21 / 29
第一章 再会?
結末
しおりを挟む
SIDE A. 報告
担任である古田に説明すると言った手前、しないわけにもいかず早めに登校し、今は生活指導室の中で担任である古田と校長、教頭を前に吉田がしたことの説明を求められている。
『俺じゃなく親に聞けよ』と言いたいが、説明すると言ったこともあり、この状況から逃げられる術もなく『はぁ』とため息を吐き、話し出す。
「吉田がしたことなんですが、あくまでも俺から見た意見と言うか私見として捉えてくださいね。詳細なんかは吉田本人なり警察に問い合わせてください。じゃ、話します。え~と、あれは……」
担任達を前に教室での吉田の様子がおかしかったこと。そして電車待ちをしていた時にいつもと違う向かいのホームに吉田を見かけたところから、昨夜の土田家襲撃までを掻い摘まんで話す。
「なら、お前が駅で吉田を説得しておけばここまで大きくはならなかったんじゃないのか?」
「先生、それ本気で言ってます? 対して親しくもない単なるクラスメイトを見かけ、たまたま様子がおかしかったから、近くに行って『お前、おかしいぞ』ってそう言ってどうなるって言うんですか!」
「ぐっ……」
担任の言葉にムッとしながらも、感じたままをぶつけると担任も口ごもる。
「まあまあ、古田先生。田中君の言うとおりですよ。なんなら、田中君のお陰でことが重大化する前に抑えられたと言ってもいいくらいだと私は思いますよ」
「校長! それは甘いんじゃないですか! 昔から喧嘩両成敗ともいいます。この田中にもなんらかの処罰を与えた方がいいと私は思いますが!」
「ほう、教頭は傷害事件に発展しそうになった生徒を救った田中君を罰しろと言うのですね」
「ええ、そうです」
「では、どういった理由で彼を罰しますか?」
「それは……古田君、君も何か言いたまえ! 両方共に君の生徒でしょ!」
「え? そんな急に言われても……それに私には田中が何かをしたとは思えませんし」
「甘い! 甘いですよ! では、何もしなかったことを罰すればいいでしょ」
何を言ってるんだと、思った。何もしなかったのが罰と言うのなら、あれだけ様子がおかしかった吉田に対し担任も教科担当の誰も注意どころか気に掛ける様子もなかったじゃないかと、気が付けば立ち上がり両拳を握りしめツバを飛ばしながら担任と教頭に向かって、思っていた全てを口に出して怒鳴りつけていた。そして、俺が言い終えた後、教頭も立ち上がり怒鳴りつける。
「な、何を言うんですか! 責任を擦り付けるつもりですか!」
「待ちなさい教頭。田中君、では君は教室内でおかしい言動を続ける吉田君に気付いたが、回りの生徒どころか、担任や他の先生達も何も気に掛けることはなかったと、そう言うんだね?」
「ええ、そうです。誰も……です」
「そうですか、では他の先生方にも話を聞かないといけませんね」
「校長! 校長はこの生徒の言い分を信じるんですか?」
「ええ、そのつもりです。何か問題でも?」
「いえ、校長がそう仰るのであれば、特に私からは何も……」
「そうですか。では、この辺でお開きとしましょう。そろそろHRも始まりますしね。田中君も早くからありがとう」
「いえ」
「では、私達はこれで失礼するね」
「……」
校長は終始穏やかな感じで話を聞いてくれたが教頭は俺もなんとか罰しようとしていたのが気に掛かる。何か教頭の気に障ることでもしたのだろうか。
「はあ、なんとか校長達も納得してくれたみたいだが……」
担任の古田が俺をチラリと見る。
「お前、教頭にあんなこと言って大丈夫かよ」
「何がですか?」
「いや、あの教頭は粘着質だからな。注意した方がいいってことだよ」
「ああ、それが分からないんですよ。なんで俺があんなに目の敵にされるんですか? 俺には身に覚えがないんですけど」
「それは俺にも分からん。まあ、しばらくは気を付けるんだな」
「担任として庇ってくれないんですか?」
「勘弁してくれよ。俺まで目を付けられるじゃないか」
「はぁ……」
担任の古田の言葉を聞いて呆れてしまう。まあ、担任とは言え上司に逆らうことは出来ないよな~と。
そして、教室に入ると吉田が急遽入院したと古田の口からクラスメイトに伝えられると「アイツ、落ちたな」そんな嘲笑混じりの声も聞こえた。
SIDE B.過剰な愛情
昨夜の騒ぎの後に吉田の両親の訪問もあったが、謝罪というよりは「何かの間違いだった」と警察に話して欲しいとの嘆願だった。その警察関係者であるお父さんに向かってだ。
お父さんも親として分かるが前置きして吉田の両親に言う。
「一度目なら許したかもしれませんが、通算で三度目となると私も娘の親として何もしない訳にはいきません。分かってくれますよね。悪いのは私の娘ではありません。それは分かってくれますよね?」
「は、はい。それは重々分かっていますが、そこをなんとかして頂く訳にはいかないでしょうか」
「無理です。それにあなた方は息子さんの監視が必要な時に二人して、田中君を糾弾しようと学校に向かった。違いますか?」
「「……」」
「お分かりですよね。そんなあなた方を信用して娘を傷つける訳にはいかないんです。あなた方も親として子供を守りたいという気持ちは同じだと思います。重ねて言いますが分かって下さい」
「「はい……」」
吉田の両親が家を出てからお父さんが私に話す。
「やっぱり、お婆ちゃんのところに行ってくれないか」
「わかったよ。あのご両親もなんだか信用出来ない感じだし」
「分かるか?」
「うん……なんとなくだけど。お父さんの私達に対する思いとは違って、吉田のことがすごく大事なモノって感じた。少し怖いくらいに……」
「そうだな。あれも愛情だとは思うが行き過ぎると危ういな」
「お父さんも私のことをもっと愛してくれてもいいよ?」
「いいのか? 亜美がお嫁にいくのが難しくなるぞ」
「ソレはダメ!」
「でも、お相手がまー君なら俺は何もいわないがな」
「バカ!」
と、そんなことがあったとまー君のことをぼかして奈美に話す。
担任である古田に説明すると言った手前、しないわけにもいかず早めに登校し、今は生活指導室の中で担任である古田と校長、教頭を前に吉田がしたことの説明を求められている。
『俺じゃなく親に聞けよ』と言いたいが、説明すると言ったこともあり、この状況から逃げられる術もなく『はぁ』とため息を吐き、話し出す。
「吉田がしたことなんですが、あくまでも俺から見た意見と言うか私見として捉えてくださいね。詳細なんかは吉田本人なり警察に問い合わせてください。じゃ、話します。え~と、あれは……」
担任達を前に教室での吉田の様子がおかしかったこと。そして電車待ちをしていた時にいつもと違う向かいのホームに吉田を見かけたところから、昨夜の土田家襲撃までを掻い摘まんで話す。
「なら、お前が駅で吉田を説得しておけばここまで大きくはならなかったんじゃないのか?」
「先生、それ本気で言ってます? 対して親しくもない単なるクラスメイトを見かけ、たまたま様子がおかしかったから、近くに行って『お前、おかしいぞ』ってそう言ってどうなるって言うんですか!」
「ぐっ……」
担任の言葉にムッとしながらも、感じたままをぶつけると担任も口ごもる。
「まあまあ、古田先生。田中君の言うとおりですよ。なんなら、田中君のお陰でことが重大化する前に抑えられたと言ってもいいくらいだと私は思いますよ」
「校長! それは甘いんじゃないですか! 昔から喧嘩両成敗ともいいます。この田中にもなんらかの処罰を与えた方がいいと私は思いますが!」
「ほう、教頭は傷害事件に発展しそうになった生徒を救った田中君を罰しろと言うのですね」
「ええ、そうです」
「では、どういった理由で彼を罰しますか?」
「それは……古田君、君も何か言いたまえ! 両方共に君の生徒でしょ!」
「え? そんな急に言われても……それに私には田中が何かをしたとは思えませんし」
「甘い! 甘いですよ! では、何もしなかったことを罰すればいいでしょ」
何を言ってるんだと、思った。何もしなかったのが罰と言うのなら、あれだけ様子がおかしかった吉田に対し担任も教科担当の誰も注意どころか気に掛ける様子もなかったじゃないかと、気が付けば立ち上がり両拳を握りしめツバを飛ばしながら担任と教頭に向かって、思っていた全てを口に出して怒鳴りつけていた。そして、俺が言い終えた後、教頭も立ち上がり怒鳴りつける。
