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第8話 まだ、不確定要素だらけだし
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『そんなに責められてもしょうがないでしょ! 僕もそんなに権限が与えられているわけじゃないし。だって、そもそも僕はワタルのサポートを任されただけなんだもの』
ミモネの言い分に誰も何も言い返せない。
「まあ、まだ一万と一回目の異世界転移は始まったばかりだし、何も分からないのはしょうがないよ。とりあえず、ドリーが助かる可能性が広がっただけでもめっけもんでしょ」
「恒がそういうのなら、いいけどさ。一万と二回目の異世界転移は俺達ももれなく参加するんだろ。なら、俺達も無関係ではいられない。それは分かってくれるよな?」
「うん。そこは明良の言う通りだよ。まあ、私は一万と二回目も恒と一緒にいられるのなら、構わないんだけどね」
「あ~甘いね。次も今回みたいに一緒に逃げられるとは限らないよ。ねえ、ミモネ」
『うんそうだね。そこは僕にも分からないの。それに次も僕が参加するとは限らないの。だって、あの女神だもの』
「あ~それもそうか」
ミモネの話に恒だけが納得し、女神とあったことがない明良達は不思議に感じる。
「それでどうする?」
「どうするとは?」
ドリーが恒に唐突に質問するが、恒には何をどうすればいいのかも分からず、ドリーに聞き返す。
「恒。ドリーはここにいると死を連想しちゃうから、早くここから離れたいんだろうよ。それに俺もあの国から遠く離れたい」
「それは分かるけどさ。どこに行くの? 今日はいろいろあったし、早く休みたいんだけど」
「でも、ご飯がないよ。お風呂にも入りたいし……」
「由香。それはわがままだよ。私だって、シャワーくらい浴びたいけど……」
明良の言うことは恒も理解は出来る。それに対し由香も久美も言いたいことを言った後に、恒をチラリと見る。
暗になんとかしろと言っているんだろうなと恒は女子二人の願いは分かるがどうしろというんだよと口には出さないが、好き放題言ってくれるなと呆れてしまう。
それでも明良達を助けるためとは言え、連れて来たのは自分なのだからと、一人覚悟を決める。
「分かったよ。ドリー、この山はあの国の領域なの? もし、そうなら少しでも早く離れたいんだけど」
「そうか。じゃあ、ここを離れよう。ここはまだあの国の内側だ。そうだな、あっちに連峰がみえるよな」
「連峰? ああ、あれのこと」
「そうだ。あそこまで行けば、多分隣の国だし、麓には街もあったと思う」
「じゃあ、ご飯もあるのよね?」
「寝るところも?」
「まあ、あるだろうな。ワシは知らんがな」
「「恒!!!」」
由香と久美が当然行くよねという風に期待した目で恒を見詰める。
「分かったよ。それでドリー。持っていく物はある? あるなら、俺が収納するから」
「ほう。ワタルはインベントリ持ちか。それは助かるな。いいぞ、こっちだ。来てくれ」
ドリーが恒を洞窟の奥へと連れて行くのを明良達は、ここで待っているからと見送っている。
「ねえ、龍って確か、貴金属を溜め込むってラノベにはよく書かれていたんだけど、本当だと思う?」
「なんだよ由香。気になるのなら着いていけばよかったのに」
「イヤよ。だって、もう慣れたけど、ここでも生臭いんだよ。奧はもっと臭いよ。だから無理だよ」
「袖で抑えればイケるんじゃない?」
「そう思うなら、久美が行って来てよ!」
「イヤよ。それに私はそんなに興味がある訳じゃないし」
「なによ!」
「なにさ!」
恒達が洞窟の奧から戻ってくると、由香と久美が言い争っていたので、横でそれを見ていた明良に説明を求める。
「お! 戻って来たか」
「ただいま。っていうか、あれは何を言い争っているの?」
「ああ、あれか。あれはな……」
明良からの説明を聞いて、恒とドリーは呆れてしまう。
「宝って、ワシに何を期待しているんだか。そもそもこんな山の頂上まで来るような奴はいないし、ワシも人を襲う趣味はない。そして、ワシを敬う連中もいない。だから、期待するような宝物はない」
「だよな~やっぱり、そううまい話はないよな」
ドリーの話に明良は納得し、そしていつの間にか言い争いを止めていた由香がアテが外れて悲しいという風な顔になり、久美は自分が言った通りとばかりに勝ち誇った顔になる。
「じゃ、もう忘れ物はないね。ドリー」
「ああ、ないぞ。だが、ずっとここに住み続けていたからか、いざ離れるとなると少し寂しいな」
「ああ、そういうのはあるよね。でも、ここにいたら死んじゃうし、しょうがないよね」
「それを言うなよ。まあ、ワタルのお陰でそれも避けられそうではあるけどな」
「そういうこと。こんな死を待つだけの場所からはさっさとずらかろうぜ。頼んだぞ、恒」
「ああ、行こうか。皆、捕まって」
「「おう!」」
「「はい!」」
「じゃあ、行くね。『転移』!」
「で、到着! っと」
「「おっ……」」
「「きゃっ……」」
「あれがさっきまでいた山で、ドリーの住処だったところか」
「そうだ。それで、ここから見えるあれが目的の街になる」
「あそこだね」
「ああ、あそこだ。だが、さっきみたいに転移するのなら、あの手前のちょっと深い森の中がいいだろう」
