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第12話 話を聞こうじゃないか

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「お前達は、あの『ネマン教皇国』に召喚されたんだな?」
 ギルマスからの問い掛けに恒達は黙って頷く。
 そして、それを見たギルマスは「そうか」と言って、そのまま俯く。

『コンコンコン』
「失礼しますね。ギルマス、揃えてきましたよ。じゃあ、まずは女子から着替えましょうか。ってことでギルマス達は出て下さいね」
「え? 俺の部屋で着替えさせるの?」
「しょうがないでしょ。ここには更衣室なんて物はないのですから」
「分かったよ。じゃあ、なるべく早く頼むな」
「女子の準備には時間が掛かるんです! いいから、さっさと出て下さい」
「もう、俺の部屋なのに……」
 ギルド職員のリリーが用意した着替えと一緒に恒達はギルマスの執務室から追い出される。
「俺達はどこで着替えれば?」
「あ~その辺の隅で勝手にしろ」
「「え~」」
「なんだ? 見られて困る物でもあるのか? まあ、下着まで替えなくてもいいから、見られることもないだろ。それとも人目にさらせないほど恥ずかしい物をぶら下げているのか?」
「な、もういい! なら、ここで着替える。それならいいんだろ!」
 ギルマスの言葉にカチンときたのか、明良がギルドの事務スペース……カウンターの内側で着替えを始めようとすると、カウンターに座っているお姉さん達が興味深そうに椅子ごと体を振り向かせて見ている。さすがにこれはマズいかと恒は明良にそっと耳打ちする。
「明良、もう少し考えようよ」
「恒はギルマスに言われたように恥ずかしいのか?」
「そういう訳じゃないけどさ。でも、男が男の裸を見ても見せられてもそんなに気持ちがいいものじゃないでしょ。だから、ここはギルマスの言うようにさ。隅で大人しく着替えようよ」
「まあ、恒がそこまで言うんなら……」
 恒の言うことに渋々ながら頷き、部屋の隅に行くと恒が『遮断ブラインド』と唱えると、回りからは恒達が見えなくなっていた。
「あん、もう!」
「チッ……」
「あら、意外と使えるのね」
 それと同時にお姉さん達から苦情の様な声が聞こえるが、恒達は気にすることなく着替えを済ませる。
「え~と、脱いだのはアイテムボックスにしまうとして……時間経過がな~」
「そうだね。早く洗わないと、とんでもないことになりそうだね」
 恒は自分のは時間経過無しのインベントリだから、心配はないが明良達はアイテムボックス持ちで、そのアイテムボックスに入れた物は普通に時間が経過する。
 だから、早く取りだして洗わないととんでもないことになることは楽に予想出来る。

 その頃、ギルマスの執務室では坦々と由香と久美が着替えをしている……予定だったが、リリーが由香達の下着に興味を持ってしまい、上着を着ようとするのを悉く邪魔をしてくる。
「あの、リリーさん? もう少し離れてもらわないと着替えることが出来ないんですけど?」
「あら、気にしなくてもいいのよ。ほら、続けて続けて」
「いや、続けてと言われても、その手を放してもらわないと……」
「え~放さないとダメ?」
「ダメ? って、聞かれてもほぼ鷲掴みされているんですけど……」
 由香は自分の胸をガシッとブラごとリリーに鷲掴みにされている状態だったので、さっきからやんわりと放すように言っているのだが、なかなか放してくれない。
 その間に久美はさっさと自分の着替えを済ませてしまう。久美は何故自分には言ってこないかなと思ったが、下を向くとキレイに自分のつま先が見えている状態では、言わずもがなだ。そして、自分に暗示を掛けるように言い聞かせる。
「ふん! 私は成長途中なの。だから、いいの!」

 そして、リリーはと言えば、自分と同じ様なサイズの由香の胸をほぼ鷲掴みしながら、由香におねだりする。
「ねえ、これもらえない?」
「はぁ? 何言ってるんですか! 今はこれ一つしかないんですよ! なのにこれを渡しちゃったら、私はどうなるんですか? ビーチクを晒し者にして、垂れ乳になれって言うんですか!」
「もう、そんな意地悪なこと言わないでよ。ねえ、いいでしょ?」
「だから、イヤですって! そもそも、こんなのどこにでもあるんじゃないんですか?」
「ないわよ!」
「え?」
「だから、そんなにキレイに胸を包んでくれる物なんてないのよ。ほら、こんなのしかないのよ!」
 そう言ってリリーが上着を勢いよく脱ぐと、そこにはサラシのような物で巻かれた胸があった。
「はぁ~それはお気の毒です」
 由香はそう言って、今の内にとばかりに急いで上着を着る。
「あ~くれるって言ったのに!」
「言ってません!」
「なら、作ってよ!」
「はい?」
「だから、同じ物を作ってちょうだいって言ってるの」
「えっと、何を言ってるのか分からないんだけど?」
「もう、察しが悪い子ね。くれないのなら、それと同じ物を作ってって言ってるの。ついでにその下に履いているのもね」
「「え~」」
 リリーの言葉に由香ばかりか、久美まで驚いてしまう。
 そして、リリーは驚く二人の腕を掴み執務室の外に出ると「さあ、行きましょう!」とそのまま、ギルドから出て行こうとするのを恒とギルマスに止められてしまう。
「ちょっと、何するんですか!」
「何するじゃない! お前こそ、その二人をどこに連れていくつもりだ」
「そうだよ。二人から手を放して!」
「え~困るんですけど~」
「「助けて! 恒!」」
 ギルマスと恒にリリーが止められている隙にと明良とドリーが二人をリリーから救い出す。
「あ! もう、ドリーさんまで」
「ワシはコイツらの保護者だ。何か用事があるのなら、ワシが用件を聞こうじゃないか」
「え~ドリーさんに言うんですか~ちょっと、話しづらいんですけど……」
『ねえ、ワタル。ワタルがちゃちゃっとスキルを使って、この場をなんとかしなさいよ』
『え? スキルを使えって、どういうこと?』
『あのね……って具合にね』
『え~なんで俺がそんなことを……』
『でも、そうしないと終わらないよ。どうするの?』
 ミモネに言われた恒は一瞬悩むが、意を決した様な顔付きになると、「ごめん」と由香に声を掛け、由香の背中とお尻を触ると『複製コピー』と呟き、ある物が恒の手の平の上に現れると瞬時に『クリーン』を唱える。
「きゃっ! 恒。何いきなり触ってきて。もう、エッチなんだから! ん? 恒、その手に持っているのは……あ~私の下着! え? なんで? あれ? ある……」
 由香が自分の下着が抜き取られたと思い、自分の体を触って確かめるが、ちゃんと下着は身に着けている。
 そして恒は由香にごめんと謝ると、手に持っていた下着をリリーに渡す。
「はい。これを参考に作ってもらってね」
「ありがとう! 少年!」
 リリーは恒から下着を受け取ると、その嬉しさから恒をギュッと抱きしめる。
「あ! もう、放しなさいよ! 恒も嬉しそうにしないで! ちょっとは抵抗しなさいよ!」
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