「な、何を言うんですか! 責任を擦り付けるつもりですか!」
「待ちなさい教頭。田中君、では君は教室内でおかしい言動を続ける吉田君に気付いたが、回りの生徒どころか、担任や他の先生達も何も気に掛けることはなかったと、そう言うんだね?」
「ええ、そうです。誰も……です」
「そうですか、では他の先生方にも話を聞かないといけませんね」
「校長! 校長はこの生徒の言い分を信じるんですか?」
「ええ、そのつもりです。何か問題でも?」
「いえ、校長がそう仰るのであれば、特に私からは何も……」
「そうですか。では、この辺でお開きとしましょう。そろそろHRも始まりますしね。田中君も早くからありがとう」
「いえ」
「では、私達はこれで失礼するね」
「……」
校長は終始穏やかな感じで話を聞いてくれたが教頭は俺もなんとか罰しようとしていたのが気に掛かる。何か教頭の気に障ることでもしたのだろうか。
「はあ、なんとか校長達も納得してくれたみたいだが……」
担任の古田が俺をチラリと見る。
「お前、教頭にあんなこと言って大丈夫かよ」
「何がですか?」
「いや、あの教頭は粘着質だからな。注意した方がいいってことだよ」
「ああ、それが分からないんですよ。なんで俺があんなに目の敵にされるんですか? 俺には身に覚えがないんですけど」
「それは俺にも分からん。まあ、しばらくは気を付けるんだな」
「担任として庇ってくれないんですか?」
「勘弁してくれよ。俺まで目を付けられるじゃないか」
「はぁ……」
担任の古田の言葉を聞いて呆れてしまう。まあ、担任とは言え上司に逆らうことは出来ないよな~と。
そして、教室に入ると吉田が急遽入院したと古田の口からクラスメイトに伝えられると「アイツ、落ちたな」そんな嘲笑混じりの声も聞こえた。
SIDE B.過剰な愛情
昨夜の騒ぎの後に吉田の両親の訪問もあったが、謝罪というよりは「何かの間違いだった」と警察に話して欲しいとの嘆願だった。その警察関係者であるお父さんに向かってだ。
お父さんも親として分かるが前置きして吉田の両親に言う。
「一度目なら許したかもしれませんが、通算で三度目となると私も娘の親として何もしない訳にはいきません。分かってくれますよね。悪いのは私の娘ではありません。それは分かってくれますよね?」
「は、はい。それは重々分かっていますが、そこをなんとかして頂く訳にはいかないでしょうか」
「無理です。それにあなた方は息子さんの監視が必要な時に二人して、田中君を糾弾しようと学校に向かった。違いますか?」
「「……」」
「お分かりですよね。そんなあなた方を信用して娘を傷つける訳にはいかないんです。あなた方も親として子供を守りたいという気持ちは同じだと思います。重ねて言いますが分かって下さい」
「「はい……」」
吉田の両親が家を出てからお父さんが私に話す。
「やっぱり、お婆ちゃんのところに行ってくれないか」
「わかったよ。あのご両親もなんだか信用出来ない感じだし」
「分かるか?」
「うん……なんとなくだけど。お父さんの私達に対する思いとは違って、吉田のことがすごく大事なモノって感じた。少し怖いくらいに……」
「そうだな。あれも愛情だとは思うが行き過ぎると危ういな」
「お父さんも私のことをもっと愛してくれてもいいよ?」
「いいのか? 亜美がお嫁にいくのが難しくなるぞ」
「ソレはダメ!」
「でも、お相手がまー君なら俺は何もいわないがな」
「バカ!」
と、そんなことがあったとまー君のことをぼかして奈美に話す。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!

真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?



【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる