56 / 78
第1章 ここが異世界
第55話 どれでも正しいんだからいいじゃない
しおりを挟む
「いらっしゃい。何をお探しで?」
「そうですね、部屋着に出来る簡素な服と下着を探しているんですけど」
「ふ~ん、お客さんの感じだと……うん、コレね。はい、試着してみて」
「え?」
店に入り、店員らしき人に声を掛けられたので、これこれこういうことでと話すと直ぐに俺の頭からつま先までを視線を何度か往復させると「うん!」と手を叩き、その辺の棚にあった物をポンポンと俺に渡すと試着室へと案内されたので、オジーに目で助けを求めるとオジーは何も言わずに腕を組んで黙って見ているだけだった。
まあ、オジーが何も言わないのだから、多分大丈夫なんだろうと思い渡された服を手に試着室へと入り、スーツを脱ぎシャツを脱ぎ、パンツとシャツ一枚の姿になったところで「お客様、どうですかぁ?」といきなり試着室を開けられてしまう。
「キャッ! ちょ、ちょっとなんですか! いきなり!」
「あら、ごめんなさいね。服を渡したはいいけど、着方は分かるのかなと思いまして」
「分かりますよ!」
「え?」
「そんなに不思議なことじゃないでしょ! チャックくらい分かりますよ」
「え? ちゃっくって……」
「あれ? じゃあ、ファスナー……」
「ふぁすなぁ?」
「もう、じゃあジッパーでしょ!」
「そう、そうそう……って、ジッパーのこと知っているの?」
「知ってますよ。それくらい……ちょっと呼び名が定着していないだけで」
「いやいやいや、それって最近、王都から仕入れたものなのよ。だから、この辺の人は知らないハズなんだけど……あなた、一体……「詮索はそこまでで」……あ」
試着室の扉をいきなり開けられ焦ってしまったが、店員は俺にジッパーの使い方を教えてくれようとしたみたいだ。でも、俺がジッパーの使い方を知っていることを逆に不思議がられてしまい俺に興味を持ったところで、オジーが割って入り店員からの追求をなんとか避けることが出来たと思う。多分だけど……
「と、とにかく一人にして下さい。オジーお願い!」
「はい、さ」
「わ、分かりましたよ。もう、どういうことなの?」
「ふぅ~」
オジーが店員を試着室の外に連れ出して扉を閉めたところで思わず溜め息が出る。まさか、ファスナー……いや、ジッパーが地雷だなんて分からないよ。まあ、今まで色んな人が客として異世界に来た人の持ち物や服にジッパーが使われていても不思議じゃないし、ズボンを履いているなら着いているだろうな。でも、それが最近王都から仕入れたとか言ってたみたいだけど。まあ、後で聞いてみればいいか。
「よし、こんなもんかな。うん、サイズはいいし着心地も問題ない。これぞ『ザ・部屋着』だな」
俺は試着室の中にある姿見を見てほくそ笑む。鏡の中の俺は下はスウェット、上はジッパーで前を閉めるデザインのパーカーで色は無地の紺色だ。
俺はこれでいいやとパーカーとスウェットを脱ぎ、スーツに袖を通し試着室を出ると「これでお願いします」と店員に渡し下着の場所を確認する。
店員は俺を不思議そうに見ながらも「こちらです」と案内してくれた先には無地のトランクスとTシャツが並べられていた。試しにと近くにあったのを手に取ると、それには小さなタグが着けられ、そのタグにはよくあるSMLのサイズ表記があった。
「ああ、ちゃんとサイズ分けされているんだね。ふ~ん」
俺はサイズを確認し、色違いのトランクスとTシャツを三セット手に取り店員に渡しお会計をお願いする。別に複製出来るから複数は必要ないけど全部同じ色ってのもなぁと思い三色選んでみた。
店員が袋に詰め、俺に金額を伝えると俺はポケットから出すフリをしながら、言われた金額を店員の前のトレーに載せる。
「……」
「あれ? もしかして足りなかった?」
「あ、いえ。そういう訳じゃないんですけど、正直そんなに安い物でもないので、すんなり購入されたことにちょっと驚いているというか……」
「え?」
店員が選んで持って来たのに買われたことを不思議がるってどういうことなんだろと考えてみたところで、俺を田舎者扱いしてマウントを取りたかったのか、マウント取りつつ買えるモノなら買ってみろだったのか、買ってくれたのならラッキー程度だったのか……ま、全部かな。オジーがお付きとして一緒にいたから、それなりにお金を持っているのだろうと判断してのことだろうなと思う。
オジーは店員から袋を受け取り、外に出ようとすると「ちょっと、お待ち下さい」と店の外の様子を確かめる。
「はい、大丈夫です。では、行きましょう」
「うん、じゃ」
「ありがとうございました」
オジーはさっき感じた視線を警戒しているようだけど、今は大丈夫だと判断し俺と一緒に街の散策を続ける。俺はオジーに袋を持たせていることに気付き「持つよ」と言えば「いえ、これは私の仕事ですから」と俺の提案を断る。
ま、そんなに重い物でもないしいいかと前を向き、立ち並ぶ店の様子を楽しむ。
「ヒロ様……その先で曲がりましょう」
「え? あ、ああ、もしかして……そうなの?」
「はい。ちょっと詰められています。なので、一度言い聞かせた方がいいかと思いますので。あ、もちろん危険はありませんからご心配なく」
「分かったよ。じゃ、曲がるよ」
「はい」
俺はオジーに指示された通りに店の横の路地へと入って行く。
「そうですね、部屋着に出来る簡素な服と下着を探しているんですけど」
