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第1章 ここが異世界
第25話 靴が欲しいだけだったのに……
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「多分、ここで合ってるよね。すみませ~ん」
「はいよ、どちらさんかな?」
「えっと、ブーツが欲しいんですけど……」
「お客さんかえ。すまんが、奧の方まで来てもらえるかの」
「あ、はい……お店の人だよね」
俺は少し不安を感じつつ声のする方へと行ってみると、そこには小さな丸椅子の上に座っている小柄なお爺さんがいた。
「それで、何が欲しいって?」」
「あの、これの代りにブーツが欲しいんですけど……ありますか?」
「おや、こりゃまた珍しい靴じゃの。ほぉ~見かけない型じゃ。ふむふむ」
お爺さんはしゃがんだまま、俺の靴をジッと見ている。客がたまに来ているらしいことは聞いたけど、その人達は革靴は履いてなかったのかなとふと疑問に思う。
先ずはお爺さんと交渉してブーツを手に入れるのが先だなと思い、お爺さんに陳列されている商品を手に取っていいかを確認する。
「好きに見て貰って構わん。サイズがなければ聞いてくれ」
「分かりました」
俺は陳列されている棚を確認すると、棚板の側面には『男物 二十五cm~』と書かれていてサイズ別に陳列されていた。
「でも、やっぱり迷うほどのデザインや色違いはないんだよな。まあ、それはここが田舎だからなんだろうな。じゃあ、今は無難にこれかな。すみませ~ん」
俺は棚から茶色い編み込みブーツを手に取りサイズを確かめると店主のお爺さんの元へ行く。
「決まったのかい」
「はい、これでお願いします」
「そっちの靴はどうするんじゃ?」
「え?」
「靴を換えるんじゃろ。なら、そっちの靴はどうするんじゃ。まさか、棄てる訳でもあるまい」
「もしかして欲しいんですか」
「ああ、欲しいのぉ」
「分かりましたよ。じゃあ、この靴とブーツを交換でいいですか?」
「いいのか?」
「いいですよ。はい」
「おお、ありがとな、ありがとな」
「……」
俺が靴を渡すと余程嬉しかったのか、俺の靴に頬ずりしているお爺さんを見てちょっと引く。
さっきまで俺が履いていたのだから、俺個人としては臭いが気になるところだけど、本人が何も言わないのならいいんだろう。
だが、俺が靴を脱ぎ、ブーツを履こうとしたところでお爺さんは、俺の足をガシッと掴むと「コレが靴下なのか」と聞いて来た。
「えっと、そうですけど痛いから離してもらえますか?」
「……」
「あの……もしかして、これも欲しいとか?」
「いいのか?」
「いや、聞いただけだし……」
「なんじゃ、年寄りを揶揄ったのか!」
「いや、ちょっと待って」
「老い先短い年寄りに待てと言うのか!」
「だから、少しだけ話を聞くなり、聞かせて欲しいだけなんだって!」
「じゃあ、くれるのか?」
「……もう、分かりました。俺が聞いたことを教えてくれるならあげますけど、使うならちゃんと洗ってからにして下さいね」
「ああ、分かっとる。洗うともさ。で、何が聞きたいんじゃ。何でも聞いてくれ。ワシは見ての通りの年寄りじゃ。なんでも知ってるぞ。ほれ、言うてみ」
「じゃあ……」
俺はさっき気になったことを聞いてみる。こっちには俺の前に何人かの客が来ていると聞いたが、知識やモノがチグハグな気がした。例えば言葉は日本語で仮名文字だけに限らず、漢字にアルファベット、簡単な英単語まで使われている。でも、スーツやシャツとか衣服に関しては、俺のが珍しいと言われたことで一体どの世代の人が客として来たのかと不思議に思った。
そして、さっき見た陳列棚にはサイズ表記が『cm』とあり、センチメートルを表しているのは間違いないと思う。でも、俺が履いていた革靴の型『プレーントゥ』が珍しいと靴や店主のお爺さんが言う。
だから、俺はお爺さんにサイズやイエンなど客から齎された単位が他にもあるのか、靴の種類や靴下に驚いていたけどそれはどうしてなのかを聞いてみた。
