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第1章 ここが異世界
第17話 昼前なのに
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俺は「嘘はダメだからね」とオバサマに先手を打たれたので、嘘じゃないけどホントのことはなるべく伏せつつ出来るだけ正直に話す。
「えっと、どういうことなんだい? つまりは初心者の手解きでやるアレをヤルだけってことかい?」
「はい、そうですよォ」
「ホントかい?」
「ホント、ホント。ワタシ、ウソツカナァ~イ」
「……」
オバサマはジッと俺の目を見るが、俺は嘘は言っていない。なので詳細を知りたければ村長夫婦に確認するなり、コトが終わったゴサックに聞いてくれと言って納得出来ない様子のオバサマから逃げることに成功する。
俺がオバサマから離れると、直ぐにオバサマは回りで様子を窺っていた人達に取り囲まれあれやこれやと質問されているようだ。
時折、俺の方を確認する人もいたが、俺にこれ以上のことを話す気がないと悟ったのかオバサマの話に集中することに決めたようだ。
「いや、初っぱなからエライ目に合ったなぁ~」
『ピィ!』
後で分かったことだけど、一般的に平民としての魔力量は俺が会った頃の村長レベルが限界値と言われていたらしい。貴族と呼ばれる階級なら、魔力量は平民の数倍から数十倍もあるらしい。だが俺がヤッちまったことで、その魔力量は飛躍的に向上することになり、そんじょそこらの貴族以上の魔力量を持つことになるとは、この時の俺は知る由もない。だって、ヤルことが目的で魔力の循環を頑張るなんて考えないでしょ。普通は!
そんな訳で将来的に、この村の人達の魔力量はぐんぐんと向上し、派手な魔法を何発放っても大丈夫! という魔道士を何人、何十人も輩出する村として知られるようになるらしい……いや、だから俺のせいじゃないし!
「そろそろ、腹も減ってきたけど……」
『ピ~』
腹は減ったが、食べ物を提供している食堂らしき建物も見当たらなければ、お金もないことに改めて気付く。
「そういや、お金が全然無い……言葉に困ることはないけど、お金がないと困るのは確実だな。なら……」
言葉は同じでも財布の中のお金は使えないだろうからと考え、インベントリに収納している薬草が売れないかと考える。
「よし、ここは冒険者ギルドを探そう!」
『ピ?』
セツが俺の呟きに反応する。可愛いヤツだとセツを拾い上げ、右肩に乗せると冒険者ギルドを探すことにする。
目的の建物は直ぐに見付かった。村の大通りの中に如何にもな『剣と盾』をモチーフにした看板が目に入る。近くに寄って看板を見れば、そこには『冒険者ギルド トリリア村出張所』と書かれていたので俺は「これで俺も冒険者デビューだな」と少しだけ気持ちを高揚させスイングドアを開いて中に入れば、一斉に注目を浴びる。
「「「……」」」
「ん、まぁしょうがないよね」
『ピ?』
俺が冒険者ギルドに入った瞬間にさっきまで雑談していたと思われる連中がピタリと会話を止め、俺に注目する。俺は出直そうかなと一瞬、怯むがいつかは通る道だと構わず、奧に設置されているカウンターを目指す。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。見慣れない方ですが、何かご用でしょうか?」
「えっと……」
カウンターまで来たのはいいのだが、俺の目の前には猫耳を頭から生やしたお姉さんがいた。その片手に余るような大きなモノはテーブルの上にドカッと載せられ、猫目特有の縦長の瞳で俺を見据えているお姉さんは用件を聞いてくる。
「は、はい、初めまして! 昨日、こちらの村に来ました! ヒロと言います! 今後、幾久しくよろしくお願いします!」
「うふふ、ずっとは困りますが、とりあえずご用件をお願いしますね」
「あ、はい!」
俺は初めて目にした猫獣人のお姉さんに戸惑いつつも、今日ここに来た用事を思い出し、先ずは冒険者登録をしたいとお願いする。