「ふ~ん、お客さんの感じだと……うん、コレね。はい、試着してみて」
「え?」
店に入り、店員らしき人に声を掛けられたので、これこれこういうことでと話すと直ぐに俺の頭からつま先までを視線を何度か往復させると「うん!」と手を叩き、その辺の棚にあった物をポンポンと俺に渡すと試着室へと案内されたので、オジーに目で助けを求めるとオジーは何も言わずに腕を組んで黙って見ているだけだった。
まあ、オジーが何も言わないのだから、多分大丈夫なんだろうと思い渡された服を手に試着室へと入り、スーツを脱ぎシャツを脱ぎ、パンツとシャツ一枚の姿になったところで「お客様、どうですかぁ?」といきなり試着室を開けられてしまう。
「キャッ! ちょ、ちょっとなんですか! いきなり!」
「あら、ごめんなさいね。服を渡したはいいけど、着方は分かるのかなと思いまして」
「分かりますよ!」
「え?」
「そんなに不思議なことじゃないでしょ! チャックくらい分かりますよ」
「え? ちゃっくって……」
「あれ? じゃあ、ファスナー……」
「ふぁすなぁ?」
「もう、じゃあジッパーでしょ!」
「そう、そうそう……って、ジッパーのこと知っているの?」
「知ってますよ。それくらい……ちょっと呼び名が定着していないだけで」
「いやいやいや、それって最近、王都から仕入れたものなのよ。だから、この辺の人は知らないハズなんだけど……あなた、一体……「詮索はそこまでで」……あ」
試着室の扉をいきなり開けられ焦ってしまったが、店員は俺にジッパーの使い方を教えてくれようとしたみたいだ。でも、俺がジッパーの使い方を知っていることを逆に不思議がられてしまい俺に興味を持ったところで、オジーが割って入り店員からの追求をなんとか避けることが出来たと思う。多分だけど……
「と、とにかく一人にして下さい。オジーお願い!」
「はい、さ」
「わ、分かりましたよ。もう、どういうことなの?」
「ふぅ~」
オジーが店員を試着室の外に連れ出して扉を閉めたところで思わず溜め息が出る。まさか、ファスナー……いや、ジッパーが地雷だなんて分からないよ。まあ、今まで色んな人が客として異世界に来た人の持ち物や服にジッパーが使われていても不思議じゃないし、ズボンを履いているなら着いているだろうな。でも、それが最近王都から仕入れたとか言ってたみたいだけど。まあ、後で聞いてみればいいか。
「よし、こんなもんかな。うん、サイズはいいし着心地も問題ない。これぞ『ザ・部屋着』だな」
俺は試着室の中にある姿見を見てほくそ笑む。鏡の中の俺は下はスウェット、上はジッパーで前を閉めるデザインのパーカーで色は無地の紺色だ。
俺はこれでいいやとパーカーとスウェットを脱ぎ、スーツに袖を通し試着室を出ると「これでお願いします」と店員に渡し下着の場所を確認する。
店員は俺を不思議そうに見ながらも「こちらです」と案内してくれた先には無地のトランクスとTシャツが並べられていた。試しにと近くにあったのを手に取ると、それには小さなタグが着けられ、そのタグにはよくあるSMLのサイズ表記があった。
「ああ、ちゃんとサイズ分けされているんだね。ふ~ん」
俺はサイズを確認し、色違いのトランクスとTシャツを三セット手に取り店員に渡しお会計をお願いする。別に複製出来るから複数は必要ないけど全部同じ色ってのもなぁと思い三色選んでみた。
店員が袋に詰め、俺に金額を伝えると俺はポケットから出すフリをしながら、言われた金額を店員の前のトレーに載せる。
「……」
「あれ? もしかして足りなかった?」
「あ、いえ。そういう訳じゃないんですけど、正直そんなに安い物でもないので、すんなり購入されたことにちょっと驚いているというか……」
「え?」
店員が選んで持って来たのに買われたことを不思議がるってどういうことなんだろと考えてみたところで、俺を田舎者扱いしてマウントを取りたかったのか、マウント取りつつ買えるモノなら買ってみろだったのか、買ってくれたのならラッキー程度だったのか……ま、全部かな。オジーがお付きとして一緒にいたから、それなりにお金を持っているのだろうと判断してのことだろうなと思う。
オジーは店員から袋を受け取り、外に出ようとすると「ちょっと、お待ち下さい」と店の外の様子を確かめる。
「はい、大丈夫です。では、行きましょう」
「うん、じゃ」
「ありがとうございました」
オジーはさっき感じた視線を警戒しているようだけど、今は大丈夫だと判断し俺と一緒に街の散策を続ける。俺はオジーに袋を持たせていることに気付き「持つよ」と言えば「いえ、これは私の仕事ですから」と俺の提案を断る。
ま、そんなに重い物でもないしいいかと前を向き、立ち並ぶ店の様子を楽しむ。
「ヒロ様……その先で曲がりましょう」
「え? あ、ああ、もしかして……そうなの?」
「はい。ちょっと詰められています。なので、一度言い聞かせた方がいいかと思いますので。あ、もちろん危険はありませんからご心配なく」
「分かったよ。じゃ、曲がるよ」
「はい」
俺はオジーに指示された通りに店の横の路地へと入って行く。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
672
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる