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第四章 ようこそ、新天地へ

第五話 後始末は任せます

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 想太は二号達に壇上で藻掻いていた男を引き渡すと次に裁かれる男を壇上に上げる。

「あ、アイツだ!」
「よし、来たぁ!」
「……こいつは多いな。次だ」

 今度の男はなかなかに人気者みたいでさっきの男とは違いオークション会場も騒つく。

「ふが……」
「そうかそうか。お前も嬉しいか」
「もごもが……」
「うん、何を言っているのか全然分からないし、分かってもお前の頼みを聞くことはないから」
「もが……」

 想太が男の様子を気にしつつもオークション会場は異様なほどに盛り上がり、やがて三人の男が残るが一人の男が他の二人に頭を下げ「俺はアイツだけは許せない!」と鬼気迫る表情で頼み込む。

 頼まれた二人もそれぞれに許せない事情はあったのだが、自分達は他にもいるからと辞退したので最終的には一人の若い男が競り落とした形になった。

「引き渡しはオークション終了後になるから、それまでは手を出さないようにね」
「そんな……」
「イヤなら「待ちます!」……そ、そうか」
「もう少しなんだ。もう少しで……」

 想太に頼まれた朝香が引換券を若い男に渡すと、その男は軽く頭を下げオークション会場へと戻っていく。

「じゃ、次行こうか」
「「「おぉ~!」」」

 やがて、全てのオークションが終わったが選ばれなかったのは最初の一人だけだったので、折角だからと再オークションに掛けてみるが、今度も選ばれることはなかった。

「じゃあ、引き渡す前にこの男をどうするか、オークションで落札され引き渡した後にどうなるのか見てもらうね」
「どうしても見たくないって人は目を瞑るなり、子供の目を塞いで上げるなりしてね」
「「「……」」」

 元奴隷の人達は想太達が何をするのか分からないため戸惑っているが、子供達の目を塞ぐように言っていることから、子供達に見せられないようなよくないことが起きるだろうことは予測出来るので、想太達が何かをする前にと慌てて子供達の目を塞ぎ、気が弱そうな女性も両目をギュッと閉じる。

「じゃあ、行くよ。準備はいいね。一,二の三、はい! で行くからね。いい、『はい』だからね」
「「「……」」」

 皆が首を縦に振り納得した様子を見せたので、想太は最初に選ばれなかった男の側に行くと「懺悔は出来たかな」と声を掛ければ、男はフルフルと首を横に振る。

「じゃあ、最後に聞くけど君は『イヤだ、助けて』と言われて助けたことはあるのかな?」と想太が質問すれば、その男は黙り込む。

「沈黙は否定だよね。じゃあ、最後にもう一度懺悔なり神様にお願いするなりしてもいいよ。じゃあ、行くね。一,二の三!」
「「「あ!」」」

 想太が「三」で男をオーク達が群がっている飛島へと放ったのを見て元奴隷達から思わず「あ!」と声が上がる。

「だって、『はい』で暴れられたらイヤじゃない」
「それってTVの見過ぎじゃないの?」
「うん、そうかも。あれって苦手な人って三,二,一,バンジーの『バ』の部分でしがみ付いたりするじゃない。だから『はい』の前にしたんだよ」
「まあ、気持ちは分からないでもないけど……向こうは見ない方がいいね」
「あ~確かに……これはちょっと見せられないね」

 想太と朝香が見ている飛島では放り込まれた男がオーク達に嬲られ手足を引っ張られたりと、見るも無惨な光景が繰り広げられている。

 そしてオークションで落札された男達はかつての仲間が甚振られているのを見て「自分じゃなくてよかった」と思うが、自分達はこれから元奴隷達に何をされるのかは分かっている。一人一刺しと言われているが、殺されることは揺るがない事実だ。

 想太は最初の男が形をなさなくなりオーク達がいなくなったのを確認すると「じゃ、次の人。一番の引換券を持っている人!」と元奴隷達に声を掛ければ「はいっ!」と元気よく手を挙げる若い男がそこにいた。

「あ~あの子か」
「でも、一回一刺しってルールは守ってくれそうにないけど、大丈夫なの? ここで止められないと後がグダグダになっちゃうよ」
「そうだよね。じゃあ、そんな人の為には……これ!」
「え~ナニソレ。スッゴ~い、でも、社長お高いんでしょ」
「今ならなんと三九八〇円!」
「え~やっすぅ~い。さすが社長!」
「って、何させるの!」
「ふふふ、でもノっていたじゃない」
「ん~それは認めるけどね」

 ある通販のワンシーンを悪ノリで再現した想太が手に持っているのは刃渡り七〇センチメートルはあるいわゆる長ドスだ。

「これで一刺しなら絶命間違いなし!」
「スッゴ~い、社長!」
「もうそれはいいから」
「は~い」
「……」

 引換券を持ったままの若い男は想太と朝香の小芝居をずっと見せられていたが、想太が長ドスと引き換えに引換券を受け取り、若い男が落札した男を前に出す。

「えっと、これで刺せばいいんですか?」
「そう、やっちゃって!」
「……」
「あと、ちなみに余計なお世話かもしれないけど、苦しめたくないなら心臓を。そうでないなら、肝臓か腎臓、それかお臍の下辺りを刺してからグッと回せば間違いなし。さ、どうぞ」
「……よし!」
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