「冒険者ですか? 失礼ですが、少々お歳を「構いません! 是非、お願いします!」……あ、あの分かりましたので手を引っ込めて頂けますか? その、指先が当たっていますから」
「あ、すみません!」
「あの野郎……」
「待て、まだミーが相手している内はダメだ」
「そうだ。アイツは冒険者になりたいようだからな」
「そういうことだ。冒険者になりさえすれば……」
「「「オォッ!」」」
受付のお姉さんから、冒険者になるにはちょっと年齢的に難しいかもと言われた俺は焦ってどうにかお願いしますとカウンターの上に右手を差し出した。その時に何かプニッとしたモノに当たった感触があったが、顔は伏せたままだったのでソレがナニかは分からなかったのだが、お姉さんの「当たっていますから」に慌てて手を引っ込めて謝罪する。
すると俺の様子を後ろから黙って見ていた連中から呪詛が飛んで来るが、俺は右手をギュッと握りしめ感触が消えないことを祈っていた。
「あの……」
「あ、はい! ヒロ、二十三歳、独身で彼女募集中です!」
「あ、いえ。そうじゃなくてですね……」
「はい、趣味は読書とお酒です!」
「あの、だからですね……」
「あ……」
「落ち着きましたか」
「はい……すみません」
お姉さんに声を掛けられ焦った俺は色んなことを口走ってしまい呆れたお姉さんから落ち着いたのを確認されなんとか手続きを済ませる。
「はい、これで手続きは終了です。これが冒険者ギルドのライセンスカードになるので無くさないように気を付けてくださいね。あと、ここは出張所になりますので、ヒロ様は仮登録となります。忘れない内に本登録を済ませてくださいね」
「はい、分かりました!」
「では、ご用件は以上でしょうか?」
「あ、すみません。薬草……ヒール草を売りたいんですけど」
「え? でも何も持ってませんよね」
「あ、そうでした。これを「ストップ!」……え?」
俺は手元にヒール草を準備していなかったことを思い出し、インベントリから取り出そうと何も無い空間に右手を突っ込んだところでお姉さんが「ストップ!」と慌てた様子で俺の右手を掴む。
俺はいきなりのことに驚いたが、それ以上にお姉さんも慌てていたのか掴まれた俺の右手はお姉さんの柔らかい場所に包まれていた。
「あぁ~もう、いつ死んでもいいかも……」
「アイツ……」
「ヤバ……もう我慢出来ねぇ……」
「なあ、もういいだろ? なあ、刻んでもいいよな?」
「えっと、どういうことなんだい? つまりは初心者の手解きでやるアレをヤルだけってことかい?」
「はい、そうですよォ」
「ホントかい?」
「ホント、ホント。ワタシ、ウソツカナァ~イ」
「……」
オバサマはジッと俺の目を見るが、俺は嘘は言っていない。なので詳細を知りたければ村長夫婦に確認するなり、コトが終わったゴサックに聞いてくれと言って納得出来ない様子のオバサマから逃げることに成功する。
俺がオバサマから離れると、直ぐにオバサマは回りで様子を窺っていた人達に取り囲まれあれやこれやと質問されているようだ。
時折、俺の方を確認する人もいたが、俺にこれ以上のことを話す気がないと悟ったのかオバサマの話に集中することに決めたようだ。
「いや、初っぱなからエライ目に合ったなぁ~」
『ピィ!』
後で分かったことだけど、一般的に平民としての魔力量は俺が会った頃の村長レベルが限界値と言われていたらしい。貴族と呼ばれる階級なら、魔力量は平民の数倍から数十倍もあるらしい。だが俺がヤッちまったことで、その魔力量は飛躍的に向上することになり、そんじょそこらの貴族以上の魔力量を持つことになるとは、この時の俺は知る由もない。だって、ヤルことが目的で魔力の循環を頑張るなんて考えないでしょ。普通は!
そんな訳で将来的に、この村の人達の魔力量はぐんぐんと向上し、派手な魔法を何発放っても大丈夫! という魔道士を何人、何十人も輩出する村として知られるようになるらしい……いや、だから俺のせいじゃないし!
