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第一章 ようこそ、異世界へ
第九話 何かがちがったようです
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「ちょっと待って!」
アツシが話そうとする直前に朝香の方から「待った」が掛かる。
「どうしたの?」
「想太、どうしたのじゃないでしょ! 見てよ! ほら!」
「え?」
「暗いの! もう、暗いでしょ! だから、怖いのよ……隣に想太がいても暗いところは怖いの」
朝香が両腕を広げて大きな声で想太に言うと、想太は『寝室』と唱えようとして止める。
「『寝室』はさすがにマズいな。じゃあ、『居間』だ! 亜空間生成『居間』」
想太は空間魔法で大きめの『居間』を生成する。広さは十二畳くらいだろうか。
「朝香、入って。土足のままでいいから」
「うわぁ~……なんにもない」
「今作るから……」
朝香を『居間』へと迎え入れた瞬間に率直な感想を言われた想太が慌てて、ソファとテーブルを作り出し、朝香に勧める。
「やっぱり、想太のスキルは壊れているわね」
「そうかな」
朝香に言われ、照れ隠しに頭を掻く想太に朝香が言う。
「褒めてないからね!」
ソファに座った想太の隣に朝香が座る。
「どうして隣に座るの?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど、もう少し離れてもらえないかな」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど、俺だって男だし……その間違いがあっちゃダメだと思うんだけど」
「ダメ?」
「ダメでしょ! だって、ここは異世界だよ。まだ何も分かっていないのに、そんなことしている状況じゃないでしょ!」
「そんなことって、どんなこと?」
「どんなことって……それは……」
「もしかして、こんなこと?」
いきなり朝香が想太に覆い被さり、想太が慌ててしまう。
「ちょっと、朝香。どうしたの? さっきから何か変だよ?」
「だって、想太は中学を卒業してから、私を敬遠してたでしょ?」
「そ、そうだったかな?」
「せっかく一緒の高校で、いっしょのクラスになったのに。私が話しかけても無視したりすることが多かったし」
「それは回りに人がいたからで……」
「想太と私は幼馴染みなんだよ。それなのに想太は私と幼馴染みなのが皆に知られるのを嫌がっていたようにしか思えないもの」
「だから、それは……」
「それは、何?」
「なんていうか……」
「男でしょ! ハッキリ言って! 私のこと好きじゃないなら、押し返せばいいじゃない!」
「出来ないよ!」
「なんでよ! 私のことなんかどうでもいいんでしょ!」
「どうでもよくない! よくないから、朝香を誰も傷付けられないように俺の力を使って……」
「違うの。なんで想太が守ってくれないの?」
「なんでって……だから、俺のスキルを使って」
「違うの! 色んなスキルを送ってくれたことには感謝している。でも、私は想太に守って欲しかったの! 想太自身の手で守って欲しかったの! でも、想太は違った……私はそれが悲しかった。それに想太は一人で逃げ出したりするし」
「でも、それは朝香が聖女で大切にされていたから」
「だから、私は想太に大切にされたいの。分かるでしょ! 私が好きなのは想太なの! 生まれたときからずっと、一緒にいた想太が好きなの! なんとか言いなさいよ!」
そこまで言って朝香は堰が切れたように泣きだした。
「あ、朝香……あの……」
『うん、これはソウタが悪いですね。しばらくはそっとしておきましょう』
朝香は想太に覆い被さったままの状態で泣き崩れ、やがてそのまま寝てしまったようだ。
「どうするの、これ?」
朝香と二人っきりの空間で想太は為す術もなくジッとしているしかなかった。
「俺の返事は聞かないでいいのか~」
「う……ん、うるさい!」
アツシが話そうとする直前に朝香の方から「待った」が掛かる。
「どうしたの?」
「想太、どうしたのじゃないでしょ! 見てよ! ほら!」
「え?」
「暗いの! もう、暗いでしょ! だから、怖いのよ……隣に想太がいても暗いところは怖いの」
朝香が両腕を広げて大きな声で想太に言うと、想太は『寝室』と唱えようとして止める。
「『寝室』はさすがにマズいな。じゃあ、『居間』だ! 亜空間生成『居間』」
想太は空間魔法で大きめの『居間』を生成する。広さは十二畳くらいだろうか。
「朝香、入って。土足のままでいいから」
「うわぁ~……なんにもない」
「今作るから……」
朝香を『居間』へと迎え入れた瞬間に率直な感想を言われた想太が慌てて、ソファとテーブルを作り出し、朝香に勧める。
「やっぱり、想太のスキルは壊れているわね」
「そうかな」
朝香に言われ、照れ隠しに頭を掻く想太に朝香が言う。
「褒めてないからね!」
ソファに座った想太の隣に朝香が座る。
「どうして隣に座るの?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど、もう少し離れてもらえないかな」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど、俺だって男だし……その間違いがあっちゃダメだと思うんだけど」
「ダメ?」
「ダメでしょ! だって、ここは異世界だよ。まだ何も分かっていないのに、そんなことしている状況じゃないでしょ!」
「そんなことって、どんなこと?」
「どんなことって……それは……」
「もしかして、こんなこと?」
いきなり朝香が想太に覆い被さり、想太が慌ててしまう。
「ちょっと、朝香。どうしたの? さっきから何か変だよ?」
「だって、想太は中学を卒業してから、私を敬遠してたでしょ?」
「そ、そうだったかな?」
「せっかく一緒の高校で、いっしょのクラスになったのに。私が話しかけても無視したりすることが多かったし」
「それは回りに人がいたからで……」
「想太と私は幼馴染みなんだよ。それなのに想太は私と幼馴染みなのが皆に知られるのを嫌がっていたようにしか思えないもの」
「だから、それは……」
「それは、何?」
「なんていうか……」
「男でしょ! ハッキリ言って! 私のこと好きじゃないなら、押し返せばいいじゃない!」
「出来ないよ!」
「なんでよ! 私のことなんかどうでもいいんでしょ!」
「どうでもよくない! よくないから、朝香を誰も傷付けられないように俺の力を使って……」
「違うの。なんで想太が守ってくれないの?」
「なんでって……だから、俺のスキルを使って」
「違うの! 色んなスキルを送ってくれたことには感謝している。でも、私は想太に守って欲しかったの! 想太自身の手で守って欲しかったの! でも、想太は違った……私はそれが悲しかった。それに想太は一人で逃げ出したりするし」
「でも、それは朝香が聖女で大切にされていたから」
「だから、私は想太に大切にされたいの。分かるでしょ! 私が好きなのは想太なの! 生まれたときからずっと、一緒にいた想太が好きなの! なんとか言いなさいよ!」
そこまで言って朝香は堰が切れたように泣きだした。
「あ、朝香……あの……」
『うん、これはソウタが悪いですね。しばらくはそっとしておきましょう』
朝香は想太に覆い被さったままの状態で泣き崩れ、やがてそのまま寝てしまったようだ。
「どうするの、これ?」
朝香と二人っきりの空間で想太は為す術もなくジッとしているしかなかった。
「俺の返事は聞かないでいいのか~」
「う……ん、うるさい!」
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