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第47話 まずは会話から

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「ここかな?」
「ここかなって、どう見たってそうでしょ」
「そうよね、牧場っぽい広場に厩舎もあるし」
「それに『貸し馬屋』ってゲートもあるぞ」
「あ、ホントだ!」

 恒がホスに言われた通りに貸し馬屋を目指して門の近くまで来た所で、恒が自信なさげにここかなと言った所で、由香、久美、明良の順にポンコツ扱いされる恒だったが、特に構いもせずに厩舎の方へと足を進める。

 恒達が厩舎の方へ歩いていると恒達に気付いた男が近付いて来る。

「いらっしゃい! 馬をご入り用ですか?」
「あ、はい。ホスさんにここを紹介されて来ました。ケニーさんへとこれを預かっています」
「私に……あ、申し遅れました。私が、ここの貸し馬屋の主人でケニーと言います」
「どうも、恒です」
「由香です」
「久美です」
「明良です」
「ミリーだよ」
「小夜じゃ」

 順番にケニーに対し名前を述べていく恒達に「ハァ」と返事しつつホスから渡された紹介状に目を通していたケニーだったが、いきなり「はぁ? 何言ってんだ! あのジジイ!」といきなり叫び出す。

 恒達もいきなり叫びだしたケニーに驚きホスが何を書いたのだろうかと気になる。

「ケ、ケニーさん?」
「ああ、すみません。お客さんの前なのに申し訳ありません」
「いえ、それはいいんですが、よければホスさんが何を書いていたのか教えてもらってもいいですか?」
「……まあ、いいでしょう。実物を見てもらった方が早いでしょうから、来てもらえますか?」
「はい……」

 恒達はホスが何を書いたのかは気になるが、ケニーは見てもらった方が早いと言い、恒達を厩舎の方へと案内する。

 厩舎の中に入るがケニーは、そのまま奧へと歩き続ける。

「デカい厩舎だけど……どこまで行くんだろ」
「そうよね。ホスじいちゃんは何を紹介しろって書いたのかな?」
「ホスじいちゃんって……まあ、じいちゃんだけど」
「馬って乗れるのかな。俺、乗ったことないんだけど……」
「アキラ、ばしゃをひくんだからのらないよ」
「ふふふ、小娘に諭されるとはのぉ」

 恒達がどこまで行くのかと気にしていたら、ケニーは厩舎の一番奥の馬房の前で止まると、これだと恒達の方を見てから馬房の中にいる三頭の馬? を差す。

「えっと、俺達が欲しいのは馬……なんですけど。これは?」
「ええ、そうですよね。私もそうしたいのですが……ホスのじいさんが言うには、『が必要だから、コイツらを薦めろ』と書かれていたんですよ。ハァ~」

 ケニーが馬房の前でホスからの紹介状の内容を恒達に話してから嘆息する。

「でも、これって……馬……じゃないですよね?」
「そうですね。でも、一応は馬に分類されますよ。まあ、魔物ですし。種族は『竜馬ドレイクホース』ですが」
「魔物?」
「ええ、この三頭は魔物です」
「でも……」
「はい。気にされていることは分かります。魔物ならなんでこんな所で大人しくしているのかということですよね」
「はい」
「ハァ~そうなんですよ。実は……」

 ケニーが言う通り恒達が見ている馬房の中にいるのは『竜馬ドレイクホース』と呼ばれる魔物の一種で冒険者が出会ったら死を覚悟するまでもないが、大怪我は免れないほどの馬形の魔物である。

 では、何故ここにいるのかと言う話をケニーが続けて話してくれたが、原因はホスだった。

「ある日、ホスのじいさんが三頭の子馬を森で保護したからと、暫くここで世話して欲しいと頼まれたのが運の尽きでした」

 ケニーが言うには見た目は普通の子馬だった為に世話になっているホスの頼みだからと安請け合いしたはいいが、日が経つにつれ、その姿は『馬だが、馬ではない』何かに変わって行くのを感じた。

 先ず牧草をそれほど食べなくなったのを不思議に思い、ならばとオーク肉を生で与えたら貪るように食べ始めた。

 これを切っ掛けに馬ではなく魔物だろうとホスに引き取るように言ったが、魔物ならば『調教テイム』すればいいだろうと返され、ならばと『調教テイム』しようとするが、誰が試しても弾かれてしまう。

 もうこれ以上は無理だとホスに言うが、ホスはもう少し待ってくれと言うばかりでなんの対応策も示してくれなかった。

 それに三頭の竜馬ドレイクホースも魔物だからと警戒していたが、特に暴れたり人に危害を加えたりということもなかったので、ホスに対し強く言うことも出来なかった。それに時折様子を見に来るホスに対しての接し方は普通の馬にしか見えなかったというのもあった。

 だが、そのホセが恒達に対し三頭の竜馬ドレイクホースを紹介しろと言ってきたのだから、ケニーが驚くのも無理はないというものだろう。

「……と、言う訳なんです。無理は言いません。ホスのじいさんには私から言っておきますから」
「ん~」
「恒、ケニーさんの言う通り、魔物だよ。やめとこうよ」
「私は試してみるのもアリだと思うよ」
「だよな。格好いいもんな」
「キレイだよ」
「妾は気に入ったぞ」

 由香以外は賛成のようだなと恒は改めて、馬房の中からこちらをジッと見続けている竜馬ドレイクホースを見ながら考えている。

 竜馬ドレイクホースの見た目は確かに格好いい。

 回りの馬より一回り大きい体躯に額と鬣、それに胸元にそれぞれの足の臑の辺りに翠色の鱗が生えているのが、なんとなく格好いいと恒の心を擽る。

『何か用か。人の子よ』
「ん?」
『お前だ! 先程からジロジロと……気分が悪いぞ』
「あ、ゴメン。つい……格好いいなと思ってさ。気を悪くしたのならゴメン」
『ん?』
「ん?」
『俺の言葉が分かるのか?』
「え? 普通に聞こえるけど?」
『そうか! 聞こえるか!』
「え? 何?」

 恒が目の前の竜馬ドレイクホースと短い会話を交わしていると恒の肩をチョンチョンと叩くので恒は何かと振り返れば、そこには恒を不思議そうに見ているケニーと由香達がいた。

「どうしたの?」
「恒、どうしたのじゃなくて、今、何をしていたの?」
「何って、この子と話していたけど?」
「「「いやいやいや」」」
「え? どうしたの?」

 恒が目の前にいる竜馬ドレイクホースと話していたと言うと皆が一斉に首を横に振る。

「あの~お客さん。普通、馬は話しませんよ。それにいくら魔物とは言え、竜馬ドレイクホースが話すなんて聞いたことはありません」
「え? でも……」
「恒、私達には『ヒヒヒン』くらいしか聞こえてないの。誰もその竜馬ドレイクホースの話は聞こえてないのよ。ホント大丈夫?」
「え? どういうこと?」

 恒は本当にどういうことなのかと竜馬ドレイクホースの方を見れば、竜馬ドレイクホースが一瞬ニヤリとしたように見えた。

『俺の言葉はお前にしか聞こえん』
「え? なんで?」
『なんでと言われても、俺がお前に直接「念話」を使って話しかけているからだ』
「でも、それなら誰でも分かりそうなもんだけど?」
『……俺が何語を話しているか分かるか?』
「何語って、普通に人の言葉でしょ?」
『違う。俺は俺達の種族にしか分からない言語を使っている』
「ならなんで……あ!」

 恒は目の前の竜馬ドレイクホースとなんで会話が出来たのかをここで漸く理解出来た。

『念話』スキルを持っていれば、竜馬ドレイクホースからの言葉を受け取ることは出来るが、それだけでは会話として成り立たない。では、どういうことかと言えば、恒が持っている『異世界言語理解』のお陰だということだ。
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