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第48話 淋しいに決まっている!
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恒の目の前にいる竜馬は恒を見ながら笑っているように見える。そして、恒に頼むというか命令する。
『お前、俺達をここから出せ!』
「え? 何言ってるの?」
『何をってお前は馬が必要なのだろう。ならば、俺達兄弟をここから出すんだ』
「いやいやいや、ちょっと待ってよ。俺達に必要なのは一頭だけなんだけど」
『構わん。三頭全て出すんだ』
「いや、こっちが構うんだって」
『俺達がいいと言ってるだろ!』
『そうだ! 兄ちゃんが言ってるだろ!』
『もう、いいじゃんか。俺達を引き離すのかよ!』
「え~」
恒が目の前にはいつの間にか三頭の竜馬が並び、恒に対し迫っている。
そんな様子を見ていた由香達はなんとなく理解してしまった。
「あれは恒が押し切られているわね」
「やっぱり? 恒って、押しに弱いもんね。じゃあ、今度はその手で「ちょっと!」……なに?」
「抜けがけはナシじゃないの?」
「そうだっけ?」
「ムカつく~小夜はいいの?」
「妾は既に伴侶じゃからの」
「キ~」
「ゆかおねえちゃん、こわい……」
「あ~由香、ミリーが怖がっているから、止めろ」
「明良まで……もう、いいわよ。こうなったら私も……」
「あの~お客さん……」
「「「なに!」」」
「ヒッ……」
恒が三頭の竜馬に面倒を見ろと迫られている後ろでは由香達が騒いでいたら、そこに「まだ、決めてないのか!」と厩舎の入口の方から一喝する声が聞こえてきたので、その方向を見るとホスが立っていた。
「ホスさん! どういうことですか!」
「ん? どうした」
「どうしたじゃないですよ。本気なんですか!」
「ああ、本気じゃ」
厩舎の入口にいるホスの所に駆け寄ったケニーがホスに対し詰め寄るが、ホスは気にする様子もなく恒達のいる厩舎の奥へと歩いて行く。
やがて竜馬の前に辿り着くと恒に対し「いい子達だろ」と言うが、恒はさっきまで押し売りを受けていたので素直に頷けない。
だが、目の前の「兄ちゃん」と呼ばれていた竜馬がホスを見る目が優しいのに気付いた恒は段々とこの竜馬達が気に入り始めている。
「元気だったか? うん、ふふふ。いい子だ」
『じいちゃん、また腰が曲がったんじゃないか』
『じいちゃん、たまには乗ってくれよ』
『じいちゃん、久しぶりすぎじゃないか』
「ふふふ、よしよし……」
ホスと触れ合う三頭の竜馬を見て恒は一つのことが気になる。
「ホスさん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なんじゃ。この子達が気に入らないのか?」
「いえ、そうではありません。どちらかと言えば、気に入ってます。それは先程のホスさんと仲良くしているのを見て、一層気に入りました」
「なら、何も問題はなかろう」
「いえ、これだけはハッキリ聞かないと……」
「なんじゃ。言うてみろ」
「はい……ホスさん、淋しくありませんか?」
「……」
恒の質問にホスの言葉が詰まる。それはホスだけじゃなくケニーもそれは感じていたのかホスが何を言うのかと口を噤む。そして目の前にいる竜馬も同じ思いの様でホスの顔をジッと見ている。
「淋しくないかだと?」
「はい」
「そんなもん、淋しいに決まっているだろ! 態々聞くまでもなかろう……いくら、魔物とは言え、ワシとケニーでここまで世話してきたんじゃ。淋しいさ……」
「なら……」
「だが、そんな理由で……ワシのワガママでここに閉じ込めておくのも違うとワシは思っている。この子達は本来なら、森だろうが野っ原だろうが好き放題に走るのが好きな魔物だ。それをワシが淋しいからと……そんな理由で引き留めていいはずがなかろう」
「ホスさん」
「じいさん……」
『じいちゃん、俺も淋しい……でも、ここに閉じこもっているのも、もう無理だ!』
『うん、ゴメン。じいちゃん。俺も出られるのなら出たい!』
『俺もだよ。じいちゃん、ゴメン』
恒からの質問に対し思わずホスが心情を吐露したのを聞いて、恒はつまらないことを聞いてしまったと後悔したが、竜馬の心情も聞こえたので購入を決意する。
「ケニーさん、三頭纏めて購入します」
「え? いいんですか?」
「はい。この子達もバラバラにするのは気が引けますし、馬車にもそんなに乗れないので」
「そういうことですね。では「待て!」……ホスじいさん」
恒がケニーに竜馬を購入したいと話したところでホスが会話に入ってくる。
「金は要らん!」
「ホスじいさん……」
「この子達を引き取ってくれるのなら、ワシから金を出したいくらいじゃ。だから、金はいらん!」
「そういう訳には……」
「くどい!」
