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第一章 突然の出来事
第三話 暴露する相手が違う
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これで私に対する不満を暴露するのはお終いかと思ったところで、その後ろに隠れていたカミラ男爵令嬢を前に出すと、私が彼女にした数々の不貞行為を暴露するという。
ウィリアム王子は私に対し右手の人差し指を突き付けながら、言うのだ。
「ふふふ、どうした? 思い当たることが多すぎて何も言えないのか?」
「……」
もうダメだ腹筋が痛い。私の目の前のコイツを誰か止めてくれないだろうかと思うが、私が手を下すしかないのだろう。実際に私の動向を見ているハズの父である『ビル宰相』が何も言って来ないのだから。
「さて? 私がそこのカミラ嬢に何をしたというのでしょうか。私は直接会話した記憶はございませんが……」
「ふふふ、まあいい。惚けるのなら、それでもいいさ。だが、私がこれから話す内容次第では貴様は学園から追放され、貴族籍も剥奪されるに違いない! 私としては、その姿を二度と見ることがないように国外追放を望みたいところだ」
「前置きはいいので、さっさとお話して貰えないでしょうか。私は先程ウィリアム様から浴びせられた赤ワインをさっさと洗い流したいので」
「ふ、ふん! いいさ。では望み通りにさっさと終わらせてやろうではないか。いろいろとな」
「はいはい、ではどうぞ」
「く、クソッ……いいか。貴様は先日、カミラ嬢を学園の階段から突き落としただろ!」
「はい? なんのことでしょうか?」
「惚けるな! 見ろ、彼女のこの傷を!」
「あら、痛々しい。お大事にどうぞ」
「ありがとう。って、そうじゃない! カミラ嬢のこの傷は貴様に階段から落とされた時に負った傷だと聞いている。正直に謝罪したらどうだ!」
「フィリー」
「はい、こちらに……」
「ありがとう。では、ウィリアム様。そのカミラ様が階段から私が突き落とした日付をお願いします」
「日付?」
「ですから、私がカミラ嬢を階段から突き落としたと言われている日付です。大丈夫ですか?」
「バカにするな! いいか、それは……」
ウィリアム王子は日付まではカミラ嬢に聞いていなかったのか、少しだけ後ろを振り返り、小声で尋ねているようだ。
「うむ、分かった。グレイスよ、貴様がカミラ嬢を階段から落としたのは三日前だ!」
「三日前ですね?」
「ああ、そうだ」
「おかしいですねぇ」
「何がだ?」
「いえ、私はその日は家のことで学園には向かっておりません」
「あ? 嘘……じゃないのか?」
「いいえ。あとで学園の方に問い合わせて頂いても構いませんよ」
「……」
ウィリアム王子は少し焦った様子で後ろに控えているカミラ嬢に小声で確認しているが、少し漏れ聞こえてくるのは「本当だな」「今度は大丈夫なんだな」と言っているようだ。
「どうも、間違えたようだ。二日前だ」
「本当なんですね」
「ああ、今度は大丈夫だ。そうだよな?」
「二日前ですね。では、何時頃かを教えて頂きますか?」
「何時? 何時だ?」
心配そうに後ろを振り返るウィリアム王子に少しだけ同情してしまう。こんなのに標的にされなければ、王族でいられただろうにと。
「十四時だ。そうだな?」
ウィリアム王子の問いに後ろに控えているカミラ嬢が小さく頷く。
「十四時……十四時ですか。おかしいですね」
「なんだ。また、学園を休んでいたとでも言うのか。だが、貴様は確かにいたはずだ。私と会ったのだからな」
「ええ、学園にはいましたよ。ですが、午前中だけですが」
「なに!」
私の返事を聞いてまた後ろを振り返るウィリアム王子の姿にそろそろ腹筋が崩壊しそうなので勘弁して欲しいのだが。
「あ、そうですわ。確か……」
私はフィリーから受け取った冊子を捲り二日前の『カミラ嬢の行動記録』をウィリアム様に言って聞かせる。
「確か、その時はカミラ嬢が誰かが落とした硬貨の音で急に振り向いたとかで階段から足を踏み外した、とそう記録されていますね」
「記録? 記録とはどういうことだ?」
「いえ、非常に些細なことなんですが、どうも私に罪を着させようといろいろと画策していた方がいたようなので、私としましても身に覚えのない火の粉が降りかかるのは家のことも考えてよろしくないと思いましたので、関係がありそうな方の行動記録を家の者に頼んでいましたの」
「そ、それがカミラ嬢の行動記録だと……そういうことなのか?」
「ええ、そうです。ご覧になりますか?」
「貸せ!」
ウィリアム王子は私から半ば強引にカミラ嬢の行動記録を記した冊子を奪い取るが、その後ろからカミラ嬢が更に奪い取ると、その場で細かく破り「ハァ~ハァ~」と肩で息をしている。
「ウィリアム様、ご心配なく。それは複製品なので、必要であれば後で届けさせますわ」
「要らん! 不要だ」
「そうですか。では「まだだ!」……はぁ今度はなんですか?」
「貴様はここにいるカミラ嬢を学友の女子に頼み集団で糾弾したと聞いている! どうだ、今度こそ、ぐうの音も出ないだろ! ははは……え?」
「……」
嬉しそうに私を指差しながら愉快そうに笑うウィリアム王子を私は呆れを通り越して思わず可哀想な目で見てしまった。
そして、それに気付いたウィリアム王子も少しだけ驚いたようだ。
「もうウィリアム王子ではなくカミラ様に直接聞いた方が早そうなので、失礼しますね。カミラ様、糾弾された時に私はその場にいたのでしょうか? 正直にお答え願えますか?」
「……」
「だから、カミラ嬢は関係ないだろう!」
私がカミラ嬢に問い掛けるのを阻止しようとウィリアム王子が私とカミラ嬢の間に割って入るがカミラ嬢が関係ないことはないだろう。そちらが言い出したことなのに。
「まあ、いいです。フィリー」
「はい、こちらに」
「ありがとう」
私はフィリーから『カミラ嬢の行動記録』の複製品を受け取ると、数枚めくり手を止める。
「あ、ありましたね。え~と、確か糾弾された内容は『他人の婚約者に色目を使った』ことに対する複数の女性からの追求とありますね」
「嘘よ!」
「そうだ。そんなことがあるわけがない!」
カミラ嬢もウィリアム王子の前に出ると「嘘よ」と叫ぶ。そして、それを庇う様にウィリアム王子も反論する。
「では、お訪ねしますがカミラ嬢のその今着られているドレスは確か、キュレイの新作でしょうか?」
「あら、あなたも多少はおしゃれが分かるのね。そうよ、あのお店の新作よ。どうかしら」
そう言ってカミラ嬢はその場でくるっと可愛らしくターンを決める。
「そうですか。誠に失礼ですが、そちらのお店で購入するとなれば男爵位の報償では少し苦しいのではと思いますが?」
「え?」
「私が買い与えたものだ。問題ないだろう」
「……」
私が暗に男爵位の給金ではそんな高級店での買い物は難しいだろうと言えば、ウィリアム王子が買い与えた物だから問題はないだろうと言うが、問題ありありだろうが!。
「失礼ですが、ウィリアム様」
「なんだ?」
「私はウィリアム様の婚約者という立場でありましたが、そういった贈り物は一度も頂いたことはありませんが?」
「そ、そうだったかな?」
「まさかとは思いますが、公金から拠出されている『私の衣装代』を使われたのでしょうか?」
「な、何を言っているんだ。そんなことはない」
一応、婚約者の名目でウィリアム王子と公の場に出る場合には王家からの衣服代が拠出されているとは聞いているが、私には使ったという記憶がない。そしてそれを使い込んだのではと問い詰めれば、それはないと言い張るウィリアム王子に更に切り込んでみる。
「そうですか。では、失礼ながらウィリアム様へのお小遣いの額は多少なりと聞いております。例えそれを貯めていたとしてもカミラ嬢が今身に着けている装飾品を含めての価格には及びません。それはどうお答えされますか?」
「え? 嘘……どういうことなんだ?」
私から公金の使い込みを追求され、カミラ嬢がドレスだけでなく身に着けているイヤリングやネックレスに指輪に靴にとウィリアム王子の視線が移っていくとカミラ嬢の身に着けている装飾品の類の合計金額がウィリアム王子の考えている額以上だったからなのかウィリアム王子も、やっと自分が何をしていたのか目が覚めたように思える。
「カミラ嬢、私はドレスだけ……ドレスだけ贈ったが、他のは……まさか、さっきの……」
「ちっ」
ウィリアム王子は私に対し右手の人差し指を突き付けながら、言うのだ。
「ふふふ、どうした? 思い当たることが多すぎて何も言えないのか?」
「……」
もうダメだ腹筋が痛い。私の目の前のコイツを誰か止めてくれないだろうかと思うが、私が手を下すしかないのだろう。実際に私の動向を見ているハズの父である『ビル宰相』が何も言って来ないのだから。
「さて? 私がそこのカミラ嬢に何をしたというのでしょうか。私は直接会話した記憶はございませんが……」
「ふふふ、まあいい。惚けるのなら、それでもいいさ。だが、私がこれから話す内容次第では貴様は学園から追放され、貴族籍も剥奪されるに違いない! 私としては、その姿を二度と見ることがないように国外追放を望みたいところだ」
「前置きはいいので、さっさとお話して貰えないでしょうか。私は先程ウィリアム様から浴びせられた赤ワインをさっさと洗い流したいので」
「ふ、ふん! いいさ。では望み通りにさっさと終わらせてやろうではないか。いろいろとな」
「はいはい、ではどうぞ」
「く、クソッ……いいか。貴様は先日、カミラ嬢を学園の階段から突き落としただろ!」
「はい? なんのことでしょうか?」
「惚けるな! 見ろ、彼女のこの傷を!」
「あら、痛々しい。お大事にどうぞ」
「ありがとう。って、そうじゃない! カミラ嬢のこの傷は貴様に階段から落とされた時に負った傷だと聞いている。正直に謝罪したらどうだ!」
「フィリー」
「はい、こちらに……」
「ありがとう。では、ウィリアム様。そのカミラ様が階段から私が突き落とした日付をお願いします」
「日付?」
「ですから、私がカミラ嬢を階段から突き落としたと言われている日付です。大丈夫ですか?」
「バカにするな! いいか、それは……」
ウィリアム王子は日付まではカミラ嬢に聞いていなかったのか、少しだけ後ろを振り返り、小声で尋ねているようだ。
「うむ、分かった。グレイスよ、貴様がカミラ嬢を階段から落としたのは三日前だ!」
「三日前ですね?」
「ああ、そうだ」
「おかしいですねぇ」
「何がだ?」
「いえ、私はその日は家のことで学園には向かっておりません」
「あ? 嘘……じゃないのか?」
「いいえ。あとで学園の方に問い合わせて頂いても構いませんよ」
「……」
ウィリアム王子は少し焦った様子で後ろに控えているカミラ嬢に小声で確認しているが、少し漏れ聞こえてくるのは「本当だな」「今度は大丈夫なんだな」と言っているようだ。
「どうも、間違えたようだ。二日前だ」
「本当なんですね」
「ああ、今度は大丈夫だ。そうだよな?」
「二日前ですね。では、何時頃かを教えて頂きますか?」
「何時? 何時だ?」
心配そうに後ろを振り返るウィリアム王子に少しだけ同情してしまう。こんなのに標的にされなければ、王族でいられただろうにと。
「十四時だ。そうだな?」
ウィリアム王子の問いに後ろに控えているカミラ嬢が小さく頷く。
「十四時……十四時ですか。おかしいですね」
「なんだ。また、学園を休んでいたとでも言うのか。だが、貴様は確かにいたはずだ。私と会ったのだからな」
「ええ、学園にはいましたよ。ですが、午前中だけですが」
「なに!」
私の返事を聞いてまた後ろを振り返るウィリアム王子の姿にそろそろ腹筋が崩壊しそうなので勘弁して欲しいのだが。
「あ、そうですわ。確か……」
私はフィリーから受け取った冊子を捲り二日前の『カミラ嬢の行動記録』をウィリアム様に言って聞かせる。
「確か、その時はカミラ嬢が誰かが落とした硬貨の音で急に振り向いたとかで階段から足を踏み外した、とそう記録されていますね」
「記録? 記録とはどういうことだ?」
「いえ、非常に些細なことなんですが、どうも私に罪を着させようといろいろと画策していた方がいたようなので、私としましても身に覚えのない火の粉が降りかかるのは家のことも考えてよろしくないと思いましたので、関係がありそうな方の行動記録を家の者に頼んでいましたの」