「そろそろ、腹も減ってきたけど……」
『ピ~』
腹は減ったが、食べ物を提供している食堂らしき建物も見当たらなければ、お金もないことに改めて気付く。
「そういや、お金が全然無い……言葉に困ることはないけど、お金がないと困るのは確実だな。なら……」
言葉は同じでも財布の中のお金は使えないだろうからと考え、インベントリに収納している薬草が売れないかと考える。
「よし、ここは冒険者ギルドを探そう!」
『ピ?』
セツが俺の呟きに反応する。可愛いヤツだとセツを拾い上げ、右肩に乗せると冒険者ギルドを探すことにする。
目的の建物は直ぐに見付かった。村の大通りの中に如何にもな『剣と盾』をモチーフにした看板が目に入る。近くに寄って看板を見れば、そこには『冒険者ギルド トリリア村出張所』と書かれていたので俺は「これで俺も冒険者デビューだな」と少しだけ気持ちを高揚させスイングドアを開いて中に入れば、一斉に注目を浴びる。
「「「……」」」
「ん、まぁしょうがないよね」
『ピ?』
俺が冒険者ギルドに入った瞬間にさっきまで雑談していたと思われる連中がピタリと会話を止め、俺に注目する。俺は出直そうかなと一瞬、怯むがいつかは通る道だと構わず、奧に設置されているカウンターを目指す。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。見慣れない方ですが、何かご用でしょうか?」
「えっと……」
カウンターまで来たのはいいのだが、俺の目の前には猫耳を頭から生やしたお姉さんがいた。その片手に余るような大きなモノはテーブルの上にドカッと載せられ、猫目特有の縦長の瞳で俺を見据えているお姉さんは用件を聞いてくる。
「は、はい、初めまして! 昨日、こちらの村に来ました! ヒロと言います! 今後、幾久しくよろしくお願いします!」
「うふふ、ずっとは困りますが、とりあえずご用件をお願いしますね」
「あ、はい!」
俺は初めて目にした猫獣人のお姉さんに戸惑いつつも、今日ここに来た用事を思い出し、先ずは冒険者登録をしたいとお願いする。
「冒険者ですか? 失礼ですが、少々お歳を「構いません! 是非、お願いします!」……あ、あの分かりましたので手を引っ込めて頂けますか? その、指先が当たっていますから」
「あ、すみません!」
「あの野郎……」
「待て、まだミーが相手している内はダメだ」
「そうだ。アイツは冒険者になりたいようだからな」
「そういうことだ。冒険者になりさえすれば……」
「「「オォッ!」」」
受付のお姉さんから、冒険者になるにはちょっと年齢的に難しいかもと言われた俺は焦ってどうにかお願いしますとカウンターの上に右手を差し出した。その時に何かプニッとしたモノに当たった感触があったが、顔は伏せたままだったのでソレがナニかは分からなかったのだが、お姉さんの「当たっていますから」に慌てて手を引っ込めて謝罪する。
すると俺の様子を後ろから黙って見ていた連中から呪詛が飛んで来るが、俺は右手をギュッと握りしめ感触が消えないことを祈っていた。
「あの……」
「あ、はい! ヒロ、二十三歳、独身で彼女募集中です!」
「あ、いえ。そうじゃなくてですね……」
「はい、趣味は読書とお酒です!」
「あの、だからですね……」
「あ……」
「落ち着きましたか」
「はい……すみません」
お姉さんに声を掛けられ焦った俺は色んなことを口走ってしまい呆れたお姉さんから落ち着いたのを確認されなんとか手続きを済ませる。
「はい、これで手続きは終了です。これが冒険者ギルドのライセンスカードになるので無くさないように気を付けてくださいね。あと、ここは出張所になりますので、ヒロ様は仮登録となります。忘れない内に本登録を済ませてくださいね」
「はい、分かりました!」
「では、ご用件は以上でしょうか?」
「あ、すみません。薬草……ヒール草を売りたいんですけど」
「え? でも何も持ってませんよね」
「あ、そうでした。これを「ストップ!」……え?」
俺は手元にヒール草を準備していなかったことを思い出し、インベントリから取り出そうと何も無い空間に右手を突っ込んだところでお姉さんが「ストップ!」と慌てた様子で俺の右手を掴む。
俺はいきなりのことに驚いたが、それ以上にお姉さんも慌てていたのか掴まれた俺の右手はお姉さんの柔らかい場所に包まれていた。
「あぁ~もう、いつ死んでもいいかも……」
「アイツ……」
「ヤバ……もう我慢出来ねぇ……」
「なあ、もういいだろ? なあ、刻んでもいいよな?」
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