「分かりました。では、ケニーさん。今までこの子達の飼育費用はいくらですか?」
「えっと、それは……」
「いらんと言っているだろ!」
「そうはいきません。これはホスさんにお支払いするのではなく、ケニーさんに対しお支払いするものです。なので、ホスさんは黙っていて下さい」
「ぐぬぬ……」
「すまんな、ホスじいさん。私も貰えるものならもらっとかないと楽ではないので……」
「なら、なぜワシに言わん!」
お金はいらないと言うホスを横目に恒はケニーに対し竜馬三頭に掛かった飼育代として代金を支払うとケニーに礼を言われる。
ケニーは馬房の前に立ち、竜馬の馬房の閂を外すと三頭を馬房から出す。
手綱も馬銜も着けられていない状態だが、どの子も逃げ出す素振りは見せずにホスに纏わり付く。
ホスは別れを惜しむように三頭それぞれの顔に自分の顔を近付け挨拶を交わすと、恒に対し言う。
「馬車を牽かせるのならコイツだ」
「お兄ちゃんか」
「「「お兄ちゃん?」」」
ホスからコイツだと言われた竜馬は三兄弟の長男でホスに選ばれたことをどこか誇らしげだ。
ホスに牽かれ長男が馬車の元まで行こうとしていたが、竜馬はホスのうなじ辺りを「パクッ」と咥えると、そのまま上に放り投げた。
「「「えぇ~」」」
「ふえ?」
放り投げられたホセを見て恒達は焦ったが、直ぐに竜馬の背中に着地したことで、恒達はその竜馬がしたかったことが分かった。
最後にホセを背中に乗せて歩きたかったのだろうと。
ホセもそれが分かったのか、首筋に手を伸ばしポンポンと軽く叩いて「ありがとうな」と呟く。竜馬も気持ちが通じたのが嬉しいのか『ヒヒ~ン』と嘶くとホセが持って来た馬車までゆっくりと歩き出す。
恒は残された二頭の竜馬を見て、どうしたものかと考えていると、「どうぞ」とケニーが二つの鞍を渡してきた。
「これは?」
「馬用の鞍です。これでもウチにある中で一番大きい物になりますが、あのお兄ちゃんに比べればこの子達は小さいので十分間に合うと思いますので」
「あ、ありがとうございます。おいくらですか?」
「いりません」
「いや、そういう訳には「だから、いりません」……ケニーさん」
「私もホスのじいさんと同じ気持ちです。この子達には野原を走り回って欲しいと願っています」
「だけど……」
「はい。代金なら、先程十分に頂きました。それにこの鞍は長年買い手が付かず棚で寝かせていた物ですから。いわば、不用品です。なので、気にすることなく、どうぞ」
「……分かりました。ありがとうございます」
「では、付け方を教えますので……あ、もう一人いいですか?」
「あ、俺! 俺がする!」
『お前、俺達をここから出せ!』
「え? 何言ってるの?」
『何をってお前は馬が必要なのだろう。ならば、俺達兄弟をここから出すんだ』
「いやいやいや、ちょっと待ってよ。俺達に必要なのは一頭だけなんだけど」
『構わん。三頭全て出すんだ』
「いや、こっちが構うんだって」
『俺達がいいと言ってるだろ!』
『そうだ! 兄ちゃんが言ってるだろ!』
『もう、いいじゃんか。俺達を引き離すのかよ!』
「え~」
恒が目の前にはいつの間にか三頭の竜馬が並び、恒に対し迫っている。
そんな様子を見ていた由香達はなんとなく理解してしまった。
「あれは恒が押し切られているわね」
「やっぱり? 恒って、押しに弱いもんね。じゃあ、今度はその手で「ちょっと!」……なに?」
「抜けがけはナシじゃないの?」
「そうだっけ?」
「ムカつく~小夜はいいの?」
「妾は既に伴侶じゃからの」
「キ~」
「ゆかおねえちゃん、こわい……」
「あ~由香、ミリーが怖がっているから、止めろ」
「明良まで……もう、いいわよ。こうなったら私も……」
「あの~お客さん……」
「「「なに!」」」
「ヒッ……」
恒が三頭の竜馬に面倒を見ろと迫られている後ろでは由香達が騒いでいたら、そこに「まだ、決めてないのか!」と厩舎の入口の方から一喝する声が聞こえてきたので、その方向を見るとホスが立っていた。
「ホスさん! どういうことですか!」
「ん? どうした」
「どうしたじゃないですよ。本気なんですか!」
「ああ、本気じゃ」
厩舎の入口にいるホスの所に駆け寄ったケニーがホスに対し詰め寄るが、ホスは気にする様子もなく恒達のいる厩舎の奥へと歩いて行く。
やがて竜馬の前に辿り着くと恒に対し「いい子達だろ」と言うが、恒はさっきまで押し売りを受けていたので素直に頷けない。
だが、目の前の「兄ちゃん」と呼ばれていた竜馬がホスを見る目が優しいのに気付いた恒は段々とこの竜馬達が気に入り始めている。
「元気だったか? うん、ふふふ。いい子だ」
『じいちゃん、また腰が曲がったんじゃないか』
『じいちゃん、たまには乗ってくれよ』
『じいちゃん、久しぶりすぎじゃないか』
「ふふふ、よしよし……」
ホスと触れ合う三頭の竜馬を見て恒は一つのことが気になる。
「ホスさん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なんじゃ。この子達が気に入らないのか?」
「いえ、そうではありません。どちらかと言えば、気に入ってます。それは先程のホスさんと仲良くしているのを見て、一層気に入りました」
「なら、何も問題はなかろう」
「いえ、これだけはハッキリ聞かないと……」
「なんじゃ。言うてみろ」
「はい……ホスさん、淋しくありませんか?」
「……」
恒の質問にホスの言葉が詰まる。それはホスだけじゃなくケニーもそれは感じていたのかホスが何を言うのかと口を噤む。そして目の前にいる竜馬も同じ思いの様でホスの顔をジッと見ている。
「淋しくないかだと?」
「はい」
「そんなもん、淋しいに決まっているだろ! 態々聞くまでもなかろう……いくら、魔物とは言え、ワシとケニーでここまで世話してきたんじゃ。淋しいさ……」
「なら……」
「だが、そんな理由で……ワシのワガママでここに閉じ込めておくのも違うとワシは思っている。この子達は本来なら、森だろうが野っ原だろうが好き放題に走るのが好きな魔物だ。それをワシが淋しいからと……そんな理由で引き留めていいはずがなかろう」
「ホスさん」
「じいさん……」
『じいちゃん、俺も淋しい……でも、ここに閉じこもっているのも、もう無理だ!』
『うん、ゴメン。じいちゃん。俺も出られるのなら出たい!』
『俺もだよ。じいちゃん、ゴメン』
恒からの質問に対し思わずホスが心情を吐露したのを聞いて、恒はつまらないことを聞いてしまったと後悔したが、竜馬の心情も聞こえたので購入を決意する。
「ケニーさん、三頭纏めて購入します」
「え? いいんですか?」
「はい。この子達もバラバラにするのは気が引けますし、馬車にもそんなに乗れないので」
「そういうことですね。では「待て!」……ホスじいさん」
恒がケニーに竜馬を購入したいと話したところでホスが会話に入ってくる。
「金は要らん!」
「ホスじいさん……」
「この子達を引き取ってくれるのなら、ワシから金を出したいくらいじゃ。だから、金はいらん!」
「そういう訳には……」
「くどい!」
「分かりました。では、ケニーさん。今までこの子達の飼育費用はいくらですか?」
「えっと、それは……」
「いらんと言っているだろ!」
「そうはいきません。これはホスさんにお支払いするのではなく、ケニーさんに対しお支払いするものです。なので、ホスさんは黙っていて下さい」
「ぐぬぬ……」
「すまんな、ホスじいさん。私も貰えるものならもらっとかないと楽ではないので……」
「なら、なぜワシに言わん!」
お金はいらないと言うホスを横目に恒はケニーに対し竜馬三頭に掛かった飼育代として代金を支払うとケニーに礼を言われる。
ケニーは馬房の前に立ち、竜馬の馬房の閂を外すと三頭を馬房から出す。
手綱も馬銜も着けられていない状態だが、どの子も逃げ出す素振りは見せずにホスに纏わり付く。
ホスは別れを惜しむように三頭それぞれの顔に自分の顔を近付け挨拶を交わすと、恒に対し言う。
「馬車を牽かせるのならコイツだ」
「お兄ちゃんか」
「「「お兄ちゃん?」」」
ホスからコイツだと言われた竜馬は三兄弟の長男でホスに選ばれたことをどこか誇らしげだ。
ホスに牽かれ長男が馬車の元まで行こうとしていたが、竜馬はホスのうなじ辺りを「パクッ」と咥えると、そのまま上に放り投げた。
「「「えぇ~」」」
「ふえ?」
放り投げられたホセを見て恒達は焦ったが、直ぐに竜馬の背中に着地したことで、恒達はその竜馬がしたかったことが分かった。
最後にホセを背中に乗せて歩きたかったのだろうと。
ホセもそれが分かったのか、首筋に手を伸ばしポンポンと軽く叩いて「ありがとうな」と呟く。竜馬も気持ちが通じたのが嬉しいのか『ヒヒ~ン』と嘶くとホセが持って来た馬車までゆっくりと歩き出す。
恒は残された二頭の竜馬を見て、どうしたものかと考えていると、「どうぞ」とケニーが二つの鞍を渡してきた。
「これは?」
「馬用の鞍です。これでもウチにある中で一番大きい物になりますが、あのお兄ちゃんに比べればこの子達は小さいので十分間に合うと思いますので」
「あ、ありがとうございます。おいくらですか?」
「いりません」
「いや、そういう訳には「だから、いりません」……ケニーさん」
「私もホスのじいさんと同じ気持ちです。この子達には野原を走り回って欲しいと願っています」
「だけど……」
「はい。代金なら、先程十分に頂きました。それにこの鞍は長年買い手が付かず棚で寝かせていた物ですから。いわば、不用品です。なので、気にすることなく、どうぞ」
「……分かりました。ありがとうございます」
「では、付け方を教えますので……あ、もう一人いいですか?」
「あ、俺! 俺がする!」
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