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第1章 ここが異世界

第3話 辿り着いた先で

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「……なんで」
じゃないだろ!」
「ぐ……」

 俺は今、村の入口で門番が持っている槍の穂先を俺の胸元に突き付けられている。そして門番は俺を睨みながら「村に入るな!」と言い、質問してくる。

「で、お前は何者で、なんの目的があって、この村に来たんだ?」
「知らん」
「はぁ? 知らないだ? ふざけてんのか!」
「いや、ふざけるも何も知っているなら、俺が教えて欲しいくらいだ!」
「よし、分かった」
「やっと分かってくれた! じゃ、もういいよね!」
「ああ、お前をこの村に入れる訳にはいかない!」
「なんでだよ!」
「なんででもだ。ほら、シッシッ!」
「くそ! 人を犬猫みたいに……ちょっとくらい、いいじゃないか」
「いいや、俺がダメと言ったらダメだ!」
「ケチ!」
「ケチじゃない!」
「知るか! お前なんてケチで十分だ! このケチンボ!」
「くっコイツ……」
「おい、何を騒いでいるんだ?」
「村長……」

 俺が門番と言い合いしているのに気付いたのか村の中から、後ろ手に両手を組み、白くなった口髭、顎髭を長く伸ばした老人が近付いて来ると門番は「村長」と声を掛ける。そして俺は村長なら話が早いと門番を押しのけ村に入れてくれと直談判する。

「村長? ちょうどいい! あんたが村長なら、このケチンボに俺を通すように言ってくれよ!」
「ん? 村に入りたいのか?」
「ああ、そうだ。頼むよ。もうすぐ日が暮れそうだと言うのに、このケチがダメだと全然通してくれないんだよ。ねえ、いいでしょ? お願いします! この通りだ!」
「村長、今のこんな時期に怪しすぎるだろ。だから、俺はダメだと言っているんだがな。コイツが全然、諦めてくれなくて困っているんだよ」
「ふむ……」

 村長は俺を頭の天辺からつま先まで一通り見ると「この辺では見かけない格好をしているな」と呟けば門番は「フン! やっぱり!」と鼻息を荒くする。

「そうだろ、村長。やっぱりこんな怪しいヤツを村に入れることは出来ないよな」
「……確かに見かけない格好だ。それに永く生きているワシでも今まで見たことがないな」
「あ……」

 そこで俺は気が付く。今の俺の格好は紺色のリクルートス―ツに茶色のプレーントゥの革靴だ。それに対し門番は生成りのシャツにベージュのズボンに革ブーツと、余りにも格好が違い過ぎる。

「ふむ、見たところ旅行者という風にも見えんし、どこかの賊……にしてはポヤッとし過ぎているな。ま、問題ないじゃろ。入れてやりなさい」
「でも、村長「いいから、何かあれば責任はワシが……ま、なかったことにすればいいじゃないか」……そですね」
「いやいやいや、問題あるでしょ! ナニソレ……なかったことにするって俺がここに来なかったことにするってことじゃん!」
「ん? 何か揉め事でも起こすのか?」
「いや、しないけどさ……」
「なら、問題はないじゃろ」
「安心しろ。お前が何かしでかしても直ぐに始末出来る様に俺が側にいてやるから」
「……」

 村長は俺の見た目から、悪さしそうにないと判断してくれたのか漸く村の中へと招き入れてくれたが、まだ安心出来ない。だって俺が何かをしたと判断したら迷わず消すと言うんだもの。

 とりあえず村長の後を着いて行くと、村長の家らしき建物の中へと通される。

「おい!」
「はい?」
「今から一人分、追加で頼めるかな」
「一人分ですか。まあ、出来ますが……あら、お客さんでしたか」
「ああ、紹介する。さっきこの村を訪ねて来た……あ~お前さん、名前は?」
「あ、ヒロシです」
「ぴろし?」
「ヒロシです」
「ヒロだな」
「ヒロさんですね。えっと、見慣れない格好をしていますが貴族……ではないですよね。だって……ねぇ」
「ああ、そうじゃな。貴族にしては品がないし、横暴さも微塵も感じないからの」
「……はぁ見た目に対しては何も言えませんが、仰る通り貴族ではありません。それよりもここには貴族がいるんですか?」
「「「ん?」」」
「え?」

 俺が言った後、村長夫婦に何故か着いてきていた門番の男が不思議そうな顔をする。俺もつられてキョトンとしてしまうが、村長が「もしかしてまれびとかの」と呟けば「えぇこいつが客?」と門番が異常に反応する。

「私、客なんて初めて見ましたよ。話には聞いたことありますが、本当に私達と変わらないんですね。あ! でも、ちょっとお鼻が低いかも、ふふふ」
「おぉ、確かに平たい顔をしているな。うん、言われてみればこんな見た目の種族は知らないな」
「……な!」
「「「はい?」」」
「ブサイクで悪かったな! 俺だって好き好んでこんな顔に生まれたんじゃないんだ! なのになんだよ! 皆で寄って集って……グスッ」
「「「あ~」」」

 いきなり俺がキレたものだから村長達はなんとなくいたたまれない雰囲気になってしまう。

「すまんな。何もそんな気持ちで言った訳じゃないんじゃよ、なあ」
「そうね。私の言い方も悪かったわね。ごめんなさいね」
「だけど、ホントにお前は客なのか?」
「……」

 俺は思わず流れ出た涙を拭い門番の質問に対し黙って頷く。
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