「なんじゃそんなことか」
「そんなことって俺には何が地雷になるか分からないから、ハッキリしておきたいんですよ。あ、そうそう獣人とかに対する禁忌とかも知りたかったんだ」
「まあよい。先ずは単位じゃったな。通貨単位はお前が言う様に『イエン』じゃ。長さも同じで『ミリメートル』『センチメートル』『メートル』『キロメートル』とこれは言わんでもわかるじゃろ」
「ですね」
「他には重さが『グラム』でこれも説明するまでもないな。後は容積の単位で『シーシー』と『リットル』がある。ワシはリットルは分かるが、シーシーがよう分からん」
「はぁ、まあそこまで気にすることじゃないと思いますけど」
「そうか。で、靴とか靴下のことじゃったな」
「はい」
「それは簡単なことじゃて」
「はい?」
「ここは見ての通りの田舎村じゃ。そんなところでこんな綺麗な革靴を履いて歩いていたら直ぐに土埃で汚れるじゃろ。じゃから、こんな靴は石畳が敷かれている領都に行かんとないじゃろな」
「へぇ~で、靴下は?」
「それも同じ理由じゃな」
「はぁ~そんなもんなん」
「ああ、そんなもんじゃ。これでよかったのかの?」
「あ、そうそう……スリッパってあります? なければ、サンダルでもいいんだけど」
「スリッパ? サンダル? そりゃ、なんじゃ?」
「あれ? もしかして……地雷?」
お爺さんに追加でスリッパみたいな物がないかと確認すれば、お爺さんは思案顔になり両腕を組み俺の言葉からなんなのか想像しているみたいだが、やはり考えつかない様で俺はその様子から「もしかして地雷だったかも」と思ったら、お爺さんは俺の腕を掴み「まだ時間はあるんじゃろ?」とニヤリと笑って見せる。
「え?」
「なに、手間は取らせん。お前の頭の中にあるモノをぜんぶスッキリ出して貰うだけじゃ。な~に、悪いようにはせんしな~んも痛いこともない。ちょっとだけ出して貰うだけじゃて。のぉ」
「えぇ~さっきまでいい感じだったのに!」
「ほれ、ええから。出すもん出して互いにスッキリしようやないか。のぉ」
「……デジャヴ」
「はいよ、どちらさんかな?」
「えっと、ブーツが欲しいんですけど……」
「お客さんかえ。すまんが、奧の方まで来てもらえるかの」
「あ、はい……お店の人だよね」
俺は少し不安を感じつつ声のする方へと行ってみると、そこには小さな丸椅子の上に座っている小柄なお爺さんがいた。
「それで、何が欲しいって?」」
「あの、これの代りにブーツが欲しいんですけど……ありますか?」
「おや、こりゃまた珍しい靴じゃの。ほぉ~見かけない型じゃ。ふむふむ」
お爺さんはしゃがんだまま、俺の靴をジッと見ている。客がたまに来ているらしいことは聞いたけど、その人達は革靴は履いてなかったのかなとふと疑問に思う。
先ずはお爺さんと交渉してブーツを手に入れるのが先だなと思い、お爺さんに陳列されている商品を手に取っていいかを確認する。
「好きに見て貰って構わん。サイズがなければ聞いてくれ」
「分かりました」
俺は陳列されている棚を確認すると、棚板の側面には『男物 二十五cm~』と書かれていてサイズ別に陳列されていた。
「でも、やっぱり迷うほどのデザインや色違いはないんだよな。まあ、それはここが田舎だからなんだろうな。じゃあ、今は無難にこれかな。すみませ~ん」
俺は棚から茶色い編み込みブーツを手に取りサイズを確かめると店主のお爺さんの元へ行く。
「決まったのかい」
「はい、これでお願いします」
「そっちの靴はどうするんじゃ?」
「え?」
「靴を換えるんじゃろ。なら、そっちの靴はどうするんじゃ。まさか、棄てる訳でもあるまい」
「もしかして欲しいんですか」
「ああ、欲しいのぉ」
「分かりましたよ。じゃあ、この靴とブーツを交換でいいですか?」
「いいのか?」
「いいですよ。はい」
「おお、ありがとな、ありがとな」
「……」
俺が靴を渡すと余程嬉しかったのか、俺の靴に頬ずりしているお爺さんを見てちょっと引く。