「そ、それがカミラ嬢の行動記録だと……そういうことなのか?」
「ええ、そうです。ご覧になりますか?」
「貸せ!」
ウィリアム王子は私から半ば強引にカミラ嬢の行動記録を記した冊子を奪い取るが、その後ろからカミラ嬢が更に奪い取ると、その場で細かく破り「ハァ~ハァ~」と肩で息をしている。
「ウィリアム様、ご心配なく。それは複製品なので、必要であれば後で届けさせますわ」
「要らん! 不要だ」
「そうですか。では「まだだ!」……はぁ今度はなんですか?」
「貴様はここにいるカミラ嬢を学友の女子に頼み集団で糾弾したと聞いている! どうだ、今度こそ、ぐうの音も出ないだろ! ははは……え?」
「……」
嬉しそうに私を指差しながら愉快そうに笑うウィリアム王子を私は呆れを通り越して思わず可哀想な目で見てしまった。
そして、それに気付いたウィリアム王子も少しだけ驚いたようだ。
「もうウィリアム王子ではなくカミラ様に直接聞いた方が早そうなので、失礼しますね。カミラ様、糾弾された時に私はその場にいたのでしょうか? 正直にお答え願えますか?」
「……」
「だから、カミラ嬢は関係ないだろう!」
私がカミラ嬢に問い掛けるのを阻止しようとウィリアム王子が私とカミラ嬢の間に割って入るがカミラ嬢が関係ないことはないだろう。そちらが言い出したことなのに。
「まあ、いいです。フィリー」
「はい、こちらに」
「ありがとう」
私はフィリーから『カミラ嬢の行動記録』の複製品を受け取ると、数枚めくり手を止める。
「あ、ありましたね。え~と、確か糾弾された内容は『他人の婚約者に色目を使った』ことに対する複数の女性からの追求とありますね」
「嘘よ!」
「そうだ。そんなことがあるわけがない!」
カミラ嬢もウィリアム王子の前に出ると「嘘よ」と叫ぶ。そして、それを庇う様にウィリアム王子も反論する。
「では、お訪ねしますがカミラ嬢のその今着られているドレスは確か、キュレイの新作でしょうか?」
「あら、あなたも多少はおしゃれが分かるのね。そうよ、あのお店の新作よ。どうかしら」
そう言ってカミラ嬢はその場でくるっと可愛らしくターンを決める。
「そうですか。誠に失礼ですが、そちらのお店で購入するとなれば男爵位の報償では少し苦しいのではと思いますが?」
「え?」
「私が買い与えたものだ。問題ないだろう」
「……」
私が暗に男爵位の給金ではそんな高級店での買い物は難しいだろうと言えば、ウィリアム王子が買い与えた物だから問題はないだろうと言うが、問題ありありだろうが!。
「失礼ですが、ウィリアム様」
「なんだ?」
「私はウィリアム様の婚約者という立場でありましたが、そういった贈り物は一度も頂いたことはありませんが?」
「そ、そうだったかな?」
「まさかとは思いますが、公金から拠出されている『私の衣装代』を使われたのでしょうか?」
「な、何を言っているんだ。そんなことはない」
一応、婚約者の名目でウィリアム王子と公の場に出る場合には王家からの衣服代が拠出されているとは聞いているが、私には使ったという記憶がない。そしてそれを使い込んだのではと問い詰めれば、それはないと言い張るウィリアム王子に更に切り込んでみる。
「そうですか。では、失礼ながらウィリアム様へのお小遣いの額は多少なりと聞いております。例えそれを貯めていたとしてもカミラ嬢が今身に着けている装飾品を含めての価格には及びません。それはどうお答えされますか?」
「え? 嘘……どういうことなんだ?」
私から公金の使い込みを追求され、カミラ嬢がドレスだけでなく身に着けているイヤリングやネックレスに指輪に靴にとウィリアム王子の視線が移っていくとカミラ嬢の身に着けている装飾品の類の合計金額がウィリアム王子の考えている額以上だったからなのかウィリアム王子も、やっと自分が何をしていたのか目が覚めたように思える。
「カミラ嬢、私はドレスだけ……ドレスだけ贈ったが、他のは……まさか、さっきの……」
「ちっ」
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