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第八章 やるべきこと

第4話 順番だから

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「はいは~い! そこまでです!」
「え~」
「リリス?」

 仲睦まじくしているソルトとレイの様子に我慢出来なくなったリリスが二人の間に割って入り、二人を引き離せばレイは不満を漏らし、ソルトはリリスの態度が分からず戸惑う。

『ソルトさん、ヤリ過ぎ注意です!』
「え? ルーまでどうしたの?」
「ソルトさん!」
「あ、はい?」
「お話があります!」
「え?」

 レイと離され、何がなんだか分からないソルトにルーもソルトに対し苦言を呈するが、ソルトは余計に混乱する。そして、そんなソルトにリリスが両拳をギュッと握りしめ、ソルトの目を見詰めながら話があると言う。

 ソルトは「今度はリリスか」と思わず口から出そうになるが、それをなんとか留めるとリリスに対し「何かな」と正面から向き合う。

「私もポンポン希望です!」
「はい?」
「だから、私にもレイにした様に……その……頭を撫でて欲しいんです!」
「え?」
「もう!」
「あ!」

 ソルトはリリスから「話がある」と言われ、何を言われるのかと身構えていたが、リリスの口から出て来たのは『頭ポンポン』の要求だった。ソルトとしては身構えていた分「そんなことか」と拍子抜けだったが、リリスはそうは思っておらず「希望してもしてくれないのなら!」と自らソルトに抱き着き、ソルトの右手を取ると「手はここです」と自分の頭に載せ「さあ、どうぞ。思う存分『ポンポン』して下さい」と上目遣いでソルトを見上げる。

「えっと……」
「もう! 女の子にここまでさせといて、何もしないのですか!」
「いや、だって……」
「いいじゃん。リリスがいいって言ってるんだから、やってあげなよ」
「レイ……」
「レイは黙っててください!」
「いいの? でも、私が考えている通りなら、ソルトはそのままだよ?」
「え? どういうことですか? まさか、レイの呪い……」
「バカ! 私がそんなことする訳ないでしょ!」
「そうですか? 自分だけ『頭ポンポン』される為に他の女子には出来ないように呪っているんじゃないのですか?」
「あ~確かにそんな呪いがあったら欲しいかも……って、何言わせるの!」
「やっぱり、そうなんじゃないですか!」
「だから、違うから! これはソルト自身に掛かっている呪いみたいなものだから」
「やっぱり、レイの呪いじゃないですか!」
「だから、違うっての! もう、ソルトも固まってないでなんとか言ってよ!」
「なんとかって……何をだ?」
「もう、いい! リリス、あのねソルトがいた世界、私もだけど……何も関わりがない女の子の頭をポンポンすると下手したら相手に訴えられて捕まるかも知れない世界だったの」
「「「え?」」」
「だからね、ソルトは女子慣れしていないモブ男だったから、当然そんなことをしたことがないから、今のリリスの状況に頭が追いついていないの。頭では向こうの世界とは違うと思っていてもそんな風だから、なかなか出来ないでいるのよ。どう、分かった?」
「分からない……だってレイはされたじゃない!」
「え、そうなのか?」
「なんで、当事者のソルトが分からないのよ! ソルトが私に出来たのは子供の頃の私を知っているからなの。だから、私は女子と思われていないの! ……って、あれ?」

 レイは地球……日本では例え顔見知りでもいきなり頭ポンポンが許されるのは『』と言いたかったが、ソルトのことを慮りモブ男だから、頭ポンポンに慣れていないことを説明するが、肝心のソルトが何も分かっていなかった。

 そんな日本での頭ポンポン事情を説明しても、ソルトにはなかなか納得してもらえなかった。そして、なんでレイがソルトに頭ポンポンされたのかを説明したところで、レイ自身がソルトに女子扱いされていなかったことに気付き、ちょっとだけ落ち込む。

「とりあえず、早いとこリリスの気が済む様に撫でてやりなよ」
「そうね。後が支えているから早くして欲しいわね」
「「「え?」」」

 サクラの言葉にカスミも続き、ソルト、リリス、レイが回りを見れば、リリスの後ろにサクラ、カスミ、ノア、ガネーシャと並び、その後ろにはブランカまで並んでいた。

「お前はいいだろ」
「もういいじゃない。私だって娘婿にポンポンしてもらえる権利はあると思うんだけど」
「そんなの俺がいくらでもしてやるから」
「いいの! シルヴァじゃなくてソルトがしてくれることに意味があるんだから」
「……」

 ソルトはリリスに抱き着かれたまま、自分がどういう状態なのかをやっと理解したようで、ふふっと笑った後に自分に抱き着いているリリスを見ながら「もっと甘えてもいいんだよ」と声を掛けながら、その頭を優しく撫でればリリスもやっと動いたソルトの右手の感触に身もだえしながら、そのニヤけが止まらない顔をソルトの胸にギュッと押し付ける……が、そんなリリスの肩をトントンと突いてくる感触がある。

「……」
「もしも~し、まだですかぁ~」
「……」
「もう、十分堪能したと思うんですけどぉ?」
「……」
「コイツ、無視してやがる!」
「……邪魔しないでください!」
「そういう訳にはいかないだろ! いいから、離せ! 後が支えているんだから!」
「リリス、足らないのなら、最後尾に回るんだ」
「……分かりました!」
「えっと、俺は「ステイ!」……え?」
「だから、ソルトはそのままで」
「はい?」
「サクラ、行きま~す!」
「えぇ……」
『ソルトさん、イヤと言いながらも鼻の下が伸びていますょ? 最低です!』
「……ごめん」
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