49 / 53
第49話 私の指定席
しおりを挟む
恒と明良はケニーに鞍の付け方を教わるが、恒と比べ明良は言ってはみたものの目の前の竜馬に対し少し腰が引けているのが丸わかりである。なので、その様子を見ていた女子達の視線がス~ッと冷えていくのが分かる。
ミリーも例外ではなく「アキラ、ダサ……」と呟く。
「明良……」
「言うな、恒! 俺も自分でも分かっている。でも、こういうことからやっていかないと……本当にミリーに見放されそうで」
「ああ……」
そんなこんなでなんとか鞍に馬銜に手綱と一揃い着けたところで恒が違和感を感じる。
「あの、ケニーさん。これで全部なんですか?」
「はい。鞍と馬銜と手綱で、一揃いですよ。どうかしましたか?」
「そうだぞ。恒。何が問題なんだ?」
「いや、問題があるっていうか、ないのが問題なんだけど」
「何を言っているんだ?」
「あのさ……」
ケニーは恒が何を言いたいのか分からず、明良も恒が「ない」と言っているが「何が無い」のかが分からない。
なので恒はケニーに改めて問う。
「あの、鐙ってないんですか?」
「「鐙?」」
恒の問い掛けにケニーだけで無く明良も『鐙』が何を指すのか分からずに口にする。
「恒、なんだよソレ?」
「え? 明良は知らないの?」
「な、なんだよ。知らないのが悪いのかよ」
「恒、明良が知っているハズないじゃない。動いているのを見るのは好きでも、その中に出て来る単語とか覚える訳ないじゃない」
「そうよね。鐙なんて時代劇とか西部劇くらいじゃないの」
「ん? 由香も久美も何を言っているんだ? もしかして、お前達は恒が言っていることが分かるのか?」
「当然でしょ。私は恒と同じで図書室の住人だもの」
「私は時代劇が好きだから……」
「え? 俺だけ知らないの?」
「明良が知らないのは横に置いといて」
「置くのかよ!」
恒はケニーに対し、鐙がどういう物かを地面に描いて説明すると、ケニーがそれに興味を示し、ちょっと待って下さいと言って、奥から持って来たのは革ベルトと半円の金具だった。
ケニーは革ベルトを竜馬に掛けると、両端に金具を取り付けると「こんな感じでしょうか?」と恒に聞いてくるので恒は、その鐙らしき物に左足を乗せて体重を掛けてからグイッと一気に鞍の上に乗る。
そして、右足を反対の鐙に乗せてから感触を確かめる様に鞍の上で軽く腰を上下に浮かしてみる。
「うん、いい感じです」
「そうですか。では、もう一つの方も試してみて下さい」
「え、俺?」
「うん、明良。つま先を鐙に乗せてから、一気に自分の体を引き寄せる感じでやってみなよ」
「……分かった。じゃ。うわっ!」
明良は恒に指示された要領で鐙に左足を乗せてから一気に竜馬の上に乗る。
「あ、出来た……」
「素晴らしい! お客さん、これ……」
「いいですよ」
「え? 私、まだ何も言ってませんが」
「作りたいんでしょ。どうぞ」
「ですが……」
「おじさん、恒がいいって言ってんだからいいの!」
「そうよ、おじさんもさっき恒に同じことをしたでしょ」
「うむ、さすが旦那様じゃ」
「ミリー、わかんない……」
ケニーは恒達の態度を嬉しく思いながらもこれ以上のやり取りは意味がないと思い、有り難く引き取ると黙って恒に頭を下げる。
恒と明良が竜馬に乗ったまま、ケニーにお礼を言い、ホスの所に行こうとしたところで、女子からブーイングが聞こえてきた。
「ちょっと、恒。私達はどうするの?」
「そうよ。なんで私達は歩いているの?」
「恒……すまんが手を」
「ん? いいよ」
由香と久美が恒に文句を言っている最中に小夜は恒の側に行き、恒に手を貸せと言うと恒は素直に小夜に向かって手を伸ばせば、小夜はその手を取り、恒の前に乗る。
「「あ~! ズルい!」」
「アキラ……」
「ああ、ほら!」
「ありがと」
ミリーも小夜のやったことを見習い、明良に対し右手を伸ばせば明良もミリーのその手を握ると黙って竜馬の上に引き寄せ、自分の前に座らせる。