さっきまで俺が履いていたのだから、俺個人としては臭いが気になるところだけど、本人が何も言わないのならいいんだろう。
だが、俺が靴を脱ぎ、ブーツを履こうとしたところでお爺さんは、俺の足をガシッと掴むと「コレが靴下なのか」と聞いて来た。
「えっと、そうですけど痛いから離してもらえますか?」
「……」
「あの……もしかして、これも欲しいとか?」
「いいのか?」
「いや、聞いただけだし……」
「なんじゃ、年寄りを揶揄ったのか!」
「いや、ちょっと待って」
「老い先短い年寄りに待てと言うのか!」
「だから、少しだけ話を聞くなり、聞かせて欲しいだけなんだって!」
「じゃあ、くれるのか?」
「……もう、分かりました。俺が聞いたことを教えてくれるならあげますけど、使うならちゃんと洗ってからにして下さいね」
「ああ、分かっとる。洗うともさ。で、何が聞きたいんじゃ。何でも聞いてくれ。ワシは見ての通りの年寄りじゃ。なんでも知ってるぞ。ほれ、言うてみ」
「じゃあ……」
俺はさっき気になったことを聞いてみる。こっちには俺の前に何人かの客が来ていると聞いたが、知識やモノがチグハグな気がした。例えば言葉は日本語で仮名文字だけに限らず、漢字にアルファベット、簡単な英単語まで使われている。でも、スーツやシャツとか衣服に関しては、俺のが珍しいと言われたことで一体どの世代の人が客として来たのかと不思議に思った。
そして、さっき見た陳列棚にはサイズ表記が『cm』とあり、センチメートルを表しているのは間違いないと思う。でも、俺が履いていた革靴の型『プレーントゥ』が珍しいと靴や店主のお爺さんが言う。
だから、俺はお爺さんにサイズやイエンなど客から齎された単位が他にもあるのか、靴の種類や靴下に驚いていたけどそれはどうしてなのかを聞いてみた。
「なんじゃそんなことか」
「そんなことって俺には何が地雷になるか分からないから、ハッキリしておきたいんですよ。あ、そうそう獣人とかに対する禁忌とかも知りたかったんだ」
「まあよい。先ずは単位じゃったな。通貨単位はお前が言う様に『イエン』じゃ。長さも同じで『ミリメートル』『センチメートル』『メートル』『キロメートル』とこれは言わんでもわかるじゃろ」
「ですね」
「他には重さが『グラム』でこれも説明するまでもないな。後は容積の単位で『シーシー』と『リットル』がある。ワシはリットルは分かるが、シーシーがよう分からん」
「はぁ、まあそこまで気にすることじゃないと思いますけど」
「そうか。で、靴とか靴下のことじゃったな」
「はい」
「それは簡単なことじゃて」
「はい?」
「ここは見ての通りの田舎村じゃ。そんなところでこんな綺麗な革靴を履いて歩いていたら直ぐに土埃で汚れるじゃろ。じゃから、こんな靴は石畳が敷かれている領都に行かんとないじゃろな」
「へぇ~で、靴下は?」
「それも同じ理由じゃな」
「はぁ~そんなもんなん」
「ああ、そんなもんじゃ。これでよかったのかの?」
「あ、そうそう……スリッパってあります? なければ、サンダルでもいいんだけど」
「スリッパ? サンダル? そりゃ、なんじゃ?」
「あれ? もしかして……地雷?」
お爺さんに追加でスリッパみたいな物がないかと確認すれば、お爺さんは思案顔になり両腕を組み俺の言葉からなんなのか想像しているみたいだが、やはり考えつかない様で俺はその様子から「もしかして地雷だったかも」と思ったら、お爺さんは俺の腕を掴み「まだ時間はあるんじゃろ?」とニヤリと笑って見せる。
「え?」
「なに、手間は取らせん。お前の頭の中にあるモノをぜんぶスッキリ出して貰うだけじゃ。な~に、悪いようにはせんしな~んも痛いこともない。ちょっとだけ出して貰うだけじゃて。のぉ」
「えぇ~さっきまでいい感じだったのに!」
「ほれ、ええから。出すもん出して互いにスッキリしようやないか。のぉ」
「……デジャヴ」
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