私がサポートします。だから、死なないで下さい!

ももがぶ

文字の大きさ
上 下
41 / 53

第41話 弱いからだよ

しおりを挟む
「お前達、さっきから何を盛り上がっているんだ?」
「え? 何って……ナニ?」

 明良からの問い掛けに恒がなんとも言えない感じで返す。

『本当に僕が言うの?』
「「「頼む(みます)!」」」
「なんだ?」
「アキラ、どうしたの?」

 俺達の様子に何かあったのかと明良が俺達に寄ってきたので、ミリーも何があったのかと気になったみたいだ。

 そして、覚悟を決めたミモネがゆっくりと深呼吸をすると明良の正面に立つ……というか、止まっている。

『アキラ、いい? これから言うことをちゃんと聞いて欲しいのなの』
「あ、ああ。分かった」
『じゃあ、言うね。あのね、私達はこの町からそろそろ出ようと思っているのなの』
「お、そうか。じゃあ『アキラはダメなの』……は? そりゃどういうことだよ! 恒! お前が言わせているのか!」
「……」
「なんとか言えよ!」

 恒達が町から出ると言うのに「お前はダメだ」と言われた明良は激昂し、恒の胸倉を掴みかかる。

「明良、落ち着いてよ!」
「そうよ、ちゃんと私達の話を聞いてよ!」
「アキラ、まずはワタルを離せ」
「お前達もグルなのかよ!」

 明良の問い掛けに由香達は黙って頷く。

「そうかよ! 俺だけ除け者かよ!」
「待てよ、明良! 話はまだ終わってない!」
「何が終わってないんだよ! 終わりだよ! もう、お前達とも今限りだ!」
「ふぅ~だから、話を聞けと言っている」
「ぐっ……」

 明良は自分だけが除け者にされたと思い、恒から手を離すと踵を返し部屋から出ようとするが、恒から話が終わっていないと呼び止められる。だが、明良は自分を除け者にして話が進んでいることに対し、もう恒達との関係は終わりだと恒の呼び掛けに答えようとしなかったが、そこをドリーに抑えられ恒達の前に戻される。

 ドリーに力で勝てるはずもなく大人しく恒達の前に戻るしかない自分が明良は恥ずかしく思ってしまう。

「明良、ちゃんと話を聞いてくれ」
「分かったよ。ふん、話だけは聞いてやろうじゃないか。さっさと話せよ!」
「ありがとう。その前に……」

 恒は由香と久美に目配せすると、二人は黙って頷きミリーの手を取り部屋の外に行こうと促す。だが、ミリーは激昂した様子の明良のことが心配で、この場を離れるのをイヤだという。

 そんなミリーの様子を見て、明良が優しく笑う。

「ミリー、これは男同士の話だ。心配するな大丈夫だ。ケンカなんかにはならないよ」
「ホントだよね? ワタル、ホントだよね?」
「ああ、ケンカじゃないから心配しないで。由香、久美お願い」
「うん、分かってる」
「任せて。ちゃんと言うのよ」
「ああ、分かっている」

 ミリーを連れて由香達が部屋を出るのを確認してから、明良が口を開く。

「さあ、聞かせて貰おうか。なんで俺を除け者にするんだ!」
「じゃあ、誤魔化さずに直球で言うよ。それはね、明良が弱いからなんだ」
「……弱い。そうか、お前は強いもんな。そんな風に俺を見下していたのか」

 そう言って明良は席を立とうとしたが、恒はそれを止める。

「だから、ちゃんと話を聞いてよ!」
「聞いたさ! 俺が弱いから、なんだよ! 俺はお前と違ってチートもないからな!」
「だから、ちゃんと聞けって言ってるだろ!」
「お、おお……」

 普段から怒ることがあまりない恒が明良に対し怒っているのがハッキリと分かるくらいに声を荒げる。その勢いに明良も驚き、黙って椅子に座り直す。

「怒鳴ってゴメン」
「いや、いい。でも、珍しいなと思ったよ」
「そうか。珍しいか」
「ああ、お前あまり怒らないもんな」
「そう……なのかな」
「ああ、あまり知らないっていうか、見たことないかもな」
「ゴメンね」
「いや、いい。俺も悪かった。だけど、ちゃんと説明してくれるんだろ」
「うん、それは当然。あのね……」

 恒は明良がようやく聞く態度になってくれたので、さっき由香達と話し合ったことを話す。

 曰くミリーが世界崩壊の切っ掛けになるのは違いない。だから、一緒にいた方がいいだろうと旅へ同行させるつもりだ。
 だけど、そうなるとミリーを守るのはドリーだ。由香と久美は恒が守る。そうなると明良を守るのがいない。

 恒が守れないのかと言えば、同時に三人は無理だとなり明良はどうしてもあぶれてしまう。

 だから、明良の身を守る為にもこの町に残って貰うのが一番だと考えた。でも、明良が一人でこの町に残るのはイヤだと言うのならば、今のままではダメだということになる。

「分かったよ。それで俺が強くなれば万事OKなんだな」
「……そういうことになるかな」
「ワシが稽古をつけよう。それにお前達三人のギルドランクを上げるのも手伝おう」
「ふぅ~『引くも地獄進むも地獄」か。なら、一緒にいられる地獄を選ぶしかないな」

 明良はそう言うとニヤリと笑って見せた。

「だがな……」
『バキッ!』

 明良は椅子から立ち上がると、そのまま恒の左頬を打ち抜く。

「あ~イッテェ~」
「明良……」
「お前、ちっとは痛そうにしろよ! これだからチート様はよ」
「ごめん……」

 明良は殴った右手をヒラヒラさせながら、痛みが引くのを待っている。そして、恒を見据えながら言う。

「さっきのは友達を置いてけぼりにしようとしたことへの俺からの一発だ」
「うん」
「ホントは俺を除け者にして話を進めたことにもう一発食らわせてやりたがったが、今の俺じゃコレが精一杯だ」
「うん、うん。ゴメンね」
「だから、謝るなよ。謝られると俺がミジメだろうが!」
「うん、うん、うん、そうかもね。ははは」
『ワタル、そんなに痛かったの?』
「いや、痛くはないよ」
「ふん、ちっとは痛そうにしろよ」
『あ! なんでアキラも泣いてるの。そんなに右手が痛いの?』
「な、なに言ってんだよ。なあ恒」
「そうだよ、ミモネ」
『でも……』
「そこまでにしてやれ」
『ドリー、でも「そこまでだ」……へんなの』

 恒と明良は互いの顔を指さしながら笑っているが、その頬を伝うものがあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜

MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった お詫びということで沢山の チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。 自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

処理中です...