「あ~ミリーまで!」
「もう、由香のせいで乗り遅れたじゃない!」
「なんで私のせいなのよ!」
「だって、そうじゃないの!」
「何よ!」
「なんなのよ!」
由香と久美が言い合っているとミリーは明良の袖をチョンチョンと引くと「ながくなりそうだからいこう」と言われ、明良はうんと頷くが竜馬どころか馬の操り方など知らないので、どうしたものかと思っていたら空気を読んだのか明良が乗っている竜馬がゆっくりと歩き出す。
すると、同じ様に恒と小夜を乗せた竜馬も合わせる様にゆっくりと歩き出す。
『五月蠅くて適わない』
「なんかゴメンね」
『だが、賑やかなのは悪くないぞ』
「そう? じゃ、よかった」
「「よくない!」」
「え?」
「ほほほ、醜い争いしているからじゃ」
「「上から~」」
「ほほほ、悔しかったら来るがいい」」
「「また、上から~」」
「小夜、あんまり揶揄わないの」
「む、すまない」
恒と竜馬がほのぼのと会話して「よかった」と言った後に下の方から文句が聞こえてきたので見ると言い合いをしていたハズの由香と久美が歩いている竜馬の右と左に別れて上を見ながら不満そうだ。
そして、そんな二人に恒の前に陣取っている小夜が二人を煽るものだから、さすがに恒も気の毒に思い小夜を窘めるが、小夜はそんな二人に向かって勝ち誇ったように口角の端を少しだけ上げる。
「「キ~ッ! ムカつく!」」
ミリーも例外ではなく「アキラ、ダサ……」と呟く。
「明良……」
「言うな、恒! 俺も自分でも分かっている。でも、こういうことからやっていかないと……本当にミリーに見放されそうで」
「ああ……」
そんなこんなでなんとか鞍に馬銜に手綱と一揃い着けたところで恒が違和感を感じる。
「あの、ケニーさん。これで全部なんですか?」
「はい。鞍と馬銜と手綱で、一揃いですよ。どうかしましたか?」
「そうだぞ。恒。何が問題なんだ?」
「いや、問題があるっていうか、ないのが問題なんだけど」
「何を言っているんだ?」
「あのさ……」
ケニーは恒が何を言いたいのか分からず、明良も恒が「ない」と言っているが「何が無い」のかが分からない。
なので恒はケニーに改めて問う。
「あの、鐙ってないんですか?」
「「鐙?」」
恒の問い掛けにケニーだけで無く明良も『鐙』が何を指すのか分からずに口にする。
「恒、なんだよソレ?」
「え? 明良は知らないの?」
「な、なんだよ。知らないのが悪いのかよ」
「恒、明良が知っているハズないじゃない。動いているのを見るのは好きでも、その中に出て来る単語とか覚える訳ないじゃない」
「そうよね。鐙なんて時代劇とか西部劇くらいじゃないの」
「ん? 由香も久美も何を言っているんだ? もしかして、お前達は恒が言っていることが分かるのか?」
「当然でしょ。私は恒と同じで図書室の住人だもの」
「私は時代劇が好きだから……」
「え? 俺だけ知らないの?」
「明良が知らないのは横に置いといて」
「置くのかよ!」
恒はケニーに対し、鐙がどういう物かを地面に描いて説明すると、ケニーがそれに興味を示し、ちょっと待って下さいと言って、奥から持って来たのは革ベルトと半円の金具だった。
ケニーは革ベルトを竜馬に掛けると、両端に金具を取り付けると「こんな感じでしょうか?」と恒に聞いてくるので恒は、その鐙らしき物に左足を乗せて体重を掛けてからグイッと一気に鞍の上に乗る。
そして、右足を反対の鐙に乗せてから感触を確かめる様に鞍の上で軽く腰を上下に浮かしてみる。
「うん、いい感じです」
「そうですか。では、もう一つの方も試してみて下さい」
「え、俺?」
「うん、明良。つま先を鐙に乗せてから、一気に自分の体を引き寄せる感じでやってみなよ」
「……分かった。じゃ。うわっ!」
明良は恒に指示された要領で鐙に左足を乗せてから一気に竜馬の上に乗る。
「あ、出来た……」