「分かったよ。じゃ、また捕まって」
「「ああ!」」
「「うん!」」
「『転移』!」
皆が恒に捕まると恒は、ドリーが指定した麓の街の近くの森の中へと転移する。
ミモネの言い分に誰も何も言い返せない。
「まあ、まだ一万と一回目の異世界転移は始まったばかりだし、何も分からないのはしょうがないよ。とりあえず、ドリーが助かる可能性が広がっただけでもめっけもんでしょ」
「恒がそういうのなら、いいけどさ。一万と二回目の異世界転移は俺達ももれなく参加するんだろ。なら、俺達も無関係ではいられない。それは分かってくれるよな?」
「うん。そこは明良の言う通りだよ。まあ、私は一万と二回目も恒と一緒にいられるのなら、構わないんだけどね」
「あ~甘いね。次も今回みたいに一緒に逃げられるとは限らないよ。ねえ、ミモネ」
『うんそうだね。そこは僕にも分からないの。それに次も僕が参加するとは限らないの。だって、あの女神だもの』
「あ~それもそうか」
ミモネの話に恒だけが納得し、女神とあったことがない明良達は不思議に感じる。
「それでどうする?」
「どうするとは?」
ドリーが恒に唐突に質問するが、恒には何をどうすればいいのかも分からず、ドリーに聞き返す。
「恒。ドリーはここにいると死を連想しちゃうから、早くここから離れたいんだろうよ。それに俺もあの国から遠く離れたい」
「それは分かるけどさ。どこに行くの? 今日はいろいろあったし、早く休みたいんだけど」
「でも、ご飯がないよ。お風呂にも入りたいし……」
「由香。それはわがままだよ。私だって、シャワーくらい浴びたいけど……」
明良の言うことは恒も理解は出来る。それに対し由香も久美も言いたいことを言った後に、恒をチラリと見る。
暗になんとかしろと言っているんだろうなと恒は女子二人の願いは分かるがどうしろというんだよと口には出さないが、好き放題言ってくれるなと呆れてしまう。
それでも明良達を助けるためとは言え、連れて来たのは自分なのだからと、一人覚悟を決める。
「分かったよ。ドリー、この山はあの国の領域なの? もし、そうなら少しでも早く離れたいんだけど」
「そうか。じゃあ、ここを離れよう。ここはまだあの国の内側だ。そうだな、あっちに連峰がみえるよな」
「連峰? ああ、あれのこと」
「そうだ。あそこまで行けば、多分隣の国だし、麓には街もあったと思う」
「じゃあ、ご飯もあるのよね?」
「寝るところも?」
「まあ、あるだろうな。ワシは知らんがな」
「「恒!!!」」
由香と久美が当然行くよねという風に期待した目で恒を見詰める。
「分かったよ。それでドリー。持っていく物はある? あるなら、俺が収納するから」
「ほう。ワタルはインベントリ持ちか。それは助かるな。いいぞ、こっちだ。来てくれ」
ドリーが恒を洞窟の奥へと連れて行くのを明良達は、ここで待っているからと見送っている。
「ねえ、龍って確か、貴金属を溜め込むってラノベにはよく書かれていたんだけど、本当だと思う?」
「なんだよ由香。気になるのなら着いていけばよかったのに」
「イヤよ。だって、もう慣れたけど、ここでも生臭いんだよ。奧はもっと臭いよ。だから無理だよ」
「袖で抑えればイケるんじゃない?」
「そう思うなら、久美が行って来てよ!」
「イヤよ。それに私はそんなに興味がある訳じゃないし」
「なによ!」
「なにさ!」
恒達が洞窟の奧から戻ってくると、由香と久美が言い争っていたので、横でそれを見ていた明良に説明を求める。
「お! 戻って来たか」
「ただいま。っていうか、あれは何を言い争っているの?」
「ああ、あれか。あれはな……」
明良からの説明を聞いて、恒とドリーは呆れてしまう。
「宝って、ワシに何を期待しているんだか。そもそもこんな山の頂上まで来るような奴はいないし、ワシも人を襲う趣味はない。そして、ワシを敬う連中もいない。だから、期待するような宝物はない」
「だよな~やっぱり、そううまい話はないよな」
ドリーの話に明良は納得し、そしていつの間にか言い争いを止めていた由香がアテが外れて悲しいという風な顔になり、久美は自分が言った通りとばかりに勝ち誇った顔になる。
「じゃ、もう忘れ物はないね。ドリー」
「ああ、ないぞ。だが、ずっとここに住み続けていたからか、いざ離れるとなると少し寂しいな」
「ああ、そういうのはあるよね。でも、ここにいたら死んじゃうし、しょうがないよね」
「それを言うなよ。まあ、ワタルのお陰でそれも避けられそうではあるけどな」
「そういうこと。こんな死を待つだけの場所からはさっさとずらかろうぜ。頼んだぞ、恒」
「ああ、行こうか。皆、捕まって」
「「おう!」」
「「はい!」」
「じゃあ、行くね。『転移』!」
「で、到着! っと」
「「おっ……」」
「「きゃっ……」」
「あれがさっきまでいた山で、ドリーの住処だったところか」
「そうだ。それで、ここから見えるあれが目的の街になる」
「あそこだね」
「ああ、あそこだ。だが、さっきみたいに転移するのなら、あの手前のちょっと深い森の中がいいだろう」
「分かったよ。じゃ、また捕まって」
「「ああ!」」
「「うん!」」
「『転移』!」
皆が恒に捕まると恒は、ドリーが指定した麓の街の近くの森の中へと転移する。
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