あ~もう、勝手なことばかり……」

 先輩から預かっていた紙袋を出しただけなのに先輩から妙な疑いを掛けられ困惑していたが、考えてみれば何も確かめずに下着が入っている紙袋を出せば疑われてもしょうがないかなと思えなくもないけど、誰も彼もが下着に興味があると思わないで欲しい。

 あんな布切れじゃなく、それが包み込むものの方に興味があるのが普通だと思うんだけど、そういう下着類に興味を持つ人種がいることは否定しない。

 それにセシルの全裸を見て反応していなかったと言われたが、年上に興味がないとかそういうのじゃなくただ単にああいう特殊な事情でそうなることが怖いのもあっただけだ。でも正直、あの時の自分を褒めてやりたいよ。

 でも、その後が悪かった。

 ただでさえ上質な感じのショップの紙袋に女性が興味を持たないでいられる訳がない。

 いつの間にか呼び戻された奥様も一緒になって先輩から無理矢理取り上げた紙袋を一通り検分した後に中味をぶちまけ、先輩が購入した下着類が散乱すると「これは!」とか「え、凄っ!」など語彙力が急激になくなった様で無心で見ていた。

 そんな女性達の間に入れる訳もなく先輩も怖いのか涙目で俺に訴えてくるが、俺だってムリだし。

 だから、俺は複製コピーしていたもう一つの紙袋を先輩に渡せば「ありがと」と言った先輩だったが怪訝な顔で俺に聞いてくる。

「ねえ、なんで?」
「なんで……って。いくつあっても困らないかなと思って」
「ふ~ん、そう」
「いや、なんでそういう顔で見るんですか?」
「自分の胸に聞いてみれば?」
「え? いや、人格は俺一人だけなんですけど?」
「分かってるわよ! ねえ、私の下着を使って何かしようとしてたんじゃないの?」
「ハァ~だから、さっきも言ったじゃないですか。俺は下着じゃなくて実物にしか興味がないって」
「またまたぁ~そんなことをいいながら、コレを着ている私を想像したんじゃないの?」
「しませんよ?」
「え?」
「いや、え? って言われても……」
「もう、いいわよ。ねえ、お風呂に連れてってよ」
「「「……」」」
「また、無視なの……あ、そうだ! ヒロなら場所知っているんでしょ。なら「入りませんよ」……もう、先に言わないでよ」
「とにかく、お風呂の前までは連れて行きますから」
「うん、お願いします。あ……」
「覗きませんから!」
「また、先に言う!」

 俺は先輩をお風呂の前まで案内すると先輩が購入していたシャンプー類が詰め込まれていた紙袋を渡し「ごゆっくり」と告げれば「ホントに一人で入るの?」と先輩が聞いてくる。

「単に広いだけですから、普通にスパに来たと思えばいいじゃないですか」
「でも……」
「また、そうやってグズついているとさっきみたいになりますよ」
「あ! それもそうだね。でも、お風呂上がりにまたコレを着るのも……」
「はい、どうぞ」
「うわ、ありがと。ヒロってホント、便利だね」
「……ありがとうございます」

 先輩は可愛らしく小さく手を振って浴室へ入って行くのを確認してから、俺は通りがかった一人のメイドさんに先輩のお風呂を介助してもらうように頼むと元の場所へと戻れば、そこでは先輩の下着を合わせようとほぼほぼ全裸になっている奥様達がいたので、俺は気付かれないようにそっと扉を閉め自室へと戻るのだった。

「確か、オジーもいたハズなんだけど……」
「ええ、いましたよ」
「うわっ!」

 部屋の扉を閉めてからそう呟けば、そこにオジーが立っていた。

「私が居るにも関わらず奥様達が次々と脱ぎ始めたので、何か言われる前にと私は退室しました」
「じゃあ、俺が入るのを止めてくれてもよくない?」
「……」
「オジー?」
「死なば諸共です」
「……えっと、それはどゆことかな?」
「見ましたよね?」
「え?」
「いいえ、見たはずです!」
「……ちょっとは」
有罪ギルティ!」
「ええ! ちょっと待って。オジーも見たんでしょ?」
「いいえ、私は直前に退室したので……」
「じゃあ、奥様の右乳房の黒子は?」
「黒子は右にはなくて左乳首の横ですよ……あ!」
「はい、有罪ギルティ!」
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