「素晴らしい! お客さん、これ……」
「いいですよ」
「え? 私、まだ何も言ってませんが」
「作りたいんでしょ。どうぞ」
「ですが……」
「おじさん、恒がいいって言ってんだからいいの!」
「そうよ、おじさんもさっき恒に同じことをしたでしょ」
「うむ、さすが旦那様じゃ」
「ミリー、わかんない……」
ケニーは恒達の態度を嬉しく思いながらもこれ以上のやり取りは意味がないと思い、有り難く引き取ると黙って恒に頭を下げる。
恒と明良が竜馬に乗ったまま、ケニーにお礼を言い、ホスの所に行こうとしたところで、女子からブーイングが聞こえてきた。
「ちょっと、恒。私達はどうするの?」
「そうよ。なんで私達は歩いているの?」
「恒……すまんが手を」
「ん? いいよ」
由香と久美が恒に文句を言っている最中に小夜は恒の側に行き、恒に手を貸せと言うと恒は素直に小夜に向かって手を伸ばせば、小夜はその手を取り、恒の前に乗る。
「「あ~! ズルい!」」
「アキラ……」
「ああ、ほら!」
「ありがと」
ミリーも小夜のやったことを見習い、明良に対し右手を伸ばせば明良もミリーのその手を握ると黙って竜馬の上に引き寄せ、自分の前に座らせる。
「あ~ミリーまで!」
「もう、由香のせいで乗り遅れたじゃない!」
「なんで私のせいなのよ!」
「だって、そうじゃないの!」
「何よ!」
「なんなのよ!」
由香と久美が言い合っているとミリーは明良の袖をチョンチョンと引くと「ながくなりそうだからいこう」と言われ、明良はうんと頷くが竜馬どころか馬の操り方など知らないので、どうしたものかと思っていたら空気を読んだのか明良が乗っている竜馬がゆっくりと歩き出す。
すると、同じ様に恒と小夜を乗せた竜馬も合わせる様にゆっくりと歩き出す。
『五月蠅くて適わない』
「なんかゴメンね」
『だが、賑やかなのは悪くないぞ』
「そう? じゃ、よかった」
「「よくない!」」
「え?」
「ほほほ、醜い争いしているからじゃ」
「「上から~」」
「ほほほ、悔しかったら来るがいい」」
「「また、上から~」」
「小夜、あんまり揶揄わないの」
「む、すまない」
恒と竜馬がほのぼのと会話して「よかった」と言った後に下の方から文句が聞こえてきたので見ると言い合いをしていたハズの由香と久美が歩いている竜馬の右と左に別れて上を見ながら不満そうだ。
そして、そんな二人に恒の前に陣取っている小夜が二人を煽るものだから、さすがに恒も気の毒に思い小夜を窘めるが、小夜はそんな二人に向かって勝ち誇ったように口角の端を少しだけ上げる。
「「キ~ッ! ムカつく!」」
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

間違えられた番様は、消えました。
夕立悠理
恋愛
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。
運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。
「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」
ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。
ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。
「エルマ、私の愛しい番」
けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。
いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。
名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる