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第1章 ここが異世界

第33話 言っちゃダメだから!

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「ね、一つ条件があるんだけどいいかな?」
「条件?」
「イヤなら、別にいいんだけど「聞きます! だから、お願いします!」……じゃあ」

 俺はおじさんに対し今から俺がすることは例え領主であっても口外しないようにとお願いすると「領主様にもですか」と躊躇する。

「イヤなら、別に「いえ、分かりました。ですから、どうにか」……ホントに?」
「はい、約束は必ず守ります! ですから、どうか」
「でもさ、『お金ならいくらでも出すから』とか言いながら、いざ助かると『そんなこと言った覚えはない』って人もいるんだよね」
「……!」
「あれ? もしかしてそっち系?」
「……いえ、そんなことは決して。ですから、お願いします!」

 俺達が問答している間にも俺達がいる休憩所を取り囲んでいる包囲網がどんどん狭まっている。だから、おじさんは俺への期待値が爆上がりだけど、俺がしたことを口外しないという条件には難色を示している。命のやり取りをしているっていうのにどこまで領主ファーストなんだと呆れる。

 野党の連中は手に持っている武器を見せびらかす様に振り回しながらニヤニヤしている。

 パッと見、囲んでいる数は二十人弱、木の上から狙っているのが十人に満たない程だ。隊商キャラバンの護衛は雇い主らしき人達と何やら揉めている様子だ。よく聞こえないが「無理!」とか言っている様な気がする。

 多分だけど、いくら護衛として雇われている人達が腕に自信があったとしても、この人数相手には無理だということなんだろう。でも、俺の問題は今俺の足下にしがみついているおじさんだ。領主への忠誠心もいいけど、自分の命の方が大事じゃないのかと小一時間くらい問い詰めたくなるが、そんな余裕はない。

「助かった後で後ろ足で砂を掛けられたら俺にも考えがありますよ。さっき、気絶したのをもう忘れました?」
「ひっ……」

 俺はよくある話として、助かった後に約束を反故にする人の話をすれば、おじさんの目が泳いでいたので「もし、約束を破ったら」とさっきおじさんにしたことを思い出させればおじさんはブルッと身震いしてから短い悲鳴を上げる。

「分かってくれたのなら、いいけど……もう一度言うよ。今から俺がすることを決して他言しないこと。それが領主様でも……いいかな?」
「はい! 分かりました! 絶対に他言しません。ですから、どうかお願いします!」
「じゃ、『箱詰めボックス』」
「な、何を?」
「今、おじさんに魔法を掛けました。もし、俺のことを口にしようとしたら……」
「したら?」
「キュッとなります」
「へ?」
「だから、ちょっと前と同じことが怒ります」
「え?」
「でも、そうなったら俺は側にいないと思うので、誰も解除することが出来ずにおじさんはそのまま……キュッ! って」
「……喋りません! 絶対に話しません! だから、どうかお願いします!」

 俺はおじさんの頭を覆うように箱詰めボックスを掛けると、必要な情報だけが俺に届くように調整してから、おじさんに対し俺がしたことを話す。そして制約を破った場合には「分かるよね?」と念を押せばおじさんはガクンガクンと頭を縦に振り、分かったからと懇願する。

 隊商キャラバンの護衛の人数は十人もいないみたいだけど、一応はせめて自分の命だけでも守ろうとそれぞれに武器を構え野党の襲撃に備えようとしているが、野党は野党で自分達の人数が多いのと木の上から狙っている仲間がいることを知っているからか護衛の連中に対しヘラヘラと笑って余裕を見せる。

 俺は、おじさんの了承を得られたことから先ずは木の上にいる連中が邪魔だなとマップ上の森の中で赤い光点をしている箇所に「セツ、頼む」とセツの分体を空間転移テレポートさせると、あちらこちらで『ギャッ!』と悲鳴が聞こえると同時に『バサッ』と何かが落ちる音がする。俺はマップを確認すると森の中でこちらを狙っていた赤色が消えたことを確認してから、今度はセツの分体を空間転移テレポートで呼び戻す。

「セツ、ありがとうね」
『ピィ!』

 こちらを狙っている野党を片付けた後、野党の頭目らしき男が右手を上げ、どこかに合図を送るような素振りをするが、その合図に対しなんの反応もないためか、頭目は何度か右手を上げたり下げたりするが、何も起きないので不思議そうに右手を見てから、近くにいる手下に何かを告げると、その手下は森の中へと入って行く。

「なんか、様子が変だな」
「そうね。もしかしたら、他にも仲間がいたかもね」
「だよな。こういう場合は森の中の木の上から矢を射ってくるものだが……ないな」

 護衛達はなかなか襲って来ない野盗の集団に武器を構え様子を見ていたがあちらから襲って来る様子がないことを不思議に思っていた。

 そして頭目は自分の合図で矢を一斉に放てと打ち合わせをしていたにも関わらず、何も起きないことを不思議に思い手下を森の中へと走らせたが、その手下からは「誰もいません」と報告を受け「バカな!」と声を荒げる。

「セツ、変な物食べさせてごめんね」
『ピ!』
「でも、もう終わらせるから。『箱詰めボックス』!」

 俺は休憩所を取り囲んでいる野党の頭全体を囲うように箱詰めボックスを発動する。
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