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第1章 ここが異世界

第32話 信じてもらえなかった

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「ヒマだ……」
『ピ?』

 最初は初めて見る風景に興味津々で馬車からの風景を楽しんでいたけど……見事に何もないというか、代わり映えしない風景が続くだけなので俺の好奇心も打ち止めになり、今は恐ろしく揺れる馬車の中でセツに身を任せている。

 領主が迎えとして用意してくれた馬車だから、それなりに見た目は豪華だったのだが、馬車自体の乗り心地は最悪だった。今、馬車を走らせている道がせめて石畳であればそれほど乗り心地が悪いとは思わなかったかもしれないが、今はトリリア村から領主が待つジャミア領の領都までを結ぶ街道を走っているが、街道とは名ばかりの禄に整備されていない荒れた路を走っている。

 時折、小石を踏むために馬車全体が下から突き上げられた様な感じになり、俺は十分もしない内に具合が悪くなる。だから、俺はセツに頼みいつも寝ている時と同じ様にセツに体全体を包んで貰うと、衝撃をモロにくらうこともなくなり、次第に馬車の揺れを心地よく感じられ気が付けばセツに包まれ夢の世界へと旅立っていた。

「おい、休憩だ。もし、用を済ませるなら……ヒィッ……食われてる!」
「ん~もうなに? うるさいよ……ふぁ~」
「……え? おい、生きてるのか?」
「ん? 何言ってるの。見たら分かるでしょ」
「分からないから聞いている!」
「へ? あ、そうか。ごめんね、よいしょっと……セツ、ありがとね」
『ピィ!』

 俺はセツに俺を言ってからセツの中から抜け出せば、使いのおじさんは面喰らった顔をしている。

「お、お前はなんともないのか?」
「何が?」
「何がって……お前はさっき……そのスライムに……」
「あぁ~言い忘れていたけど、この子は俺の従魔の『セツ』だから。何も害はないから」
『ピ!』
「そ、そうか……」

 俺がセツのことを説明すると、セツもおじさんに触手を挙げて挨拶すれば、おじさんもなんとか自分なりに納得してくれたのか「そうか」とだけ返事をする。

「で、何? もう着いたの?」
「いや、まだだ。とりあえず馬を休めさせたいのと俺達も休憩する必要があるからな。ここで小休止だ。用を済ませたいなら、その辺の草むらで済ませてこい。大小に関わらず土に埋める様にな」
「まさかの野ションに野グソかぁ~まあ、休憩と言っても『道の駅』があるわけないし、しょうがいないか……じゃあ、ちょっと」
「あ、待て」
「もう何?」
「する前に回りをちゃんと確認するんだぞ。この辺りはまだ村に近いから、それほど魔物は出ないが用心に越したことはない」
「……」
「どうした?」
「引っ込んじゃった……」
「そうか。だが、次の休憩まではまだ先だぞ。急に止まれと言われても馬車は停められないからな」
「え?」
「ハァ~お前な、こんな狭い街道で馬車を停めたら野党や魔物に襲われるか、後から来た馬車に文句を言われたりするだろうが!」
「え? そんな普通に襲われるの?」
「ああ、そうだ。だが、ここみたいにある他の連中がいる場所には野党も魔物も警戒して襲ってはこない。分かったなら、さっさと済ませてこい。他の連中もそろそろ出発するからな」
「……分かったよ」

 俺は異世界こっちに来た時にゴブリン達に襲われたことを思いだしブルッと身震いしてしまう。あの時はどうしたかを思いだし、自分自身を障壁バリアで包むと同時に周囲を警戒する為に空間把握を試そうとするが、魔力がごっそりと持っていかれたことを思いだし、少し考える。

「あ、そうだよ!」と思い付いたのはではなくで把握する方法だ。

「え~っと……要は網状に広げればいいんだよな。距離としてはギリギリ逃げられるかもの三百メートルくらいを目標にして……『空間把握改』あっいい感じ!」

 俺は魔力で作った網を円状に広げるイメージで空間把握を実行すると脳内にマップが表示される。そのマップには魔力を持つ生物らしき光点が表示されている。俺とセツ、そしておじさんと分からないいくつかの光点だ。

「ん~これじゃ魔物かどうか分からないな」

 なので『魔物』『俺に害意があるヤツ』を赤色、俺に対し好意的なのを青色、そうでないのを黄色で表示出来ないか念じてみると、即座にいくつかの光点の色が変わる。

「俺は白で、セツは青色。うん、青以外なら泣いちゃうよ。で、おじさんは安定の……紫? あれ、もしかしてまだ疑われている? で、それよりもヤバイのがこの赤……だよな」
「どうした? 行かないのか?」
「いや、行くけどさ。ちょっとマズいかもよ?」
「あ? どういうことだ?」
「ここ、囲まれているみたいだけど……安全じゃなかったの?」
「はん! お前、何を言っているんだ? 囲まれているだと? どこにそんな連中がいる? 見て見ろ、回りは俺達以外は隊商キャラバンの連中しかいないぞ」
「だからじゃないの?」
「あ?」
「いや、だからさ。態々、こんなところで止まって休んで気が抜けているからじゃないの?」
「ハァ~これだから……いいか『バシュッ!』……は?」
「ね?」
「『ね?』じゃねぇ! もっと早く言え!」
「だから、言ったじゃん!」

 俺が危険だと忠告したのにも関わらず、『そんなことはない』と言い張ったおじさんの足下に一本の矢が刺さると途端に回りが騒ぎ出し、慌てて馬車を出そうとするが武装した集団にそれを止められる。

「ね? 帰ってもいいかな?」
「……」

 俺がそう言うとおじさんは俺の足下にしがみつき「まれびとならなんとか出来るだろ。お願いしますから、この通り!」と頭を下げてきた。
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